アイドルに憑依して、人生を楽しむ日々ー
そんな日々を送りながら
彼は年齢を重ねつつあった…!
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「---俺さぁ、美鈴ちゃんと結婚したいんだよね」
哲司が高校生時代から仲良くしている親友・裕太(ゆうた)が言う。
円香に憑依して、遊んでいたころから7年が経過していたー。
哲司も、もう円香たちのことなんて
とっくに忘れていたし、
そもそも円香たちアイドルグループは、4年前に解散している。
「--へぇ、今人気の?」
哲司が言うと、裕太は頷いた。
「--あぁ!俺、美鈴ちゃんのことを
考えると、眠れないし、食事も喉を通らないぐらいなんだ!」
興奮しながら裕太が答える。
「そうかぁ…」
哲司はそう呟いた。
裕太は、高校時代からの親友だ。
裕太の願いをかなえてあげたいー。
哲司はそう思ったー
美鈴とは、最近人気のアイドルで、
前に哲司が憑依した円香と
同じような3人組のアイドルグループだ。
「よし…久しぶりに憑依するか」
ここ数年は、以前ほど憑依をしなくなっていた。
と、いうのも哲司も30歳を超えて
昔ほど、性欲的なものもなくなっていたし、
アイドルに対する興味というものも
昔ほど感じなくなってしまっていた。
だがー
友人のためとなれば…。
「---あいつのために、
サプライズを演出してやろう」
哲司はそう決意したー。
美鈴・千紗・富貴江の3人からなる
アイドルユニットー。
1週間後に、そのイベントが行われるー。
哲司は、その時に、裕太を喜ばせる
サプライズイベントを企画したー
”3人同時に憑依できれば…”
哲司はそう思ったー。
思考の書き換えをそれぞれにしても良いが、
複数人に同時憑依できれば、
親友の裕太にとって最高の舞台を
作り上げることができる。
「---……」
哲司は、憑依能力を使うイメージをするー。
今まで複数に同時に憑依したことはないー
だが、憑依能力を応用すれば、
それができるかもしれないー。
「---ふんっ!ふんっ!」
哲司は、憑依能力者にしかわからない修行を
し始めるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
1週間後ー
哲司の友人・裕太は、
美鈴らのイベントにやってきていた。
30歳を超えている裕太。
周囲には若いファンが多いが、
それでも関係ない。
”アイドルを好きになるのに、年齢は関係ない”
彼はいつも、
そう豪語していたー。
「---♪」
美鈴や千紗・富貴江の3人が
ステージ上で華麗な歌とダンスを披露している。
「----♪」
裕太は、目を輝かせながら
尊いものを見る目で
美鈴たちを見つめたー。
いったん休憩時間に入りー
美鈴、千紗、富貴江の3人が
ステージの裏側に立ち去っていくー。
その時だったー
「うっ…」
美鈴が突然ビクンと震えるー
「--え?どうしたの?あっ!?」
千紗も続けてビクンと震えたー
「な、、なにな…うぇっ!?」
富貴江もビクンと震えるー
3人は、同時に顔を上げると、同じ笑みを浮かべたー
「憑依完了~」
と、3人同時に同じ言葉を発する。l
哲司が、3人同時憑依を成し遂げたのだった。
「…さーて…裕太のやつに、ビッグサプライズだ」
3人が同時にしゃべる。
「おっとと…」
美鈴が言う。
「--3人同時に憑依してると、
一人だけに言葉をしゃべらせるのって…」
千紗が言う。
「難しいな!」
千紗と富貴江が同時に同じ言葉を口走る。
「やべぇやべぇ…」
ステージ上で不自然なことはできないー
休憩終了まであと10分ー
なんとか、3人同時にコントロールする状況に
慣れておかなければならないー
そんな風に思いながら
美鈴・千紗・富貴江は、
ぼそぼそと何かを呟き始めたー
そしてー
休憩時間が終わる。
美鈴・千紗・富貴江の3人が
ステージへと戻ってくるー
美鈴の身体を自分は動かしてー
千紗と富貴江の意識は解放しー、
”何も違和感を感じないように、
いつものようにふるまえ”と刻みこんでおいた。
美鈴の記憶をフル活用し、
いつも通りの歌声とダンスで
観客を魅了していくー。
自分の身体から、
美鈴の可愛らしい歌声が出ているー
今は、美鈴が自分の身体なんだー。
そう思うだけで、やはり何歳になっても、ゾクゾクする。
哲司は思うー
”久しく忘れていたな…この感覚”と。
ニヤニヤしながら美鈴として
歌とダンスを完璧にこなした哲司ー。
さて、いよいよ本番だー。
千紗と富貴江にも再び憑依し、
万全の体制を作るー。
記憶を書き換えることもできるが、
書き換えただけでは
”これからやること”に対応しきれない可能性があるー。
全員、自分で動かした方がいい。
「-----(かわいいな)」
千紗の身体を見つめながら哲司は思うー。
親友の裕太は、美鈴のことが
お気に入りのようだが、
もし自分がこのアイドルグループから一人
選ぶとすれば、千紗だろうな、
と、そんなことを思いながら、
美鈴の口を動かした。
「今日は、皆さんに重大な発表があります!」
とー。
ファンの視線が美鈴の方に集まるー
”ファンに見つめられるー”
快感だー。
哲司はそう思った。
美鈴たちも、いや、アイドルたちも
見られることに喜びを感じているのだろうかー。
親友の裕太が観客席で
わくわくしながら、周囲を見つめている。
そしてー
「実はわたし、結婚することにしました!」
美鈴が言うと、
悲鳴と歓喜の声が観客席から上がったー。
「--!?」
裕太は驚いている。
壇上の千紗と富貴江は
美鈴の方に向かって拍手しているー
(美鈴をうまく動かしながら
千紗と富貴江も動かさないと)
哲司は苦笑いしながら
憑依を続ける。
まるで、複雑なタスクをこなしているかのような
そんな謎の感覚に襲われるー。
「---裕太くーん!」
美鈴がそう言いながら、裕太の方を
可愛らしく指さした。
「え?…え?俺?」
裕太は驚いて自分の方を指さしている。
「そうそう!ほら、裕太!こっちに来て!」
美鈴の身体で可愛らしく言う。
拍手をしながら、千紗が”こっちに来て”と
美鈴に合わせて呟いてしまったー
が、なんとか周囲にはばれずに済んだみたいだ。
「--え…あ、いや、でも…」
裕太が混乱しているー。
美鈴は可愛らしく裕太を手招きした。
”おいおい…
俺がせっかく晴れ舞台を用意してやったんだから
早くこっち来いよ”
裕太はぶるぶると震えているー
そうだったー
奴はあがり症だった…
と、哲司は後悔する。
このままじゃ、せっかく用意した
茶番劇が無駄になってしまう
可能性すらある。
どうすればー
”くそっ!仕方ねぇ!”
哲司は、すでに美鈴・千紗・富貴江に憑依している状態から
さらに意識を高めてー
裕太にも憑依したー
「---はいっ!」
裕太は堂々と叫ぶと、
そのままステージ上に向かう。
そしてー
裕太の意識を瞬間的に書き換えていくー
”美鈴と結婚するんだ”
とー
観客席からはブーイングの声が上がっている。
「---……」
どうする?
この状況?
哲司は、とりあえず、裕太の身体からは抜け出した。
思考を書き換えたから、美鈴との結婚を受け入れるだろうー。
「--みんな!静かにして!」
富貴江にそう叫ばせたー
観客席が鎮まる。
「---美鈴のこと、応援してあげて!」
富貴江が言うと、
まだブーイングは起こっていたが
少しだけブーイングは鳴りやんだ。
「---あの…」
美鈴の身体を操って、
美鈴として顔を赤らめて
裕太の方を見つめる。
「え…あ、はい…」
憑依から解放された裕太は
戸惑っているー
「---わたし、裕太くんと結婚します!」
哲司は、美鈴に憑依したまま、
美鈴にそう宣言させたー。
同時に小声で、”裕太くんが大好き”
”裕太くんと結婚する…”と
何度も何度も呟かせて思考を
変えていくー。
「---え…え、、、あ、、、うん…!
お、、俺、します!」
裕太が、観客に向かって大声で叫んだ。
一時的に哲司に憑依された裕太は
思考を書き換えられてすっかりその気になっていたー。
もちろん、元々の裕太も
美鈴と結婚したがっていたから、
哲司はそのあと押しをしたにすぎない。
千紗・富貴江の身体も乗っ取ったまま、
拍手をさせる。
(3人同時に憑依して動かすのって大変だな…
複数の仕事を同時にこなすような気分だ…)
哲司はそんな風に思いながら
観客席からの拍手を浴びるー。
文句を言っているファンもいるが
ファンの一部が「美鈴ちゃんの幸せは俺たちの幸せだ!」と
叫んだことで、
怒りの声はかき消されたー
「ーみんな~!ありがと~!」
美鈴が手を振りながら言うー
”あ…”
千紗と富貴江も、”みんな~!ありがと~!”と
叫んでしまったー
3人同時にコントロールするのは、難しいー
だがー
場面的に、そこまで不自然じゃなかったので、
なんとかセーフだった。
その時だったー
「ふ…ふざけるんじゃねぇ!」
ぶくぶくに太った男が叫ぶー。
美鈴のファンのようだ。
「ぼ、僕の美鈴ちゃんと結婚なんて!
ぼ、僕は認めないぞ!
美鈴ちゃん…いいや、美鈴!
お前はファンを冒とくした!
これまでに僕がお前にかけたお金の量を
知っているか?
お前は、僕を、ファンを踏みにじった!
僕は結婚なんて認めないぞ!」
ファンの男の一人が叫ぶ。
周囲の観客がその男を止めようとしたが
その男は無理やり、
美鈴の方に近づいてきた。
「お、、おおお!?」
裕太がどうすればいいのかわからず、
戸惑っている。
「--や、やめてください!」
哲司は、千紗と富貴江の身体を使って
美鈴の方に向かってくる男を止めた。
「君にとってファンは金づるか!
なぁ、答えろ!
ファンをずっと、だましてたのか!?
このビッチ女!」
ファンの男は叫ぶ。
千紗と富貴江の身体で
”邪魔すんじゃねぇよ”と
脅すような声を出すと、
その男はびくっと震えてー
やがて、かけつけた警備員に取り押さえられたー
「ふぅ…」
哲司は、富貴江と千紗にも
美鈴と裕太の結婚のことを刻むー。
そしてー
「---裕太くん、これから幸せな家庭を
作っていこうね!」
と美鈴の身体で呟いてー
そのまま裕太に抱き着いたー
”…って、、、ちがっ”
千紗と富貴江の身体も抱き着く仕草をしてしまった。
誰もいない場所で抱き着く仕草をする二人を見て
ファンたちは少し首を傾げたー
”3人憑依…難しいぜ”
哲司はそう呟きながら、3人から抜け出したー
・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー
哲司は、
裕太・美鈴の夫婦と一緒に食事をしていた。
「いやぁ~ほんと驚いたよ
美鈴ちゃんと結婚することになるなんてな」
「ふふふふ…」
美鈴は嬉しそうにほほ笑んでいるー
憑依の影響で、美鈴はすっかり裕太のことが
好きになったようだー
もちろん、それ以外の部分はいじっていないー
美鈴の幸せは、壊していないし、
人生も、……壊した、というまでではないだろう。
こうして、友人とアイドルを結婚させて、
哲司も一緒に過ごすー
これも、憑依能力を持つ哲司流の楽しみ方のひとつー
そしてー
「--おまたせ~!」
「お!」
哲司が入ってきた女性に手を振るー。
その相手はー
美鈴と同じアイドルグループの千紗だったー
美鈴たちに憑依したとき、
哲司は千紗に一目ぼれしたー
一目ぼれした哲司は千紗の思考を書き換えて
あのあと、千紗と結婚したー
哲司と友人の哲司は
同じアイドルグループのメンバーを
妻に持つことになったのだった。
”まさか、アイドルと結婚することになるなんてな…
でも、まぁ、これも俺なりの楽しみ方だ”
哲司は、心の中でそう呟くと、
”ま、きっかけはどうあれ、千紗のことを幸せにしたいのは
確かだし、俺もこれからは家族のために頑張るか”と
決意を新たにするのだったー
・・・・・・・・・・・・・
「-----ゆるさない…」
美鈴たちが食事をしているレストランの外にはーー
ぶくぶくに太った男がいたー
美鈴の結婚発表のときに叫んでいたファンだ。
彼はー
ポケットにナイフを忍ばせながら
店内で笑う美鈴の顔を睨むようにして
見つめていたー
美鈴ちゃんはファンを裏切ったー
あの夫は、ファンから美鈴ちゃんを奪ったー
男はナイフを握りしめて呟いたー
「美鈴ちゃんをぶっ壊す!」
とー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
リクエストを元にした作品でしたー!
頂いた憑依要素のうちの一つは
盛り込めませんでしたが
こんな感じになりました!
このあとどうなるのかは、皆様の
ご想像にお任せしますネ~!
お読み下さりありがとうございました!
コメント
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コレはまたも驚きでした
なるほど確かに結婚と言う方法もありますね
自分は特定の推す人物とかいないんで全く思い付きませんでした。
??「チョコになっちゃえー」
こうしてデブ繋がりで不穏な輩も無事処理された、と私は考えました笑
まあ個人的には寄生能力持ってる奴の方が良いけど
年末年始のリクありがとうそして改めましてあけおめことよろです
2020年は憑依憑依の年と無理やりこじつけてます
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無様>
あけましておめでとうございます~
それも面白いその後ですネ~
憑依の年…笑
たくさん憑依しましょうネ~!