ある日、突然「失踪したアイドル」の姿に変身してしまった
引きこもりの男。
彼はそのまま”引きこもり生活”を続けようとするも…?
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1か月前に失踪したアイドル・萌の姿に
変身してしまった康春ー
変身してから1週間ー。
引きこもりであったことが幸運だったのか、
家族にも”萌に変身してしまった”ということが
バレずに生活を続けていたー
部屋の鍵は閉めた状態にしておき、
トイレやお風呂は、家族が不在の際に一気に済ませるー。
食事はいつも通り、部屋の前に置いてもらって、
終わったら食器を部屋の前に出しておくー
そうすることで、康春は家族に”変身してしまった現状”を
知られずに済んでいたー
普段から”引きこもり”ということで、
家族からの印象は悪くー、
そんな状態でこの姿を晒せば
家族はきっと
”康春が失踪中のアイドル・萌に変身した”
と、考えるのではなくー
”康春がアイドル・萌を誘拐し、自分の部屋に閉じ込めている
だから、アイドルの萌は失踪しているー”
と、考える可能性の方が高いー
”本物”が失踪している現状と、
”変身”があまりにも非現実的な現象であることからー
”康春が萌を誘拐した”と、家族が勘違いしてしまう
可能性が高かったー。
「---」
セーラー服姿で、色々なポーズを決めながら
自撮りしていく康春ー
「ふぅぅ~~~さすがアイドルの姿…へへへへ」
変身した直後ー
康春は、”服”を色々とネットで購入したー。
その時に購入したものの一つを、今、こうして身に着けて
お楽しみしているのだー。
最近のお楽しみは、
”一人ファッションショー”
萌の姿で色々な服を着ては
色々なポーズをして、
写真を撮影ー。
後からその写真で、オナったりもしているー。
傍から見れば
”自分のコスプレ写真を見てオナる失踪中のアイドル”という
状況だがー
見られなければ何も心配はないー
「--さ~て、音読エロゲするか!」
萌の姿をした康春は、ニヤニヤしながらそう呟くー
萌の姿でエロゲーをプレイすると、
やはり、この背徳感がたまらないー
さらにー
萌の”声”で、ゲーム中の卑猥な台詞などを
”音読”すると、たまらなく興奮するのだー。
欲望の日々を送る康春ー
”この姿に変身できてよかった…!”
康春は心からそう思いながらー
その日の夜も、激しく自分の部屋でエッチを繰り返したー。
だが、その翌日ー。
「--ねぇ、お母さん なんか、あいつの部屋から女の人の声がするんだけど」
部屋の外で、妹の留美と、母親が会話しているのが聞こえたー
「---!」
康春が表情を歪めるー
「--え?どんな?」
部屋の外で会話している母親の声ー
「--夜なんだけど、、なんか、、こう…その、喘ぐような…?」
留美が言うとー
母親は「Hなゲームやってるんじゃない?」
と、返答したー
「---ううん。あいつ、ゲームはヘッドホンでやってるし、
わたしは生の声だと思うー」
留美の言葉ー
「--じ、じゃあ、康春の部屋に女の人がいるってこと?」
不安そうな母の言葉ー
「-ーーうん」
その会話を聞き終えると、康春は部屋の入口の扉から
少し離れてから、青ざめた表情を浮かべたー
「--く、、くそっ!」
連日の夜の「お楽しみ」の声が、妹の部屋にまで届いてしまっていたらしいー
「---康春~~!いるの~?」
母親が扉をノックするー
「---!!!」
康春は表情を歪めたー
これは、まずすぎる状況だー。
今、部屋に”萌”の姿をした康春がいたらー
家族はどう反応するだろうかー
”俺なんだ!”と言って、
信じてくれるのだろうかー
「---康春~!!」
母親が何度も何度もノックをするー
”声を出して返事をすること”も
今の状況ではすることが出来ないー。
康春の声ではなく”萌”の声が出るからだー。
”いるよ”
慌ててスマホでLINEを母親に送ると
”女の人の声が聞こえてきたって、留美が言ってるけど?”
と、母親からすぐに返事が来たー。
”ゲームの音だろ?いちいちそんなことで干渉しないでくれ”
康春は強い口調の返信を行うと、
母親はようやく諦めてくれたー。
「--ほっ」
康春はため息をつくと、
しばらくしてから、安心したのか、漫画を読み始めたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--康春の部屋から、女の声がー?」
夜ー
妻と、娘の留美から報告を受けた父親は戸惑うー。
「-あいつに、女なんてー…
いや、どういうことなんだ?」
混乱する父親ー
「どうにか部屋に入って話を聞きたいんだけど、
部屋を開けてくれなくてー」
戸惑う母親ー
そんな両親を見て、留美はニヤッと笑ったー
”名案”を思い付いたのだー
「そうだ!あいつ、わたしたちが
いないタイミングでお風呂とトイレに来てるみたいだからーー」
留美はそう言うと、両親にごにょごにょと、何かを
小声で伝え始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「----------」
康春は、留美が外出、両親が仕事に向かったことを確認すると、
そのまま部屋の扉を開けて、トイレを済ませたー
お風呂は昨日入ったから、今日はいいー
そう思いながら部屋に戻るとー
「--------!」
康春は表情を歪めたー
可愛らしいお嬢様のような服装に身を包んだ”アイドル・萌の姿をした康春”はー
目を疑うー
自分の部屋の中に、妹の留美と、母親がいたのだー
母親は、”萌の姿になった康春”が着るために集めた
コスプレ衣装の数々を見て、唖然としているー
留美も、同じー
「---あ、、、え、、、そ、、、そ、それは…」
戸惑う康春ー
留美たちは、康春の部屋を調べるためー
”外出したフリ”をしていたのだー。
「--あ、、あなたは…!」
母親が叫ぶー
「--も、、萌さんですよね…!?」
妹の留美が青ざめて呟くー
康春の今の姿は
”人気アイドル・萌”の姿ー。
「う、、、うそ…じゃあ、康春がーーー」
母親が明らかに動揺し始めるー
「いや、、ちがっ…」
萌の姿をした康春は”やっぱりこういう反応か!”と思いながら
慌てて事情を説明しようとするー
母親と妹・留美の反応から
”康春が、人気アイドルの萌を拉致していた”と
思っているのは明らかだったー。
しかも、コスプレ衣装も良くないー。
これじゃまるで”康春が萌に無理やり着せているように”も
見えてしまうー
「-ちょ、、ちょっと聞いてくれ!」
康春が萌の声で叫ぶー
だがー
母親は泣きだしてしまい、
妹の留美は「あいつ…誘拐なんて…最低!」と叫びながら
「--今、警察呼びますから…もう大丈夫ですからね」と、
康春に言い放つー
「待ってくれーーお、、」
そう言いかけてー
康春は言葉を止めたー
”いや、待てー”
今の状況ー
康春にとっては最悪だー。
これでは
”康春が萌を誘拐した”と、誰もが思うだろうー。
アイドル・萌の失踪は康春の仕業であった、とー
”俺はこの子の姿に変身しちゃっただけだ”なんて
通用するはずもないー
本物の萌がどこにいるのかは知らないけれどー
これは、危機的な状況だったー
康春が”アイドルを誘拐したやべぇ引きこもり”扱い
されてしまうことを避けるのは、
難しい状況に、追い込まれてしまっていたー。
だったらーーー
「--怖かったよぉぉぉぉ」
康春は、突然弱弱しく泣き始めるー。
母親が「息子が…本当にごめんなさい」と、
萌の姿をした康春を抱きしめるー
康春は笑みを浮かべたー
そうだーーー
萌になりきってしまえばいいー
そう、思ったー
このまま引きこもり生活を続けることは
いずれにせよ、難しそうだー。
だったらー
”康春”として生きることは諦めて
”萌”として生きればいいー。
アイドルは適当なタイミングでやめて、
後は悠々自適な女ライフを送るー
「--ここの部屋の人に、家に帰る途中に急に襲われてー」
嘘を口にして、泣きじゃくる萌の姿をした康春ー
結果ー
”人気アイドル萌は、引きこもりの康春に連れ去られて
1か月間失踪していた”
と、いうニュースが大々的に報じられたー
”自分の名誉”を犠牲にすることで、
康春は、アイドル・萌としての立場を手に入れたー
「(俺に誘拐されてたってことになってるから
振る舞いとか言動がおかしくても 精神的ショックのせいに
できるし、俺ってば賢いなぁ)」
萌の姿をした康春は笑みを浮かべるー。
病院に入院しー
病院でちやほやされてー
気分よく、笑みを浮かべる康春ー。
”アイドルは適当に、精神的ショックを理由に引退すればー”
あとはーー
好き放題できるぜー!
”康春”は、アイドル・萌の失踪の原因を作った
誘拐犯として指名手配されてしまっているー
だがー
「(へへへ…俺はここにいるけど…この姿ならバレようがないし、
俺はかわいそうな被害者だからな~)」
心の中でそう思う康春ー
「(というかそもそも俺、誘拐してないし!
起きたらこの姿になってたんだよ!)」
そんな風に思いながらー
康春は病院で入院生活を続けたー。
やがて、病院から退院すると、
康春は、周囲に言われるがままに、アイドルとして
活動を再開することになったー。
”適当なタイミングで引退して好き放題するー”
そう思っていたのだが、
引きこもり生活を長く続けていた康春は
心の中では雄弁に喋ることが出来ても、
いざ、相手と対面すると、自分の想いをきちんと伝えることが
出来ずー
流されるままにアイドルとしての活動を
本格的に再開することになってしまったー
「---えぇ!?!?」
康春は表情を歪めるー
”いかにもアイドル”という感じの
フリフリした衣装を着るように言われる康春ー
「あ、あ、、、あ、、、あの!!こ、、これ…着るんですか!?」
康春が顔を真っ赤にしながら言うと、スタッフは
「え」という顔をするー
聞けば、この衣装は萌自身がプロデュースしたものなのだとかー。
”こ、、こんな恥ずかしい格好ー”
萌に変身してしまった康春はー
萌の姿で色々なコスプレを、”自分の部屋で”楽しんでいたー。
だが、それは”自分の部屋”だったからこそ、
楽しめたのだー
引きこもりでもある康春は、他人の前で恥ずかしい格好を
することに強い抵抗を感じていたー
「-それに萌ちゃん、随分大人しくなっちゃってー
前は我儘放題な感じだったのにー」
「やめろ」
他のスタッフがコソコソ話をしているー
「--萌恵ちゃんは1か月以上も誘拐されてたんだ。
ショック受けてて当然だろ?」
スタッフたちのコソコソ話を聞きながらー
康春は、戸惑いながら「き、、、着ます」と、呟いたー。
それからもー
アイドル・萌として振舞う康春ー
幸いなことに
”康春に誘拐されて1か月間失踪していた”ということに
なっているためー
周囲は萌に同情し、
萌の振る舞いや性格の違い、記憶があいまいな部分なども
”精神的ショックのせい”と、思ってくれたー
萌に変身している康春にとっては好都合だったー。
ファンの前で歌う時は、恥ずかしすぎて、
声が詰まってしまったしー
ファンとの握手会では、康春みたいな男や
康春から見ても”気持ち悪い”迷惑系のファンなどがいて
思わず嘔吐してしまったりもしたけれどー、
萌として振舞ううちに、康春は
自分に自信をつけていき、
アイドルとして振舞うことが”楽しい”と思い始めていたー。
萌になって半年以上が経過したー。
アイドル・萌としての活動も、もう数カ月続けているー
今ではすっかり、康春は”アイドル”だったー。
「--見た目ってやっぱ大事じゃんー」
萌の姿でそう呟く康春ー
”美少女”になったことで、康春は自身をつけたー。
”俺みたいなやつは美少女になればメンタルも強くなるんじゃね?”
そんな風に思いながら、
今日もアイドルとして頑張ろう! などと思っているとー
「---え」
康春は表情を歪めたー
事務所にーーーー
”萌”が入って来たのだー
康春が変身している萌の目の前に、
もう一人、萌がいるー。
「-----…え?何アンタ?」
もう一人の萌が言うー。
「---え???え????」
萌の姿に変身して
アイドル活動が楽しくなってきていた康春の前に
姿を現したのはー
失踪していたはずの、”本物の萌”
だったー。
③へ続く
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コメント
失踪していたはずの本物が出現‥・!?
次回が最終回デス~!
今日もありがとうございました~!
コメント
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普段の印象がどうだったとしても、変身とか想像の埒外だったとしても、頭から息子や兄を犯罪者と決めつける家族ってちょっと酷すぎる気がしますね。
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コメントありがとうございます~!
この家族自体、
元々、険悪な状態になってしまっていたみたいですネ~!