誰とも目を合わせようとしない男がいた。
彼が、何故、目を合わせないのか。
それはー……・。
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「あいつ、いつもオドオドしてる感じでキモイよな」
大学ー。
とある男子を見つめながら
噂している大学生たち。
噂されている男子大学生・黒山 泰一(くろやま やすいち)は、
目を逸らした。
彼はーー
”人間嫌い”ではない。
むしろ、人間は好きだ。
小さいころは、友達もたくさんいた。
けれどー
今は、”陰口をたたかれている”
そしてー
泰一自身も、人間に怯えているかのように
周囲の人間を避けるように、
いつも一人でいる。
「----」
食堂でも一人。
食堂のおばちゃんからラーメンを受け取る際も
いつも目を合わせない。
「---」
一人、黙々とラーメンを食べる泰一。
彼はー
いじめられているわけではない。
それなのに、凄くオドオドしているー。
周囲に人が来ると、
それだけで目を逸らす。
「--ねぇ」
そんな泰一の前に、可愛い女子大生がやってくるー。
小宮山 志穂(こみやま しほ)-。
泰一の中学生時代の同級生で、
中学時代、仲良しだった女子生徒だ。
志穂は、最初、大学で偶然再会した泰一を見て
とても喜んだのが、
泰一が、中学時代とはまるで別人のように
なってしまっていて、戸惑っていた。
それでも、志穂は何かと泰一のことを心配して、
絡んでくる。
「--ねぇ~…どうして、目を合わせてくれないの?」
志穂が困ったようにして言う。
「一度ぐらいわたしのほう見てくれたっていいでしょ~?」
志穂が苦笑いしながら言う。
「---やめとけって」
泰一が呟くー
「--……」
大学生活半年ー
なんとか耐え抜いてきたんだ。
ここで、それを壊すわけにはいかない。
「--そんな~!冷たいなぁ~
中学のとき、いつも遊んだじゃん!」
志穂は、中学時代よりもはるかに可愛くなっているー
その志穂が話しかけてきてくれる。
泰一は嬉しかった。
本当は、中学時代の時のように
志穂と遊んだり、話をしたりしたい。
志穂さえ良ければ、彼氏彼女の関係にもなりたいー
でもーーー
”できない”
自分はーーー
”高校時代”、
とんでもないことをしてしまったからー。
「--…もう俺と関わらないほうがいいよ」
泰一が呟く。
ラーメンを一人、食べながら。
「…も~~!何があったのよ~!
前みたいにちゃんと話してくれないと分からないよ~!」
志穂が叫ぶ。
「--そ、、それは……」
泰一は目を逸らす。
絶対に目を合わせようとしない泰一。
しかしーーーー
「ほ~ら!わたしのほうをみなさ~い!」
志穂が笑いながら、泰一の顔を覗き込む。
「--ば、、ばか!!!やめろ!!!!!」
大声で怒鳴る泰一ー。
驚いてしまう志穂。
あまりの大声に、周囲の大学生たちも
泰一と志穂の方を見る。
「--ごめん」
泰一がそれだけ呟くと、
志穂は悲しそうな表情を浮かべて
「もういいよ」と呟く。
「そんなに一人でいたければ、一人でずーっといればいいじゃん!」
ふん!と言いながら立ち去って行く志穂ー。
「ごめん。志穂ー」
泰一は呟くー
自分だって本当は、志穂と仲良くしたい。
けれど、それはで、きない。
好きだからこそ、志穂を巻き込みたくないー。
ーー高校時代。
それは、起きた。
理科の授業中。
”事故”は起きた。
「おい!山田~!やめとけよ~!」
泰一が笑いながら言う。
「ま~ぜまぜ~!へへへへへ」
高校時代のクラスメイト・山田が
ニヤニヤしながら理科の実験の授業で使う
薬品を適当に混ぜまくっているー。
あらゆる液体を混ぜていく山田。
イタズラ好きの山田は調子に乗っていたー。
周囲の女子も「やめなよ~!」と叫んでいるー
さらに、山田は家から持ち込んだ適当な液体を
放り込んで、「お菓子だって、混ぜて美味しくなるやつあるだろ~?
あれとオナじさ~!」
山田が笑う。
「おい!山田ぁ!」
理科の先生が声を上げる。
「やべっ!」
山田が笑いながら、
「”山田スペシャル”の完成だぜー!」と叫ぶと、
あらゆる液体を混ぜたビーカーを、
そのまま火の方に持っていくー。
「--おいおい、ほどほどにしておけよ~」
泰一があきれながら言う。
”山田スペシャル”が火にかざされるー。
そしてーーー
化学反応を起こして”爆発”したー
「--=!!!!」
ちょうど、爆発して溢れた液体がーー
泰一に直撃したー
「うわあああああ!」
泰一が悲鳴を上げる。
「おい!!大丈夫か!?」
理科の先生が叫ぶ。
泰一の両眼に液体が入り込んで、
泰一は、緊急搬送されたー
そしてーー
目の手術が行われるー。
緊急手術だ。
”もう、見えないかもしれません”
泰一の医師は、そう泰一の家族に告げたー
目に包帯を巻いたまま送る日々。
そしてー
包帯を取る日がやってきたー
”目はほとんど見えないかもしれないー”
そう言われていた泰一だが、
包帯を取ると、目は見えていたー
いや、
それだけじゃない、とてもよく見えるー。
「--どうですか?見えますか?」
ナースの一人・多喜恵(たきえ)が、声をかけてくる。
「あ、はい。なんだか、とてもーーー」
「---!?」
泰一と多喜恵の目が合ったー
その瞬間ーーー
「--とても、よく見えますー」
多喜恵が笑みを浮かべながらそう呟いた。
泰一は戸惑っているー
「---え…俺…?」
多喜恵が呟く。
目の前に、ベットに座った自分がいるー
「--え……え???」
泰一も驚いている。
目の前にナース服の自分がいるー
「えええええええええええええ!?!?!?」
ふたりは叫んだー
”入れ替わって”しまったのだー。
「--う、、うそ…!?どうすればいいんですか!?」
多喜恵(泰一)が戸惑うー。
「-そ、そんなこと言われても…」
泰一(多喜恵)がもじもじしながら呟く。
突然の入れ替わり。
一体、何が起こってしまったのかー。
そこに、別の医療スタッフがやってきて、
多喜恵の名前を呼ぶ。
どうやら急用らしい。
「え…あ…??は、、…」
戸惑う多喜恵になってしまった泰一。
泰一になってしまった多喜恵は
「あ、、、あの…!」と声を上げるー
自分たちが入れ替わってしまったことを
泰一(多喜恵)が丁寧に説明するー。
しかしー
信じてもらえるはずもなかったー。
一体、何故、自分たちが入れ替わってしまったのかー。
まるで、意味が分からない。
そんな風に思いながら
多喜恵になった泰一と泰一になった多喜恵は
なんとか元通りに戻る方法はないかと模索しながら
日々を過ごした。
「----あぁぁ~……俺みたいな
年頃の男子には刺激が強すぎるぜ…」
多喜恵(泰一)が笑みを浮かべながら
立派なふくらみを見つめる。
「巨乳なナースさんだなぁ…えへへへ」
多喜恵(泰一)がトイレで鏡を見つめながら
胸をポンポンと触るー
多喜恵の身体になってしまった以上、
お風呂に入らないといけないし、トイレにもいかないといけないから、
泰一(多喜恵)に許可を貰って
そういうときは多喜恵の身体を見てしまうが、
ドキドキしてしまうー
一瞬、多喜恵の身体でエッチしたいとも思ってしまったが
さすがにそれは我慢して、
普通に生活を続けていた-
「早く元に戻れるといいですねぇ」
多喜恵(泰一)が病室で呟く。
「う~ん…そうですね」
泰一(多喜恵)が苦笑いするー
「なんか…その…どうしても胸が気になっちゃって…」
多喜恵(泰一)が苦笑いしながら言う。
「あ、、あぁ、変な意味じゃなくて!
あの、ほら、下を向くと膨らんでたりとか、
お風呂のときとか、下着とか…
俺、ずっと男だったんで、変な感じで」
多喜恵(泰一)が言うと、
泰一(多喜恵)も笑ったー。
「ふふふ…大丈夫ですよ~
正直に言っちゃうと、わたしも
なんか、気になっちゃいますし」
泰一(多喜恵)がズボンの股間のあたりを
気にしながら言う。
「それに…胸がこう…膨らんでないっていうのは
なんか、大事なモノを失った感じで
落ち着きませんし」
苦笑いする泰一(多喜恵)-
「あ~!それ、分かります分かります!
俺も、ここ、落ち着かないんですよ~!」
入れ替わりを経験したもの同士にしか
分からない話で、盛り上がる二人。
患者と看護師でしかなかったはずの二人の間に、
入れ替わったことで妙な仲間意識が芽生えていた。
「あ、そうだ。俺の身体、明日退院みたいですけど
どうしましょうか?」
多喜恵(泰一)が言うと、
泰一(多喜恵)が呟く。
「どうすれば元に戻れるのか分かりませんし、
そのまま退院するしかないですよね…」
泰一(多喜恵)は申し訳なさそうに言う。
親にもー
友達にもー
もちろん多喜恵のほうの関係者にも
入れ替わりのことは話していない。
なんとか、お互い情報交換をしながら
上手くここ数日間はやってきたー。
「---ま、、まぁ…そうですね」
多喜恵(泰一)が顔を赤くしながら言う。
あとどのぐらい、女の身体で過ごせばいいのだろう。
仕事が終わってから多喜恵として多喜恵(泰一)は
多喜恵の家に帰るのだが、女の人の部屋に入るというだけで
凄いドキドキしてしまう。
極力、何もしないようにしているし、
エッチなことはなんとか我慢しているが
やっぱり、ドキドキは止まらない。
「--それに、わたしが退院すれば、
たっぷり今後のこと、相談できますからね」
泰一(多喜恵)が言う。
”わたし”と言う”自分”を見るのも
なんとなく違和感があるー。
「--相談?」
多喜恵(泰一)が言うと、
泰一(多喜恵)は答えた。
「ほら、ここだと患者と看護師、の関係ですけど、
わたしが…というか、泰一くんの身体が退院すれば、
わたしの家でじっくり相談できますから」
確かにそうだー
ここだと長話はできない。
周囲から見ればひとりの看護師が
ひとりの患者にやたらと入れ込んでいるように
見られてしまうからだ。
退院すれば、多喜恵の家に泰一が足を運べば
いくらでも、相談はできるー
さすがに高校生で実家暮らしの泰一の家に
多喜恵が足を運ぶのはまずいが、逆ならなんとかなるだろう。
「--高校生活のことも相談しないとですね」
多喜恵(泰一)が言うと、
泰一(多喜恵)は頷いた。
しかしー
”そんなこと”は考える必要はなかったー。
何故ならーーー
「うっ……」
病室から出た多喜恵(泰一)は
突然胸が苦しくなって、胸を押さえるー。
「え…?」
ぐるんぐるんと回りだす世界ー
”いったい何が?”
そんな風に思っている間に、
身体がものすごく重くなって
口から何かを吐き出したー
「---!?」
”血”-?
多喜恵(泰一)が口から血を吐いたー
身体がさらに重くなるー
頭がガンガンと痛むー。
「あ…ああぁぁああああ…」
思わず苦しそうな悲鳴を上げる多喜恵(泰一)
”大丈夫ですか!?”
病院の患者が叫ぶー
その声を最後にー
何が起きたのか分からないままー
多喜恵(泰一)の意識は途切れたー
②へ続く
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コメント
”目を合わせると入れ替わってしまう”男の
入れ替わりモノです~!
自分の思い通りにコントロールできない
入れ替わりは、大変そうですネ~汗
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