<入れ替わり>目を合わせない男①~力~

誰とも目を合わせようとしない男がいた。

彼が、何故、目を合わせないのか。

それはー……・。

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「あいつ、いつもオドオドしてる感じでキモイよな」

大学ー。
とある男子を見つめながら
噂している大学生たち。

噂されている男子大学生・黒山 泰一(くろやま やすいち)は、
目を逸らした。

彼はーー
”人間嫌い”ではない。
むしろ、人間は好きだ。
小さいころは、友達もたくさんいた。

けれどー
今は、”陰口をたたかれている”

そしてー
泰一自身も、人間に怯えているかのように
周囲の人間を避けるように、
いつも一人でいる。

「----」
食堂でも一人。
食堂のおばちゃんからラーメンを受け取る際も
いつも目を合わせない。

「---」
一人、黙々とラーメンを食べる泰一。

彼はー
いじめられているわけではない。

それなのに、凄くオドオドしているー。
周囲に人が来ると、
それだけで目を逸らす。

「--ねぇ」
そんな泰一の前に、可愛い女子大生がやってくるー。
小宮山 志穂(こみやま しほ)-。
泰一の中学生時代の同級生で、
中学時代、仲良しだった女子生徒だ。

志穂は、最初、大学で偶然再会した泰一を見て
とても喜んだのが、
泰一が、中学時代とはまるで別人のように
なってしまっていて、戸惑っていた。

それでも、志穂は何かと泰一のことを心配して、
絡んでくる。

「--ねぇ~…どうして、目を合わせてくれないの?」
志穂が困ったようにして言う。

「一度ぐらいわたしのほう見てくれたっていいでしょ~?」
志穂が苦笑いしながら言う。

「---やめとけって」
泰一が呟くー

「--……」
大学生活半年ー
なんとか耐え抜いてきたんだ。

ここで、それを壊すわけにはいかない。

「--そんな~!冷たいなぁ~
 中学のとき、いつも遊んだじゃん!」
志穂は、中学時代よりもはるかに可愛くなっているー
その志穂が話しかけてきてくれる。

泰一は嬉しかった。
本当は、中学時代の時のように
志穂と遊んだり、話をしたりしたい。
志穂さえ良ければ、彼氏彼女の関係にもなりたいー

でもーーー
”できない”

自分はーーー
”高校時代”、
とんでもないことをしてしまったからー。

「--…もう俺と関わらないほうがいいよ」
泰一が呟く。
ラーメンを一人、食べながら。

「…も~~!何があったのよ~!
 前みたいにちゃんと話してくれないと分からないよ~!」
志穂が叫ぶ。

「--そ、、それは……」
泰一は目を逸らす。

絶対に目を合わせようとしない泰一。

しかしーーーー

「ほ~ら!わたしのほうをみなさ~い!」
志穂が笑いながら、泰一の顔を覗き込む。

「--ば、、ばか!!!やめろ!!!!!」
大声で怒鳴る泰一ー。

驚いてしまう志穂。

あまりの大声に、周囲の大学生たちも
泰一と志穂の方を見る。

「--ごめん」
泰一がそれだけ呟くと、
志穂は悲しそうな表情を浮かべて
「もういいよ」と呟く。

「そんなに一人でいたければ、一人でずーっといればいいじゃん!」

ふん!と言いながら立ち去って行く志穂ー。

「ごめん。志穂ー」
泰一は呟くー

自分だって本当は、志穂と仲良くしたい。
けれど、それはで、きない。
好きだからこそ、志穂を巻き込みたくないー。

ーー高校時代。

それは、起きた。

理科の授業中。

”事故”は起きた。

「おい!山田~!やめとけよ~!」
泰一が笑いながら言う。

「ま~ぜまぜ~!へへへへへ」
高校時代のクラスメイト・山田が
ニヤニヤしながら理科の実験の授業で使う
薬品を適当に混ぜまくっているー。

あらゆる液体を混ぜていく山田。

イタズラ好きの山田は調子に乗っていたー。

周囲の女子も「やめなよ~!」と叫んでいるー

さらに、山田は家から持ち込んだ適当な液体を
放り込んで、「お菓子だって、混ぜて美味しくなるやつあるだろ~?
あれとオナじさ~!」
山田が笑う。

「おい!山田ぁ!」
理科の先生が声を上げる。

「やべっ!」
山田が笑いながら、
「”山田スペシャル”の完成だぜー!」と叫ぶと、
あらゆる液体を混ぜたビーカーを、
そのまま火の方に持っていくー。

「--おいおい、ほどほどにしておけよ~」
泰一があきれながら言う。

”山田スペシャル”が火にかざされるー。

そしてーーー
化学反応を起こして”爆発”したー

「--=!!!!」

ちょうど、爆発して溢れた液体がーー
泰一に直撃したー

「うわあああああ!」
泰一が悲鳴を上げる。

「おい!!大丈夫か!?」
理科の先生が叫ぶ。

泰一の両眼に液体が入り込んで、
泰一は、緊急搬送されたー

そしてーー
目の手術が行われるー。
緊急手術だ。

”もう、見えないかもしれません”
泰一の医師は、そう泰一の家族に告げたー

目に包帯を巻いたまま送る日々。

そしてー
包帯を取る日がやってきたー

”目はほとんど見えないかもしれないー”
そう言われていた泰一だが、
包帯を取ると、目は見えていたー

いや、
それだけじゃない、とてもよく見えるー。

「--どうですか?見えますか?」
ナースの一人・多喜恵(たきえ)が、声をかけてくる。

「あ、はい。なんだか、とてもーーー」

「---!?」

泰一と多喜恵の目が合ったー

その瞬間ーーー

「--とても、よく見えますー」
多喜恵が笑みを浮かべながらそう呟いた。
泰一は戸惑っているー

「---え…俺…?」
多喜恵が呟く。

目の前に、ベットに座った自分がいるー

「--え……え???」
泰一も驚いている。
目の前にナース服の自分がいるー

「えええええええええええええ!?!?!?」
ふたりは叫んだー

”入れ替わって”しまったのだー。

「--う、、うそ…!?どうすればいいんですか!?」
多喜恵(泰一)が戸惑うー。

「-そ、そんなこと言われても…」
泰一(多喜恵)がもじもじしながら呟く。

突然の入れ替わり。
一体、何が起こってしまったのかー。

そこに、別の医療スタッフがやってきて、
多喜恵の名前を呼ぶ。
どうやら急用らしい。

「え…あ…??は、、…」
戸惑う多喜恵になってしまった泰一。

泰一になってしまった多喜恵は
「あ、、、あの…!」と声を上げるー

自分たちが入れ替わってしまったことを
泰一(多喜恵)が丁寧に説明するー。

しかしー
信じてもらえるはずもなかったー。

一体、何故、自分たちが入れ替わってしまったのかー。
まるで、意味が分からない。

そんな風に思いながら
多喜恵になった泰一と泰一になった多喜恵は
なんとか元通りに戻る方法はないかと模索しながら
日々を過ごした。

「----あぁぁ~……俺みたいな
 年頃の男子には刺激が強すぎるぜ…」
多喜恵(泰一)が笑みを浮かべながら
立派なふくらみを見つめる。

「巨乳なナースさんだなぁ…えへへへ」
多喜恵(泰一)がトイレで鏡を見つめながら
胸をポンポンと触るー

多喜恵の身体になってしまった以上、
お風呂に入らないといけないし、トイレにもいかないといけないから、
泰一(多喜恵)に許可を貰って
そういうときは多喜恵の身体を見てしまうが、
ドキドキしてしまうー
一瞬、多喜恵の身体でエッチしたいとも思ってしまったが
さすがにそれは我慢して、
普通に生活を続けていた-

「早く元に戻れるといいですねぇ」
多喜恵(泰一)が病室で呟く。

「う~ん…そうですね」
泰一(多喜恵)が苦笑いするー

「なんか…その…どうしても胸が気になっちゃって…」
多喜恵(泰一)が苦笑いしながら言う。

「あ、、あぁ、変な意味じゃなくて!
 あの、ほら、下を向くと膨らんでたりとか、
 お風呂のときとか、下着とか…
 俺、ずっと男だったんで、変な感じで」

多喜恵(泰一)が言うと、
泰一(多喜恵)も笑ったー。

「ふふふ…大丈夫ですよ~
 正直に言っちゃうと、わたしも
 なんか、気になっちゃいますし」
泰一(多喜恵)がズボンの股間のあたりを
気にしながら言う。

「それに…胸がこう…膨らんでないっていうのは
 なんか、大事なモノを失った感じで 
 落ち着きませんし」

苦笑いする泰一(多喜恵)-

「あ~!それ、分かります分かります!
 俺も、ここ、落ち着かないんですよ~!」

入れ替わりを経験したもの同士にしか
分からない話で、盛り上がる二人。

患者と看護師でしかなかったはずの二人の間に、
入れ替わったことで妙な仲間意識が芽生えていた。

「あ、そうだ。俺の身体、明日退院みたいですけど
 どうしましょうか?」
多喜恵(泰一)が言うと、
泰一(多喜恵)が呟く。

「どうすれば元に戻れるのか分かりませんし、
 そのまま退院するしかないですよね…」
泰一(多喜恵)は申し訳なさそうに言う。

親にもー
友達にもー
もちろん多喜恵のほうの関係者にも
入れ替わりのことは話していない。
なんとか、お互い情報交換をしながら
上手くここ数日間はやってきたー。

「---ま、、まぁ…そうですね」
多喜恵(泰一)が顔を赤くしながら言う。

あとどのぐらい、女の身体で過ごせばいいのだろう。
仕事が終わってから多喜恵として多喜恵(泰一)は
多喜恵の家に帰るのだが、女の人の部屋に入るというだけで
凄いドキドキしてしまう。

極力、何もしないようにしているし、
エッチなことはなんとか我慢しているが
やっぱり、ドキドキは止まらない。

「--それに、わたしが退院すれば、
 たっぷり今後のこと、相談できますからね」
泰一(多喜恵)が言う。

”わたし”と言う”自分”を見るのも
なんとなく違和感があるー。

「--相談?」
多喜恵(泰一)が言うと、
泰一(多喜恵)は答えた。

「ほら、ここだと患者と看護師、の関係ですけど、
 わたしが…というか、泰一くんの身体が退院すれば、
 わたしの家でじっくり相談できますから」

確かにそうだー
ここだと長話はできない。

周囲から見ればひとりの看護師が
ひとりの患者にやたらと入れ込んでいるように
見られてしまうからだ。

退院すれば、多喜恵の家に泰一が足を運べば
いくらでも、相談はできるー

さすがに高校生で実家暮らしの泰一の家に
多喜恵が足を運ぶのはまずいが、逆ならなんとかなるだろう。

「--高校生活のことも相談しないとですね」
多喜恵(泰一)が言うと、
泰一(多喜恵)は頷いた。

しかしー
”そんなこと”は考える必要はなかったー。

何故ならーーー

「うっ……」
病室から出た多喜恵(泰一)は
突然胸が苦しくなって、胸を押さえるー。

「え…?」
ぐるんぐるんと回りだす世界ー

”いったい何が?”

そんな風に思っている間に、
身体がものすごく重くなって
口から何かを吐き出したー

「---!?」
”血”-?

多喜恵(泰一)が口から血を吐いたー

身体がさらに重くなるー
頭がガンガンと痛むー。

「あ…ああぁぁああああ…」
思わず苦しそうな悲鳴を上げる多喜恵(泰一)

”大丈夫ですか!?”

病院の患者が叫ぶー

その声を最後にー
何が起きたのか分からないままー
多喜恵(泰一)の意識は途切れたー

②へ続く

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コメント

”目を合わせると入れ替わってしまう”男の
入れ替わりモノです~!

自分の思い通りにコントロールできない
入れ替わりは、大変そうですネ~汗

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