<憑依>ゲームノヒロイン②~元の世界に帰るため~(完)

ゲームの中のキャラクターが
何らかのはずみで現実世界に
やってきてしまい、しかも彼女に憑依してしまった!

彼氏は、姫を元の世界に戻すために力を貸すことに…。

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「な…なるほど…」
彼氏の良一郎は、美奈津から話を聞かされて、
こうなるまでの経緯を一応、理解した。

”封魔の森”の中で謎のワームホールのようなものを
見つけて、それに飛び込んだところ、
現実世界に来てしまったのだと言う。

美奈津が流石にここまで嘘をつくはずはないし
恐らく本当にファイーナ姫が美奈津に
憑依しているのだろう。

だが、どうすれば元の世界に
姫を帰して
美奈津を助けることができるのだろうか。

「いや…そもそも…」
良一郎は考える。
”ファイーナ姫”はゲームのキャラクターだ。
つまりは、あくまでプログラミングに過ぎないはず。
プログラムされたこと以外はできるはずがない。
こうして、美奈津の身体に仮にゲームのデータが
入り込んだとしても、ゲーム中の行動を飛び越えて
行動することなど…

いや…
AIが自我を持つこともあるし、
ゲームのキャラが、人間の身体に入り込めば
入り込んだ人間の身体の脳を通じて
色々な知識も得られるだろうし、
可能なのかもしれない。

「---う~ん…」
良一郎は考える。

「元の世界に、戻りたい?」
良一郎が聞くと、
美奈津は頷いた。

さっきはパニックになっていたが
”ここは別の世界”だとなんとか説明して
ようやく美奈津を落ち着かせることができた。

「あ、そうだ!この世界に来た時、
 美奈津は、何をしてたか覚えてる?」
良一郎が聞くと、
美奈津は首を振った。

「そ…そもそも状況が分からなくて…」

良一郎は頭を抱えた。
何か特殊な状況があったはずだ。
普通、ゲームキャラに憑依されるなんてことは起こらない。

「--そういえば、昨日、雷が鳴ってたよな…」

良一郎はそう呟きながら
部屋に落ちているイヤホンを見つめた。
特殊な形状のイヤホンだ。

”見たことのないデザインだな”

良一郎は、そのイヤホンを手にする。

「あ、そ、それ!そのアイテム!装備してました!」
美奈津が叫ぶ。

「アイテム…装備…」
良一郎は、”ゲームから来た姫だから、そう言い方になるのか”と
苦笑いしながら考えた。

なんだかこの変なデザインのイヤホン。
美奈津の私物だと思うが
これが原因かもしれない。

「ちょ、ちょっといいかな?」
良一郎が”元の世界に戻れるかもしれない”と呟きながら
イヤホンを美奈津につけて
”ダークネスファンタジー”のゲームを起動した。

「-こ、これは何です?」
美奈津が驚いた表情を浮かべる。

「え~っと、君のいた世界っていうか…?
 ま、そんな感じ」

良一郎は、姫に”きみはゲームのキャラだ”とは
説明していない。
あくまでも”ここはきみがいた世界とは別世界で”と
誤魔化した。

ゲームの世界、なんて言えば
余計に混乱することは目に見えていたからだ。

「じゃあ、これをつけて」

そう言うと、美奈津は大人しくそれに従い、
イヤホンをつけた。

「--…」
だが、何も起こらなかった。

「……」
良一郎は”雷”も、鍵のひとつか?

と首をかしげる。

ちょうど、明日、雷の予報が出ている。

「あ、姫、ごめん。
 明日じゃないと元の世界に戻れないかも」

そう言うと、姫は不思議そうに首をかしげた。

ここは美奈津の家だし、宿泊するわけにはいかないし、
とりあえず今夜は帰らないといけない。

「あ、、あの…そういえば…」

良一郎は部屋に入ってから
少し変なにおいがしていることに気付いていたー

「---トイレ、行ってる?」
大…のニオイではないが、
漏らしている気がしてならなかった。

「トイレ…?」
美奈津が首をかしげた。

「--え、え~っと、その…」
良一郎は説明に困る。

ダークネスファンタジーのゲームの中には
トイレのシステムはないし、トイレの描写もない。
美奈津に憑依しているファイーナ姫が
トイレを知らないのも無理はなかった。

そうこう話をしているうちに、
スカートの中から、水滴が落ちてきた。

「ア…あ~~!ひ、姫…ト、トイレに!」
良一郎が叫ぶ。

「トイレって?」
美奈津が苦笑いする。

「--え、、えっと、とにかくこっちに」
良一郎は、なんとか美奈津をトイレに
連れて行くと、必死にトイレの説明をして
ようやく姫にトイレを理解してもらった。

「なんだか、大変なのですね」
美奈津が微笑んだ。

「ま、、まぁ…俺たちの種族は
 そんな感じだから」

良一郎はできる限り
ゲームキャラが理解できるであろう
言葉を選んだ。

トイレを済ませると、再び
美奈津を美奈津の部屋に連れて行く。

服が濡れているから
着替えて貰わないとならない。

「え~、え~っと…
 今、その服が濡れているのは分かるかな?」
良一郎が言うと、
美奈津は「服?」と首をかしげた。

ゲーム中に”服”という単語が存在しなかった。

「あ、え~…そ、装備!装備が濡れてるのはわかる?」
そう聞くと、美奈津は頷いた。

「濡れていると…そうだなぁ…
 防御力が下がるから、装備を変えないといけないんだよ」

良一郎の言葉に、美奈津は頷いた。

「あそこに装備が入ってるから
 他の装備に変えて」

良一郎が、洋服ダンスを指さしながら言う。

流石にかってに美奈津の洋服を漁るわけにはいかない。

「俺は部屋の外で待ってるから
 終わったら声をかけて」

良一郎がそう言うと、美奈津は
素直にそれに従った。

部屋の外で待機しながら
良一郎は”どうしたものか…”と頭を抱える。
美奈津にファイーナ姫が憑依したときの状況から
”雷”と”イヤホン”がカギになっていると
良一郎は考えた。

明日はちょうど雷の予報が出ているから
もしかしたら、そのタイミングで…

「おわりました!」
中から美奈津の声が聞こえた。

敬語で喋っている美奈津に
少し違和感を感じながら、
良一郎は部屋の中に戻ったー

そして、
顔を真っ赤にして叫んだ。

「おぉぉぉぉぉぃ!」

ーと。

美奈津は、下着しか身に着けていなかった。

「はい?」
美奈津が首を傾げる。

「エッチすぎ!もっとちゃんと服を着て!」
良一郎は真っ赤になりながら叫ぶ。

いつの間にか、良一郎のアソコが
大きくなってしまっている。

「--エッチ?服?」
美奈津が首をかしげる。

「--え…え~っと、
 そ、その装備だと防御力が低いから
 もっと防御力の高い装備を…

 ホラ、肌が出てると防御力が下がるから!」

良一郎がゲームキャラにも理解してもらえるように
必死に叫んだ。

「--あ、あぁ!そうなのですね!」
美奈津がわかった!という様子で手をポンと叩いた。

そして…

「ひっ!?ワーム!?」と
姫が良一郎を指さしながら叫んだ。

”ワーム”?
良一郎は首をかしげる。

ワームとは、ゲーム序盤に登場する
チンアナゴのような形をした敵だ。

「---…」
良一郎は何を言われているか気付いて、
顔を真っ赤にした。

勃起した自分のアレを見て
姫は、雑魚敵のワームが出現したと勘違いしたのだ。

「違う!これはワームじゃない!」
良一郎はどう説明しようか迷った末に叫んだ。

「こ、これは俺の装備だ!」

とー。

「あぁ…装備…
 そうなのですね~」

美奈津はわかった、という様子で微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

ようやく、服をちゃんと美奈津に着てもらったところで、
もう暗くなり初めていた。
そろそろ帰らないといけない。

「---じゃあ、俺、今日は帰るから」
良一郎が言う。

「え…」
美奈津は不安そうにしている。

明日はちょうど土曜日だ。
雷の予報は昼過ぎだから
その雷が鳴る前に
ここに来るようにしよう。

「--え、え~っと、姫は
 トイレ以外、この部屋から
 出ないようにしてくれるかな…?
 
 外には…
 え~っと、そう、皇帝軍が
 いるかもしれないから」

良一郎が言うと、美奈津は「わかりました!」と答えた。

そしてー
「あれ?装備は外しちゃったんですか?
 防御力が下がっちゃったんじゃないですか?」と
呟いた。

勃起してたアレが元のサイズに戻ったことで、
姫は”良一郎が装備を外した”と認識していた。

「---と、、とにかく、今日はこれで!」
良一郎は溜息をつきながら
足早に美奈津の部屋から飛び出した

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

良一郎は、美奈津がちゃんと一晩過ごせたかどうか
心配になりながら、美奈津の家へと向かう。

雷の予報が出ているだけあって
朝から微妙な天気だ。

美奈津の家に到着した良一郎は、
母親に挨拶をして美奈津の部屋に向かう。

「----美奈津… あ、」
美奈津の部屋に入って
良一郎は言葉を途切れさせた。

美奈津が”ダークネスファンタジー”の
攻略本を読んでいた。

「----わ…わたし…死ぬのですか?」
美奈津が不安そうに言う。

ダークネスファンタジーの攻略本には
ストーリーのネタバレも書かれている。

美奈津は、
良一郎が好きなキャラ、
悪の女幹部リーズのページを
開いたまま、茫然としている。

良一郎は、すでにゲームを1周クリアしているから
知っているー

美奈津に憑依しているファイーナ姫は、
終盤で、死ぬー。

「---え、、えと…」
良一郎は言葉に迷ってしまう。

「--こ、この本は…?
 わ、、わたしは?」
美奈津が困り果てた表情で言う。

君の世界はゲームの世界なんだ、
なんて言っても
当然理解はしてくれないだろうし
混乱してしまうだろう。

「--これは…その、、予言書だよ」
良一郎はとっさに誤魔化してそう言った。

「--よ、予言書…?」

「そう。」

ゲーム内には”悪の預言者”が登場して
序盤で倒される。

その預言書の未来は、現実にはならず
主人公のアレンは
”未来は自分たちの手で切り開くものだ”と
悪の預言者を倒した時に言い放っている。

「---そ、そう、ですか」
美奈津が、少し安心したような笑みを浮かべる。

「………」
だが、美奈津は完全に納得した様子ではなかった。

雷が鳴り始める。

「--よし。元の世界に戻してあげられる
 タイミングは今しかない」
良一郎は言った。

正直、雷が鳴っているタイミングで元の
世界に戻れるのかは分からなかったが、
こういう不思議なことが起こった時には
”それが起きたときの状況をもう一度作る”ー
それが、大事だと良一郎は考えていたし、
こうすれば、美奈津の身体に入り込んでしまった
ファイーナ姫を元の世界に戻せる、
そう感じていた。

特殊な形状のイヤホンをつけてもらい、
ゲーム機を起動して
ダークネスファンタジーのゲームを起動する。

「----…」
それを見ていた美奈津が呟く。

「わたしたちの世界は、この機械の中にあるのですね」
ゲーム機を指さす。

本当のところは少し違うのだが、
良一郎は、否定も肯定もせずに微笑んだ。

「---…わたし…」

美奈津に憑依しているファイーナ姫は不安に思う

”攻略本”に書かれていた通り
死ぬのではないかと。

良一郎は優しく微笑んだ。

「大丈夫…”未来は自分たちの手で切り開くもの”だろ?」
作中の主人公の言葉を引用して口にする良一郎。

その言葉に、美奈津は微笑んだ。

「あ、、何か、音が聞こえます。
 誰かが喋って…」

雷が強くなってきた。

そして、特殊な形状のイヤホンが怪しく光出す。

「………」

これで、ファイーナ姫は元の世界に戻るー

良一郎は少しだけ心が痛んだ。
このゲームに分岐ルートはない。
ファイーナ姫は、必ず、死ぬ。

安心させるために、嘘をついた。

でも、これは美奈津を取り戻すためー
仕方のないこと…

「んあぁっ!」
雷が激しく音を立てると同時に
美奈津が苦しそうに声を上げたー

そして、美奈津はその場で意識を失った。

「---美奈津」
これで、彼女は元通り。
良一郎が倒れた美奈津に近寄って
イヤホンを外す。

「それにしても、このイヤホンは
 何なんだろうな。

 まぁ、いっか…
 美奈津が目覚めたらこのイヤホンに
 ついても聞けば」

パシッ!

美奈津が突然良一郎の手を振り払った。

「気安く触るんじゃないよ」

美奈津が低い声で言う。

「--え?」
良一郎が驚く。

美奈津は立ち上がると、
妖艶な笑みを浮かべた。

「--なんだい?お前は?」

!?

良一郎は、驚いて
美奈津の方を見る。

美奈津は腰に手を当てて
不気味な笑みを浮かべていた。

「--お、、お前は、、誰だ!」
良一郎は思わず叫んだ。

「あたしかい?
 あたしはリーズ…。
 皇帝軍の幹部さ」

「---なっ…」

良一郎は固まってしまった。
リーズとは、良一郎が好きなキャラクター…
悪の女幹部の名前だ。

同じ手順を踏めば美奈津を元に戻せるー
そう思っていた良一郎。
しかし、実際には
ファイーナ姫を元の世界に戻すどころかー
また、別のキャラが
美奈津に憑依してしまった

悪の女幹部に憑依された美奈津が
悪い笑みを浮かべた。

「んふふふふ…
 どこだか知らないけど、
 全ての男たちは、あたしのしもべになるのよ」

笑いだす美奈津。

「--ど…どうすりゃいいんだ…?俺…」

途方に暮れた良一郎は
高笑いを続ける美奈津の方を
茫然と見つめることしかできなかったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ゲームのキャラクターに
憑依されちゃう小説でした!

少しでもお楽しみ頂ければ
嬉しいデスー!
お読み下さりありがとうございました

コメント

  1. 龍渦 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    見た目は同じ人間だけど、二次元の世界と三次元の世界で解釈が違うっていう感じのやつ面白いなぁ
    それと続きがありそうなエンディングだなぁ

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 見た目は同じ人間だけど、二次元の世界と三次元の世界で解釈が違うっていう感じのやつ面白いなぁ
    > それと続きがありそうなエンディングだなぁ

    コメントありがとうございます~☆
    確かに続きも書けそうデス~☆!!