入れ替わってしまったふたりー
唯香の身体になった麻子は、唯香として
唯香の幸せを堪能していく。
一方の麻子になってしまった唯香は
不安を感じずにはいられなかった。
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唯香(麻子)が彼氏の浩二と
休憩中に楽しそうにしているー
麻子(唯香)は気が気ではなかったー。
ふたりが入れ替わってから1週間ー。
未だに、唯香と麻子は元に戻ることが
出来ていないー。
しかもー
唯香になった麻子は
まるで”見せびらかすように”して、
麻子になった唯香に
彼氏の浩二とのいちゃいちゃを見せつけているー
服装や仕草も、
どことなく色気を曝け出すような
そんな格好になったー
”本当に元に戻る気はあるのかー”
麻子(唯香)は不安ばかりを募らせて行くー。
夜ー。
仕事が終わって片づけを終える唯香(麻子)。
お手洗いで化粧直しをしながら
ゴキゲンそうに微笑むー。
その時だったー。
お手洗いに麻子(唯香)が入ってくる。
麻子(唯香)は我慢できなかったー。
これ以上、このままでいるわけにはいかないー
これ以上、浩二にー…
浩二に近づけるわけにはいかないー。
「---…先輩…」
麻子(唯香)が呟く。
唯香(麻子)は微笑む。
「だいじょうぶよ。
元に戻る方法、
きっと見つけて見せるから」
それだけ言って、お手洗いから
立ち去ろうとする唯香(麻子)-
そんな彼女を、麻子(唯香)は
呼びとめたー
「---待ってください…
先輩、本当に元に戻る気はあるんですか?」
言葉を振り絞るようにして言う麻子(唯香)-
このまま、自分の幸せが
先輩に奪われてしまうんじゃないかと、
不安で仕方がなかった。
元々、麻子は唯香のことをよくは思っていない。
それは良く分かっているー
まるで”唯香の身体になったこと”を楽しんでいるかのような
振る舞いを見せる麻子に、
不安を隠せずにいたー。
「---あら?もしかしてあなた、
先輩であるわたしを疑うのかしら?」
唯香(麻子)は不快そうな表情を浮かべる。
「い…いえ、そんなわけじゃ…
で、でも…」
麻子(唯香)は気まずそうな表情を
浮かべるー
「--でも…元に戻る方法も
分からないままですし、
そろそろ周りのみんなにお話したほうがいいと思うんです!」
そう叫ぶ麻子(唯香)-
その言葉に唯香(麻子)は笑った。
「--そんなことしても無駄よ。
入れ替わった何て信じてもらえないし、
みんなを困らせることになるだけ。
あなたの大切な浩二くんだってそう。
わたしがちゃんと彼女として
振る舞ってあげてるんだから
安心なさいな」
唯香(麻子)はニヤニヤしながら言うー。
「---で、、でも!私は…!」
ドン!
突然の音に麻子(唯香)はビクッとしてしまう。
「---私はね…
唯香ちゃんのためを思って
唯香ちゃんのふりをしているのー」
唯香(麻子)が壁ドンをして、
麻子(唯香)を睨みつける。
「先輩の気遣いがあなたには分からないのかしら?」
バカにしたように笑う唯香(麻子)
「---わ、、わたしは…」
麻子(唯香)はどう答えていいか分からなくなってしまって
震えてしまうー。
「--なんなら、あなたの姿で
夜遊びしてあげたっていいのよ?
この姿なら、男には困らないでしょ?ふふっ♡」
唯香(麻子)がイヤらしい笑みを浮かべる。
「や…やめてください!」
麻子(唯香)が叫ぶ。
「--だったら、
わたしを信じなさい」
唯香(麻子)が麻子(唯香)を
鋭い目つきで睨みつけるー
唯香が普段絶対にしないような表情だー。
「---」
壁ドンをやめて唯香(麻子)が
立ち去ろうとするー
どうしてー
どうして、麻子の家に
唯香の彼氏・浩二の写真がたくさんあったのかー。
それも気にかかっていた唯香は
思わず呟いた。
「先輩……
わたしの身体…
返してくれますよね?」
不安そうに呟く麻子(唯香)
唯香(麻子)は、
お手洗いの扉を開きながら
微笑んだ。
「もちろんー。
わたしだって、元の身体に戻りたいのよ?」
わざとらしい仕草を加えながらそう言うと、
唯香(麻子)は微笑むー。
”返してもらえないー”
麻子(唯香)はそう思ったー
わたしは、ずっと、このままー?
悲しそうな表情を浮かべている麻子(唯香)を見て
唯香(麻子)は
意地悪そうな笑みを浮かべて、
近づいてきたー
そして、囁くー
”わたしと浩二くんの結婚式ー
日程決まったからー”
ーーーー!?
麻子(唯香)は思わず、
唯香(麻子)を睨んだー
「--け、結婚式!?」
「--そうよ。うふふふふ…♡」
唯香(麻子)は顔を赤らめている。
「ど、どうして…!」
麻子(唯香)が叫ぶー
「どうしてって?浩二くんから言われたから
断るわけにはいかないじゃない?
大丈夫よ、それまでに元に戻ればいいんだし、
唯香ちゃんのためを思ってのことだからー」
それだけ言うと、
唯香(麻子)は勝ち誇った表情を
浮かべてー
トイレから立ち去ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
麻子(唯香)は
”このままじゃいけない”と
彼氏の浩二を
唯香(麻子)に内緒で
呼び出していたー
「---先輩。話って何ですか?」
浩二が笑いながらやってくる。
「-----…浩二…」
麻子(唯香)は、
なんとか浩二に
”自分が唯香である”と信じてもらおうとするー
「--浩二…信じてもらえないかもしれないけど、
落ち着いて聞いて…
わたしね…
麻子先輩と入れ替わっちゃったの…
わ、、わたし、麻子先輩に見えると思うケド
中身は唯香で、
わたしの姿をしているのが、
麻子先輩で…」
少しパニックになりながら
麻子(唯香)が呟くと
浩二が”ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいよ”と
困り果てた様子で呟く。
「--せ、先輩?
何を言ってるのか、全然分からないんですけど、
つまり、どういうことです?」
浩二は、冷静を装いながらそう返事をしたー
「…わ、、わたしが唯香なの!」
叫ぶ麻子(唯香)。
信じてもらえるだろうかー。
2人だけしか知らないはずの思い出を告げればー。
信じてもらえるかもしれない。
突然笑う浩二。
「先輩~冗談きついですよ~
急にどうしたんです?」
自動販売機からお茶を購入して、それを
飲みだす浩二。
「--ーーお願い…浩二…信じて」
麻子(唯香)はなおも食い下がる。
そしてー
”二人だけしか知らないはずの思い出”
”唯香の個人情報”
色々な事を口にした。
浩二の表情から笑みが消えるー
「---先輩…
俺たちのこと…どうやって調べたんです?」
浩二の表情は
”警戒”の色に染まっていたー。
「--ち、違う…信じて!」
麻子(唯香)は叫ぶー
自分たちしか知らないことを口にすれば
信じてもらえるー
そんな風に思っていたー
けれどー
甘かった。
たしかにー
”調べられている”
”付き纏われている”と
警戒するのがふつうかもしれない。
でもー
唯香は頭の回転の良い女性だったー。
すぐに、次の手を思いつくー
「--わたしに、今のこと、聞いてみて」
麻子(唯香)が言うー
「--わたしの姿をしているのは、
麻子先輩だからー…
2人の思い出とか、わたしのことは
答えられないはずだからー」
悲しそうな目で麻子(唯香)は
浩二を見つめたー
「---唯香…?」
浩二は、そんな麻子(唯香)の目を見て
”入れ替わるなんてあるはずがない”と
思いながらも、なんとなく思うところがあって、
ひとまず、麻子(唯香)の言葉を信じることにしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝ー
朝早く出社した浩二は、
唯香(麻子)を呼び出した。
「唯香、ちょっといいか?」
とー。
人目につかない場所に
唯香(麻子)をつれてきた
浩二は呟く。
「--唯香、だよな…?」
とー
「何言ってるの~?
どこからどう見ても、
わたしは唯香でしょ?」
可愛らしい仕草をする唯香(麻子)-
「---…俺たちのさ…
”思い出の場所”
どこだか、覚えてるかー?」
浩二は、優しく微笑みながら呟いたー
もしも、目の前の唯香が
答えることができたのなら
昨日のことは忘れよう―。
だがーもしも、もしも
目の前の唯香が答えることが
できなかったらー?
「----ふふ♡
決まってるじゃない。
言うまでもないでしょ?」
ウインクしながら微笑む唯香(麻子)
ーーー!!
浩二は、表情を歪めるー
”答えようとしないー”
どうしてー?
たまたまー?
それともー?
本当に入れ替わっているー?
「---本当に、覚えてるのか?」
浩二が、”冗談で言ってるんじゃないんだぞ?”という
雰囲気を出しながら、もう一度訪ねた。
唯香(麻子)は笑う。
「どうしちゃったのよ急に…
忘れるわけないでしょ?
浩二こそ、ちゃんと覚えてるの?」
唯香(麻子)は、少し意地悪そうな表情を
浮かべながら言うー。
「--……もちろん。写真にも撮ってあるよ」
浩二はそう言いながら
スマホで、遊園地の写真を見せたー。
唯香(麻子)は笑みを浮かべるー。
”そうー
こうして、相手から上手く情報を引き出せば
唯香になりきることは可能だー。
周囲をあざむくなんて、たやすいこと”
「--ふふふ、楽しかったよね~!
浩二と一緒に行った日のことは
わたしも絶対に忘れないよ♡」
甘い声を出しながら唯香(麻子)は微笑んだー
「---」
浩二が、スマホを机に置いて
深くため息をついた。
その表情の変化を見て、
唯香(麻子)の表情からも笑みが消える。
そしてー
浩二は続けた。
「お前は誰だ…?」
とー。
浩二は、唯香(麻子)の方を見ると、
もう一度呟く。
「……唯香の身体を奪って、
唯香のふりをして…
それで満足ですか?
先輩…」
浩二の言葉に
唯香(麻子)の表情は、強張ったー。
「くくく…」
唯香(麻子)が笑いだす。
「くくく…はははは、あはははははははは!
…そう、、そうよ!わたしは麻子よ!
ふふふふ…
わたし、あなたのことが好きで好きで
たまらなかったの!
でもね、この小娘ちゃんが、
あんたのこと奪うから
こうして身体ごと幸せを奪ってやったの!
ふふふふ…
凄いでしょ?」
唯香の身体を誇るようにして
見せつける唯香(麻子)。
「--ふ、、ふざけないで下さい!
先輩!身体を今すぐ唯香に返してください!」
浩二が叫ぶー
しかしー
「---今は、わたしが唯香…
わたしと一緒になれば、なんでもしてあげる…
あなたの望むこと、なんでも…」
唯香(麻子)は甘い声を出しながら
浩二に身体を密着させる。
「う…や、、やめてください…」
浩二は顔を赤くしながら呟く。
「-この子じゃ、、あなたを満足
させられないでしょ?
それに…わたしなら
あなたをたっぷり気持ちよくさせてあげられる」
浩二の身体をイヤらしい手つきで触る唯香(麻子)。
中身が麻子だと分かっていても、
ドキドキしてしまうー
「や、、やめろ…!」
浩二が言う。
唯香(麻子)は微笑む。
”元に戻る方法は、わからないー”
とー。
そして、さらに続けたー
”もしも、あなたがこのことを
騒ぎにするならー
わたしは、唯香として、自殺するわー
あなたに振り向いてもらえないなら
生きてる意味ないものー”
唯香(麻子)はー
”気付いていないふりをしろ”と
冷たい声で言い放ったー
少しでも素振りを見せればー
唯香として、自殺してやるーと。
さらにごにょごにょと小声で呟くと、
にっこりと唯香(麻子)は微笑んだ
「--じゃあ、よろしくね、浩二」
微笑みながら立ち去って行く唯香(麻子)
一人残された浩二は「くそっ!」としか
呟くことができなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日の夕方ー
「---浩二…」
麻子(唯香)が浩二を呼び出していたー
だがー
浩二は…
「---先輩…
入れ替わりなんて”嘘”…
俺は、聞かなかったことにしますから…」
浩二が悔しそうに歯を食いしばる。
麻子になってしまった唯香が
泣きそうになりながら浩二を見る。
”唯香ー
お前のためなんだ…
俺が、必ず元に戻る方法を探すからー
だからー
それまではー”
今、行動を起こせば
麻子が本当に唯香の身体のまま
自殺するかもしれないー
そうしたら、唯香は永遠に麻子の身体で
生きていくことになるー
それにー
”唯香ちゃんの身体でなんだって…できるのよ?
男と遊びまくったり…
犯罪したり…ね?”
耳打ちされたその言葉が忘れられないー
唯香を守るためー
浩二は、屈辱に耐えながら
麻子(唯香)に言い放つ。
「--二度と…
二度と、唯香と入れ替わったなんて
嘘をつかないでください」
浩二はそれだけ言うと、
麻子(唯香)と目も合せずにそのまま立ち去ったー。
涙を流す麻子(唯香)
「浩二…」
信じてくれないのー?
唯香になった麻子に
脅されたことを知らない麻子になった唯香は、
絶望して、その場に蹲って
泣き始めてしまうー
そしてー
元に戻れないまま、
唯香と浩二の結婚式の日がやってきたー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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次回が最終回デスー!
いよいよ結婚式…
どうなってしまうのでしょうか…。
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