ある日、いつものように帰宅したら
既に家の中に”わたし”がいたー。
意味不明な状況に困惑しながらも
彼女はなんとか、この状況を打開しようとする…。
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真梨は自宅に向かって走っていたー。
「ーわたしの偽物が出かけている間に
帰宅しちゃえばー…」
真梨は、そう考えながら
家を目指すー。
”自分の偽物”が、出かけている間に
帰宅することで、
問題なく家に入ることができるし、
家の中で両親や弟の龍太に事情を説明することができるー。
家の中に”自分の偽物”がいる状況だと、
説明しようとしてもジャマしてくる可能性が高いし、
最悪の場合、こっちが偽物扱いされてしまうー。
「ーー(お父さんももう帰ってきてるかなー?)」
仕事で遅くなる父も、もう帰ってきたかな?と思いつつ、
玄関の扉に手を掛けようとするとー
「ーーー!!!!」
真梨は、表情を歪めたー。
”姉さん、助かったよ!サンキュー!”
相変わらず声の大きな弟・龍太の声が家の中から
聞こえてくるー
「ーーーえ…」
玄関を開けようとしていた真梨は、
その手を止めるー
”ううんー…龍太のためだし、少しでも調子が良くなるといいね”
中から聞こえて来たのはー
”真梨”の声ー
「(えっ…なんで…!?わたしの偽物がもう帰ってきてる!?)」
真梨は戸惑うー。
確かに途中で少し道に迷ってしまったとは言え、
真梨は、全速力で家に戻ってきたはずー。
それなのにー
「ーー真梨」
背後から声がしたー
真梨はドキッとして、背後を振り返ると、
そこには真梨の父親の姿があったー。
ちょうど今、父親が仕事から帰ってきたのだー
「ーどうしたんだ?家の前でそんなにコソコソしてー」
当然ー
”家の中に既にもう一人真梨がいる”ことを
知らない父親は、
家の周りで、制服を着たまま手ぶらでコソコソしていた
真梨に疑問を抱きながら、そう呟いたー
「お…お父さんー」
真梨は、家のほうを1回見つめてから、父のほうを見つめ返すと、
意を決して、父に対して言い放ったー
「ーそれがー…家の中に”もう一人”わたしがいてー」
とー。
「ーーなんだって?」
娘からのとんでもない言葉に、父は思わず聞き返したー。
「ーー…だ、だから…もう一人わたしがー」
不安そうな表情を浮かべる真梨ー。
父は、”どういうことだ?”と思いながら
家の中を確認するー。
すると、確かに家の中からは、
娘の真梨の声と、その弟・龍太の声がしているー。
「ーーお父さんーあれ…誰なの?」
真梨が不安そうに言うー。
そんな言葉に父は”いやー…わからないー”と、
混乱しながらも
「とにかく一緒に家に入ろう」と、
真梨と共に家の中に入り、
「ただいま」と、いつものように
家の中に向かって声をかけたー
「ーーーー!」
リビングにいた”もう一人の真梨”と、
真梨の弟・龍太、そして母親が
驚いたような表情を浮かべたー
「ーーえ…あなた、さっきのー」
”もう一人の真梨”が表情を歪めるー
母と弟は、放心状態で驚いているー。
「ーーお母さん!龍太!それ、わたしじゃない!」
真梨は指を指しながら叫ぶー。
そう言われた”もう一人の真梨”は、
驚いたような表情を浮かべていたものの、
やがて、「いい加減にして下さい!」と、
感情的になって言葉を口にしたー。
父も、母も、龍太も、二人の真梨を見つめながら困惑しているー。
”もう一人の真梨”は、
そのまま言葉を続けるー
「さっきから、勝手に玄関開けたり、
わたしについてきたりー
何なんですか?」
”もう一人の真梨”の言葉に、
真梨は反論するー
「あなたこそ何なの!?
勝手にわたしのフリをしてわたしの家に入ってー!
何考えてるの!?」
真梨が叫ぶー。
そして、真梨は思うー
”わたしを見ても、そんなに驚いている様子がないー”
とー。
真梨は最初に”既に帰宅していたもう一人のわたし”を見た時に、
かなりの衝撃を受けたー。
しかし、”もう一人の真梨”は、
さっき外出中に会話した際もそうだったけれど、
それほど驚いているような印象を、真梨は感じることができなかったー
つまりー
”もう一人の真梨”は、
”自分がもう一人いることを理解しているー”
そう、考えたー
「ー何が目的なの?あなたは誰なの?」
真梨が”もう一人の真梨”に対して言うと、
「ーーいい加減にして!」と、”もう一人の真梨”が
乱暴に机を叩いたー。
「ーー姉さんー落ち着いて」
弟の龍太が”もう一人の真梨”に対して言うー。
真梨は「龍太!その人、”姉さん”じゃないよ!」と、
慌てて口を挟むー
だがー
家族からすれば、混乱してしまう気持ちも分かるー。
そこで真梨は
”じゃあ”と、ある提案をしたー
「ーお母さん、わたしに誕生日とか血液型とか、
質問してみてー」
真梨の言葉に、母は「え?」と首を傾げるー
”もう一人の真梨”が表情を歪めるー。
もう一人の真梨はさっき、
街で誕生日と血液型を確認した際に、
”答えられない”と言っていたー。
要するに、知らないのだー。
「ー偽物は、誕生日とか、血液型とか
そういうの、答えられないはずでしょ?」
真梨が言うと、
龍太は「あっ!確かに!」と頷くー。
母も、そんな龍太の反応に「それもそうねー」と言うと、
父が二人を見つめる中、弟の龍太が
質問を始めたー。
「誕生日はー?」
その質問に、二人の真梨が顔を見合わせるー。
”一人が答えたあとに、もう一人がその答えをマネして答える”
それが起きることを、お互いに警戒しているのかもしれないー
それを察した龍太が「じゃあ、誕生日はそっちの姉さんがー」と、
困惑しながら、真梨のほうを指差したー
「ーー4月18日ー」
真梨が言うー。
龍太は「おっ!ちゃんと合ってる!」と、笑うー。
「ー当たり前でしょ」
真梨がそう言うと、もう一人の真梨は表情を歪めたー。
「ー血液型は?」
龍太はそう言いながら、”そっちの姉さん”と、
”もう一人の真梨”のほうを指差したー。
父と母は、困惑した様子で二人を見つめながら
何やら小声で話をしているー
”どういうことなの?”
”どっちかが偽物ってこと?”
そんな、母の声が聞こえてくるー。
「ーーーー」
”もう一人の真梨”は、少し間を置いてから
小さく深呼吸すると、
ようやく質問された”血液型”を答えたー
「ーーO型」
とー。
「ーー合ってるなぁ…」
龍太はそう呟くー。
「ーーえ」
真梨は表情を曇らせながら
先に帰宅していた謎の”もう一人の真梨”のほうを見つめるー。
「ーな、なんでわかるのー?」
真梨が言うと、”もう一人の真梨”は
「ーー自分の血液型だから」と、答えるー。
「ーそれより、わたしの誕生日、何で知ってるのー?」
”もう一人の真梨”に逆に質問されて
真梨はカチンとすると、
「血液型なんて4択だし、AB型は少ないし、
あてずっぽうでしょ!?」と、言い放つー。
それでも”もう一人の真梨”は正体を見せようとはせずに、
弟の龍太に対して、”質問を続けて”と、声をかけたー。
「う、うんー」
龍太は少し戸惑いながら、それぞれの真梨に対して
順番に質問を続けていくー。
高校の担任の先生の名前ー
身長ー
好きな食べ物ー
嫌いな食べ物ー
友達の名前ー
所属している部活ー
色々なことを、それぞれの真梨に
順番に質問していくー
けれどー
”もう一人の真梨”も、
その全ての質問に正確に答えていくー。
「じゃあー…移動教室の行先はー?」
小学校時代の移動教室の行先を聞いてくる
弟の龍太ー。
母親は、”警察に通報したほうがいいんじゃー?”と、
父親に対して話をしているー。
父も困惑しながら、警察への連絡も視野に入れているようだー。
「ーーー(あれ?)」
真梨は、表情を歪めたー。
最悪のタイミングでー
小学生時代に自分が訪れた移動教室の行先を
忘れてしまったー
いやー
正式に言えば、どんな場所だったかは覚えているー
だが、名前がどうしても思い出せないー
「ーーー」
真梨は、”もう一人の真梨”のほうを見つめるー。
”こんな時にど忘れしちゃうなんて…!もう最悪…!”
このままだと、自分が偽物扱いされて、
偽物にわたしの生活が奪われちゃう…!と焦りを感じるー。
焦りを感じると、さらに思い出せなくなるー。
「ーどうしたの?」
”もう一人の真梨”が笑みを浮かべるー。
勝ち誇ったような表情にも見えるー
弟の龍太、そして両親も、
”小学生時代の移動教室の行先”を答えることができない
真梨のほうを疑いの表情で見ているー
”もう一人の真梨”の答えは完璧だー。
ほとんどの質問に即答しているー。
一方で、真梨のほうは
時々記憶を呼び起こすのに時間が掛かっているー。
さらに、最悪なことに今、質問されている
”小学生時代の移動教室の行先”を、答えることが
できていないー。
「ーー(あっちがおかしいのよーまるでわたしの記憶を
正確に丸暗記しているかのようにすぐに答えてー)」
真梨はそんな風に思うー。
そう、”もう一人の真梨”は完璧すぎるのだー。
まるで、何かをカンニングしているかのように、
”人間らしさ”を感じないー。
どうしても、移動教室の行先が
分からなかった真梨は
「ーーき、急に忘れちゃったー」と、苦笑いするー。
「ーーー!」
龍太も、両親も、その答えに唖然とするー。
「ーや、やっぱ、こいつが偽物だよ!」
龍太が真梨を指さすー。
「ーそうに決まってるでしょ!」
もう一人の真梨が言うー。
「ーー…ち、ちがっ!
みんな、おかしいと思わないの?
わたしの偽物、明らかにすぐに質問に回答したりしておかしいでしょ!?
ふつう、過去のこととか、ある程度忘れてたりしない?」
真梨は”もう一人の真梨”を指さしながら
必死に叫ぶー。
「ーでもなぁ…」
弟の龍太が、二人の真梨を見比べるー。
「ーそ、それにさっきも急に外出したりしてたし!」
真梨が”もう一人の真梨”を指さしながら叫ぶー。
普段、真梨は夜に外出することはほとんどないー。
それが、さっき、”もう一人の真梨”は夜の街に出かけて行って、
”何か”をしていたー
「それはー、真梨にお願いしたの」
母親が口を挟むー
「え…」
真梨が言うと、弟の龍太が続けたー
「ー俺がちょっと風邪気味でさー。
風邪薬がちょうどうちになかったから、
姉さんが買ってきてくれたんだー」
龍太の言葉に、”もう一人の真梨”は頷くー。
「ーーだ、騙されてる!みんな、騙されてる!」
真梨が叫ぶー
”偽物扱いされる恐怖”に、途端に襲われるー。
「ーいい加減にして!」
”もう一人の真梨”が叫ぶー。
「ーあなたはいったい誰なの!?」
もう一人の真梨の言葉に、真梨は「あんたこそ!」と
怒りの形相で叫び返すー。
「ーーけ、警察を呼びましょ」
母親がそう呟くと、父親も「そうだな」と頷くー
真梨は”もう一人の真梨”のほうを怒りの形相で睨みつけると
「ーーー何を企んでるの!
こんなことして…何を!」と、必死に叫ぶー
けれどー
”もう一人の真梨”は答えてくれなかったー
「ーーー企むって… それはこっちのセリフなんだけど!」
”もう一人の真梨”は、あくまでも
真梨のフリをやめるつもりがないらしいー。
”どうして…どうしてこんなことするのー?!”
真梨は、そう思いながら、弟の龍太のほうを見つめるー。
だが、弟の龍太も”もう一人の真梨”のほうを
本物だと思っているらしくー、
そのまま”もう一人の真梨”の方に近付くー
そういえばー
両親にも、弟の龍太にも
今日はなんだか”違和感”を感じるー
「ーみんなに、何かしたの!?」
真梨が怒りの形相で叫ぶー
けれどー
”もう一人の真梨”は、少し呆れ笑いを浮かべながら
「何かってなに!?」と、聞き返してきたー
警察に通報されてしまう真梨ー。
真梨は、たまらず家の中から飛び出して、
何とかこの状況を打開しようと、必死に
頭を回転させるのだったー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
”もう一人の真梨”の目的とは…!?
次回が最終回デス~!
今日もありがとうございました~!
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