<憑依>いつからお前はお兄ちゃんになったんだ?③~兄~(完)

親友の晃が、
見ず知らずの女子大生を
無理矢理”妹”に仕立て上げているー。

それを察した、晃の親友・啓祐は
晃の家に乗り込もうとするも…?

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晃の部屋の前に立つ啓祐。
インターホンを鳴らす。

だが、その直後ー

「きゃああああああああああ!」

アパートの側から悲鳴が聞こえた。

ーー!?
啓祐がびっくりして、アパートの階段を下りて
悲鳴をした方に向かうとー
そこには、全裸で、笑いながら奇妙なダンスを
踊る若い女の姿があったー

「なんだこれは…」
啓祐は驚くー

「あひゃひゃひゃ~♡
 わたしは変態でぇ~す♡」
大声で笑いながら、
裸で奇妙な動きをしている女ー。

”酔っ払いか?”
啓祐はそう思った。

だがー
その顔を見て啓祐は驚く。

「---!!」

裸で奇妙なダンスを踊っているのはー

昼間ー
情報交換をした女子大生・恵美だったー。

「--なっ…」

啓祐の方を見て、恵美はにやっと笑った。

そして、ギャラリーが集まってきたのを見計らって
彼女は大声で笑いながら
猛ダッシュして、近くの大通りの方に
飛び出していくー

「あっ…おい!」
啓祐は思わず叫んだー

だがー、
彼女は大声で笑いながら、
大通りに飛び出しー

そのまま救急車で緊急搬送されることになってしまった…。

「----」
啓祐は、ここにいても仕方がない…と、
恐怖を感じながらも
再び晃の部屋の前に向かうー

”晃が何かしたのではないか?”
そんな不安を感じながらー。

再びインターホンを鳴らす。

すると、晃が「よ!来ると思ってたぜ」と
呟きながら、啓祐を部屋の中に
招き入れた。

部屋の中に入ると、
妹の香奈枝が見えてしまいそうなほど
短いミニスカート姿で、椅子に座っていた。

晃は部屋に入るなり、
香奈枝の太ももをイヤらしく触り始める。

「---おにいさま…♡」
香奈枝が嬉しそうに呟くー

太ももを触られても、
嫌そうなそぶりは全く見せない。

「---晃…お前…」
啓祐が言うと、
晃は立ちあがったー

「---もう、お前には、隠せそうにないな…」
晃は優しく微笑むと、呟いたー

「いつからはお前はお兄ちゃんになったんだ?
 …そう、聞いたよな?

 あぁ…確かに、俺は少し前まで
 お兄ちゃんじゃなかった」

晃の言葉に、
啓祐は香奈枝の方を見ながら呟く。

「--その子…
 妹なんかじゃないんだろ!?

 …聞いたぞ?
 その子、近所の名門大学に通う、
 皆本璃子、って子なんだろ?」

啓祐が言うと、
晃が何かを言う前に、香奈枝が叫ぶ。

「璃子じゃないもん!香奈枝だもん!」

とー。

ツインテールをゆらゆらさせながら
ぷくっと頬を膨らませる香奈枝ー。

「---ははっ…
 まぁ、な。」

晃は笑った。

「確かにお前の言うとおりだ」
晃は机の上に置いてあった
学生証を、啓祐に見せる。

そこにはー
女子大生である”皆本 璃子”の
顔写真と名前が記されている。

「俺はさ、ずっと妹が欲しかったんだ。
 前に、お前にも言っただろ?」

そう呟くと、晃は香奈枝を名乗る璃子の方に
近づいていく。

「そして、手に入れた」
香奈枝の髪をイヤらしく撫でると、
晃は笑う。

「て、、手に入れたってどういうことだ!?
 彼女も、お前の妹になることに
 納得してるのか?」

啓祐は声を荒げる。

璃子が、
晃と付き合っていて
”妹プレイ”でもしているなら
それで構わない。
大学生同士の恋愛に口を挟むことではないー。

だがー
もしも、晃が璃子を脅しているならー…

「--その人を…
 脅したり…してないよな?」
啓祐は不安になりながらも聞く。

脅して家に連れ込み、
妹として無理やり振る舞わせているなら
それは犯罪だー。

「--ねぇ!何なの!?
 おにいさまをいじめるな!」
香奈枝が叫ぶー。

「--くくく…はははははははは!
 脅す?
 啓祐、お前は何もわかっちゃいない」

晃はそう言うと、
部屋の窓を指さす。

「ここに来る前に、変なモノ、見なかったか?」
笑いながら言う晃。

「変なモノ…」
啓祐はすぐに思い当たった。

女子大生の恵美がー
全裸で奇妙なダンスを踊っていたー

「あ…あれはお前の仕業か!」
啓祐が叫ぶー

「あぁ。彼女、何であんなことしたと思う?」
晃が言うと、
啓祐は”脅したのか?”と呟くー

晃は笑いながら首を振った。

「俺なんかに脅されて、あんなことするか?
 笑いながら裸でダンスして、
 自ら車に轢かれるようなことするか?
 しないだろ?」

晃はとても面白い話をしているかのように笑うー

「じゃ、、じゃあどうして…」
啓祐は恐怖を感じながら呟く。

確かにー
脅されただけであそこまでしないだろうー

それにー
裸で奇妙な踊りをしていた恵美は、
とても”嬉しそう”だったー。

「---憑依」
晃が呟く。

「なに?」
啓祐は思わず聞き返した。

「--見てろよ」
晃はそう言うと、大きなペットボトルを取り出し、
それをコップに注いで一口だけ飲んだ。

「--!?」
それを飲んだ瞬間、晃はその場に倒れる。

「お、おい!」
啓祐が思わず晃の方に駆け寄るー。

しかしー

「慌てるなってー」

!?

啓祐は驚くー

妹の香奈枝が、そう呟いたのだ。

香奈枝は自分の胸を揉みながら笑った。

「--どうだ?すげぇだろ?
 俺は人の身体を自由に乗っ取ることが
 できるようになったんだぜ」
香奈枝と名乗らされている璃子が、
自分のツインテールを触りながら笑う。

「ふひひひひ…どうだ!今は俺が璃子だ!」
璃子が両手を広げて笑う。

「お…お前…!」
啓祐は唖然とすることしかできなかった…。

憑依…?
そんなことが…?

「さっきの女子大生は、俺が憑依して
 俺が裸で躍らせたんだー

 あの女、俺と香奈枝の邪魔をしようとするから
 消えてもらったんだよ」

香奈枝が男言葉を可愛い声で口にする。

「そ、、そんなこと…!
 そんなこと、許されると思ってるのか!」
啓祐が叫ぶー。

だが、香奈枝は、足を組んでイスに座ると
ケラケラと笑った。

「俺は何も悪いことはしてないぜ。
 この璃子ちゃんは、一人暮らしだったし、
 ちゃんと大学に退学届も出させた。

 俺が憑依して
 家族にも適当に連絡してる。

 な~にも、問題はない」

香奈枝がニヤリと笑う。

「ふ、ふざけるな!その人の気持ちを考えろ!
 好き勝手に…」

「--喜んでるじゃん。
 香奈枝、幸せそうだろ?

 憑依してる間はさ…
 ココを使って物事を考えるわけ」

香奈枝が、自分の頭をつんつんつつきながら言う。

「--そんな状態で
 ”この人がわたしのおにいさま”って念じ続けたり、
 ”わたしは香奈枝”って念じ続けたりすると、
 どうなると思う?」

香奈枝はゲラゲラと笑ったー

「-なんと!この女の思考が
 塗りつぶされて、思い通りの人間が
 出来上がるんだよなぁ!ひひひひひ!」

笑い続ける香奈枝ー。

啓祐がどうしようかと困っていると、
香奈枝が「うっ」と低い声をあげて
その場にうなだれるー

すぐに、晃が立ち上がるー。
香奈枝の身体から出たのだー。

「---香奈枝…
 幸せか?」

晃がニヤニヤしながら聞くと、
香奈枝は答えた。

「うん!わたし、とっても幸せだよ♡」
とー。

晃がドヤ顔で啓祐の方を見る。

「-俺も、香奈枝も、幸せでいっぱいなんだ。
 俺は、悪いことは、何もー」

「--ふざけるな!」
啓祐は大声で叫んだ。

「お前がそうさせてるだけじゃないか!
 本当の彼女が、今の状況を幸せに思っているわけがないだろ!

 晃!お前、自分のやってることが分かってるのか!?」

啓祐の大声に、晃は笑う。

「--女に憑依して、自分の好きなように作り替えるー。
 これは、犯罪か?
 憑依を裁く法律が、この世にあるのか?

 香奈枝…いいや、璃子ちゃんは未成年じゃない。
 表向きは大学生同士のお付き合いで同棲してるだけだ。
 ”同意の上で”な。

 あ?俺は犯罪者か?容疑者か?
 あ?お?何とか言ってみろよ」

挑発的に笑う晃。

啓祐は「-ふ…ふざけるな…!」と
言い返すのがやっとだったー。

「---くくく」
晃は笑うと、
香奈枝と名乗らされている璃子の方を見た。

「--お前は香奈枝だよな?
 それとも璃子か?」

晃が、香奈枝の髪を触りながら言う。

すると、香奈枝は迷わず微笑んだ。

「わたし、香奈枝だもん!
 璃子ってだぁれ?」

とー。

「---…お、、おい…」
啓祐は唖然とするー

憑依されてー
ここまで変えられてしまうものなのか…

”憑依”に対する恐怖心が
こみあげてくるー。

「--め、、目を覚ますんだ!
 君は、ほら、皆本 璃子さんだろ!?」

啓祐は部屋に落ちていた学生証を
拾って、その写真を見せつける。

髪型はツインテールではないが、
確かに今、目の前にいる香奈枝と
璃子は、同じ顔をしているー。

当たり前だー。
同一人物なのだからー

「--わたしは香奈枝だもん!!璃子なんかじゃない!」
彼女は、そう叫んだー。

「--ははっ、いい子だ」
晃が香奈枝の頭をなでると
香奈枝は「あぁぁ…おにいさま~…」と
うっとりとした表情で呟く。

完全に、意のままにされてしまっている。

「--き、君を助けようとした友達は今
 こいつに酷い目に遭わされて、病院で
 苦しんでる!」

啓祐が叫ぶー。
晃に憑依された璃子の友人・恵美は
裸で踊らされた挙句、大通りに飛び出して
轢かれてしまったー。

「---……ともだち~?」
香奈枝が首をかしげる。

「わたしには、おにいさまがいれば十分なの!」
晃に抱き着く香奈枝ー

晃はニヤニヤしながら喜んでいる。

「--そんな…」
啓祐は唖然とするしかなかったー。
呼びかけたりしても、
全く正気を取り戻す気配がないー

「---…なぁ、啓祐。
 お前が望むなら、お前にも俺と同じように
 妹を作ってやるよ。

 俺達、親友だろ?
 つまらないことはやめにしようじゃないか」

晃が諭すようにして言う。

「ふ…ふざけるな…!お前、自分のしてることが
 分かってるのか…!」

啓祐が晃を睨む。

晃は啓祐の方を笑いながら見つめる。

「あぁ、分かってるさ。
 見ず知らずの女子大生に憑依して
 思考を書き換えて
 俺の妹にしたのさ。

 でも見てみろよ。
 璃子…いや、今は香奈枝か。
 すっごく幸せそうだろ?」

啓祐が香奈枝の方を見るー。
香奈枝と名乗らされている璃子は、
とても、幸せそうだー。

けどー
これはー
”そうさせられている”だけだー

「--うるさい!今すぐ警察に通報してやる!」
啓祐はそう言い放ち、スマホを取り出す。

「-----やめろ」
晃が冷静に呟く。

「やめない!」
啓祐がスマホのロックを解除する。

「なぁ、俺とお前は親友だろ?」
晃の言葉ー

「あぁ、だからこそ、だ。
 親友の俺がしてやれることは
 道を踏み外したお前を
 止めてやることだ!」
啓祐が叫ぶ。

すると、晃は溜息をついた。

「どうあっても…俺と香奈枝の邪魔をするいみたいだな」

そう呟きながら
晃が近づいてくる。

そしてー
啓祐の目の前にやってくると、
晃はにっこりとほほ笑んだー

「俺、もう一つ欲しいものがあったんだ」

晃は、さらにニコッと微笑んだー
まるで、無邪気な子供が、欲しいものを
目の前にしたかのような微笑み。

そして、呟いたー

「---弟」

とー。

「--!?」
その瞬間、晃が倒れてー
啓祐の意識が途切れたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「う…」
啓祐が目を覚ますー

「お、、、俺は…」

何かされた…?

啓祐はそう思いながら周囲を見渡したー

「--おはよう」
誰かがそう囁く。

「え…」
啓祐が声のした方を振り向くとー

そこにはー
”晃兄さん”がいたー。

「---啓祐…いや、孝之。」

晃がにっこりと笑うー

「に、、兄さん」
啓祐が呟く。

「あぁ…そうだ。俺はお前のお兄ちゃんだ。
 そしてお前は…孝之だ。そうだろ?」

晃がそう言うと、
啓祐は嬉しそうにうなずいた。

「--あ、姉さん!おはよう!」
啓祐が言う。

「あら!孝之!おっはよ~!」
香奈枝が、ショートパンツ姿で足を晒しながら
嬉しそうに挨拶をするー

啓祐もー
晃に憑依されて、”変えられて”しまったー

香奈枝と同じようにー。

「いつまで寝惚けてるんだ?
 ほら、早く起きろよ」

晃が言うと、
啓祐は嬉しそうに、「はい!おにいさま!」と
声をあげたー。

おわり

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コメント

憑依で、記憶を塗り替えて、
見ず知らずの人を妹に仕立てあげてしまう…
というお話でした!

香奈枝にされてしまった璃子も、
啓祐も、
一人暮らしの設定なので、
晃が上手く、操って
家族や周囲には悟られていないようデス…!

ぶるぶるですネ…!

お読み下さりありがとうございました~!

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