<憑依>深淵に向かう男①~憑依薬~

これは、憑依薬中毒になってしまい、
破滅に向かう男の物語…。

軽い気持ちで始めた憑依薬…。
しかし…?

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「--なんか面白いことないかなぁ~」

男子大学生の梶尾 正明(かじお まさあき)は、
友人と歩きながらそう呟いていた。

「-な~にが、面白いことはないかな~だよ!」
友人の高沢 峰雄(たかざわ みねお)が
苦笑いしながら言う。、

正明は俗にいう”リア充”な生活を送っている。

彼女もいるし、
友達もそこそこ多いし、
趣味も充実しているー

少なくとも、友人である峰雄から見れば、そう見える。

「--俺がリア充だって?
 外から見えればそう見えるだけさ」

正明はそう呟く。

「--おいおい、ぜいたく言うなよ~!
 俺なんて彼女いない歴=年齢の童貞だぜ!
 しかも趣味もあんまりないし、
 単位も足りないかもしれねーし、
 踏んだり蹴ったりだぜ」

峰雄が言うと
正明が笑う。

「--彼女がいるってのも、
 余計な悩みが生まれることも多いし、
 なんだかな~って感じだよ」

正明の言葉に
峰雄は「このやろー!欲張りなこと言いやがって!」と
後ろから正明を羽交い絞めにしたー。

・・・・・・・・・・・・・

確かに、充実はしているのかもしれない。

けれど、
何か退屈だ。

同じような日常ー
同じような日々ー。

彼女の芳香(よしか)と付き合い始めてから1年ー。
既に最初のころのようなドキドキは無くなり、
新鮮さは無くなった。
もちろん、芳香のことは好きなのだが
なんとなく、面白味がなくなった。

友達もそうだ。
峰雄をはじめ、ある程度の友達がいるが
同じようなことばかりが繰り返される。

趣味もそうー。
しょせんは、同じことの繰り返しなのだ。

「なんか…こう、刺激が欲しいよな」
正明はそう呟いたー。

ある日ー。

「---憑依薬?」
正明が退屈そうにスマホでネットを見つめていると、
見つめていたページの広告に”憑依薬”なる
いかにも怪しい薬の広告が出ていたー

「なになに?」
正明は失笑しながら憑依薬の広告を見つめる。

そこにはー
”他人に憑依できる夢をあなたに”と
書かれていたー

「ははっ…寝言は寝て言えよ」
正明は思わずつぶやいた。

他人への憑依。
あり得るはずがない。
この世界はファンタジー世界ではない。

特撮で、悪の怪人が人間に憑依して悪さをしたり、
そういうものは見たことがある。

だがー現実世界で
そんなことができるはずもない。

「ばかばかしい。こんなものに騙されるやつ、いるのかよ」
そう呟いて正明はスマホをベットの上に置いた。

「いや…待てよ」
正明が呟く。

”500円”
そう書かれているのを見て、
正明は”どうせいたずらだろうけど、500円ぐらいなら…”と
いう考えが頭によぎる。

何かの詐欺かもしれない。
個人情報を抜き取られるかもしれないー

だがー…
代金引換も可能みたいだし、住所は
万が一悪用されても、ボロアパートだから引っ越せばいい。

「---試してみるか。」
正明は、軽い気持ちで注文したー

”憑依薬”をー。

そして、後日”憑依薬”は届いたー

緑色の液体。
明らかに怪しい感じの液体だ。

「ははっ…栄養剤か何かか?
 どうせ憑依なんてできやしない」

添付された説明書に目をやる。

そこには、憑依薬の効能が詳しく、細かく
書かれていた。
「ネタにしちゃ、ずいぶんと細かく書いてあるんだな」
正明は、失笑しながら説明書を見つめる。

どうやら効果は1回60分らしい。

「--この説明書だけでも500円のもとは取れたな
 つまんねぇ映画を見るより、笑えるぜ」

明日、友人の峰雄にも見せてやろう。
そんな風に思いながら、
正明は憑依薬を見つめる。

「まさか、毒じゃないよな」

正明はそう呟いて、憑依薬を口にしたー。

そしてー
正明は、今までに感じたことのないようなー
”意識が急激に遠のく”不思議な感覚を覚えてー

そのまま意識が飛んだー

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「--!?」
正明が飛び上がるー。

するとー

「えっ?」
正明は空に浮かんでいた。

「ん?俺?死んだ?」
正明は周囲を見渡す。

”これって幽霊になったってやつ?”

そう思いながら周囲を見渡す正明ー。

”いや、待てよ…?”

正明は思うー
憑依薬を飲んで即死した可能性も確かにある。

だがー…
もし、これが憑依薬の効果なのだとしたらー?

確か、60分間効果があるー

そう、書いてあったはずだ。
もしも憑依薬の効果であればこのまま60分が
経過すれば、元に戻ることになる。

「--…死んだんだとしても
 憑依薬の効果だとしても、
 何も試さないのは、損、だな」

正明はそう呟くと
周囲をキョロキョロと見まわした。

こんな状況でもクールに対応できるほどの
冷静さを持つ正明ー

悪く言えば”何事にも冷めている”正明ー。
そんな性格が、充実した環境にいても
”物足りない”と、彼に感じさせてしまっているのかもしれないー

「---おっ!」
正明は、ちょうど高校の部活帰りの女子高生を見つけるー

「---……」
正明は
”ほんとに憑依なんてできるのか?”と思いつつも
説明書に書いてあったことを思い出す。

”憑依するには、霊体をそのまま相手の身体に重ね合わせます”

そう書かれていたー

「この子に、身体を重ね合わせればいいのか?」

下校中の女子高生の前に、
自分の身体をふわふわとさせてみるー

女子高生は全く反応する様子がないー

目の前に不審な男が現れてスルーしている
可能性も当然0ではないが、
この子の反応的に、スルーしているのではなく
”本気で見えていない”感じがするー。

「お~い!」
正明はふわふわと浮かびながら
女子高生に声をかけてみる。

下校中の女子高生は、まったく反応する様子を見せない。
やはり、完全に見えていないし、声が聞こえていないのかもしれない。

…もちろん、スルーされているだけの可能性もあるが。

「---…可愛いねぇ、おっぱい揉んでやろうかぁ~?」
正明は、わざと卑猥な言葉を口にした。

もしも”不審者”としてスルーされているのであれば
さすがにこのセリフを吐けば、女子高生も何か反応を示すだろう…
そう思ったからだ。

だがー…
女子高生は一切反応しなかったー

「見えていないし、声も聞こえていない、か。」
正明は今の状況を冷静に判断したー

と、なれば”本当に憑依薬の効果が出ている”
あるいはー”死んだか”
どっちかだろう。

「ま、試してみるか!」
正明は、そう呟くと、ひと思いに女子高生に
身体を重ねてみたー

これですり抜けてしまったらー
自分は死んだことにーーーー

「ひぅっ!?!?」
女子高生がビクンと震えて変な声を出す。

身体の感覚が急激に戻ってくるー

「え…?」
女子高生の手を見つめる正明ー

「---え…」
胸を触る。

「えぇ…?」
スカートを触る。

「うおおおおおおおおおお!!!!
 マジかよおおおおおおおおおおおおお!!!」
可愛い叫び声が出るー

「ほ、、ほ、、ほ、、ほんとに、ほんとに憑依できてるぅ!?」
女子高生は嬉しそうに叫ぶと、
そのままちょうど歩いていた箇所の横にある公園に入っていくー

夜の公園のトイレに入る少女。

鏡を見つめるー

可愛い子が映るー

そしてー
その子が、正明の意志に従って動くー

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!
 ひ、、、憑依ぃぃぃぃ!」

持っていたカバンをトイレの床に投げ捨てると
女子高生はそのまま胸を狂ったように
触り始めた。

口元を歪ませて涎を垂らしながら
胸を触りまくる少女ー

「そ、そうだ、この子の名前は!」
トイレの床に投げ捨てた鞄をあさる。

何も気を遣わずにかかんだことで、
後ろから見たらスカートの中が丸見えの状態で
鞄から生徒手帳を取り出す。

「早田 花林(はやた かりん)ちゃんか…ふふ」

生徒手帳を放り投げると、
そのまま鏡のほうに向かってほほ笑んだ。

「まっさか、本当に憑依できるなんてなぁ…」
花林に憑依した正明は、
憑依薬のことを半分以上、いいや、
ほぼ確実に偽物だと疑っていた。

だがー
結果は違った。

憑依薬は本物だったのだ。

「んんん~…気持ちいい…
 いいなぁ…」

胸を触りながら花林はうっとりとした表情を浮かべるー
胸の感触ー…
とっても気持ちがいい…

「えへへへ…」
花林は、下心丸出しの表情で
鏡を見つめるー

こんなかわいい子に、
こんな下品な表情をさせているー

そう考えただけでもゾクゾクしてしまうー

しかも、ゾクゾクしているのは正明の身体ではなく
他人の身体…
花林の身体が正明の意志に従って
ゾクゾクしているー

「ふひっ…」
思わず変な声が出てしまう。
このコがこんな声を出すことは普段無いのだろうと
思うと、余計に興奮してくる。

「ひひひひひひ…憑依薬…
 すごい…すごい…ひひひひひひひっ♡」
花林は、けだもののような表情を
浮かべながら自分の手をペロペロと舐めて
笑っているー。

夜の公園のトイレで
女子高生が一人でこんなことをいしているのを
誰かが見かけたら、きっとその人は
唖然とするだろうー

「--さぁさぁさぁ…どうしようかな~」
花林は嬉しそうに制服のブレザーを
脱ぎ捨てるー

”自分のものじゃないんだし!”と
軽い気持ちでトイレにブレザーを放り投げる花林。

「ふふふふ……
 あぁぁ~乗っ取られてる側って
 どんな気分なのかなぁ~
 今、自分がこういうことさせられてるって
 分かってるのかなぁ~!?」

花林はご機嫌そうに服を脱ぎ捨てるー

トイレには花林の制服が散乱しているー。

「--へへっ、何にも分かってないか!」

花林は、鏡の前でポーズを決めてほほ笑むー

「ははは!な~にしてるんだこのコ~!
 って、させてるのは俺か~!
 あはははははは!」

花林がスカートに手をかけるー

その時だったー

ぐるん…

突然変な違和感を感じるー

そしてー
花林は「う…」とうめいて、そのまま夜の公園の
トイレにうつ伏せで倒れてしまったー。

・・・・・・・・・・・・

「---!?」
正明が驚くー

そして周囲を見渡すと、
そこは自分の部屋だった。

「あれ…?」
憑依薬の空き容器がそこには置かれているー

「あ…そうか」
正明は冷静に今の状況を分析した。

「…60分…経過したってことだな…」
正明はそう呟くと、立ち上がった。

「ん~…しかし、元の身体に戻れたってことは
 やっぱ俺は死んでたわけじゃないってことだな」

正明は花林に憑依できたあとも
少し憑依薬のことを疑っていた。

実は自分は死んで幽霊になっていて、
憑りついただけではないか、と。

だがー違った。

死んでいたのならこうして
自分の身体に戻ることはできないはずだ。

ちょうど60分程度で自分の身体に戻った。

つまりー
憑依薬は本物だ。

「すげぇ…
 面白いこと見っけ」

正明はそう呟くと
再びネットで憑依薬を注文しようとする。

「あー…1000円に値上がりしてやがる…
 ま、本物だってわかったしな」

正明は憑依薬を注文して、笑みを浮かべたー

「これから、楽しくなりそうだー」

②へ続く

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憑依薬中毒に陥る男のお話デス~!

でも、第1話ではまだ、そんなことには
なってないですネ~!

明日以降もお楽しみに~!

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