親友の・晃の妹”香奈枝”-。
だが、親友には妹なんていなかったはずー。
ますます疑念を抱く
啓祐の取った行動は…?
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大学の食堂で、
カレーライスを食べていると、
親友の晃がやってきた。
「おう」
啓祐はカレーを食べながら挨拶をする。
晃も「お」と笑い返す。
そしてー
晃はうどんを食べ始めると、
啓祐の向かいの座席に座った。
「昨日さ…、たまたま近くを通ったから
お前の家に寄ったらさ、
妹の香奈枝ちゃんしかいなくて、
…なんか悪いことしちゃったな」
啓祐が呟くー。
昨日ー
啓祐が晃の家に行ったときに
応対した香奈枝は、
晃が憑依していた状態ー。
そのことを知らない啓祐は
苦笑いしながら
”妹さんに怒られちゃったよ”と呟く。
「--…なぁ」
晃がうどんを口にしながら呟く。
「今までは俺一人だったから
良かったけどさ…
今は香奈枝と同居しているから、
何の連絡もなしに
家に来るのは、やめてもらえないか?」
晃の言葉に
啓祐は「まぁ…確かにそれはそうだな…悪かったよ」と
謝罪の言葉を口にした。
しんみりとした雰囲気に気付いた晃は
「まぁ、ほら、そう落ち込むなって」と
笑いながら、明るい雰囲気を作ったー
「----…」
啓祐は、苦笑いしながら思うー。
”晃に妹がいた気配がない”
”前に「妹が欲しい」と言っていたこと”
”部屋にあった「皆本 璃子」という子の学生証”
あの学生証がホンモノなら、
啓祐の家に居た、香奈枝という妹は、
本当は、皆本 璃子という女子大生ということになるー。
香奈枝は高校生だと、晃は説明していたが、
本当は女子大生で、
彼女が高校時代に使っていた制服を着ているから、
旧デザインの制服なのかもしれないー
啓祐は、意を決して呟く。
「なぁ…
いつからお前はお兄ちゃんになったんだ?」
啓祐の言葉に、
晃の表情から笑顔が消えたー
「---」
晃は、うどんを食べる手を止めて、
不気味な笑みを浮かべたー
「---いつから…って、
決まってるじゃないか。
香奈枝が生まれたときからだよ」
晃はそう答えた。
「---でも…昨日さ、
お前の部屋で、学生証を…」
「--悪い。俺、急用を思い出したわ」
うどんを半分ぐらい残したまま
晃はそう呟いて立ち上がる。
うどんの入ったお盆を
返却口に持っていこうと
足早に立ち去ろうとする晃。
そんな晃に、
啓祐は声をかける。
「なぁ晃…!
俺はお前のこと、親友だと思ってる。
……何か…悪いことしたりしてないよな…?」
啓祐の言葉に、晃はしばらく立ち止まった後、
振り返って答えたー。
「---安心しろよ…。
何も悪いことなんか、してないさ」
晃の言葉ー。
晃の顔はー
嘘をついている顔ではなかった。
「--信じて、いいんだな?」
啓祐が言うー
晃は迷いなく答えたー
「あぁ…」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
晃は帰宅する。
「--おにいさま…お帰りなさいませ」
女子高生姿の香奈枝が、嬉しそうに
”兄”の晃を出迎える。
「---ただいま…香奈枝~!」
そう言うと、晃は香奈枝を抱きしめる。
香奈枝は嬉しそうに顔を赤らめたー
晃はそのまま香奈枝の胸を触る。
「んふふふふふ~
お前は俺の妹だ~!
そうだろぉ~?」
晃が香奈枝の胸を揉みながら言うと、
香奈枝は嬉しそうに満面の笑みで「うん…!」と
答えるー。
胸を揉まれていることにも、
今の彼女は喜びを感じているー
香奈枝はーーー
”女子高生”ではないー
晃の趣味で、女子高生という設定にされている。
本当はー璃子という女子大生で、
晃に憑依されて思考も何もかも変えられて
晃に忠実な妹にされてしまったー。
香奈枝が身に着けている制服はー
憑依される前…女子大生の璃子が
高校時代に実際に使っていた制服だー。
「--俺とずっと一緒にいてくれるよな?」
晃が香奈枝を見つめながら言うと、
香奈枝は
「わたしは、おにいさまの側にずっといたいです…」
と、顔を赤らめながら微笑んだー
「---そうだ…
俺は悪いことはしていないー
俺も幸せ…
この女も幸せ…
…啓祐…
俺は”悪いこと”はしてないぞ…」
晃はひとり、そう呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
同時刻ー
啓祐は、
昨日、晃の家で見た
”学生証”の大学にやってきていたー
皆本 璃子ー。
晃の妹だという香奈枝と同じ顔だったー。
もちろんー
他人の空似かもしれないー
あるいは、皆川璃子という子が
晃の彼女で、”妹がほしい”という
晃のために
香奈枝と名乗って妹を演じてあげているのかもしれないー
啓祐は、色々なことを考えながら、
学生証の大学にやってきていたー
何もないなら、いいー。
だがー…
何か違和感を感じるー
友として、晃のことを信じてあげたいー
だが、同時に
晃が道を踏み外しているのならー
友として止めなくてはいけないー
啓祐はそう思っていた。
「あの、すみません」
啓祐は大学から出てきた人たちに、
”皆本 璃子”について知らないかを尋ねるー
見ず知らずの啓祐にいきなり
皆本璃子について聞かれた学生たちの
ほとんどは”なんだこいつ?”というような
顔を浮かべながらスルーした。
だがー
ある女子が、話を聞いてくれた。
「璃子ちゃんの…お友達ですか?」
ポニーテールの、しっかり者な雰囲気の
女子が、啓祐にそう問いかける。
「いや…あの…
なんというか…
ちょっと色々とありまして」
啓祐はどう説明していいか困ってしまう。
”自分の親友に、急に妹が出来て
その妹が、皆本璃子という子に似ている”なんて
訳の分からない説明をしても
信じてもらえないだろうし
それこそ頭のおかしなやつだと思われる。
「---話、聞かせてもらえませんか?」
ーー!!
相手の女子大生のほうから、
話を持ちかけられた。
皆本璃子という子について
知るチャンスだと考えた啓祐は
迷わず頷き、
近くの喫茶店へと向かうー。
璃子の友人だったという
その女子大生・恵美(めぐみ)は
喫茶店の座席に座るとため息をついた。
「--皆本さんって言う子は、今どこに?」
啓祐が聞くー
もしも、晃の妹と名乗っている香奈枝という子が
璃子なら…
大学にはいないはずだー。
「---それが…少し前に急に大学を辞めてしまって
それからずっと音信不通なんです」
恵美が言う。
「音信不通…?」
啓祐の言葉に、恵美は頷く。
「とても優しくて、明るくて…
あんなに前日まで元気だったのに…
急に退学届を出しに来て、それっきり…
連絡もつかないので、心配してたんです」
恵美の言葉に、
啓祐の中の疑念が膨らんでいくー。
啓祐はーー
最初に香奈枝と出会ったときに、
兄妹を並べて撮影した写真を
恵美に見せたー。
「--ーえっ…?璃子…?」
晃と一緒に並ぶ香奈枝の写真を見て、
香奈枝の親友・恵美はそう呟く。
「---俺の親友の妹の香奈枝…って子なんですけど、
俺は、この子が皆本 璃子さんだと思うんです」
啓祐はそう呟いて、
”晃の部屋に、皆本璃子の学生証”が落ちていたことを告げる。
「ど…どうして…?」
恵美が狼狽えているー。
親友の璃子が、突然大学をやめて
音信不通になった上、
見ず知らずの男の”妹”を名乗っているー
全くわけがわからなかったー
「--この写真の子…
香奈枝ちゃんは、皆本璃子さんで間違いないですか?」
啓祐がスマホの画面を今一度見せながら言うと、
恵美は「…たぶん…ほぼ確実に璃子ちゃんだと思います」と
答えたー。
その証拠に、写真に写る香奈枝の
目の下あたりにある小さなほくろを指さしたー
「--このほくろ…
璃子ちゃんにもありました…
彼女が、璃子ちゃんで間違いありません」
その言葉に、啓祐の中での疑念が
強く膨れ上がったー。
晃の妹・香奈枝=璃子…
と、なれば
晃と一緒にいる香奈枝は、
本当は晃の妹ではないことになるー。
誘拐して脅しているー?
それとも、璃子と晃のやつが付き合いだして、
璃子に妹プレイでもしてもらっているー?
啓祐は”もう一度、晃の家に行こう”と
強く決心するのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
その夜ー
啓祐から話を聞いた
女子大生・恵美が、
友人の璃子の行方を求めて
啓祐の親友・晃の家を
見つけ出して、やってきていた。
「---(璃子ちゃんが、知らない人の
妹を名乗ってるなんて、絶対におかしい)」
憑依のことを知らない恵美は、
璃子は脅されているんだ、誘拐されているんだ、と
考えながら、家の前までやってきていた。
親友として、助けないといけないー
「---おにいさま…」
その時だったー
聞き覚えのある声―。
璃子だー。
「---!!」
恵美が振り返ると、
晃と、晃の妹・香奈枝として
腕にしがみつきながら
ちょうどアパートに帰ってきた
晃と、憑依で思考を塗りつぶされた璃子の
姿があったー。
「---璃子…」
恵美が呟く。
「りこ…?」
憑依によって、思考を変えられてしまっている
璃子は、首をかしげる。
「----どなたですか?」
晃がうんざりとした様子で言う。
「--どなたって…
わたしはその子の友達よ!
璃子に何をしたの!?」
恵美が叫ぶ。
すると、晃が頭をかきながら呟いた。
「…何を言ってるのか分かりませんけど、
こいつはおれの妹の香奈枝ですよ?」
「おにいちゃん…こわ~い!」
香奈枝と名乗る璃子が、晃の腕にしがみつく。
「り…璃子…!
一体どうしたの!?
何があったの!?」
晃を無視して叫ぶ恵美。
明らかに、璃子の様子がおかしいー
まるでー
”操られている”かのようなー
「急に大学辞めちゃって、心配したんだよ!
ねぇ、どうしちゃったの!?」
恵美が叫ぶ。
けれど、香奈枝を名乗る璃子は、
晃にしがみついたまま。
ぶりっ子のように怖がっているー
「--なんで、高校の制服なんて着てるの!?」
恵美が表情を歪めながら言う。
「だって香奈枝、高校生だもん!」
香奈枝と名乗る璃子が言うー
完全に、晃によって
作り替えられてしまっているー
「--あ、、あんた…!
璃子に何をしたのよ!」
恵美が晃を睨むー。
だが、晃は怖気づくことはなかったー
「---お兄ちゃんに困らせるな!」
香奈枝を名乗る璃子が叫ぶー。
「--り、、璃子…!」
恵美は困り果てた様子で璃子の方を見る。
晃はニヤニヤしながら呟く。
「まぁまぁ、香奈枝。
そんなに怒らなくてもいいよー。
お前を困らせるやつは、
お兄ちゃんがやっつけてやるー」
晃が不気味な笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
少ししてー
啓祐も、晃の家にやってきていたー。
「---…晃…
お前を信じてもいいんだよな…?」
晃が悪い事をしているとは思いたくない。
ずっと親友だった晃を疑いたくはないー
でも
”突然、現れた妹”
どう考えてもおかしいー
いやー
あの香奈枝と名乗る妹は、
晃の妹じゃないー
そんな気がしてならない。
どういう手段を使ったのかは分からないー
けれどー
璃子という子に、無理やり香奈枝と名乗らせて
妹にしているー
そんな気がするー
「-----」
晃の部屋の前に立つ啓祐。
啓祐は深呼吸をすると、
晃の家のインターホンを鳴らすのだったー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
次回が最終回デス~!
冬になると手が冷たくなって
文章の入力が
遅くなるような気がします~汗
皆様も手が冷えないように注意して下さいネ~!
コメント
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首と足の保温に気を使えば手足冷え症がよくなります。
SECRET: 0
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> 首と足の保温に気を使えば手足冷え症がよくなります。
わわ!ありがとうございます~!
少し気を付けてみます!!