”目を合わせると、その相手と身体が入れ替わってしまう”
そんな状態になってしまった彼は
他人と、目を合わせなくなったー。
怯えるように、生きるようになった…。
--------------------
「う………」
泰一が目を覚ますー。
そこは、病室ー。
時計を見るー。
特に、騒ぎになっている様子はない。
通常通りの病室だー。
「あれ…?」
泰一は、寝ぼけた様子で呟くー。
高校時代の泰一は、
理科の授業の際に、クラスメイトの山田の
わるふざけによって起きた事故に巻き込まれて
危うく失明するところだった。
が、医師の見立てに反して、泰一は失明せず、
むしろ、前よりもよく見えるぐらいの状態だったー
しかしー
女性看護師の多喜恵と目を合わせてしまった瞬間にー
身体が入れ替わってしまい、
泰一は多喜恵として、多喜恵は泰一をして
過ごすことを余儀なくされていたー。
まだー
入れ替わってしまった”理由”を、
このときの泰一は知らないー
そしてー
戻った理由もーー。
「--あれ…俺…?」
確かに自分は多喜恵と入れ替わっていたはずー
それに……
意識を失う直前、急に多喜恵の身体の調子が
悪くなった気がするー
「夢だったのかな…?」
泰一がそう呟くー
普通に考えてみれば、入れ替わりなんてありえないー。
こうして、元の自分の身体に戻っているんだし、
あれは夢だったのかもしれない。
だがー
カレンダーの日付は、確実に”経過”しているー
入れ替わっていた間の分もー。
入れ替わりは現実で、何らかのきっかけで
元に戻ったということだろうかー。
廊下があわただしいー
走る足音が聞こえるー。
「--何かあったのかー?」
そういえばー。
イヤな予感がするー
入れ替わりが夢じゃないとすれば、
戻る直前、多喜恵の身体が急に調子が悪くなって
血を吐いて倒れた気がするー。
泰一の病室から出た直後にー
「--多喜恵さん!」
泰一は病室から飛び出したー
そこにはーーー
血を吐いて、真っ青な顔色で倒れた
多喜恵の姿があったー
「--え…」
泰一は唖然とするー
入れ替わりは夢じゃなかったー。
多喜恵は、見るからに危険な状況だー。
白目を剥いて痙攣しながら、
血を口からさらに噴き出すー。
「な、、なんで…」
泰一は唖然とするー
そしてー
泰一と入れ替わっていた多喜恵は、
そのまま助からなかったー
”身体中が”何か”に拒否反応を起こして
全身の機能が暴走、短時間で死に至った”のだと言うー
「---どういうことだよ…」
泰一は頭を抱えるー。
「多喜恵さん…?」
泰一は、まだ自分の身体の中に多喜恵が
いるのではないかと思い、
自分ひとりの病室で呟くー
だが、返事はないー
多喜恵の意識は、自分の身体の中には
もう存在しなかったー
”何が起きているー?”
泰一は思うー
急に多喜恵と身体が入れ替わったと思ったらー
1週間後に、急に元に戻ったー。
しかも、戻る際に多喜恵の身体は死んでしまったー
死んだら、元に戻るのか?
いや、そもそも…
「---」
泰一は、”自分が多喜恵を死なせてしまったかもしれない”と
いう感情から、なんとなく、その日は誰とも”目を合わせる”ことが
できなかったー。
翌日ー
泰一は退院するー
「--お兄ちゃん!退院おめでと~!」
病院にまで迎えに来てくれた妹の利紗子(りさこ)-
「…おお!?利紗子が出迎えに来てくれるなんて
なにを企んでるんだ~!?」
泰一は、落ち込みながらも妹の利紗子を
心配させないように、と明るく振舞ったー
「え~!?わたしだってお兄ちゃんのこと
心配してるんだよ~!?も~!」
ツインテールの利紗子が苦笑いしながら言う。
「はは、ありがとうー」
ーーー!?!?!?!?
泰一は表情を歪めたー
えー?
目の前に、俺ー?
”ありがとう”を口にした声がー
妹の利紗子の声ー
「え…!?!?なにこれ…」
目の前にいる泰一が驚くー
”利紗子”と”目を合わせて”しまった
泰一は、入れ替わってしまったー。
「---……ちょ!?!?
お兄ちゃん!」
泰一(利紗子)が叫ぶー
「り、、利紗子!?利紗子なのか!?」
利紗子(泰一)が叫ぶー。
「わたしたち、、入れ替わってるぅ~!?!?!?」
泰一(利紗子)は顔をべたべた触りながらそう叫んだー。
・・・・・・・・・・・・・
帰宅するふたり。
母親と父親を心配させないように、
部屋でふたりは話し合う。
「-ふっふふふふふ~!
お兄ちゃんの身体~!」
泰一(利紗子)はなぜかとっても嬉しそうだ。
「おいおいおいおいおいおい…」
利紗子(泰一)はあぐらをかきながら呟く。
なぜか目隠しされている利紗子(泰一)。
「妹の身体を見るなんて、許されないもん!」
泰一(利紗子)がおこりっぽく言う。
「--お、、おい…これじゃあ、何もできないよ」
利紗子(泰一)が苦笑いしながら言うと、
「お風呂に入るときは、わたしと一緒に!
学校は目隠ししたまま!」
と、泰一(利紗子)が言う。
「り、、利紗子は俺の身体見てもいいのかよ!」
目隠しされたまま利紗子(泰一)が叫ぶと、
泰一(利紗子)は「うん!」と
何の悪気もなく答えたー
・・・・
が、さすがに目隠ししたままでは何もできないので
なんとか説得して、目隠しを取ってもらったー
”---…”
利紗子(泰一)は
表情を暗くするー
”そんなわけ、ないよな”
心の中で自問自答するー
看護師の多喜恵のように、
死んだりーー
しないよなー?
とー。
”身体中が”何か”に拒否反応を起こして
全身の機能が暴走、短時間で死に至った”
それがー
多喜恵の死因
病院の先生の言っていた
”何かに拒否反応”の”何か”とは、
泰一の意識のことかもしれない。
他人の意識に対して身体が拒否反応を起こしてー
結果、多喜恵の身体は死んでしまったのかもしれないー
だとすればーー
利紗子もー。
「利紗子!」
利紗子(泰一)は叫ぶ。
「--……元に戻る方法…真剣に考えようー」
利紗子(泰一)が言うと、
泰一(利紗子)は髪を整えながら笑った。
「-ーーえ~?別にいいよ。
わたし、ううん、俺、イケメンになるから」
髪をかっこつけて触りながら泰一(利紗子)が笑う。
妹の利紗子が、イケメンを見ると涎を垂らすぐらいに
イケメンが大好きだ。
勝手に兄・泰一の身体をイケメンに
変えようとしている。
「き、、聞いてくれ!利紗子!
実は…!」
”病院で、多喜恵という女性と入れ替わって
1週間後に死んだ”
ことを、告げたー
利紗子が怖がってしまうと思い、隠していたが
言わないとまずいー。
泰一(利紗子)の顔色が青ざめていくー
「う、、嘘だよね…?その話?」
泰一(利紗子)の言葉に
利紗子(泰一)はほんとなんだ…、と呟く。
「--そ、、…そ、、、ぐ、偶然その人が
病気か何かだっただけだよ!
わたしは大丈夫!」
泰一(利紗子)が無理に元気を振舞うー
しかしー
泰一(利紗子)の手は震えていたー。
怖がっているー。
利紗子(泰一)はそんな妹の姿を見ながら
「大丈夫」と優しく励ましたー。
できることは、なんでも試してみようー。
わざとぶつかってみたりー
階段から転げ落ちる真似をしてみたりー
お互いを見つめ合ったりー
元に戻れー!と念じてみたりー
なんでもしてみた。
でも、身体は元には戻らない。
「きっ、、きすぅぅぅ!?!?」
泰一(利紗子)が飛び跳ねる。
「--ほら、、入れ替わりのお話とかでそういうの見たことがあるし」
利紗子(泰一)が、顔を赤らめながら言う。
「-ーーえ~~~!初のキスがお兄ちゃんとかやだ~~!!」
泰一(利紗子)が足をバタバタさせるー。
「--でも、試してみないと!」
利紗子(泰一)が真剣な表情で言うー
「やだなぁぁぁぁ」
泰一(利紗子)は不貞腐れた顔をしながらも
なんとか納得してくれたー
そしてーー
入れ替わった兄と妹でキスをするー
しかしー
戻らなかったー
その後も、普通の生活を無理やり送りながら
元に戻る方法を探す。
「ふ~~~」
利紗子(泰一)は、理沙子の髪をいじりながら
ため息をつくー
1週間半が経過したー
多喜恵のように、死んだりはしていないー
やっぱー
入れ替わりとは関係なかったー
多喜恵の身体は、たまたまーーー
「---利紗子」
利紗子(泰一)が、泰一の部屋にいる泰一(利紗子)に会いに行くー。
利紗子はいつもツインテールだったが
入れ替わってからは面倒なので、ストレートにしているー
「--あ、お兄ちゃん!」
泰一(利紗子)は、「この服似合うかな~!」と
ショッピングサイトを見つめている。
「お前なぁ~」
呟く利紗子(泰一)
その時だったー
「---ふふふ…にあうかなぁ~……」
泰一(利紗子)が急に眠そうに呟くと、
そのままスマホを机の上に置いて、
すやすやと眠り始めてしまったー
「--なんだよ~!?寝不足か?
急に寝るなんて」
利紗子(泰一)は笑いながら
急に寝落ちした泰一(利紗子)に声をかけるー
しかしー
「---!!!」
急にイヤな予感がしたー
「--まさ…」
”まさか”と言おうとした直後ー
「----うっ……」
胸が急に苦しくなるー。
”お、、おい…冗談だろ!?!?”
泰一は思うー
これは…!
病院の多喜恵の時と同じー。
あの時は、泰一になった多喜恵の病室から
外に出た直後だったー
だからー
多喜恵の身体が苦しくなった時に、
泰一の身体がどうなっていたのかは見ていないー
多喜恵(泰一)が苦しんで、倒れたと思ったら、
泰一は自分の身体に戻っていたー。
もしかしたら、あの時も、
泰一になった多喜恵は、
今の泰一になった妹・利紗子のように
急に眠るようにして眠ってしまったのかもしれないー
だとすればーーー
「お、、おい!利紗子…目をさま…ぐはぁぁっ!」
泰一(利紗子)を起こそうとしたその時だったー。
激しく血を噴き出す利紗子の身体ー。
口から、ボタボタとーー
「う、、うそだ…」
身体が激しく震えて、
異様な悪寒がするー
「うそだ……やめろ……」
多喜恵の時と同じー
”身体中が”何か”に拒否反応を起こして
全身の機能が暴走、短時間で死に至るーーー”
「あ…あ…」
そのまま意識を失ってしまう利紗子(泰一)
そしてーーー
「--うっ!」
泰一は、目を覚ましたー
泰一としてー…
目の前には、明らかに既に息を引き取っている
利紗子の姿。
「うっ…うわあああああああああああ!!!」
泰一は叫びながら両親を呼びに行くー
だがー、
利紗子は助からなかったー
・・・・・・・・・・・・・
「---俺、気づいたんだー」
現在ー。
中学時代に仲の良かった女子で、
大学で偶然再開した志穂に、
これまでのことを打ち明ける決意をして
打ち明けた泰一。
大学生になった泰一は
一人暮らしを始めていた。
もう、誰も巻き込まないため。
そして、大学でも、誰にも目を合わせない日々を送っていたー
本当は、引きこもればいいのかもしれない。
だがー生きていくためには、お金が必要だ。
大学を出て、人とできるだけ関わらない仕事を始めたい。
「---”人を目を合わせると、その人と入れ替わってしまう”って」
泰一が言うと、
「そんな…」と志穂は呟いた。
「だからー俺のことは放っておいてくれ」
泰一が呟くー。
あのあと、利紗子が死んでからー
高校に復帰した泰一は、”目を見ると入れ替わる”ことに気づいた。
気付くまでに3人が犠牲となったー。
そしてー
入れ替わったあと、
必ず数日で、相手の身体は泰一の魂に拒否反応を起こしてー
死に至る。
死ぬまでの期間は、人によって違った。
最初の多喜恵は1週間、
妹の利紗子はもうちょっと長く、
高校のクラスメイト・山田は3日で死んだ。
そしてーー
泰一は気づいた。
”入れ替わった相手の身体で死んでも”
死ぬのは泰一ではなく、相手であることにー。
たまたま、不良にからまれた際に
目を見てしまって入れ替わった際に
泰一は、”もう疲れた”と、不良の身体ごと死のうと思ったことがあるー。
だがー
自ら飛び降りした直後ー
泰一は自分の身体に戻って、
その不良が死んだー。
それを利用して、泰一は自暴自棄になり、
気に入らないクラスメイトや、不良生徒を次々と葬ったー。
そしてー
最後にはーー
泰一は罪の重さに押しつぶされて、
ふさぎ込んだのだったー。
「----……そんなことがあったなんて」
志穂が呟く。
「--だから、俺と関わっちゃいけない。
入れ替われば…志穂は、死ぬ…」
泰一の言葉に、志穂は難しい表情を浮かべる。
「---………」
どうしてこんなことになったのか。
高校時代、クラスメイトの山田が
理科の実験で、イタズラであらゆる薬品を混ぜ合わせた。
そして、それが目にかかってしまったー。
あれがきっかけだろうー
けれどー
「な~んて」
志穂が笑う。
「!?」
泰一がハッとするー
だが、遅かったー
「そんな話、信じると思った~?」
志穂が、泰一の目を覗き込むー
「ば、、ばかっ!!!やめろ!!!」
泰一は叫んだー
だがーー
志穂と泰一の目はーー
”合って”しまったー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
この入れ替わりの力だと
使いこなすのは大変そうですネ~…!
相手のことを何も気にせず、
使うタイプの人なら楽しめそうな気もしますケド…汗
続きは明日デス~!
コメント
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すごく面白いねぇ
利紗子(中身が違う版も)が可愛かったです
そういえば利紗子の年齢はどのくらいなんだろう
妹のことだから、兄と歳が離れていることは確かなんだよなぁ
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> すごく面白いねぇ
> 利紗子(中身が違う版も)が可愛かったです
> そういえば利紗子の年齢はどのくらいなんだろう
> 妹のことだから、兄と歳が離れていることは確かなんだよなぁ
ありがとうございます~!
ふふふ…年齢は、、ご想像にお任せデス~!
ある程度差はありますネ~!