結婚式の日がやってくるー。
二人は、入れ替わったままー。
このまま、幸せを奪われてしまうのか…。
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結婚式当日ー。
ウェディングドレスを身に包みながら、
唯香になった麻子は微笑む。
「あぁ…わたしの夢が叶う…」
唯香(麻子)は
嬉しそうに自分を抱きしめるー。
夢にまで見た花嫁衣裳ー
けれどー
その夢は叶わなかったー
婚期を逃してー年齢だけを重ねた。
男に恵まれず、
どんどんどんどん老いて行ったー
そんな中、浩二が現れた。
後輩社員の浩二に恋をした麻子。
でも、年の差からか、振り向いてもらえることはなかった。
後輩の小娘・唯香に取られた。
唯香は、泥棒猫だ。
だがー
今は違う。
今は、自分が唯香だ。
泥棒猫から、身体を奪ってやった。
奪われたものを、取り返した。
「---ふふふふ…わたしが唯香…」
うっとりとした表情で
唯香(麻子)は自分の姿を、鏡で
見つめるのだったー
・・・・・・
麻子(唯香)は、
唯香になった麻子から誘われて
強引に結婚式に参加させられていたー。
しかもー
ブライズメイドー…
という役割を、押し付けられている。
花嫁と同じウェディングドレスを着てー、
花嫁をサポートする役割…。
唯香(麻子)が、
麻子になった唯香を
徹底的に苦しめる為に提案した役割ー。
”あなたが立候補なさい”
唯香(麻子)にそう脅されたー
麻子(唯香)は、言われるがままに
立候補させられたー…
本当はー
自分の幸せだったはずの
結婚式ー。
それを奪われ、見せつけられるー。
その上、ブライズメイドとして、
手伝わされたー。
今日、この日までも、”見せつけるかのように”
わざわざ手伝わされたー。
自分のウェディングドレス姿を見て、
麻子(唯香)は溜息をつくー。
”おばさん体形”になりつつある
麻子のウェディングドレス姿ー。
「…わたし…もう戻れないの…?」
麻子(唯香)は呟く。
まさに、地獄だ-。
”もしも来なかったらー
結婚式の最中に、全部服を脱ぎ捨てて
みんなを困らせてあげるわ”とー
脅されているー
「---…浩二…」
麻子(唯香)は、悲しそうに呟くー
浩二にも信じてもらえないー
先輩は、やはり自分の身体をこのまま奪う気だ。
「--どうすればいいの…?」
麻子になった唯香は
とても悲しそうに、
そして悔しそうにそう呟いたー
式が進むー。
麻子(唯香)は屈辱にまみれながら、
今にも泣き叫びたい気持ちに
なりながらー
二人を見つめた。
浩二と唯香(麻子)は
とても幸せそうだー。
本当なら、自分があの場所に
立っているはずだったのにー。
意識せずとも、涙がこぼれてくる。
そうこうしているうちに
唯香(麻子)が近づいてくる。
自分のウェディングドレス姿をー
他人として見せつけられることになるなんて。
麻子(唯香)は、
震えたー。
あまりの怒りと屈辱と悔しさと悲しさー
色々な感情が爆発しそうになって震える。
近づいてきた唯香(麻子)は、
ブーケを麻子(唯香)に手渡しした。
ブーケトス…。
花嫁が、未婚の女性にブーケを投げて
キャッチした女性が次に結婚できると
言われている、
そんな、儀式ー。
ブーケを投げずに、手渡しするケースもある。
唯香になった麻子は、それをやってみせた。
唯香として
麻子になった唯香にブーケを手渡すー
麻子(唯香)は、
目から涙をこぼしながら、
唯香(麻子)の方を見る。
唯香(麻子)は
勝ち誇ったようなー
邪悪な笑みを浮かべていたー
”あんたの幸せはわたしのもの”と
見せつけるように…。
「---うっ…うっ…うぅぅぅぅぅ…」
ブーケを受け取った麻子(唯香)は
その場で泣きだしてしまう。
「ーーー先輩には、いつも本当に
感謝してるんです。
ありがとうございます」
唯香(麻子)は
こみあげてくる笑いを抑えながら、
優しい口調でそう言い放った。
泣き崩れる麻子(唯香)
周囲はー
先輩思いの後輩が、
先輩のブーケを手渡しして、
先輩がそれに感動して泣き崩れたー
ようにしか見えていない。
拍手が巻き起こる。
「----うぅぅぅぅ…うう…」
麻子(唯香)の嗚咽が会場内に響き渡る。
そんな様子を見つめながら
浩二は、拳を握りしめたー
今、この場で
唯香になった麻子をぶん殴ってやりたい気持ちになった。
でもー
それはできないー
浩二は、唇から血が出るほどに、
唇を強く噛みしめた…。
そして…
式はさらに進み
唯香(麻子)が両親への感謝の言葉を述べるー
「お父さん、お母さん、産んでくれてありがとうー」
テンプレートのような言葉を述べる唯香(麻子)。
その姿を見つめながら
麻子(唯香)は
「わたしじゃない…」とうわごとのように
ブツブツ呟いていた。
もうー
麻子になってしまった唯香の
精神力は、限界だった。
周囲がひそひそと呟いているー
”あの先輩、いい年して痛くない?”
”だよな。唯香ちゃんと同じ姿してて恥ずかしくないのかよ?”
ブライズメイドとして
唯香(麻子)と同じ花嫁衣裳を着ている
麻子(唯香)を嘲笑う声が聞こえるー
どうしてー?
どうして、自分がこんな目に
遭わなくちゃいけないの…?
ーと。
そしてーー
先輩として、お祝いのスピーチを
することにもなっていたー
スピーチの順番が回って来て
麻子(唯香)は、
壇上に上がるー。
唯香(麻子)が耳打ちするー
”わたし、とっても幸せ…ふふふ”
とー挑発的に…。
先輩・麻子として
結婚した後輩・唯香への
お祝いのスピーチをするー。
屈辱ー
許せないー
許せないー。
マイクを握りしめる麻子(唯香)。
ここで、怒りに身を任せて行動すれば、
何をされるか分からないー。
許せないー…
本当だったら、
浩二と結婚するのは、わたしなのにー。
その幸せを目の前で奪われて、
踏みにじられる…
許せない…。
そう思っていると、
自然に麻子(唯香)の目から
涙がこぼれたー。
「どうして…」
麻子(唯香)が呟く。
結婚式に参加していた他の人間たちが
不思議そうに麻子(唯香)の方を見る。
「どうして…
どうして、こんな酷いことするんですかぁ…!」
麻子(唯香)は
貯め込んでいた感情を爆発させて、
唯香(麻子)の方を見るー
「--」
唯香(麻子)が険しい表情で、
麻子(唯香)の方を見るー。
悔しい感情を爆発させながら
麻子(唯香)は叫ぶー
「こんなことして楽しいですか?
わたしから幸せを奪って…
わたしに手伝いまでさせて…
楽しいですか・・・?」
泣きながら言う麻子(唯香)
周囲は騒然とするー
唯香(麻子)は驚いた表情を浮かべているー
ここで、唯香が
暴走するとは思っていなかったのだろうかー
浩二も、狼狽えているー
浩二は二人が入れ替わったことを知っているー
だが、麻子に脅されているー
だから、これまで行動はしてこなかったー
「---ひどい…ひどい…!」
麻子(唯香)は泣きながら
唯香(麻子)の方を見るー
だがー
唯香(麻子)がニヤァ…と笑みを浮かべたー
”計画通り”
そろそろ限界だと思っていたー
周囲が止めに入るー
”先輩思いの後輩が結婚したのに、
それに嫉妬して狂った哀れな先輩を
止めるためにー”
「違う!離して!
わたしが唯香なの!ねぇ!」
周囲に向かって叫ぶ麻子(唯香)
けれどー
誰もその言葉を信じないー
”嫉妬に狂ったおばさんが
スピーチで暴走した”
周囲は、そう思っている。
唯香(麻子)は、
会場から連れ出されそうになっている
麻子(唯香)を見つめながら
笑みを浮かべる。
勝ち誇った表情で、麻子(唯香)を
見つめ続けるー
そして、
彼女に伝わるかは分からないが、
口の動きでこう呟いたー
”からだもしあわせも、わたしのものだ”
とー。
浩二が飛び出そうとする。
”唯香と麻子が入れ替わってるのは、
本当なんだ!”
と叫ぼうとしてー。
しかしー
唯香(麻子)が浩二の肩を掴んだー。
「--どうなるか、分かってるの?」
低く、鋭い声―
脅す口調。
浩二は、あまりの恐怖に動くことができなかったー。
そのまま麻子(唯香)は追い出されて
唯香(麻子)の結婚式は再開…
無事に、式は終わるのだった…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから数週間ー
唯香(麻子)は、寿退社することになったー。
少し前から、唯香になった麻子は
勝手にこの話を上司にしていたらしいー。
廊下で唯香(麻子)とすれ違う-。
「---……」
麻子(唯香)は、精神的に
やられてしまって
無口になり、虚ろな目で毎日漠然と
仕事をしていたー。
結婚式でのショックが、
麻子になってしまった唯香の心を、
深く傷つけ、絶望していた。
職場でも”後輩の結婚に嫉妬したおばさん”の
ような扱いを受け始めていて、
麻子(唯香)の居場所は、
どこにもなくなりつつあった。
「---…安心して」
唯香(麻子)が言うー。
メイクの雰囲気も、髪型も変わった。
唯香になった麻子が
自分好みに唯香の容姿を変えているー。
まるでー
”この身体は私の所有物”だと
主張するかのようにー。
「---あなたの人生…
あなたの幸せは、わたしが全部使ってあげる」
唯香(麻子)はいじわるそうな笑みを浮かべる。
「--うううぅぅぅ…!」
麻子(唯香)は、唯香(麻子)を睨みつけた。
唯香(麻子)は嘲笑う。
「わたしね、あなたのことが嫌いだったの。
ずっとずっと、あなたに嫉妬してた。
でも、今はもう違う。
あんたの幸せも何もかも
全部奪ってやった!
あんたは、これから、嫉妬に狂う
醜いおばさんとして、生きていくのよ…!
うふふふ…あっはははははは♡」
唯香(麻子)は”勝利宣言”と言わんばかりに
高笑いしながら、そのまま立ち去ってしまったー。
唯香(麻子)は退職したー。
その翌日ー
麻子(唯香)は、浩二に泣きついた。
”自分が唯香だ”とー。
もう、麻子に、元に戻るつもりはない。
浩二に信じてもらうしかないー
けどー。
「---ごめん」
浩二は頭を下げた。
「--俺……
やっぱり、唯香が好きなんだ」
浩二の目を見てー
麻子(唯香)は絶望したー。
浩二は、
唯香の身体になった麻子に誘惑されて、
ついにその誘惑に負けてしまったー
”中身が違っても、唯香は唯香だ”
そう、思うことにしたー
自分のことを好きでいてくれることには変わりないー。
見た目も、そのままー
無理をして、麻子の姿になった唯香を
唯香だと思うよりもー
唯香の姿をした麻子を
唯香だと思う方がいい―。
そう、答えを出してしまった。
「---さよなら」
浩二は、冷たく、そう言い放ったー。
浩二もーーー
諦めてしまったのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
自宅で、浩二の顔写真を貼りつけた
マネキンに、
麻子(唯香)が一人、抱き着いている。
「あぁ…浩二…♡…ふふふ…ふふふう♡」
中年のおばさんになりつつある
麻子の身体のまま、唯香は
麻子の貯金を使って購入したマネキンに
浩二の写真を貼りつけて、
裸でそれに抱き着いていた。
「浩二…浩二…こうじぃ~♡
わたしが、、唯香なのに♡」
麻子(唯香)は
目から涙を流しながら笑っていたー。
幸せを奪われて―
身体を奪われて―
全てを奪われたー
もう、自分には、何もない。
「うふふふふ…♡
わたしは、、寂しい寂しい麻子ですよぉ~だ♡」
お酒を口にしながらそう呟くと、
「ね、こうじー!♡」とマネキンに向かって
呟きながら、再び抱き着き、
マネキンに向かってキスをし始めたー
「ふふふ…あはは、あはっはははははは!」
奪われた幸せを、思いながらー
麻子(唯香)は、涙を流しー
狂ったように笑い続けたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
リクエストを元にした作品でしたー!
頂いてから1年が経過してしまいましたが
ようやくこうしてお届けすることができました!
(お待たせしました!!)
リクエストの原文は、
結婚式間近の女性とその女性の女先輩の入れ替わりです。
結婚する女性は職場結婚であり、女先輩は二人にとっても先輩にあたります。
先輩は女性の男に好意を寄せており、入れ替わった事を良いことに
変な噂が立つからと男と女性を合わせなくさせます。しかも、
ラブラブな写真を送ったりと追い込みをかけます。
男は入れ替わりの事実を知っていますが、先輩に脅され服従を余儀なくされます。
そして、結婚式当日。婚期を逃している先輩に、
ブーケを手渡し見世物にしたりとか(表向きは感動的な演出)、
入れ替わる前に余興をさせてくれと申し出ており、
盛り上げ役をさせたり(ブライズメイドをさせるのもいいかも)
本来は自分の為の式なのに見せつけられ、
すべてが奪われていき絶望していく感じのです。
気に入ってくださったらよろしくお願いします。
と、いうものでした!
最後はどうしようかな~…と思いましたが
リクエスト頂いた内容を見ながら
絶望エンドかな~…?ということで、
とことんダークに行ってみましたー!
リクエスト&お読み下さりありがとうございましたー!

コメント
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
今回も素晴らしいお話をありがとうございました。いつも楽しみにさせて頂いております。
本文中の下記ですが、実際にそのシーンの描写も見たかったと思いました。
唯香(麻子)の誘惑によって、葛藤の中で浩二が落とされていく様子の描写があると最高でした。
加筆又は追加エピソードのような形でもし可能でしたらお願いしたいです。
>浩二は、
>唯香の身体になった麻子に誘惑されて、
>ついにその誘惑に負けてしまったー
>”中身が違っても、唯香は唯香だ”
>そう、思うことにしたー
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> 今回も素晴らしいお話をありがとうございました。いつも楽しみにさせて頂いております。
>
> 本文中の下記ですが、実際にそのシーンの描写も見たかったと思いました。
> 唯香(麻子)の誘惑によって、葛藤の中で浩二が落とされていく様子の描写があると最高でした。
> 加筆又は追加エピソードのような形でもし可能でしたらお願いしたいです。
>
> >浩二は、
> >唯香の身体になった麻子に誘惑されて、
> >ついにその誘惑に負けてしまったー
> >”中身が違っても、唯香は唯香だ”
> >そう、思うことにしたー
コメントありがとうございます~!
お楽しみ頂けて何よりデス~!
上記のシーンについては、、
考えておきますネ~!
(書ける分量になるかは分からないので
まだ未定ですが…!)
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
リクエストさせて頂いたものです。
式の最中の描写は胸が苦しくなるものがありました。今回も素晴らしかったです。他の方もおっしゃっていましたが、
> 本文中の下記ですが、実際にそのシーンの描写も見たかったと思いました。
> 唯香(麻子)の誘惑によって、葛藤の中で浩二が落とされていく様子の描写があると最高でした。
> 加筆又は追加エピソードのような形でもし可能でしたらお願いしたいです。
実現していただけたらうれしいです。
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> リクエストさせて頂いたものです。
>
> 式の最中の描写は胸が苦しくなるものがありました。今回も素晴らしかったです。他の方もおっしゃっていましたが、
>
> > 本文中の下記ですが、実際にそのシーンの描写も見たかったと思いました。
> > 唯香(麻子)の誘惑によって、葛藤の中で浩二が落とされていく様子の描写があると最高でした。
> > 加筆又は追加エピソードのような形でもし可能でしたらお願いしたいです。
>
> 実現していただけたらうれしいです。
ご丁寧にありがとうございます☆!
↑は、日々の更新以外の(〇〇万アクセス記念!の感じで)
実現できればと思いますー!
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
非常にダークな結末で素晴らしいんですが、麻子(唯香)を必要以上に追いつめすぎてる気がするので、そのうち嫉妬に狂って発狂した麻子(唯香)に唯香(麻子)が襲われてもおかしくなさそうですよね。
先行きがとても不穏な気がします。
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ありがとうございます~~!
不穏な終わり方…!
いずれにしても良い方に転ぶことはなさそう…
ですネ!