<MC>お年玉ちょうだい②~暴走~

お願いすればお年玉を貰うことができるー。

それを知ってしまった正平の暴走が
始まっていく…。

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「---やったやったやった!!!」
正平は、部屋でたくさんのお金を見つめて、笑みを浮かべていたー。

お年玉ちょうだいー。
そう言うだけで、みんな自分にお年玉をくれるー

どうしてかは分からないけど、
みんなみんな優しいし、ありがとう!
という気持ちで、正平はいっぱいになっていたー。

「---すごっ…」
正平は、福沢諭吉の山を見て笑みを浮かべる。

カードショップの店長に、「お年玉ちょうだい」とお願いしたところ、
レジから5万円を出して渡してくれたのだー。

調子に乗った正平は
「もっと欲しいなぁ~」とお願いしたところ、
カードショップの店長はお店の奥の金庫から
翌日に銀行に振り込む予定だった金額、
20万円ちょっとを正平に渡してくれたのだったー

「--何買おっかな~!
 今年はすごいや!」
正平には”自覚”がないー。
自分が他人を洗脳しているという、自覚が、まるでないー。

正平のあまりにも強すぎる物欲が
正平に、本来、人間ではありえない
強大な力を与えたー

だが、正平はまだ3年生ー
”お願いすれば、お年玉をくれる”という状況に
疑問を抱いて、「これはやばいのではないか」と
考えることが出来るような年齢では、ない。

お願いしてもらえれば、ラッキー!となってしまう年齢だー。

「--これで、ゴールドアイズドラゴンが買える~~!!!」
正平は、自分がやっているカードゲームのレアカードの
名前を口にすると、嬉しそうに笑みを浮かべたー

合計で既に30万円近くのお年玉ー
去年まではせいぜい、1~2万円程度だったため、
正平からすれば、ありえない金額だったー。

翌日ー

正平は嬉しそうに、
お年玉の札束を握りしめてー
カードショップに向かったー

しかしー

「--あれ…」
正平はカードショップの前にやってきて唖然としているー。

「---あ、正平くん」
カードショップの女子高生の常連も、偶然お店に来ていて、
正平と同じように唖然としていたー

”臨時休業”
そう、紙が貼られているー。
理由は、正平には分からないー

が、昨日、お店の売上も含む金額を金庫から出して
正平に渡してしまったことでー
経営的に危機的状況に一気に陥ってしまいー、
店長がお店を開くどころではなくなってしまったのだー。

個人経営のお店にとって”25万”は非常に大きなお金。
それだけで、経営の危機を迎えてしまうようなことは、
実際に起こりうることだー。

だがー
正平はそんなこと、知らないー。

ただ単にお店が休みになったと思っているー

「あ、そうだお姉ちゃん!」
常連客の女子高生に向かって正平が笑うー

「お年玉ちょうだい!」
正平が言うー。

「え…?」
女子高生の美月(みづき)は戸惑うー。

「---お年玉!今日もほしいな~!」
正平の言葉に、
美月は「ご、、ごめんね…」と戸惑う。

正平の洗脳のチカラは、まだ、完全ではないー。
美月が戸惑っているのはー
昨日も、正平に”お年玉”を渡してしまったことで、
既に手持ちのお金がほとんどないからー、
だった。

手持ちのお金がないから渡せないー
美月はそんな風に考えて戸惑っていたー。

しかしー
正平はまだ、3年生ー。
”お金を稼ぐこと”がどれだけ大変かどうか知らない。

「けちー!」
正平が言う。

「けち!!お年玉、もっと欲しいのに~!」
正平の目が赤く光るー

正平の物欲がーー
さらに”洗脳”のチカラを、強めたー。

「--あっ…」
ビクンと震える美月ー

「ご、、ごめんね…今、、お金を稼いできますから…」
美月はそう呟くと、ふらふらと歩きだして
近くのチャラそうな男に身体をくっつけ始めたー

「--ねぇ、わたし、お金ほしいの…♡」
美月の頭の中ではー
”正平くんのためにお金を稼がないと”という
思考が、闇が溢れるように、爆発しー
自分の知識の中で、必死にお金を稼げる方法を考えーー

その結果ー
自分の身体を売る行為に走り出したー

「へへっ!おもしれぇ女だな」
男が笑うー。

「--わ、、わ、、…」
美月が少し震えながらー
けれども正平の洗脳の力が美月の自我を上回って
美月を完全に支配するー

「--わたしを好きにしていいから……
 お金を先に……お金を・・・」
美月が言うー。

「好きに?ほんとだな?」
男が美月を睨む

「う、、うん…!何をしても、、何をしてもいいので…!
 お金を下さい!」
美月が言うと、男が1万円札を美月に渡すー

美月は、はぁはぁ言いながら正平に近づいてくると
「はい…お年玉です…」と、不自然な表情で呟いたー

「わぁ…!ありがとう!お姉ちゃん!」
正平は笑みを浮かべながら走り去っていくー

「すごいや!すごいや!!すごいや!!!」
満面の笑みの正平ー。

「---さぁ、行こうか」
いかにもヤバそうな男が美月を抱き寄せるー

「あ、、、…あ…」
美月は自分がどうしてこんな行動をしているのか
理解もできないまま、男に連れられて行くー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やがてーーー
正平の異変に、両親がすぐに気付いたー

3年生の正平が、どんなに莫大なお金を隠そうとしても
大人から見れば、それは”すぐに分かる異変”でしか、ないー。

「---何をしてるの!?」
母親が戸惑うー

「正平…そのお金、どこから!?」
父親も戸惑うー

正平の机にはー
50万円以上の大金ー。

1月4日ー
お年玉をねだり続けた正平はー
さらにお年玉を貰い、
お金を増やし続けていたー。

「---えへへ、すごいだろ~!」
正平が得意げに言う。

「僕、大金持ちになりたい!」
正平が笑うー

その表情にはー
悪意は微塵も存在せずー
ただただ、純粋な気持ちだけが現れていたー。

「--し、正平…そのお金…」
父親が戸惑っていると
正平は「お年玉で貰ったんだ~!」と笑うー。

「--そうだ!お父さんとお母さんももっとお年玉ちょうだい!」
正平が笑いながら言うー。

正平の目が赤く光るー

「--そ、、そうだな…うん…そうだ…今、銀行で全部下ろしてくる」

「--そ、そうね…もっとお年玉をあげなくちゃ」

両親の様子がおかしくなるー。

正平は、両親からもお年玉を貰うー。

やがてー
お正月が明けても、正平は”お年玉ちょうだい”というと、
お金を貰えることに気づくー。

「--お年玉、ちょうだい!」
「--お年玉、ちょうだい!」
「--お年玉、ちょうだい!!!」

両親にお願いを続ける正平ー

正平は、両親のお金の都合なんて、まだ知る年齢ではないー
両親のお金なんていくらでもある、と
本気でそう思っているー

だがー
正平からお年玉をねだられ続けた父親は
消費者金融からお金を借り始めてー
やがて、会社からお金を着服ー
逮捕されてしまうー

母親は、違法な風俗店で働き始めるも
お店ごと摘発されてしまいー
逮捕されてしまったー

正平が”洗脳”の力に目覚めてから、
わずか1か月ーー

父も、母も、家もーーー
正平は失ってしまったー。

「--なんだよ!なんだよ!!
 僕にお年玉をくれよ!!」
正平は大声で叫ぶー。

親戚の家に引き取られた正平ーーー

正平の行動は、さらにエスカレートしていき、
”知らない人”であっても
お願いすればお年玉をくれることに
気づいてしまったー。

「--お年玉ちょうだい!」
「--お年玉ちょうだい!!」
「--お年玉ちょうだい!!!」

「---なにしてるの!」
ついに、親戚にも、正平が”異様なお金集め”を
していることに気づかれてしまう。

「---なにって?お年玉を貰ってるだけだよ!」
正平が満面の笑みで言うー。

「--し、、正平くん!あなた、何かおかしいわよ!」
正平がお世話になっている親戚の家のお姉さんが半分怯えた様子で言うー。

何かが、おかしいー
異様なオーラを感じるー

「--僕は何も悪いことしてないよ!
 僕がお願いすると、みんな僕にお年玉をくれるんだ!」
正平が笑うー。

「--も、、貰いすぎよ…!
 どうして、そんな…?」
親戚のお姉さんは困惑しているー。

正平の机の上にはーー
ざっとみて、数百万円レベルの札束が置かれている。

明らかに、おかしいー
こんなに”普通”お年玉を貰えるはずがないー

「--お父さんが言ってたんだ!
 他の人がくれるものは、貰わないとだめだって!」
正平が笑うー

以前、親戚のおじさんが、お菓子をくれた際に、
正平が「僕、これ、きらい!」と断ってしまった際に、
正平は父親に注意されたことがあったー。

”他の人がくれるものは、自分がいらないものだったとしても
 ちゃんと”ありがとう”って言わなくちゃいけないんだ”
とー

父親はこの世の”社交辞令”を教えたのだー

正平は、それを守っているー

「--もらったものは、ちゃんと喜びなさい!って
 お父さんが言ってたんだ!」

正平の言葉に、親戚のお姉さんは、戸惑うー。

「---で、、でも、正平くんは、おかしいよ!
 周りの子、そんなにお年玉貰ってる子はいないでしょ!?」
お姉さんの言葉に、正平は
頬を膨らませたー。

拗ねているー。

「--お姉ちゃんも僕にお年玉ちょうだい!」
正平が笑うー

「----!ぁ…」
お姉さんが虚ろな目になって、
「--ちょっと待っててね」と、
自分の財布からお金を全て取り出して
正平に「はい、お年玉」と渡すー。

「----………」
ぼーっとしている親戚のお姉さんー

頭の中の整理が追い付かないー
”正平くんに、お年玉を渡さないとー”

そんな気持ちでいっぱいになるー。

「--お姉ちゃん、ありがとう!」
正平が自分の部屋に立ち去っていくー。

親戚のお姉さんは、困惑した様子でーー
けれども洗脳が解けるまでには時間がかかるため
正平にお年玉を渡してしまったことをー
何とも思っていなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

「----(やっぱり正平くんは、おかしい)」

元々正平に強い疑問を抱いていたことー
そして、正平に洗脳されて、すぐにお年玉を渡したことー
正平との距離がある程度あったことー

様々な要因で、夜には、親戚のお姉さんの
洗脳は解けつつあったー。

「おかしいー」
彼女は、正平の部屋の大金を”没収”しようとするー。

正平の部屋に忍び込みー
正平のお金を取り上げて、母親に相談しようー。

正平を引き取った親戚のおばさんの長女で、
女子大生の彼女はー
正平のことを”このままじゃいけない”とそう感じていたー

正平が寝ていることを確認した彼女は、
持ってきた鞄に、正平の机の上の大金を放り込むー。

子供ゆえにー
防犯意識というものが、まだ、ないー

親戚のお姉さんは、正平の机の上のお金を全部回収すると
母親にこれを相談しようと立ち去ろうとしたーー

しかしー

「あーーーーーー!!!!!!!いけないんだ~~~!」

「--!」

正平の声がしたー

「--え」
親戚のお姉さんが振り返ると、
そこには、目を覚ました正平がいたー

「---泥棒は悪いことだって、お母さん言ってたよ!」
正平が叫ぶー

「--こ、これは泥棒なんかじゃないの!
 正平くんーーこんなたくさんお金を持ってちゃいけーー」

「--泥棒はやっつけないとだめだ!ってお父さん言ってたよ!」

正平の目が赤く光るー

「泥棒はやっつけろ!」
「泥棒はやっつけろ!!」

その言葉にーー
親戚のお姉さんは「うん…」と呟いて、
鞄を床に落としたー

そしてー
正平の部屋から出るとー
部屋の外で、親戚のお姉さんは自分で自分の頭を壁に叩きつけ始めたー

「どろぼうは、、やっつけろ…
 どろぼうは、、、やっつけろ…」

壁に思いきり頭を叩きつけるお姉さんー。

彼女の母親が異常な音に気付いて、
駆け付けるも、
親戚のお姉さんは母親を振り払ってー
そのまま壁に頭を叩きつけ続けーー

やがて、動かなくなったー

「--すごい…!
 すごい…!
 僕、、、正義のヒーローになれるかも…!」

これがーー
”洗脳”の力を”お年玉”以外に使ったー

そう、
悪夢の始まりだったー

③へ続く

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エスカレートしていく洗脳…
正平くんの運命は…!?

続きはまた明日デス~!

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MC<お年玉ちょうだい>

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