”極悪非道”
そう恐れられる男が、
ある日、突然美少女になってしまったー…!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー兄貴はホント、”極悪人”だよなぁ~」
チャラそうな男が言うと、
鋭い目つきに、見ただけで迫力満点の屈強な男が
煙草を吸いながら
「ーーこの世は強ぇ奴が特をするんだよ」と、笑みを浮かべたー。
その笑みすら、不気味で、子供であれば
震えあがってしまいそうなほどだー。
「ーーははは…ホント、お前は恐ろしいやつだよ」
グラスを拭きながら、別の男が呟くー。
鋭い目つきの男ー、
黒木 岩男(くろき いわお)は、
生まれてすぐに両親が離婚、
その後、母親が再婚し、再婚相手の男と折り合いがつかず、
中学生になってすぐに非行に走ったー。
補導歴もあるし、高校も中退しー、
それからは、街で喧嘩に明け暮れて、
あらゆる悪事をこなしてきたー。
人の命を奪うこと以外は、何でもやってきた、と言ってもいいー。
だが、そんな荒んだ日々を送る中で、仲間もできたー。
数年前、不良に絡まれていた男を、気まぐれで助けた岩男ー。
岩男は、どこのグループにも属さず、
”極悪非道の一匹狼”を貫いていたー。
そんな岩男にとっての初めての仲間が、
その時助けた男ー、
今、岩男のことを”兄貴”としたってる男、甚助(じんすけ)だったー。
そしてー
岩男は今、このバーで寝泊まりしているー。
このバーは、元々岩男が客としてよく訪れていたバーだったが、
ある時、裏社会の組織が、店に絡んできた際に、一人残らず叩き潰し、
さらには、その組織の本拠地に乗り込んでいって、
リーダーもろともボコボコにして、たった一人で組織を壊滅
させてしまったことから、バーの店主から、大層喜ばれて、
今は用心棒兼居候として、甚助と共に、このバーに住み着いているー。
甚助も、岩男も、バーの店主である酒井(さかい)を手伝うような
形になっているのだー。
酒井は過去を語らない男だが、
顔に大きな傷があることから、
彼もまた、それなりの”修羅場”を潜り抜けてきたであろう男なのは、
何も聞かずとも、理解できるー。
「ーーそういや兄貴、例の女はどうしたんですか?」
甚助が笑いながら聞くー。
「ん?あぁ、あいつなら、この前、ヤリまくったあとに捨ててやったよ」
岩男が言うー。
岩男は”善人”ではないー。
”極悪人”だー。
甚助を助けたのも気まぐれだし、
バーを助けたのも”俺の飲む場所を汚すな”という理由であり、
人助けではないー。
多くの人間が岩男に泣かされてきたし、
警察が本気で岩男を調べれば岩男は確実に
刑務所行きだー。
街中で一般人をボコボコにしたこともあるし、
詐欺まがいの行為を働いたこともあるしー、
法律上認められていないようなモノを使ったこともあるー。
”人殺し”以外は、一通り経験した、と言ってもいいー
「マジっすか~?俺もあの子とヤリたかったなぁ~」
甚助が言うと、岩男は「今度、適当な女、紹介してやるよ」と
愛想無く呟くー。
「ーーーマスター」
岩男は、酒井のことを”マスター”と呼んで慕っているー。
中学時代、最初に家を飛び出した頃から、この店に通っていたため、
岩男にとって酒井は父親的存在でもあるのだー。
「ーーん?」
酒井がグラスを拭きながら言うと、
岩男は現金の入った封筒を取り出して、
それを酒井に手渡したー。
「ーはは、岩男、こりゃ、どこから持ってきた金だ?」
酒井が言うと、岩男は「その辺歩いてたチンピラをボコボコにしてやったんだ」と、
だけ呟いて、金を酒井に渡したー。
酒井という男も、それなりの悪人であることから、
”金の出所”など気にしないー。
ただの”バー”のフリをして、このお店の”裏口では、
時折非合法の”カジノ”が開かれているー。
そしてー
ここで振る舞われている”裏メニュー”には、
法律上問題のあるようなものも振る舞われていて、
岩男もよく”酒井の作るスペシャルワイン”を楽しんでいるー。
ここにいる三人は、全員”悪人”なのだー。
「ーそれにしても、銀狼(ぎんろう)のやつら、兄貴に最近手を出して来ませんね?」
甚助が言うー。
”銀狼”とは、
ここら一帯を仕切っている裏社会の集団の名前で、
危険人物も多数所属している組織だー。
最近では、勢力が全盛期よりも弱まりつつあるものの、
それでもまだ、大規模組織であることに変わりはなかったー。
だがー
”一匹狼の極悪人”である岩男に絡んだ”銀狼”は手痛い反撃を受けたー。
銀狼に街中で絡まれた岩男は、その場で銀狼の下っ端3人を
ボコボコにした挙句、銀狼の幹部の居場所を突き止め、
その幹部の女を寝取った挙句に、その幹部を銀狼の下っ端の前で
徹底的に痛めつけて見せたのだー
銀狼の幹部の男は、あまりの恐怖に岩男の前で小便を漏らしてしまったー。
当然、銀狼側も黙ってはいなかったー。
岩男を拉致し、”銀の処刑場”と呼ばれる場所で、殺そうとしたのだがー
それも返り討ちに遭い、逆にその場にいた銀狼の別の幹部もろとも
”はんごろし”にされてしまったー。
いつしかー、岩男は”極悪非道の男”と恐れられて
銀狼も手出しをしなくなっていたのだー。
「どうせ人生一度きりー
なら楽しもうぜー」
岩男はそう呟くと、時計を確認して、
「じゃあ俺はそろそろ寝るわ」と、手を挙げて
そのままお店の2階へと上がっていったー
「へへへ…兄貴は誰にも負けねぇや!」
嬉しそうに言う甚助ー。
マスターの酒井もグラスを拭きながら
「ーまさに”一匹狼”だよー。昔からあいつはー」
と、少し笑いながら呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「ーーーー!?!?!?!?!?!?」
目を覚ました岩男は、表情を歪めていたー。
「ーーーーあ?????」
朝ー
目を覚ました瞬間に、岩男は”これまでの人生で感じたことのないような違和感”を
感じたー。
首周りのいつもと違う感覚ー
自分の手ー
そして、声ー
「ーーーあ…な、なんだぁ…?」
岩男がそう呟きながら、
慌てて近くにあったスマホを手にして、
”自分”を確認するとー
「ーー!?!?!?!?!?」
そこにはー
見たこともないような”美少女”がいたー
「ー!?」
慌てて振り返る岩男ー。
スマホに”美少女”が反射しているー。
それはすなわち、自分の部屋に”見知らぬ美少女がいる”
と、いうことを意味しているー
「だ…誰だ!?」
そう叫びながら部屋の中を見渡すが、
美少女の姿はないー。
「ーー…くそっ!喉がおかしいー」
少女のような高い声が出ることに違和感を感じながら、
ふと、自分の足元のほうを見つめるとー
「ーうぉぉぉぉっ!?!?!?」
思わず、変な声が出たー。
眼前には、謎の膨らみが2つー。
いや、謎ではないー。
しかし、岩男にはあるはずのないそれが、
そこにあったのだー。
「ーな…な、、なんだこれは!?」
慌ててその膨らみー、胸を触ると、
今までに感じたことのないような、不思議な感覚が
身体中に伝わってくるー。
「ーー」
岩男は、続けて、ぶかぶかのジャージの上から
股間のあたりに手を触れてみるー
「ーーな、、な、、な、、ね、、ねぇぞ!!?!?」
そこには、男であることを象徴する”ソレ”がなくなっていたー。
「ーあ、あり得ねぇ…!?何が起きたー?」
岩男は、”自分が女”になってしまっていることを
ようやく確信して、困惑の声を上げるー。
だがー
何度か深呼吸して、ようやく落ち着いた様子を見せた岩男は
静かに呟いたー。
「なるほど…」
とー。
”夢かー”
急に冷静さを取り戻した岩男は
「自分が女になる夢を見るなんて、ばかばかしいー」と、呟くと
鼻で自分の見ている”夢”を笑って、
そのまま眠りについたー。
「ーーーーーー」
「ーーーーーー」
「ーーーーー」
数分後ーー
「ーー夢じゃねぇ!!!!」
布団をがばっと跳ね除けながらそう叫ぶ岩男ー。
しかも、その声はとても可愛らしい声で、
いつもの岩男のような”迫力”は、どこにもなかったー。
”ーー目が覚めましたか”
「ーーア?」
岩男が言うと、そこにはーー
「ーな、な、な、な、なんだお前は!?」
岩男は思わず悲鳴に似た叫び声をあげたー。
”何も怖い物はない極悪非道の男”
そんな、岩男でも悲鳴を上げるほどのできごとー。
それはー
目の前に”優しい岩男”みたいな容姿をした、
白い翼を持つ天使のようなものがいたのだー。
「ーーー私は、あなた自身です。」
「ーーな、、な、、なんだと!??!!?」
岩男が声を上げると
”優しい岩男”は、慈悲深い笑みを浮かべたー
「ーき、気持ちわりぃな!俺の姿で微笑むんじゃねぇ!」
岩男が、美少女の声でそう叫ぶと、
”優しい岩男”が静かにそう呟いたー。
「ーーあなたは今日から、美少女として生きていくのですー
”優しい岩男”が、そう呟くと、
美少女になった岩男は「ふ、ふ、ふ、ふざけるなよ!?」と大声で叫ぶー。
「ーその姿で、見つめ直すのですー。
己をー」
”優しい岩男”の言葉に、岩男は「ど、ど、どういうことなんだ!?」と
大声で叫ぶー。
「ーーあなたは、内なる欲望をさらけ出しているに過ぎないのですー。
今のその姿は、あなたの願望が具現化したーーー」
”兄貴”
大声と共に、部屋の扉が開き、
岩男が、部屋に入ってきた弟分の甚助のほうを見つめるー。
「ーーーへ?」
甚助が、驚くー。
と、同時に岩男は”優しい岩男”がいた方向を見つめるが、
既に”優しい岩男”の姿は消えていたー。
「あ、、あ、、兄貴の女…し、失礼しやした!」
甚助が慌てて扉を閉めようとするー。
「ーおい!ちょっと待て!」
岩男が美少女の声で叫ぶと、
甚助は「あ、、え、、は、、はい…?」と、戸惑いながら
再び部屋に入ってくるー。
「ーーあ、、あ、、あの、俺は、え~っとですね、
兄貴の弟分の甚助とー」
「ーんなこと知ってるよ」
岩男がそう言うと、甚助は「え、、あ、、兄貴のジャージ…?」と、
戸惑うー。
”ようやく気付いたか”と、そう思いながら
ぶかぶかのジャージ姿でどしどしと歩くと、
「ー朝、目が覚めたら俺はー」と、言葉を口にするー。
だが、その言葉の上から被せるように、甚助が叫んだー。
「ーーあ、、あれっすよね!彼氏のシャツを着る彼女、とか
なんか、そういうやつ!
兄貴のジャージを着てるなんて…
くぅ~~兄貴、うらやましいな!
どこでこんな美少女をー」
甚助は一人そう叫んでから、
「あ、いや、失礼しやしたー…」と、我に返って
美少女になった岩男のほうを見つめるー
「ーーそ、そ、それにしても兄貴と、
どうやって知り合ったんですかー?
いつからー?」
甚助は、完全に”目の前にいる美少女が兄貴”だとは
思っていないー。
「ーーーおい!人の話を聞け!
俺が岩男だ!朝、目が覚めたら急にこんなになってたんだ!」
岩男が可愛い声で叫ぶー。
するとー
甚助は目をパチパチさせたあとに、
急に笑い出したー
「ーーあははははは!ノリがいいっすねぇ!
朝起きたら女になっていた!ってことっすよね!
あはは!そりゃ大変だ!
そういうシチュで兄貴とエッチをー?
ってか、兄貴はどこっすか?」
甚助の言葉に、岩男は美少女姿のまま、甚助の
頭を殴りつけたー
「テメェ!俺が岩男だって言ってるだろうが!」
美少女の声だからかー
あまり迫力はないー。
だが、その言葉に甚助は
「ーーえ…マジで兄貴ー?」と、困惑の表情を浮かべるー。
「ーーそうだよ!」
うんざりした様子で言う岩男ー。
その言葉に、甚助は
「え…?兄貴ーーーー」
と、戸惑ってからー
「ーーもしかしてーー
女装趣味あったんすか!?」
と、笑いながら叫んだー
「ちげぇよ!」
岩男の可愛い声が部屋の中に響き渡ったー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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極悪人、女体化ー…!
果たしてどうなってしまうのでしょうか~?
続きはまた明日デス~!
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