<憑依>優等生に変貌した娘②~輝く日常~

不登校で引きこもりだった長女が、
突然、学校に通い始めたー。

あまりにも急な娘の変化を前に、家族は…?

・・・・・・・・・・・・・・・

涼香が学校に通い始めたー。

父・孝雄と、母・結衣は
ずっと不登校で引きこもりだった長女・涼香の変化を
喜びつつも、戸惑いも感じていたー

「急に、どうしたのかしら…?」
結衣が不安そうに呟くー。

「ーまぁ…何らかの心境の変化があったんじゃないかー。
 涼香も、難しい年頃なわけだし」

孝雄が言うー。

父・孝雄は穏やかで優しい性格であるものの、
反面、物事を強く言うことができない頼りなさもあり、
涼香が不登校になってしまったあとも、
涼香に優しいことばかり口にしていて、
問題を解決することはできなかったー。

「ーーでも、また急に不登校になったらー」
結衣の不安そうな言葉ー

「ー…そうだな…けど、こればっかりはしばらく様子を見るしかないー。」
孝雄はそれだけ言うと、自分の言葉に自分で納得したかのように、
静かに頷いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・

「ーそっかー。妹と同じ学年なのおかしいと思ったけどー
 留年してるのか」

学校で、昼休みまで授業を終えた涼香は、
女子トイレの中でそう呟いたー。

妹の紗枝と通う高校は違うものの、
1学年上の姉の涼香は、高校に入ってから
比較的早い段階で不登校になっていたために、
進級することが出来ずに、留年していたー。

つまり、今は2年目の”高校1年生”だったー。

女子トイレの鏡を見つめる涼香ー。
”昨日”見た本来の涼香の表情とはまるで違う笑みー。

”中身が変わるだけで、人間はこんなにも変わってしまうのか”と、
自分で憑依しておきながら、彼は涼香の変化に、驚きを隠せないー。

女子トイレの中に入るのはー
何だかとてもいけないことをしているような気がしたが、
今は涼香という女子高生に憑依しているわけだし、
寧ろ、男子トイレの方に入ってしまったら問題になるー。

”不登校の子”に憑依するのは確かにリスクはあったー。

だが、”事前の情報”で、涼香が不登校になった理由は
”いじめ”などではない、ということは確認していたし、
そもそも、男が涼香に憑依するために利用したサービスは
”身体マッチングシステム”と呼ばれるサービスで、
相手の”同意”が無ければ、憑依することができないー。

憑依の条件や環境を総合的に判断した結果、
男は、涼香に憑依したのだー。

少なくともー
”見た目”は、とても可愛いし、
涼香に憑依した男が経験してきたような地獄を
この身体で味わうことはないー

頭が良くてもー
コミュニケーション能力があっても、
”容姿”がそのプラスを打ち消してしまうー。

どんなに努力をしても、
周囲からの嫌がらせで、人は自信を喪失し、
本来の能力を生かすこともできなくなってしまうー。

「ー僕は今度こそ、人間らしい生活を送るんだー」
涼香はそう呟くと、静かに笑みを浮かべて、
そのままトイレの外へと歩き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーただいま~」
涼香が帰宅するー。

母の結衣が心配そうに
「大丈夫だった?」と、涼香に確認するー。

「ーうん!全然!
 久しぶりの学校、案外楽しかったしー!
 あ、今まで心配かけてごめんね!

 これからはわたし、頑張るから!」

”まるで別人”のような明るい雰囲気の涼香に
母・結衣は戸惑いながらも、
安堵の溜息を吐いたー。

正直ーこれ以上、改善されないのであれば
高校も退学するしかないー、
そんな風に学校側からも言われていたー。

無駄に学費だけが増えていくのも事実だったー。

だがー
”2度目の高校1年生”の年が始まってから
まだ早い段階で涼香がやる気を取り戻してくれたのは
本当に良かったー

今ならまだ、退学しなくて済むかもしれないー。

「ーー今まで迷惑かけてごめんね」
涼香が申し訳なさそうに言うと、母の結衣は、
「ううんー。涼香が元気になってよかった」と、微笑むー。

涼香も微笑んで、
しばらく雑談を交わすと、そのまま部屋のある2階に向かうー。

”引きこもり”であった涼香の身体を乗っ取ったことで、
”家族との関係”も色々とやりやすかったー。

普段から家族ともほとんど口を利いてなかったみたいだから
”この前、こう言ったよね?”みたいなことも起きないー。

引きこもりの涼香は、彼にとって
とても”良い身体”だったのだー。

「ーーお姉ちゃんー…久しぶりの学校、どうだった?」
廊下で妹の紗枝とすれ違うー。

「ーーあ、うん!楽しかったよ!」
涼香が明るく答えると、紗枝は「でもどうして急に?」と、
首を傾げるー。

「ーう~ん…引きこもってて色々考えてたんだけどー
 やっぱり今のままじゃいけないなーって…

 だから…そろそろ、心機一転して頑張ろうって思ってー」

憑依されている涼香がそんな風に言うと、
紗枝は「ふ~ん…そんなものなんだね」と、笑うー。

「でも、お姉ちゃんが元気になって本当によかった!
 わたしもずっと心配してたから!」
可愛い妹の言葉に、涼香は「うん。ありがとうー」と、
お礼の言葉を口にするー

”この妹も良い子みたいだし、いい身体に憑依したなぁ”
涼香はそんな風に思いながら自分の部屋の中に入って行くー。

姉の涼香が自分の部屋の中に入って行ったのを確認すると
紗枝は、その顔から突然笑顔を消して、静かに呟いたー。

「ーどうせ1週間もしないうちにまた不登校でしょ?」
馬鹿にしたような笑みを浮かべて、そう吐き捨てた紗枝は、
心から姉の涼香を見下して、鼻で笑うと、
そのまま自分の部屋の中へと戻って行ったー。

しかしー

「ーーあ、お母さん!手伝うよ!」

1週間が経過しても、涼香は不登校に戻るどころか、
先日の日曜日には、早速友達と買い物に出かけてきていたー。

父・孝雄も、母・結衣も、
”娘がいきなり友達を連れて来た”という事実にとても驚き、
そして、喜んでいたー。

だがー妹の紗枝は内心では不満を感じていたー

”何なの急にー?
 1年以上も引きこもってたのにーどういうつもり?
 急に明るくなったりして、ホントキモイー”

紗枝はそう思いながらも、
「お姉ちゃんってば、本当に急に元気になっちゃって~!別人みたい」と
笑いながら涼香に声を掛けるー。

涼香はそんな紗枝のほうを見て
「これからはずっと引きこもってた分、頑張らないと!」と、
紗枝に対して笑顔を向けたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー」

夜ー。
自分の部屋で熱心に勉強する涼香ー。

涼香に憑依した男は元々勉強も好きで、
成績もよかったー。

だが、高校生の頃には
容姿に関する過酷ないじめを受け続けたことにより、
精神的にも病んでしまい、
勉強もなかなか手につかず、
最終的にはそれが原因で、成績も下落してしまったー。

だが、今回は違うー。
今の彼は、”可愛い女の子”ー。
少なくとももう、容姿でいじめられることはないー。

「ーーーー……よし」
涼香は問題集の問題を解きながら
嬉しそうに笑みを浮かべたー

とても、充実しているー

そんな日々を、涼香に憑依した男は、今日も送っていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー涼香、最近ほんと頑張ってるな~えらいぞ」
「涼香、すごいじゃないー」

学校の中間テストの結果が戻ってきたー。

涼香は90点以上を連発し、
数学では100点を獲得していたー。

「ーーお姉ちゃん…すごい!」
妹の紗枝も感心した様子で、
姉のテストの成績を見つめるー。

「ー久しぶりだったから、いつもよりいっぱい勉強しちゃったー」
涼香は少し照れくさそうに言うー。

涼香のことをほめる両親ー。

「ーーーー」
だが、妹の紗枝は、そんな両親のことも
面白く思ってなかったー

「ー何あれ!不良がたまにいいことしたら、
 滅茶苦茶褒められるみたいなやつ!

 あんなブスが、わたしより点数いいとか
 あり得ないんだけど!」

部屋に戻った紗枝は、一人、文句を口にするー。

元々、涼香も成績が悪い方ではなかったものの
妹の紗枝は、それ以上の成績を誇っていたー。

紗枝は”内心で不登校の姉を見下して”いて、
不登校になる前も”わたしのほうが成績いいし”と、
言葉にはしなかったものの、どこかで内心、見下していたー。

だがー
男に憑依された涼香は、”紗枝以上の成績”を簡単に
叩きだして見せたー。

紗枝には、それが気に入らなかったー。

さらにー
容姿に対する劣等感も膨れ上がっていたー。

紗枝も十分、世間からすれば”可愛らしい”感じであるものの、
涼香は、”紗枝から見ればもっと可愛らしい”ー。

今までは引きこもり状態で髪もボサボサ、肌もダメージを
受けている状態だったため
”ブス”と内心でバカにしていたものの、それもできなくなってしまったー。

急に登校し始めて、
綺麗になった姉に、劣等感を膨らませていく紗枝ー。

”もう一度、不登校にしてやるー”
紗枝は、歯ぎしりをしながら、自分の部屋で静かにそう呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー好きです」

突然の出来事だったー。
涼香に憑依して、学校に行き初めてから半月ちょっとー。

クラスの男子生徒にいきなり告白されたのだー。

「ーーえ… え… ? そ、それって、告白ー?」
涼香は戸惑いの表情を浮かべながら、
恥ずかしそうに視線を逸らすー。

”う…嘘だろ?僕がこの子に憑依してまだ半月ちょっとなのにー!?”

容姿のことで壮絶ないじめや嫌がらせを受けて来た彼は、
当然、今までの人生で一度も告白などは
されたことはなかったー。

”女子高生らしくするように気を付けて”はいるものの、
性格自体は、大きく変わっていないー。

最もー、
自分の身体だったころは”自分の性格”を表に出すような機会も、
いじめや、嫌がらせによって奪われてはいたけれどー。

それなのにー
”身体が変わる”だけで、たった半月で告白されるなんてー

「ー美少女、強すぎだろー…」

「ーーえっ?」
告白してきた男子・卓(すぐる)は、戸惑ったような表情を浮かべるー。

「ーあぁ、ううんー。なんでもないー」
涼香がそう答えると、卓はドキドキした様子で
返事を待っていたー。

”恋愛”
男は、そんな経験をしてこなかったー。

経験できないことには、人間、興味もなくなるー。
だから、涼香に憑依する頃には、もはや恋愛に興味は
まるでなくなっていたー。

今、改めて考えてみると、”自分の恋愛対象は女性”だった気がするが、
もう、そんなことも忘れてしまったー。

”相手は、男子ー。でもまぁ…奥手そうな子だし、
 付き合ってみるのもいいか…”

「ーー…じ、じゃあ…卓くんのこと、まだそんなに良く知らないけどー…
 わたしで良ければー…」

どう返事をしていいかもわからず、涼香はそんな風に呟くと
卓は、とても嬉しそうに「ありがとう!ありがとう!ありがとう!」と、
何度も何度も、お礼の言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーえぇっ!?お姉ちゃん、彼氏ができたの!?」

家族の前で彼氏ができたことを報告すると、
両親は喜び、妹の紗枝は驚いたー

”すごい!おめでとうお姉ちゃん!”

「ーーチッ…何でわたしより先にー」

紗枝は、心の声と、言葉にする声を間違えて
そう呟くと、
「ーーえ?」と、涼香は表情を曇らせたー。

「ーーーあっ…?えっ!?おめ、おめ、おめでとう!お姉ちゃん!」
紗枝はそんな言葉を口にすると、部屋に戻っていくー。

涼香は、そんな紗枝の後ろ姿を見つめながら
”あの妹…なんか…時々嫌な感じがするんだよな…”と、
涼香に憑依した直後とは異なる印象を
自分の中で受け始めて、不安そうな表情を浮かべたー。

③へ続く

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コメント

不登校だった少女の身体で送る優等生ライフ…!
今のところは、大きなトラブルは起きていないですネ~!

次回が最終回デス~!

憑依<優等生に変貌した娘>
憑依空間NEO

コメント

  1. 匿名 より:

    女の子に憑依した元男に普通に彼氏が出来る展開って珍しいですね。
    大抵の話では男の相手をしたとしても、性的に女の身体を楽しんだりするだけで、恋愛とか、健全に付き合うみたいなのはあんまりないですから。

    それにしても、今のとこは憑依人の新しい人生がうまい具合に行ってますが、性根が腐ってる妹の存在が不穏ですね。

    もう一度不登校にしてやるとか考えてるとこが特に不穏です。もう一度とか言ってるとこがなんか怪しい気もしますしね。受け取り方によっては、既に一回、姉を不登校にすることに関与してるみたいにも聞こえますし。

    というか、猫かぶっていい子ぶるなら、もう少し上手くやったらどうなんだろうと思います。
    なんにしろ、自分勝手で姉を見下してる性格の悪い妹の思い通りになるような結末にはなってほしくないものですね。最終回を楽しみにしてます。

    • 無名 より:

      ありがとうございます~!☆

      不穏な妹の存在…!
      最終回で何が起きるかドキドキですネ…!

      続きはまた明日を楽しみにしていて下さい~!

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