<TSF>エイプリル彼女①~ど~れだ?~

エイプリルフール。

彼女が突然爆弾発言をしたー。

「わたしは憑依されている
 わたしは皮にされている
 実はわたしは元男
 わたしは誰かと入れ替わっている

 この中で嘘じゃないのはど~れだ!?」

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4月1日
エイプリルフール。

今日から新学年ー
この学校では、いろいろな事情で1日から授業が行われるー。
…と、言っても教科書配布やらなんやらの手続きが多いけれども…。

ちょっといたずら好きの男子高校生
谷定 信博(たにさだ のぶひろ)は、
彼女の勝矢 久瑠美(かつや くるみ)を
どうやって驚かそうか考えていたー

今日は、嘘をついていい日だ。

「う~ん」
信博は色々なアイデアを考えるー

”実は浮気してます”
なんてどうだろう?

「いやいや、本当に疑われたらまずいし
 これはついちゃいけない嘘だな」
信博が呟くー

”実は双子の弟です”

「いや、嘘まるわかりでつまらないな…」

信博は色々なアイデアを思いついては
首を振るー。

そしてー

「あ、信博おはよ~!」
彼女の久瑠美と偶然鉢合わせした。

「--あ、、お、おはよう」
信博は、”結局いい嘘、思いつかなかった~”と
内心で苦笑いしながら
教室までの道のりを久瑠美と一緒に
歩いていくー

「あ、そうだ!信博!
 今日ってさ~エイプリルフールだよね!」

「---え?あ、うん」
信博が”先手を取られた”という気持ちになりながら
久瑠美のほうを見る。

「ふふふ…♡」
久瑠美が少し不気味な笑みを浮かべた。

”な、、なにか企んでる…!”
信博はそう思った。
久瑠美の不気味な笑みー
久瑠美が何かを企んでいるときの笑みだ。

”くっ…う、嘘になんか騙されないぞ”

信博はそう思いながら
久瑠美が何を言いだしても驚かない!と
自分の心の中で心の準備をするー

”浮気ネタ”か
それとも”別れましょう”か?
どんなに驚く嘘が来ても、俺は、驚かない…!

信博がそんな風に考えていると
久瑠美はクスクス笑いながら呟いたー

「わたしは憑依されている
 わたしは皮にされている
 実はわたしは元男
 わたしは誰かと入れ替わっている

 この中で嘘じゃないのはど~れだ!?」

とー

「……え?」
信博が唖然とする。

「---ふふふ…
 嘘じゃないのは、どれだと思う?」

久瑠美が、信博のほうを見つめてほほ笑む。

「--え…」
どんな嘘をつかれても驚かないと
言っていた信博だったが、
驚いてしまった。

なぜならー…
あまりにも”嘘”まるわかりの内容だったからだー。

憑依ー
そういう話をネットとかで見たことがある。
他人の身体を他の人が乗っ取る、とかいうやつだ。
久瑠美が誰かに乗っ取られている?
そんなはずはない。

皮ー
これは信博にはよくわからないー
信博が「皮って?」と聞くと、久瑠美は教えてくれた。
着ぐるみのようにされてしまって、誰かに着こまれてしまうー。
憑依以上に、ありえない、と信博は思った。

元男ー?
久瑠美は実はオカマだったとか、中性的な美男子だったとか
そういうやつか?
久瑠美の胸をつい見つめてしまう信博ー。
しかし、久瑠美が男なんてありえないー。
フィクションで”女体化”なんてのも見たことがあるが
現実で、朝起きたら女になってました、なんてありえない。
と、いうよりも久瑠美とは小学生のころからの幼馴染だが、
ずっと女の子だったから、これはあり得ないー。

入れ替わりー?
アニメとか映画で見た気がする。
誰かとぶつかって入れ替わった、とかそんなやつだ。
これもまた、あり得ない。

「---はは、、はははははは!」
信博は思わず笑ってしまう。

「久瑠美は嘘が下手だなぁ~」
信博が久瑠美のほうを見ながら
笑うと、久瑠美もクスクスと笑い出した。

「---ふふふ~
 3つは嘘だよ~」
久瑠美が笑いながら言う。

「--!?」
信博は表情を歪める。

”3つは嘘?”

さっきも”どれか一つが本当”みたいな
言い方をしていたがー

それが本当だとすれば
久瑠美は誰かに憑依されているー
久瑠美は誰かに皮にされていて、中に誰かが潜んでいる
久瑠美は元男
久瑠美は誰かと入れ替わっているー

どれか一つが本当に起きている、
ということになる。

「え…?は?いや、あり得ないでしょ!」
信博が言う。

久瑠美はニコニコしているだけで答えない。

そしてー
信博は、はっ、とした。

”あ、そっか。どれか一つがホント、っていうのが
 エイプリルフールネタか”

とー。

「へへへ…わかったぞ~久瑠美!」
信博が得意げな表情で言う。

「--”3つは嘘だよ”って言うのが嘘だな~!
 その4つの選択肢、全部が嘘!

 いや~
 危うく騙されるところだったよ~!」

信博が言うと、
久瑠美がにこっとほほ笑んだ。

「--放課後。
 答えを聞かせてね」

そう言うと、久瑠美は教室に
先に入って行ってしまった。

「え…」
信博は唖然とするー

”う、、嘘だよな?”と不安になるー

もし、久瑠美が言っていた4つの選択肢の中の
どれか一つが本当だとすると
久瑠美は誰かに乗っ取られて
しまっていることにーーなるかもしれない。

そんなこと、あり得ない。

座席に着席する信博。
久瑠美の様子を見つめているが
いつも通りに見える。

仕草ー
友達との接し方ー
表情ー

何も、変わらないー。

仮に誰かに憑依されて
乗っ取られているなら、
見た目が久瑠美だったとしても
”いつもと違う部分”が必ず
どこかに出てくるはずー。
正直、彼氏である信博が久瑠美に
憑依したとしても、
完璧に久瑠美として振舞うことが
できる自信はない。
どこかで、ぼろが出るだろう。

「--憑依は、ありえない、と」
信博はそう呟いたー

1時間目の授業が始まるー
久瑠美の様子はいつも通りー

信博は、授業を受けながらも
久瑠美のことが気になってしまい、
観察を続けていたー

”皮”とかいうのも、あり得ない。
皮にされていたとしたら
やはり、憑依と同じように
カタチは違えど、誰かが内面に
潜んでいることになる

そうなれば、
やはり久瑠美の行動や言動に
いつもと違う部分が出てくるはずなのだ。

それがないということは
久瑠美は久瑠美のはず。

色々考えているうちに
2時間目が終わるー

「どう?わかった?」
久瑠美がニコニコしながら話しかけてくる。

「う~ん…ま、、まだ分かんない」
信博はそう答えた。

久瑠美がクスッと笑って
立ち去って行くー

「くぅぅぅ…」
信博は、久瑠美にまんまと翻弄されている!と
感じたー

完全にエイプリルフールネタで
遊ばれてしまっているー。

休み時間に、周囲のクラスメイトの様子を観察するー
ついでに他のクラスの友人と話すついでに
他のクラスの様子も確認する。

だが、特におかしなやつはいなかったー。
久瑠美と誰かが”入れ替わってる”なら、
誰かになった久瑠美がどこかにいるはずだー。
もちろん、学校の外の人間と入れ替わっている可能性もあるけれど…。

「---入れ替わりでもなさそうだな」
信博はそう呟くと、
ため息をついた。

「って、なんで俺、まじめに考えてるんだ!?
 エイプリルフールネタなのに!」
と、頭をぽかぽか叩く。

でもー
久瑠美はとても楽しそうだったー

せっかくだし、彼氏として久瑠美を
楽しませてあげたいし、
久瑠美が笑ってしまうような
結論を出したいー

例えば、胸がそんなに大きくないから元男だ!

とか…

あ、いや、それは殴られそうだから
やめとこうかな…

信博はそんな風に思いながら
3時間目の体育の授業の準備をするー

着替える教室は当然、男女別だ。

久瑠美は女子が着替える教室で
普通に着替えているから、
”元男”なら、ばれるはずー。

昔から久瑠美は女の子だったから
朝起きたら女にー、はあり得ないー

まぁ…信博が、久瑠美と知り合う前…
もっと小さいころに、朝起きたら女にーを
経験してるなら話は別だがー。

昼休みー。
信博は、昼食を食べながら思うー

一番可能性として高いなら
”女体化”だろうかー。

憑依、入れ替わり、皮はあり得ない。
久瑠美として急に振舞うには無理がー…

いやー
これも、ずっと昔に憑依されている、とかなら
可能と言えば可能か。

信博の頭の中はさらに混乱していくー

「--どう?わかった~?」
久瑠美がニコニコしながら言ってくるー

「--わ、、分からないよ」
信博はそう答えた。

「だ、だって、憑依とか入れ替わりとか女体化とか皮とか…
 現実じゃどれもあり得ないし…
 やっぱ、全部嘘だろ?」
信博が言うと、
久瑠美はにこにこしながら答えた。

「本当に、そう思う?」
とー。

「---え…」
信博は久瑠美の笑みを見て、
自信を失ってしまうー

放課後、久瑠美から答えを聞かれたら
”全部嘘だ!”と答えるつもりでいる。

「わたしは憑依されている
 わたしは皮にされている
 実はわたしは元男
 わたしは誰かと入れ替わっている

 この中で嘘じゃないのはど~れだ!?」

”この中で嘘じゃないのはど~れだ!?”

それこそが、嘘であると。
そう伝えるつもりだ。

この中で嘘じゃないものなんて、存在しないのだ。

つまり、全部嘘ー

そのはずなのにー
久瑠美の表情を見ていると
どれか一つ、本当な気がしてしまうー。

「ふふふふふふふふ」
久瑠美が笑っている。

完全に久瑠美の手の内で
踊らされているような気持になる。

信博は目を逸らしながら
「放課後までに考えておくよ」と呟くー

「--うん。楽しみにしてるね~」
久瑠美が、信博の前から
立ち去って行こうとするー

「あ!そうだ!」
久瑠美が立ち止って
振り返ったー

いつものように、優しく微笑む久瑠美。

「--もしも、信博が間違えたら…
 わたし”そのまま”になっちゃうかも!」
笑う久瑠美。

”そのまま”?

信博は思わず聞き返す。
”そのまま”とはいったいー?

「もしも、わたしが憑依されてるのだとしたら
 憑依されたまま

 皮にされているのだとしたら
 皮にされているまま

 入れ替わっているのだとしたら
 入れ替わったまま

 女体化しているのだとしたら
 女体化したままー」

久瑠美が淡々とそう告げたー

「--え…そ、そんな」
信博はそう呟きながらも
「(ま、まぁ、女体化ならそのままでもいいか。
 俺が知り合った時から久瑠美は女の子だったし)」
と、内心で考えながら苦笑いしたー

「わかった。
 放課後までに決めておくよ!」
信博が言うと、
久瑠美はにこっとほほ笑んでそのまま立ち去って行くー

彼女の嘘ー。

信博は”やはり、全部嘘でいいのだろう”と
そう考えながらも、
”何か違う気がするー”と
不安を感じずにはいられなかったー

5時間目と6時間目ー
久瑠美の様子を観察していたが
やはり、変わった様子はないー

いつも通りの久瑠美だ。

そして、放課後がやってきたー

答えを決めなくてはならない時間は
刻一刻と近づいていた…。

②へ続く

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コメント

今のところ”何”なのか、不明ですネ~

いつもタイトルの横にジャンル<憑依>とか<入れ替わり>とか
書いてある部分は、今回は<TSF>にしておきました!

明日はもうエイプリルフールじゃないですが、
続きを書いていきますネ~!

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TSF<エイプリル彼女>

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