<入れ替わり>私は逃亡犯①~略奪~

逃亡中の凶悪犯罪者が
”入れ替わり薬”を手に入れてしまった。

入れ替わり薬を手に入れ、
女子高生の人生を奪った彼は…?

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神沼 神(かみぬま じん)。
数々の暴行、盗難、殺人、密売…
あらゆる犯罪に手を染めている凶悪犯罪者だ。

これだけの罪を犯しながら
警察は、神を捕まえることがなかなか
できずにいた。

だがー。
どんな巨悪も、いずれ最期を迎える時が来るー。

神は、追いつめられていた。

「神沼!もう逃げ道はないぞ!」
まだ夜の早い時間。
神は、忍び込んだ廃工場で
警官に見つかり、追いつめられていた。

「--それで追いつめたつもりか?」
神が笑う。

凶悪犯罪者にふさわしい凶悪な顔つき。

「---」
神は、前に奪った拳銃を警官の方に向かって
発砲する。

大勢の警官が取り囲んでいるこの状況でもー
警官たちはうかつに神に近寄れずにいた。

やつは、何をするか分からない。

既に、何人もの警官が犠牲になっており、
世間では警察の対応がバッシングの
対象にもなっている。

「--俺は、神の沼に生まれた神の子だ!」
神沼 神はそう叫んだ。

両親がどういうつもりで自分に「神(じん)」と
言う名前をつけたのかは分からない。

けれどー
神はこの名前が気に入っていた。

素晴らしい名前を授けてくれた両親は
既に数年前に、神が自ら楽にしてやったのだがー。

「--ひゃはっ!」
神は笑いながら廃工場の裏口から飛び出す。

”ここに忍び込んだ目的”は達成された。

神を追う警察官たち。
神は、何かを探しているのか、あたりをきょろきょろしている。

”誰でもいい”

神はそう思った。

警官たちに追いつかれる前に。

神は、走りながら周囲を見渡し、
笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「今日も遅くなっちゃった~」

女子高生の牧野 佳織(まきの かおり)が
笑いながら言う。

「--美術部も大変ね~」
友達の西原 亮子(にしはら りょうこ)が言うと、
佳織は「もうすぐ発表会もあるから~」と
苦笑いしながら答えた。

今日も部活があって
こんな時間になってしまった。

連日、遅くなること多い。

「まぁ、頑張ってね」
友達の亮子が笑いながら手を振る。

「うん。じゃあ、また明日」
佳織はそう言いながら、
亮子と別れて、
一人、家に向かって歩きだす。

その時だった。
前から、凶悪な顔つきの男が猛ダッシュで
走ってきた。

「-!?」
佳織は反射的に身の危険を感じた。

しかし…

走って来ていた男ー
凶悪犯罪者の神は、佳織を掴むと
「へへ~!身体ガチャでいいのを引き当てたぜぇ」と
意味の分からない言葉を呟きながら
すぐ近くの路地裏に佳織を引き込んだ。

「きゃあああああ!」
佳織は思わず悲鳴を上げる。

「--へへへ…俺も今日からJKか~!ひひひ」
そう言うと、神は躊躇なく、
佳織に無理やりキスをして、
低い笑い声を上げ始めた。

佳織が恐怖と驚きで目を見開く。

やがてー
神の笑い声が止まる。

「--くひ…ひひひひひひひひ…」

そして…
キスをされていた佳織が
さっきまで笑っていた神と同じような
笑い声を上げ始めた。

「ひひひひひ…ひひひいひ…!
 あははははははは♡」
佳織が凶悪な表情を浮かべる。

一方の神は驚いた表情をしている。
元々凶悪な顔立ちの神だが
少しだけ優しくなった表情にも見える。

「--!?!?」

「いつまで女子高生にキスしてんだよ?
 おっさん!」

佳織が乱暴な口調でそう言うと、
神を突き飛ばした。

突き飛ばされた神は
先ほどまでの勢いが嘘かのように
ふらふらとして、
そのまま路地裏のゴミ箱に激突した。

「---え…ど、、どういうこと?」
神が佳織の方を見て悲痛な声を出す。

「くふ…入れ替わり…
 映画とか漫画とかで見たことねぇか?」
佳織が胸を揉みながら言う。

「---!?」
神が驚きの表情を浮かべる。

「--俺とお前の身体を入れ替えたんだよ…
 くくくくく」

佳織は顔が歪んでしまいそうなほどに
悪い表情を浮かべるー

かつて、
”入れ替わり薬”を研究していた製薬会社があった。
が、人道的に反するということで業務停止命令を受けた挙句
会社は倒産していた。

さっき神が忍び込んだのはその廃工場。
裏世界の情報網で”入れ替わり薬は実は完成していて、
廃棄された工場に残っている”という情報を
手に入れたのだった。

そして、一か八か、廃工場に忍び込み、
入れ替わり薬を手に入れて
神は、たまたま通りかかった女子高生・佳織と
自分の身体を入れ替えたのだった。

「そ…そんな!」
神(佳織)が叫ぶ。

「へへへ…そんなよわっちそうな顔するなよ!
 気持ちわりぃな」

佳織(神)がゲラゲラ笑いながら言う。

「いやぁ、しっかし、いい身体だぜ。
 この身体だったら
 悪いことし放題だな…くくく
 女ってことを利用した悪さをするのもいいなぁ…へへ」

佳織(神)の言葉に
神(佳織)は叫んだ。

「そ、そんな!わたしの身体を返して!」

その言葉を聞いて
佳織(神)は笑う。

「お~お~
 屈強な男の女言葉、気味わるいなぁ~…!」

神(佳織)は
目から涙をこぼしながら
もう一度叫ぶ。

「返してよ!わたしの身体!」

とー。

「うっせぇなぁ!」
佳織(神)が
華奢な身体を動かして、
神(佳織)を蹴り飛ばす。

「--お前の身体は俺が有効活用してやるからよ。
 ごちゃごちゃ言うんじゃねぇよ」

可愛い声で乱暴な言葉を口走る佳織(神)。

がさつな歩き方をしながら神(佳織)の
身体を無理矢理触ると、
ポケットから何かを取り出して
それを回収した。

「--か…返して」
神(佳織)がなおも呟く。

「--うるせぇよ」
佳織(神)は、神(佳織)の
頬をぺちぺちと叩きながら
凶悪な笑みを浮かべた。

「お前には、凶悪犯罪者の俺の身体をやるよ
 身体と身体の交換だ。
 別に数は減ってねぇだろ?」

震えながらその言葉を聞く神(佳織)

「ま、その身体には警察に追われるっていう
 楽しいおまけつきなのと
 たくさんの罪が付録でついてくる
 素敵な身体だ!」

佳織(神)はそこまで言うと、
立ち上がって、
ゴミ箱に身体をぶつけて座り込んだままの
神(佳織)を見つめた。

「ま、せいぜい逃げ回れよ
 つかまりゃ多分死刑だからよ」

佳織(神)はケラケラ笑いながら呟いた。

「---…そ、、そんな!…」
神(佳織)が絶望の表情を浮かべる。

「--へへへへ…
 最高の身体だぜ」
佳織(神)は綺麗な手を
ぺろぺろとしゃぶるように
舐めまわすと、そのまま笑いながら
路地裏から立ち去ってしまった。

路地裏から出ると
警察官たちが
周囲をウロウロしていた。

「神沼はどこにいった!?」
「こっちにもいません!」

路地裏は目立たない。
警官たちは戸惑っている。

自分を探している警察官たちのすぐ
近くを通りながら
佳織(神)は必死に笑いをこらえた。

「ばーか」
小声で佳織(神)は呟く。

警察官の一人が「え?」と、反応したが
それ以上は何もしてこなかった。

佳織の身体を奪った神は、
佳織の記憶を引き出せるのか試してみた。

がー。
”基本的な情報”が限界のようだー
本当にごく一部の記憶しか引き出せない。

幸い、住所は分かった。

「ただいま~」
微笑みながら帰宅する佳織(神)。

「おかえりなさい~」
母親が優しい笑みを浮かべて出迎える。

2階に上がりながら
佳織は凶悪な笑みを浮かべた。

「これからよろしくね…
 お母さん… くふふふふ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「う…うそ…」
神(佳織)は、
近くの廃虚に逃げ込んだ。

”呪い”があるなどと噂されていて解体もされず
誰も近寄らない廃虚だ。

そこで、神(佳織)は、廃虚にあった鏡を見て
入れ替わってしまった男の顔を初めてみた。

「---こ、、この人…」

神(佳織)は驚く。

テレビでも報道されていた
凶悪犯罪者・神沼 神の顔。

いかにもな感じの凶悪な顔。

「---う…嘘…、わたし…?」
神(佳織)が放心状態で
その場に座り込んでしまう。

この姿になってしまったということは
あいつの言う通り、
自分は捕まってしまったら
もう、自由に行動することはできないだろう。

「--ど、、どうしたら…?」
神(佳織)は、必死に
自分がこのあとどうしたら良いのかを
考えた。

”身体を入れ替えられてしまった”

…なんて、行っても
誰も信じてくれないことは
彼女にも分かる。

ましてや警察の前に姿を現せば
おそらく、問答無用で逮捕されてしまう。
そしたら、もう、おわりー。

「お父さん…お母さん…梓紗(あずさ)…」
両親か妹の梓紗に
なんとか接触することができれば…

神(佳織)は、
激しく動揺しながらも
このままじゃいけない!と、
身を潜めながら行動を開始した…。

・・・・・・・・・・・・・・・

「くふふふふふ…ひひひひひひひ♡」
佳織(神)は、
制服を脱ぎ捨てて鏡の前に立ち、
身体のラインをじっくりと指で
イヤらしく触っていた。

「んふふふふふ…いい身体だぜ…♡」
低い声で呟き、ニヤニヤと笑みを浮かべる
佳織(神)。

「これからこの身体を
 た~っっぷり、有効活用してやるからなぁ…」
震えるような低い声で言うと、
佳織(神)は部屋を見回した。

「へへ…これが年頃の女の部屋かぁ…
 ぐふふふふふふ…」

ドカドカと部屋を歩き回る佳織(神)。
やがて、裸のままベットの方に飛び込むと
ベットのニオイを嗅ぎ始めたー。

「ははははは…
 最高だ…くく…くくくく」

”佳織~!ごはんよ~!”
1階の方から声が聞こえる。

「お~っと、いけねぇ。」
佳織はそう呟くと、乱れた髪を適当に
手で整えて、佳織の服を適当に漁り、
神の好みの服を身に着けた。

・・・・・・・・・・・・・・

「--へ~そうなんだ~」

家族のだんらん…。
父親は帰りが遅く、
母親と妹の梓紗と共に
ご飯を食べている佳織(神)。

リビングでは、テレビから
ニュースが流れている。

”神沼 神 容疑者がー”
ニュースで、自分のことを
報道し始めた。

思わず佳織(神)はニヤリと笑みを浮かべる。

凶悪犯の神が、警察官に追いつめられるも
姿を消してそのまま逃亡したことが報じられている。
専門家がドヤ顔で、”まだ近くに潜伏しているでしょう”と
解説している。

佳織(神)はますます悪そうな笑みを浮かべた。

「ばーか!」
小声でつぶやく。

まさか、俺が”別の身体”にいるなんて
思わないだろう。

俺が捕まることは、ない。

「---…マジ最悪~
 早く捕まってほしいよね~」

妹の梓紗がニュースを見ながら言う。

「--こういう人がいると
 ホント迷惑だし、
 その辺で事故でも起こして死んでくれないかな~」

梓紗はうんざりした様子で呟いた。

「---そう?」
佳織(神)は、イラッとしながら思わず声を出した。

「いいじゃない。こういう人がいた方が」
佳織(神)の言葉に
妹の梓紗も母親も不思議そうな顔をした。

「--人生なんて、真面目にやってたって
 つまんねぇだろ?」

佳織(神)がククク…と笑いながら言う。

「--お、、お姉ちゃん…?」
梓紗が少し怯えた様子で
佳織(神)の方を見る。

「--ふふふふふ、ごめんごめん」
佳織(神)は低い声でそう言うと、
小さく舌打ちを繰り返した。

”俺のことをバカにしやがって”

明らかに不機嫌そうにご飯を食べる
佳織(神)を見て
妹の梓紗も母親も黙り込んでしまう。

「--」
ご飯を食べ終えると、
佳織(神)は無言で
イスを蹴り飛ばして、
そのまま自分の部屋へと戻って行く。

「お姉ちゃん…なんか今日、疲れてるのかな?」
妹の梓紗が不安そうに言うと
母親も「そうかもね…」と呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。

佳織(神)は、
ショートパンツ姿で
生足を見せつけながら
人の気配のないところに来ていた。

「---…」

黒い服装の男がそこにはいた。

佳織(神)は、母親から盗んだお金を手に
その男にお金を見せる。

「いいだろう」
男は、そう言うと、
薬を佳織(神)に手渡した。

「---」
”取引”を終えると2人は言葉を
交わすこともなく別れた。

「ふふふふ…」
薬もやっている神は、
佳織の身体でも、今まで通り
薬を続けようとしていた。

可愛らしい表情に
邪悪な笑みを浮かべながら
薬を手に入れた佳織(神)は
夜の闇へと姿を消したー。

②へ続く

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入れ替わり薬を手に入れてしまった
凶悪犯罪者のお話ですネ~!

明日以降も
ぜひお楽しみください~☆

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