とある病気で入院することになってしまった男ー。
だが、彼は筋金入りの病院嫌いで一刻も早く、
病院を抜け出したいと考えていた。
そんな彼の前に現れたのはー?
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「--今日の午後には、退院できますか?」
昨夜、病院に緊急搬送されてきた男・照本 圭祐(てるもと けいすけ)は
看護師の女性に対して、そう言い放ったー。
「照本さん、無理しちゃだめですよ」
微笑む看護師ー。
昨晩、圭祐は、急病で病院に運ばれたー。
しかし、夜明けまでに、なんとか体調を持ち直し、
現在に至るー。
一晩明けた今、圭祐はすっかり元気になっていてー
しかも、圭祐自身が”病院嫌い”であるために、
今朝から「退院したい!」「退院したい!」と繰り返し
伝えていたのだったー
「--昨日、あんな状態だったんだし、
色々検査して、少し様子を見ないとね。
少なくとも、数日間は、安静にするように」
先生も、そう言っていたー
けれどー
それでも、圭祐はなんとか退院したくてー
お昼ご飯の直前に、病院から抜け出そうとしたー。
その結果ー
先生に見つかって、捕まってしまいー
”照本さん 本当に、死にますよ?”
などと満面の笑みで言われてしまったー。
”脱走に失敗した”
圭祐は、脱走しにくい病室に移動させられてしまい、
脱走を諦めるはめになったー。
「---はぁ…」
圭祐は、病院が嫌いだー。
昨日は本当に死ぬかと思って、咄嗟に救急車を呼んでしまったが
こんなことになるなら、呼ばなければよかったー。
そんな風に後悔しながら、病室の窓から、外を見つめているとー、
扉がノックされたー
「はいー」
圭祐がため息をつきながら返事をしているとー
圭祐を担当していると思われる女性看護師と、圭祐の同期で、親友でもある
眞田 慎一(まだ しんいち)が病室に入って来たー
「慎一!」
圭祐が、嬉しそうにその名前を呼ぶと、
慎一は「よ」と、圭祐に向かって笑みを浮かべたー。
同期であり、親友でもある慎一が、
お見舞いに来てくれたのだったー
看護師が立ち去っていくと、慎一が笑うー。
「お前が救急搬送されたって聞いて、驚いたよ
もう、大丈夫なのか?」
慎一の言葉に、圭祐は「あぁ、もうばっちりさ」と答えたー。
「--…はは、
どうせお前のことだから、もう退院したいって思ってるんだろ?」
慎一が言うと、圭祐は「お見通しか」と笑ったー。
慎一は、少しだけ笑みを浮かべてからー
「---どうしても病院から抜け出したいのか?」と、呟くー
圭祐は「当たり前だろ!明日はアスカちゃんのライブもあるんだ」と、
かねてから楽しみにしていた、圭祐が好きなアイドルの名前を口にしたー。
「--ははは、お前は本当に、アスカちゃん好きだなぁ」
そう呟きながら、頭を掻くと、慎一は少しだけ考えてから、
「--お前に”病院を抜け出す”チャンスをやるよ」
と、呟いて、鞄から何かを取り出したー
「これはー?」
かなり小型の、注射器のようなものを取り出した慎一は、
「-”人を皮にする薬”だー」
と、言葉を口にしたー。
「は??え??何それ?」
圭祐が驚きながら言うと
慎一は、”この注射器を打つと、他の人間を皮にすることができるんだ”と、
注射器の説明をし始めたー。
なんでも、相手に打つと、相手は”皮”のような
状態になってしまいー、
それを着ることで、その人そのものになることが
できるのだというー。
「-これを使えばー、
看護師さんだとか、他の患者さんの身体になって、
病院を抜け出すことが出来るんじゃないか?」
慎一の言葉に、圭祐は「ま、、まぁ、そうだけど、話が唐突すぎるぞ!」と
声をあげたー。
慎一は、”人を皮にする注射器”をネットで手に入れたのだと言うー
購入自体は違法性がなく、
皮にされた人間にはその間の記憶がない上に、
皮にされた人間は脱ぎ捨ててそのまま放置しておけば
10分もすれば元に戻るから、心配はないー、
と、慎一は説明したー。
「---…そうだな。お前の様子を見に来た看護師さんにでも、
この”注射”を打って、看護師さんの皮を着て、
そのまま病院の外にー
って、感じで、抜け出せるんじゃないか?」
「--…え、、えぇ…ってことは、俺、女になれるの?」
圭祐が顔を赤らめながら言うと、
「-おいおい、あくまで脱走用だぞ?エッチなことしたりすんなよ」と、
慎一は苦笑いしながら呟いたー
会社の同期でもありー、
親友でもある慎一の存在をこれほどありがたいと思ったことはなかった。
圭祐は、慎一から”人を皮にする注射器”を受け取ると
「サンキュー」と笑みを浮かべたー。
「--じゃ、俺はそろそろ行くわ。
部長が成績成績うるさいからさ」
慎一が笑いながら言うー。
「-慎一、俺のいない間に俺を追い抜くんじゃねぇぞ~?」
圭祐も笑いながら言うと、
慎一は「そんなすぐに追いつかねぇから心配するなよ~!」と、
圭祐の肩をぽんぽんと叩いたー。
「---あんまり、変な使い方はするなよ?」
慎一が病室の出口で立ち止まると、そう呟いたー。
「皮にされている間の記憶はないし、
皮を脱ぎ捨てて10分程度で元に戻るけど、
例えば、目立つ場所で皮を脱ぎ捨てたり、
大人数皮にしたりすれば、
問題になる可能性もあるからな?」
慎一の説明を聞くと、
圭祐は「わかってるって」と、笑みを浮かべたー。
「--はは、じゃ、健闘を祈るぜ」
慎一は、それだけ言うと、病室の外へと立ち去って行ったー。
「ーーこれで、アスカちゃんのライブにも行けるぜ」
嬉しそうに受け取った注射器を見つめる圭祐ー。
圭祐は、看護師さんがやってくるのを待ったー。
看護師さんが病室に来たら、
背後からこの注射器を打ち込み、
看護師さんを”皮”にするー。
皮になった看護師さんをこの部屋で着て、
看護師さんの身体を乗っ取ったら、
そのまま看護師さんの身体で外に向かいー
無事に病院から脱走に成功したら
看護師さんの皮を人目のつかないところで
脱ぎ捨てるー。
「--完璧だ」
笑みを浮かべる圭祐ー
「病院脱走大作戦ー開始だぜ!へへ」
圭祐が、そう小声で呟いているとー
早速、女性看護師の尾崎さんがやってきたー。
「--照本さん~!
もう脱走なんかしないで下さいよ~」
他の看護師との会話からー
下の名前は、千夏(ちなつ)で
あることが分かっているー
”俺がこの尾崎千夏さんになれるってことかー
ドキドキしちゃうなー”
一瞬、この若い女性看護師の身体でー
などと、よからぬことを考えてしまったが
すぐに”いやいやいや、俺は病院から抜け出すためにこの力を使うんだ”と
理性を取り戻したー
そしてー
千夏が、圭祐の状況の確認を終えると、
「絶対、無理は禁物ですからね!」と、言いながら、
そのまま外に向かおうとしたー
”今だ”
圭祐はそう思ったー
この子を皮にしてー
病院を脱走するー。
一瞬”もし、この人を皮にする注射器”なんて話が、
慎一の嘘だったら?などとも思ったが、
慎一はそんな嘘をつくような人間でないのは
親友の圭祐もよく理解していたしー
仮に万が一嘘だったとしても、
”お医者さんごっこでした~”とでも、適当に言い訳すれば
首筋に注射器を当てたことも、イタズラで済むだろうし-
と、自分に言い聞かせてー
圭祐は、千夏に注射器を打ち込んだー
「え…?」
千夏が自分の首筋を触ると同時に、
「--あぁぁああぁあ…ぁぁぁ」と、苦しそうな声をあげて、
その場に膝を折りー、
そのまま、”皮”のようになったー
「うへぇ…マジだったのか…」
圭祐はそんな風に思いながら”皮”になった千夏を
その手に掴むと、
「少しの間、すみませんね」と、呟くー
手に掴んだ皮は、
まるで”着ぐるみ”のようだったー
学生時代に一度だけ、着ぐるみでテーマパークの案内をする
アルバイトをしたことがあったのだが、
それに似ているー
「これを着れば、俺が尾崎さんになれるっと」
そう呟きながら圭祐は、千夏の”皮”を身に着けていくー。
「-不思議なもんだな」と、呟きながらー
何故だか、自分よりも体格が小さいであろう”皮にした千夏”を
ちゃんと着ることができたー。
「すげぇ…」
チャックを上げて”千夏の皮”を完全に身に着けると、
病室の鏡を見つめながら、
頬のあたりをつまんで引っ張ってみたー
「--やべぇ…マジで尾崎さんに…」
そんな風に呟いてみるー。
口から出るのも、当然、圭祐の声ではなく、
千夏の声ー。
「いったい、どういう仕組みなんだー?
どこ引っ張っても、普通の人間にしか思えないし…」
「--へへ、脱走に成功したら慎一のやつに
何か奢ってやらないとな」
そんな風に呟きながら、つい胸のあたりに手を触れるー
「--ふぁぁ…これが……
すごいな…これ…」
患者の病室で両胸を揉む千夏ー。
他の患者や、病院の関係者が見たら、
びっくり仰天してしまう光景だろうー。
しかし、千夏はお構いなしに顔を赤らめながら
だんだんと気持ちよくなっていくー
「んっ…♡」
「--って、、真面目そうな子なのに
こんな色っぽい声も出るんだなぁ…」
千夏の身体がゾクゾクしているー。
このまま激しくヤッてみたい感覚にも襲われたもののー
理性を失う寸前にー
圭祐は思いとどまったー
「-って、いけねぇ…
目的は病院からの脱走だー
エッチなことをすることじゃないー」
ここで、千夏の身体を使ってエッチなことをしてしまえば
誰かに発見されるリスクが高まり、
圭祐の目的である”脱走”に失敗する可能性が高まるー
さらには”他人を皮にして逃げようとした”などということも
ばれてしまい、最悪の場合は、大問題になってしまう可能性もあるー。
そうなれば、”人を皮にする薬”をくれた慎一にも
迷惑がかかってしまうー。
「我慢だ、俺ー」
千夏の身体でそう呟く圭祐ー
「--って、この声で”俺”とか言ってると
それだけでやばい…」
そう呟くと、鏡の前で深呼吸をしてから、
千夏は元気に言い放ったー
「病院脱出大作戦、スタート~♡」
片手をあげて可愛らしいポーズを取ってから
「--ふふふふふ」と、病室の外に向かって行く千夏ー。
”これがナース服ってやつか”とゾクゾクしながら、
病院の廊下を歩くー
なんだか落ち着かない感じだー
髪の感触ー
胸の感触ー
足の感触ー
性別の違いを感じる部分だけではないー
呼吸や、目の見え方、歩幅など
あらゆる部分が違うー
”他人の身体になるって、
ここまで”変わる”ものなのか”
と、ある意味で感動を感じながら、
足早に病院の出口の方を目指そうとするー。
圭祐は、一度脱走しようとしたため、
出口から遠い病室に移されていたー
そのため、最短ルートで病院を脱出しようとしても、
ある程度の時間がかかってしまうー。
「--ってー」
速足で病院を歩いていた千夏が足を止めるー
「--超トイレ行きたいじゃんこの子…」
千夏は呟くー
皮にした人間を着ると、尿意まで
その子のものになるのだろうかー。
「--トイレ我慢して俺の様子を見に来ていたなんて
ちょっと興奮するなぁ…」
”病院出るまでもたない気がする”などと思いながら、
「-目覚めた瞬間、漏らしちゃったりしてもかわいそうだし」と、
千夏はトイレに駆け込んだー。
「--ふぁ~、女子トイレに侵入~」
笑いながら千夏が鏡を見つめるー。
「--せっかくだからちょっとだけ」
ニヤッとしながら、胸を揉み始める千夏ー。
「うへへへへ うほほほほほほほっ」
奇妙な笑い方をしながら胸を触りまくる千夏ー
だがー
その時だったー
「-----!!!!」
「-----な、、何してるの…?」
偶然トイレに入って来た
女医に、胸を揉みまくっているところを見られてしまったー
「---い、、、、い、、、い、、いや、、こ、、これは」
パニックになった千夏は、
咄嗟に慎一から貰った注射器を、その女医に打ち込んだー。
②へ続く
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コメント
圭祐は無事に病院から脱出(?)できるのでしょうか~?
続きはまた明日デス!
今日もありがとうございました!!
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