失踪して1か月のアイドルの姿に
突然変身してしまった引きこもりの男…。
ようやく、その現実を受け入れて、
前に進みかけていた彼。しかし…?
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「-----…え?何アンタ?」
萌に変身した康春の前に、突然、”萌”が姿を現したー
「---え???え????」
萌として、アイドル活動をしていた康春の前に現れた萌を見て
康春は混乱するー
「---…あんた、誰ー?」
”萌”の姿をした誰かが言うー。
「--え…わ、、わたし、萌です…けど?」
萌の姿をした康春が言うと、目の前にいる萌が叫んだー
「はぁ????萌はわたしなんですけど!!!!!!!!」
とー。
康春の前に姿を現したのはー
”失踪”していた本物の萌だったー。
「--え…!?!?え…?」
康春は困惑するー。
康春が萌の姿に変身した時には、
既に萌は失踪してから1か月の状況だったー。
そして、今では萌になって半年以上が経過していたー。
だからー
本物の萌は半年以上失踪していたことになるー。
てっきり”本物”は、もう死んだとばかり思っていたけれどー
こうして、今、ここにー
目の前に”萌”がいるー。
「--ど、、ど、、どういうー?」
康春が言うと、
本物の萌は答えたー。
「--どういうって?ちょっとアイドルするのに疲れちゃったからー
一人旅してただけだけど?」
萌は、気まぐれでわがままな性格だったー。
失踪していた理由は
事件に巻き込まれたわけでもなんでもなく、
”アイドルとして活動するのに疲れたから、半年かけて日本一周をしていた”
とのことだったー。
変装して、適当な名前を名乗っていたために、
半年間、誰にも気づかれなかったのだと言うー。
「---え…じ、、じゃあ…死んだんじゃなかったの!?」
康春が言うと、
萌は「勝手に殺すな!」と、康春を叩いたー。
康春は思うー
”でも、俺が出て来るまで、”人気アイドル失踪”って
ニュースになってたけど、この子、知らないのかな?”
とー。
「--し、、失踪扱いになってたけどー」
康春が、萌の姿のまま、戸惑いながら言うと、
萌はにっこりと笑ったー
「え!?マジ!
わたしさ、スマホ持たないし、ネットも見ないから
全然知らなかった!」
その言葉に、康春は「マジかよ…」と思わずつぶやいてしまったー。
本物の萌は死んでいたわけでも、
事件に巻き込まれたわけでもなく
アイドルとしての活動になんとなく疲れて、
誰にも言わずに姿を消し、日本一周旅をしていてー
今日、こうして戻って来たのだったー。
「--で、なんでわたしの姿してるの?」
”本物の萌”が言うとー
康春は「え…そ、それは」と、戸惑った様子で
返事をするー。
「-あ~~~もしかしてわたしの代わり、しててくれたんだ」
本物の萌はそれだけ言うと、
にっこりと笑ったー
「おつかれさま!もう帰っていいよ!」
それだけ言うと、萌は「さ、今日からまたアイドルがんばろ~!」と
笑みを浮かべながら、事務所の中を我が物顔で歩き回るー
「---……え」
萌の姿に変身している康春は戸惑うー
”もう帰っていいよ”
まるで、お役御免のような言葉ー。
「---いや、待てよ!」
康春は叫んだー。
萌の声でー
「--は?なに?」
萌が不満そうに康春の方を見るー
「ってかさ、わたしの姿形で、そんな乱暴な声を出さないで」
萌が言うと、康春は萌を睨むようにして見つめたー。
「-自分勝手に急に日本一周一人旅を始めて
色々な人に迷惑をかけてー
で、帰って来たら「またアイドルやります」?
ふざけるなよ!」
康春が言うと、萌はクスッと笑ったー
「--可愛いは正義」
とー。
「--え?」
康春は表情を歪めるー
「-かわいければ、何をしても許されるの。
わたし、超かわいいでしょ?
だから、多少の我儘は許されるの ふふ、わかる?」
本物の萌はそう言うと、
「あ、そうだ、引継ぎ。わたしいない間、どんな風に活動してたの?」と
当たり前のように聞くー
萌は、テレビの前では優しそうな雰囲気を漂わせていたがー
実際は、こんな、性格の悪い女なのだと、康春は思ったー。
「---ふざけるなー…
わたしが萌よ」
康春は、そう言い放ったー。
「---はぁ?」
本物の萌が表情を歪めるー
「--あはははははははっ!
調子乗らないでよ!偽物さん!
どういう事情か知らないけど、
わたしそっくりだからって、あんたみたいな偽物じゃ
わたしの代わりは務まらない。
本物のわたしが帰ってきた今、
あんたはもう”用なし”
さっさと消えなさい」
萌がそれだけ言うと、
萌になっている康春は歯軋りをしたー。
この半年ー
本当に楽しかったー
せっかくー
せっかくーーー
新しい人生を手に入れることに成功したのにー
失踪するなら、ずっと失踪してろってんだ!
康春は、そんな風に思うと、
「今は、お前の方が偽物なんだよ!」と本物の萌を
睨みつけるようにして言い放ったー。
睨みあう”本物”と、”偽物”
康春は、引きこもりだったころの自分には、もう戻りたくない、と
本物の萌にとって代わるつもりだったー
こんな、自分勝手な女よりも、俺の方が”萌”にふさわしいー、と。
ガチャー。
2人の萌がいる部屋の扉が開くー
入って来たのは、萌のマネージャーの男ー。
康春が変身した萌も、ここ数カ月、ずっとお世話になっているー。
「あ!長熊さん!久しぶりぃ!」
本物の萌が嬉しそうに手を振るー。
マネージャー・長熊は、そんな萌を見て
「おぉぅ!萌ちゃんじゃん!」と嬉しそうに笑みを浮かべたー。
「--どこ行ってたんだよ~!急に失踪なんかして」
マネージャー・長熊の言葉に、萌は
”アイドル生活に疲れて日本一周してきた”と答えたー
笑う長熊ー
長熊は萌に対してー
「-マジかよ~!」と笑っているー。
「-いつも急に姿を消したり、萌ちゃんもホント、やりたい放題だよな。
尻ぬぐいする俺の身にもなってほしいよ」
長熊の言葉に、萌は笑いながら
「でも、わたし、可愛いから仕方ないでしょ?」と当たり前のように微笑んだー。
「-で、あのそっくりさん、誰?」
本物の萌が、唖然としている康春を指さすー。
「--あぁ?あいつ?
萌ちゃんの失踪が長引いて世間が騒ぎ出してたからさ、
偽物用意して、代役やってもらってたんだ」
長熊が言うー。
その言葉に康春は「ちょ…ちょっと!」と叫ぶー。
「-勝手に偽物扱いしないでください!
わたしが萌ですよ!」
とー。
康春は思うー
”よくわかんないけど、こうなったら俺が本物で
本物を偽物扱いするしかない”
とー。
「-日本一周で半年失踪とか、ありえないですよね!?
本物はわたしですから!
「日本一周で半年失踪」とか、作り話下手すぎ!」
本物の萌を指さしながら、康春が言うと、
マネージャーの長熊は頭をボリボリかきながら呟いたー
「あ~~~そういうの、いいから」
とー。
「--お前が偽物だってのは分かってるからさー」
長熊の言葉に、康春は「なんで!!わたしがー」
と、叫びかけたー。
だがー
長熊が恐ろしい言葉を口にしたー
「-俺が、お前を萌ちゃんの姿にしたんだよ。
引きこもり野郎」
とー。
「---…!!!!!」
康春は表情を歪めるー
”引きこもり野郎”
その言葉一つで、
自分が萌の姿になって、少しずつ身に着けて来た”自信”を全て
粉々に打ち砕かれたような気持ちになるー
途端に表情から活気が消えてしまった康春ー。
「---ど、どういうこと…」
康春が”萌”としての口調で言うと、
マネージャーの長熊は口を開くー。
「--萌ちゃん、失踪することは前からよくあったんだけどさー
そういう悪い部分を補えるぐらいの人気が萌ちゃんには
あるからさ、今までも、これからも目を瞑っていくのさー。
でも、今回ばかりは失踪の期間が長いから、どうしても
”代役”が必要でさ。
で、お前を選んだってわけ。
でもさ、代役をやってもらうには、
プライドもクソもねぇような落ちこぼれの方が都合が良くてさ。
ほら、分かるだろ?
プライドあるようなやつを、萌ちゃんの代役にすれば
俺たちの言う通り動かないだろうし、一生懸命やらないかもしれないー。
だから、お前みたいな落ちこぼれを選んだんだよ」
長熊の言葉に、康春は唖然とするー
確かにー
萌として振舞うことに一生懸命になりー
アイドルとして振舞うのが楽しくなり、事務所の言いなりで働いていたー
こいつの思い通りに、動いてしまったー。
長熊は、特殊な技術で生成した”他人に変身する薬”を、
あの日、康春の母親に、ネットショップで康春が注文したお茶を届けに来た、と
偽り、手渡しー
部屋に引きこもっている康春は、母親が何も知らずに部屋の前に持ってきた
その変身薬入りのペットボトルのお茶を飲みー
萌に変身してしまったのだー。
「--本物の萌ちゃんが帰って来たからー
お前はもういらないー。
ご苦労さん」
長熊はそう言うと、本物の萌と一緒に立ち去ろうとするー。
”元々失踪癖のある萌がいつ帰って来るか分からないから、
その間、代役になる人間を探していて、都合よく利用されたー”
萌の姿をした康春は、
ブツブツと何かを呟きながら、長熊の方を見つめるー。
「--うるせぇなぁ、また引きこもってろよ」
長熊が萌の姿をした康春を突き飛ばすと、
康春は「わたしが萌だあああああああああ!」と泣き叫びながら
本物の萌に飛び掛かろうとしたー。
本物の萌と、偽物の萌が取っ組み合いになるー。
長熊は「おいテメェ!やめろ!」と叫ぶー。
「-お前を今、元に戻せば、お前は
萌ちゃんを監禁していた引きこもり野郎として逮捕されるんだぞ!」
叫ぶ長熊ー。
「--!!!」
萌の姿をした康春は、本物の萌から手を離して、
表情を歪めるー。
「----な?今度は、刑務所で引きこもってろよ」
長熊はそう言うと、萌の姿をした康春に注射器を刺したー。
萌の姿から、みるみるうちに康春の姿に戻っていくー。
唖然とする康春ー
マネージャーの長熊は馬鹿にしたように笑いながら
そのまま警察へと通報したー。
本物の萌は笑いながら康春の方を見つめているー。
「----あははははは!あんたみたいのが
わたしの代わりやってたとか、キモすぎでしょ!」
本物の萌の言葉ー
康春は、萌を睨みつけたー
”俺は俺なりに真剣にやってきたんだー”
とー。
心の中で思いながらー。
「-じき警察が来るから。
今までご苦労だったな。
あとは刑務所で引きこもりの続きやってな!ははっ!」
長熊が立ち去っていくー
「-ー用済みくんごくろうさま~!ばいばい~!」
笑いながら本物の萌が立ち去っていくー
やがてー
放心状態の康春は、駆け付けた警官に
”萌誘拐及び監禁”で逮捕されてしまったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数年後ー
本物の萌は、我儘放題でアイドルとしての活動を続けていたー
だがーー
「--お前さぁ、もうババアじゃん?20中盤とかさ、
いつまで売れっ子アイドル気分なんだよ」
マネージャーの長熊が言うー。
本物の萌が表情を歪めるー。
康春にそうしたようにー
この事務所は”金にならないもの”をゴミのように切り捨てるー。
今度は本物の萌が”捨てられる側”になってしまったのだー
「--え、ちょっと待ってよ!長熊!」
萌が叫ぶー。
「-”可愛いは正義”
前に、萌ちゃん、いや、お前言ったよな?
今のお前はもう、悪党だよ」
長熊はそれだけ言うと、萌の方を見つめてバカにしたように笑ったー。
「--ご苦労様。お前、もういらねぇわ。
家で、若作りの化粧でもしてろよ」
長熊は、無情な言葉を突き付けると、
そのまま萌に、契約解除、と書かれた紙を置いて、
そのまま立ち去って行ったー。
若い新人アイドルのほうに向かい、長熊は
その子を褒めまくるー。
前に、萌にしたのと同じだー。
本物の萌は、
かつて、康春が味わった屈辱を味わいながらー
そのまま、表舞台から姿を消したー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
マネージャーは放置!?
いつか、刑務所から出て来た康春くんの
リベンジ回がある…かもですネ~!
(ないかも笑)
お読み下さりありがとうございました~!
コメント
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このアイドルとマネージャー、性格最悪すぎですね。
人を馬鹿にするのも程があります。
康春が刑務所から出てきたら、二人ともただではすまなそう。それ以前に、長熊は萌に殺されるかもしれませんが。プライドの高そうな萌なら自分をゴミみたいに捨てた長熊を絶対に許さなさそうですし。
うーん、この展開も悪くないですが、個人的には我儘すぎる本物の萌に嫌気がさした長熊に、萌が捨てられて、康晴が萌に完全に成り代わる展開が見てみたかったかな?
自分が本物だと喚く、本物の萌は変身の薬で康晴の姿に変身させられて、そのまま刑務所行きになるとかみたいな展開だったら最高だと思うんですが。
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コメントありがとうございます~!
その展開も面白そうでしたネ!!
コメントから生まれる新しい展開…!
康春がいつか刑務所から出て来るエピソードも、
そのうちあるかも…?しれません!