実家で引きこもり生活を送る28歳の男ー。
彼は、ある日突然、
”1ヵ月前に失踪した人気アイドル”の姿に
変身してしまうー。
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1か月前ー
人気アイドルの萌(もえ)が突然失踪したー。
世間は大騒ぎになり、
事件や自殺も視野に入れて、警察の捜査が行われたものの、
ついに、萌が見つかることはなかったー。
”萌はもう死んでいる”
事件であったにせよー
自殺であったにせよー
1か月も消息を絶ったまま、という状況は、
ただ事ではないのは確かなことで、
萌が現在もどこかで生きている可能性は、低いー、
と、言えたー。
「---へへ」
そんな、人気アイドル・萌の失踪とは
まるで関係のない男ー
尾関 康春(おぜき やすはる)は、
スマホを見つめながら、ニヤニヤしていたー。
康春は、大学卒業後、定職に就かず、
コンビニでアルバイトを始めたものの、
人間関係が上手く行かずに、退職ー。
その後は、働くこともせずに、家で引きこもり生活を送っていたー。
両親には、もはや”諦め”ムードが漂っていてー
妹の留美(るみ)は、完全に呆れていてー
話しかけるだけで怒るー
そんな状況だー。
2カ月ほど前に、28歳になった康春は、
今日も変わらずの引きこもり生活ー。
スマホでネットサーフィンをしながら、
ゲームをしたり、漫画を読んだりー、という日々を送っていたー。
「--ごはんは部屋の前に置いておいて」
康春は、母親に対してそう言うと、
母親は「ちゃんと食べるのよ」とだけ呟いて、
部屋の前にご飯を置いておくー。
康春が、部屋から出るのは、
”トイレに行くとき”と、”たまにお風呂に入るとき”
ぐらいで、その他はずっと、部屋に引きこもっているー。
買い物は、ネットショップでするし、
届いたものは、開封せずに部屋の前に置いておくように
親に言いつけてあるー。
「---…へへへへ!今日から遊ぶぞ~!」
新発売のゲームソフトを手にしながら
笑みを浮かべる康春ー。
だがー
彼はまだ知らないー。
”明日”
自分の身に起きることをー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝ー
「----」
いつものように、好きなだけ寝て、
今日は11時頃に目を覚ましたー
目覚まし時計の類も、必要ないー。
康春にとっては、カレンダーの数字は
全部赤い文字で書かれているのだからー。
「--さて、昨日の続きでもやるかな」
昨日発売されたゲームの続きをやろうと、
そう呟いた康春は、突然ビクンと、震えて、
慌てた様子で飛び上がると、
まるで、サバイバルゲームをプレイしている最中かのように、
物影に隠れて周囲を見渡したー。
”さて、昨日の続きでもやるかな”
と、いう、誰かの声が聞こえたからだー。
”俺の言おうとした言葉を先に言うなんてー
いったいー?”
しかも、その声は可愛らしい女の声だったー。
部屋の中をじっと見渡す康春ー。
だが、誰かがいる様子はないー。
”おかしいな…今、確かに女の声がしたんだけどな…”
ビビり症の康春は、冷や汗をかきながら、
部屋の中には誰もいないと思いながらも
「---だ、、誰かいるのか!?」と叫ぶー
「---!?!?」
康春は、ここでやっと気づいたー。
”女の声”はー
自分の口から出ていることにー
「--えっ!?」
康春が戸惑いながら、「あ、、、あ~~~~」と
声を出すと、
自分の声ではなく、可愛らしい声が出たー
「え…?ちょ!?なにこれ!?どうなってんの!?」
そう叫ぶ声も、もちろん”女”の声ー。
意味が分からないと思いつつ、
自分の身体を見るとーー
「ぎゃああああああああああああああああ!!!!」
そこには”膨らんだ胸”と
”肩にも掛かる綺麗な髪”
そしてーーー
「ねえええええええええええええええ!!!!!」
自分の股間にあったはずのソレがなくなっていたー。
パニックになる康春ー
「ちょ!?なんだこれ!?
俺、女になってんの!?え!?マジー?」
康春はそう呟くと、周囲を見渡すー。
だが、康春の部屋に姿見などあるはずもなくー
小さな手鏡をようやく机の引き出しから取り出すと、
自分の顔を見つめたー
「--誰こいつ!?」
思わず叫ぶ康春ー
鏡に映ったのは、可愛らしい女性だったー。
年齢は、自分よりも下に見えるー。
「----……」
自分の顔をまじまじと見つめる康春ー
「-これってーー」
”他人に憑依する”
”他人と入れ替わる”
”朝起きたら女になっていたー”
そんな感じの話を、いくつかネットや漫画などで
読んだことがあるー。
憑依
入れ替わり
女体化ー
だがーー
”俺は自分のベッドで寝てたー
憑依なら、この場所で寝てることはあり得ないはずー”
と、考えて、”憑依”を候補から外すー。
あぐらをかきながら、考え込む康春ー
”入れ替わり”の場合も、自分がここにいるのはおかしいー。
夜中には部屋の鍵も閉めているから、
誰かが入れるはずがないのだー。
自分と、相手が、遠隔で入れ替わったなら話は別だが、
やはり、可能性は低そうに思えるー
「俺はーーー…俺は、女体化したのか!?」
そう叫びながら、康春は再び自分の姿を見つめると
「やべぇ…かわいいじゃん…エロイじゃん!」と嬉しそうに叫んだー。
すぐに胸を触り始める下心満載の康春ー。
「うわあああああ…♡ やべぇえええええ♡」
ケダモノのように叫ぶ康春ー
その声が、可愛いことで、さらに興奮してしまい、
あまりのうれしさにどうしていいか分からずー
アニメキャラの抱き枕を抱いて、雄叫びを上げるー。
「--ふへへへへ…そうだーー」
笑みを浮かべる康春ー。
「こんなかわいい姿ならーーー」
そう思って、部屋のマスクを探して、さらには帽子をかぶりー
自撮りを撮影すると、
それをそのまま自分のツイッターアカウントに載せてみたー
”可愛い女が自撮りを載せる”
それを、やってみたかったのだー。
「おぉぉ!?」
マスクと帽子を着用して自撮りしたのはー
なんとなく、素顔を全て晒すのに抵抗があったこととー
もしかしたらこの姿でこれから暮らすことになるかもしれないー、と
考えたためだー。
さすがに、顔を全て晒すほどの勇気は、康春にはないー。
「---!!!スゲーーー!」
康春はゲラゲラと笑うー。
”実は女だったんです♡”と、ゲーム垢にツイートしたところ、
物凄い勢いで、いいねとリツイートが増えていくー。
「女って自撮り載せるだけでこんなになるのかよ…ウケるなぁ」
ニヤニヤしながら、康春は可愛い声でそう呟くー。
だがー
「---」
康春は”さすがに伸びすぎじゃね?”と思い始めたー。
女の自撮りツイートはこれまでに何度も見たことがあるがー
一般人で、1000とか、そんな数字に行くことは
珍しい気がするー
確かに、ある程度のいいねやリツイートはつくがー
有名人でもない限り、
ここまで伸びたりすることはー。
”あっという間”に、1000いいねを越えて、さらに爆発的に
数字が伸びていくのを見て康春は、少し怖くなってしまったー。
そしてーー
”帽子とマスクをしてても分かりますー
萌ちゃんですよね!”
”萌ちゃん!”
”生きてた”
”何があったか知らないけど、まずは生きててよかった”
などという、コメントが多数寄せられているのに、
康春が気づいたのは、その数分後のことだったー。
「--は…?萌…?」
康春は戸惑うー。
萌ーー
萌ーーー
萌----
康春は自分の記憶を必死に探りー
ようやく、思い出したー。
「あっ!!!!!!!!!
この顔…1か月前に失踪したとかいうアイドルー!」
あまりアイドルに興味がなかったため、
すぐに思い出せなかったがー
康春は、人気アイドル・萌の姿に
”変身”してしまっていたのだー
「ーーーえ!?ちょ…なんで俺が…?」
何で自分が、アイドル・萌の姿になっているのかー。
意味が分からないー
だがー先ほどから、
妙に自撮りツイートのいいねの増え方がおかしいのはー
”失踪していたアイドルが無事だった”と、みんな勘違いしているからだと、
康春は思ったー
”人違いです!”
康春はすぐにそうツイートしたー。
だが、その声は、大量の声にかき消されー
失踪していたアイドル・萌の無事が確認された、と
世間的に大ニュースになってしまったー。
「--お、、おい、、おいおいおいおい!」
”くそっ!面倒なことになった”
康春はそう思いながら、自分の長い黒髪を
ぐしゃぐしゃとかきむしるー。
「-ーーーこうなったら」
康春は可愛い声でそう呟くと、
自分のツイッターのアカウントを削除しー
そのままスマホをベットに放り投げて寝転んだー。
「--ったく、どうするんだよ」
片手で胸を揉みながら、ベットの上であおむけになって
天井を見つめるー。
「--なんで急に俺が、アイドルの姿に…?」
意味が分からないー。
「---ってか、この姿、親とか留美には
どう説明すればー?」
康春はひたすら片手で胸を揉みながら考えるー。
”気持ちイイなこれ”などと思いながらー
ひたすら、これからどうするかを考えるー。
”朝起きたらいきなりこの姿になっていた!”
と、でも説明するかー?
いや、ダメだー。
康春は「あ~~~!」と、叫びながら
起き上がってベットの上に座り込むー。
ズボンの上からアソコのあたりを触りながら
「ここの感じ…やべぇ」と、ニヤニヤするー。
アレがついていないというだけで、
康春からすれば、新鮮極まりないー。
”萌”のことは、当然、両親も妹の留美も知っているだろうー。
アイドルにほぼ興味がなく、ニュースをほぼ見ない
康春でさえ、思いだせたぐらいなのだー。
と、なればー
親や妹にこの姿を晒せばー
きっとーー
”俺がこの子を誘拐した”みたいに思われるー。
康春は、そう思ったー
「--俺だよ!俺、起きたらこの姿に!」
ーと、言って、家族は信じてくれるだろうかー。
いや、くれないー。
きっと”人気アイドルを誘拐したやべぇ息子”と
両親は思うだろうし、
妹の留美は100パーセントそう判断するだろうー。
「--この姿を家族に見せるわけにもいかない…か」
康春は、太もものあたりを撫でまわすようにして触ると、
ベットの上でため息を繰り返しつくー。
面倒なことになったー。
この身体はエロくて色々楽しめそうな気もするがー、
よりによって、どうして1か月前に失踪したアイドルの姿になんて
なってしまったのだろうー。
「----引きこもりでよかった…」
康春は思うー。
幸い、引きこもりであることから、
家族の前に、普段、姿を見せることはないー
部屋に篭ってさえいれば、
この姿を見られる心配は低いー
ネットで騒ぎになったのは失敗だったが、
マスクと帽子で顔を隠していたしー
最終的には「他人の空似」で落ち着いてくれることを願うー
「----トイレと風呂が難関だなー」
康春はそう思いながらも、
両親は働いてるし、妹の留美も出かけてることも多いからー
なんとかなるだろう、と笑みを浮かべたー。
ようやく、気持ちを落ち着けて来た康春は
「-身体のチェックでもしようかな~!へへへ」と笑みを浮かべたー。
「いや、この姿でエロゲーをやるのもなんか背徳感があるぞ!」
ますますニヤニヤする康春ー
「ーーっていうか、せっかく可愛くなったんだから
俺の服じゃ、ダメだなぁ」
チェックのポロシャツと破れたズボン姿で呟く康春はー
ネットで、”この姿にふさわしい服”を何個か注文して、
”届くのが楽しみだぜ”と、ニヤニヤ笑みを浮かべたー
②へ続く
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1か月前に失踪したアイドルになってしまった
引きこもりの彼の運命は…!?
続きはまた明日デス~!
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