<他者変身>帰宅したらわたしがいた①~混乱~

ごく普通の女子高生ー。

しかし、ある日”いつものように”帰宅すると、
そこには、”既に”自分がいて、
両親や弟と、いつも通り”雑談”をしていたー…!?

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高校2年生の宮川 真梨(みやかわ まり)は、
いつものように、学校を終えて帰宅していたー。

友達と雑談しながら帰り道を歩き、
いつものように友達と別れて
いつものように家の前までやってきたー。

だがー
家の前までやってきたその時ー
真梨は異変を感じたー。

「ーーえ?」

”き、急に驚かすなよ~!姉さん”

「ーーーーえ???」

真梨は、家の中から聞こえて来た
弟・龍太(りゅうた)のそんな声に
首を傾げたー。

「ーーー…?」
首を傾げながらも玄関の扉に手を掛けようとする真梨ー。

真梨が首を傾げたのも無理はないー。
宮川家に、子供は二人しかいない。
長女の麻梨と、弟の龍太の二人だー。

しかし、その真梨が帰宅していないのに、
弟の龍太が家の中で”姉さん”と言っているー。

「ーーー…どういうこと?」
真梨は苦笑いしながら首を傾げるー。

「ーーあれかな…?ゲームとか、アニメのキャラを
 姉さんって呼んでるのかなー?」

そんなことを思いながら
”それにしても龍太ってば、声が大きいなぁ”と笑うー。

弟の龍太は、あわてんぼうな性格で無駄に声が大きいー。
いつも、家の前にやってくると、龍太の声が
良く聞こえるー。

”ちょ!姉さん!急にここで着替えるなよ!”

玄関の扉を開こうとしたその時ー
今度はそんな声が聞こえたー。

「ーーーーーえ…」
再び困惑する真梨。

まるで”家の中で龍太が、真梨と会話しているかのような”
声が聞こえてくるのだー。

「わたし…まだ帰宅してないけどー…?」

真梨は今、まだ玄関の前に立っているー
家の中には入っていないー。

それなのに、家の中から聞こえてくる弟・龍太の
”姉さん”と呼ぶ声ー。

「ー姉さんはここにいますけど…?」
一人、真梨はそんなツッコミを入れると、
やがて、家の中から別の声が聞こえて来たー

”ごめんごめんーでも、別に姉弟なんだし、いいでしょ~?”

とー。

「ーーーー!?!?!?!?!?!?」
聞こえてきたのはー
母親の声とは違う、女の声ー。

しかも、その声は、”真梨の声”そっくりだったー。

”自分の声を第3者として聞くことはできない”
だからー
実際のところ、”本当に自分の声”だったかは分からないー

けど、
家の中から
まるで”自分の声”が聞こえて来たような、
そんな不気味な感覚を覚えたー。

”そ、そんなわけないよねー?”

真梨はここにいる。
家の中から自分の声が聞こえてくるなどありえないのだー。

「ーもしかして、龍太、彼女でもできたのかな?
 彼女さんのことを”姉さん”と呼んでるとかー」

そう思いながら、ついに玄関の扉を開けた真梨は、
信じられないものを目にしたー。

自分と同じ顔ー
自分と同じ髪ー
自分と同じ制服ー
自分と同じ身体ー

そう、自分自身が、家の中にいたのだー

「ーーーえ」
唖然とする真梨ー

家の中にいた真梨が、帰宅した真梨に気付くー。

「ーーー!!!!!!」
真梨は、驚いて思わず家の扉を閉めてしまったー。

「ーーー……………」
”え…なんで…!?なんで、わたしがいるのー!?”

家の中に”もう一人、自分がいたー”
意味が分からないー

そんな風に思っていると

”今、誰か来た?”
と、弟の龍太の声が聞こえたー。

”うんー…ちょっと見て来る~!”
そんな声がー
真梨自身の声が聞こえてくるー。

「ーーー!」
真梨は慌てて近くの物陰に身を隠したー。

見つかってはいけない気がして、
咄嗟に身を隠したー。

ガチャ、と玄関の扉が開く音がして、
”もう一人の真梨”が姿を現すー

「ーーーー…あの~~~~~」
家の中から出て来た”もう一人の真梨”が声をあげるー。

「ーー何か、御用ですか?」
そんな真梨の声は、少し恐怖を感じているかのような声だったー

”何か御用ですかって、それわたしのセリフなんだけどー”
物陰に身を隠している真梨は
”先に帰宅していたわたしそっくりの謎の人物”のほうを
物陰から見つめながら、困惑の表情を浮かべたー。

やがてー
家から出て来た真梨は「ーー誰だったんだろう…」と
不安そうに呟いて、そのまま家の中に戻って行ったー

”誰だったんだろう…は、こっちのセリフなんだけど…”
不満そうに真梨は心の中でそう呟くと
”え…でも、どうしてわたしがー”と、困惑した様子で呟くー。

「ーーー…どういうこと…?」
何故、家の中に既に”自分”がいるのかー。

そんな風に思いながら、家の敷地内に再び入り、
忍び足で、家の中が見える場所にまで向かうー。

「ーーー………」
”なんで、自分の家なのに、こんな風にしないといけないのー?”

そう、思いながら真梨がそ~っと、
家の中を覗くとー…

弟の龍太と、”真梨”が家の中で雑談を
している光景が見えたー

「ーーーー」

やっぱりー
”正真正銘の真梨”だったー。

自分のスマホを手に、弟の龍太と雑談している真梨ー。
何かをスマホの画面で見せているようで、
弟の龍太はそれを見て笑っているー

”ーーちょっと!それ、わたしじゃないんだけどー”
真梨はそう言いながらも
”何者かが、わたしの姿で、先に家に帰宅した”
ことを悟り、混乱の表情を浮かべるー。

”何が起きてるのー?”

現実とは思えないような奇妙な光景ー
頭の中でどんなに、今、この状況のことを考えてみても、
その”答え”は分からないままだったー。

何が起きているのかさっぱり理解できないー。

”あ、姉さん!そういえばー”
龍太がそんな風に言いながら、”真梨”を家の
窓から見えない場所へと連れていくー

「ーーー…い…い…意味が分からない…」
困惑の真梨ー。

一瞬、すぐにそのまま家の中に
入ろうと思ったものの、
”わたしが二人、いきなりいたら龍太も、お母さんも
 困っちゃうよね…”と、心の中で思いながら
なんとか、”もう一人の自分”と、1対1で会話できないかどうかを
考えるー。

「ーーーもう…」
家の庭でコソコソしていたからか、
まだ新品同然の制服に汚れがついたのを気にする真梨ー。

「ーーーーーーーー」
真梨は、一旦自分の家の敷地から出て、
どうするべきかを考えるー

”わたしの偽物の目的が分からないー”

真梨は、そんなことを考えながら、
その狙いを考えるー

”そもそも、あの人は誰ー…?”

”真梨と同じ身体、同じ声ー”
他人にできる芸当ではないー。

直接近くで話をしたわけではないものの、
遠目から見ても
”明らかに自分”であると分かるぐらいに、
家の中にいた真梨は、真梨そっくりだったー。

だからこそ、弟の龍太も、何の違和感も
感じずに、あんな風に話をしていたのだろうー。

「ーーーーー」
家の中に突入して、”あなたは誰!?”と叫ぶ方法も
もう一度考えてみるー。

だが、さっき頭の中で考えた通り、それをするのは
色々な意味でリスクが高いー。

弟の龍太や母親を混乱させてしまうことになるし、
もし家の中にいる真梨の目的が
悪意のあるものだった場合、
龍太や母が人質にされたりして、
その身に危険が及ぶ可能性もあるー。

「ーーお父さんが帰ってくればー…」
真梨は、そう考えるー

普段であれば父はまだ仕事中で、
これから帰って来るー。
家の中の雰囲気的に、まだ父は帰宅していなかったため、
このまま父が帰宅するのをこの周辺で待ってー、
父が帰宅したら、家の中に入る前に
父を捕まえて”家の中にわたしの偽物がいるの”と、
伝えるー…

「ーーうん…まずはお父さんを待ってー」
そう思ったその時だったー

「じゃあ、ちょっと行ってくるね~!」

「ー!?」
その声に、真梨は自分の家のほうを見つめたー。

家の中から、”真梨”が出て来た

「ーー(どこに行くつもりなのー?)」
家の中から出て来た真梨は、少し周囲をキョロキョロしながら
街の方に向かって歩いていくー

「ーー(…偽物のわたしと1:1で話せるチャンス…!)」
父親の帰宅をこの場で待とうと思っていた真梨だったものの、
”自分と全く同じ姿の謎の人物”が予想外に外出したことで、
計画を変更しー、
外出中の”もうひとりのわたし”に声を掛けることにしたー。

家から出て来た真梨に声をかけるタイミングを伺うー。

そして、意を決して、人通りが程よい場所で声をかけたー。

”もし”
自分そっくりの謎の人物が、
”何かしてきたら”ー

そんなことも考えてある程度人通りの多い場所で
声をかけたのだー。

「ーーあの…!」
真梨が言うと、家から出て来た真梨が振り返るー

「ーー…あ…あの…
 あなたはー…誰ですか?」
真梨が戸惑いながら言うと、
先に帰宅していたもう一人の真梨が
戸惑いながら「え…」と、呟くー

「ー宮川…真梨ですけどー」
その真梨は、真梨と同じ名前を名乗ったー

「ーーーち…ちょっと、ふざけないでください!」
その言葉を聞いて、真梨は怒りを感じたー

”宮川 真梨”は、自分の名前だー。
その名前を誰だか知らない人間が
勝手に名乗り、しかも勝手に先に家に帰宅していたー

「ー宮川真梨はわたしです!あなたはいったい誰なんですか?
 わたしの家に勝手に帰宅して、何考えてるんですか!?」

真梨が叫ぶと、
もう一人の真梨は困惑したような表情を浮かべるー

「ーあ…あの…なんのことだか、分からないですけどー」
とー。

あくまでもとぼける気のようだー。

真梨は、仕方がなく、
”誕生日とか、血液型なら、知られても大丈夫だよね”
と、心の中で思いながら
「ーー…本当にあなたがわたしだって言うなら、
 わたしの誕生日と血液型、ちゃんと言えるの?」と
うんざりした様子で質問するー

もう一人の真梨は表情を歪めるー

「ー答えられません」

その言葉に、
真梨は「ーふ~ん…じゃあ、やっぱり偽物だって認めるんだ?」
と、怒りを込めて言い放つー。

「ーー……何が目的なの?」
真梨は尋ねるー。

周囲には帰宅中のサラリーマンや、
夜の街を楽しむ若者らが、
そんな二人の真梨には気づかずに、
何事もなく、歩いているー。

この環境であれば、”もう一人の真梨”が急に
襲い掛かってきたりしても、
真梨の身の安全も確保することができるー

「目的ってー」
もう一人の真梨は、なおもとぼけたような表情を浮かべるー

「大体わたし、普段、こんな時間に外出しないしー!
 どこへ行くつもりだったの!?」

真梨が言い放つと、もう一人の真梨は表情を曇らせながら
「ーあなたこそ、何が目的なんですか?」
と、聞き返してきたー。

「ーちょっと!質問に質問を返さないでよ!」
真梨は怒りを感じながらそう叫ぶと、
もう一人の真梨は言葉を続けたー

「ーー急いでるので、失礼しますー」
とー。

頭を下げて立ち去ろうとするもう一人の真梨ー。

「ーちょっと!」
真梨は怒りの声を上げたものの、
もう一人の真梨は、スマホを確認して、そのまま
足早に人混みの中へと消えていったー。

”わたしの姿で勝手なことしないでー”
真梨は、そんな風に思いながら、
すぐに人混みの中に身を投じて、
”もう一人の真梨”を探したー。

だがー
結局、もう一人の真梨を見つけることはできないままー。

「はぁ…はぁ…はぁ…」
真梨は、疲れ果てた様子で荒い息をすると
「ーーそうだ!」と、慌てて家の方向に引き返すー。

”自分の偽物”が帰宅する前に、先に帰宅してしまえば、
色々と有利になるはずー

そう思って、真梨は家に向かって走り始めたのだったー

②へ続く

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コメント

いつも通り普通に生活していたのに、
帰宅したら、既に自分がいた…

そんな、恐ろしい物語デス~!

どんな結末を迎えるのか、ぜひ見届けて下さいネ~!

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