凶悪犯罪者の身体になってしまった
女子高生。
自分の身体を取り戻すため、
彼女は奔走する…。
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”もしもし?”
妹の梓紗の声。
「--もしもし…梓紗、落ち着いて聞いて」
神(佳織)は、
公衆電話から梓紗に電話をかけた。
”どちら様ですか?”
梓紗が言う。
梓紗からしてみれば、急に知らない男から
電話がかかってきたのだから
びっくりするのは無理もないだろう。
とにかく、電話を切られないように
しなくちゃいけない。
「---し、信じてもらえないかもだけど、
わたし、、佳織なの」
男の声でそう言う神(佳織)
「へ?何言ってるんですか?」
梓紗が冷たい声で言う。
「お姉ちゃんならもうとっくに
帰って来てるんですけど」
梓紗の言葉に、神(佳織)は
続けた。
「誕生日は5月12日、
血液型はA型、
好きなものは、白いチョコレートで、
嫌いな食べ物はブロッコリー」
神(佳織)は必死に
自分のプロフィールを口にした。
とにかく、信じてもらわないといけない。
しかしー
「…ど、どうしてそれを…?
も、もしかしてお姉ちゃんのストーカー?」
梓紗が怯えたような声を出す。
「--ち、違うよ!わたし!佳織よ!
ほ、ほら!
え~っと、梓紗が6歳のとき、
自転車で盛大に怪我したこともあったでしょ、
あと、梓紗の誕生日は8月25日…
それから…」
”このままでは電話を切られてしまう”
そう感じて焦った神(佳織)は
妹の梓紗との出来事やプロフィールを
思いついた順番で口にした。
”え…わ、わたしのことまで…
…何なの…?”
梓紗がさらに不気味がっているのが
電話で伝わってきた。
「---落ち着いて!わたしはー」
”--誰から?”
電話の向こうで
自分の声がした。
佳織(神)の声だ。
”あ、お姉ちゃん!なんか、
知らない男の人が
わたしはお姉ちゃんなの!って言ってて…”
「--ダメ!そいつの言葉に耳を貸さないで!」
神(佳織)は叫ぶ。
けれどー
無駄だった。
”私が佳織ですが…
何か御用ですか?”
佳織(神)は電話越しにそう呟いた。
「--ふ、ふざけないで…!
わたしの身体を…」
”もう、俺が佳織なんだよ…”
小声で、佳織(神)がそう呟いた。
そして、
電話が切れた。
「--そ、そんな…」
神(佳織)は絶望しながらも
次は母親のスマホに電話を
かけようとした。
「--あ、おい!あいつ!」
通行人が神に気付いて指をさす。
「--!!」
これ以上は無理だ、
そう判断した神(佳織)は
夜の街へ姿を消したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
神(佳織)はなんとか潜伏しながら
元に戻る方法は探っていた。
けど、この姿のまま飛び出せば
どうなるかは分かりきっている。
なんとか、
なんとか、
誰かに助けてもらわないといけないー
かつて公共施設だった廃虚を拠点に潜伏していた神(佳織)は
あるものを見つけた。
画面がひび割れた携帯用のテレビだ。
「--う~ん…」
神(佳織)はスイッチを入れてみる。
すると、
電池が残っていたのか
映像が映し出された。
屈強な男が、
乙女のような動きをしているー。
本人はいつものように振る舞っているつもりだが
周囲が見たら奇妙に見えるだろう。
「---え…」
ニュースでは、ある事件が報道されている。
それはー
”同級生殺害事件”
殺害されたのはー
佳織の友人・西原 亮子ー。
「う・・・嘘…?亮子?」
神(佳織)が弱弱しく呟く。
「どうして…?」
親友の死に呆然としたまま
映像を見つめるー
すると、更なる衝撃が、
神(佳織)を襲った。
”亮子を殺害したのは同級生”であるとー。
その同級生とはー
未成年だからか、
名前までは報道されていなかったが
明らかに佳織のことだった。
家にも帰らず、逃亡しているのだと言う。
「---…そんな…」
神(佳織)はその場にひざをついて
涙をこぼしたー。
身体を奪われただけではなく
殺人まで犯されてしまったー。
しかも、犠牲になったのは
親友の亮子ー。
「---」
背後から足音が聞こえて
神(佳織)は振り返る。
そこには、
スーツ姿の男がいた。
「け…警察!」
神(佳織)は慌てて走り出した。
今、捕まるわけにはいかない。
入れ替わってしまったことを
明らかにしないと
妹や両親の命も危ない…!
「っ…!」
神(佳織)の逃げた先は行き止まりだった。
振り返る神(佳織)
悪い事は何にもしていないのに
どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの?と
そう思いながら、
神(佳織)は叫んだ。
「わ…わたし…わたし…違うんです!」
とー。
スーツの男は
神(佳織)の方を見つめているー。
少し無精ひげの目立つ、
けれども顔は整った男性だ。
「--違う!落ち着け!」
男性は言った。
「--俺は刑事じゃない。
俺はー
”入れ替わり薬”を開発した者だー」
彼は両手を上げながらそう言った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
神(佳織)は、廃虚の一角に
腰を下ろしながら呟いた。
「本当ですか?」
ーと。
「あぁ」
スーツの男は
かつて入れ替わり薬を研究していて
現在は倒産している会社に勤務していた
主任研究員だった。
「あれは、過ちだった。
会社の利益のためと、上からの命令で
開発を続けていたんだが、
”入れ替わり薬”の完成間近になって
実際に人間でテストして…
怖くなって…
それで、内部告発して
行政の指導が入って会社は倒産したんだ」
彼ー…
山瀬 研吾(やませ けんご)は
入れ替わり薬を開発した張本人だった。
「--それで、元に戻る方法だが」
山瀬は、ポケットから液体の入った容器を
取り出した。
「もう一度、入れ替わり薬を使うー
それしかない」
山瀬の言葉に、神(佳織)は驚く。
「え…」
山瀬はそんな神(佳織)の反応を見て続ける。
「当時、行政指導が入る前に入れ替わり薬は何個か
完成していてね…
これもその一つだ。誰の手にもわたらないように
保管していた…。
これを使って、
君の身体を奪った犯罪者と、君がもう一度入れ替われば
君は元の身体に戻ることができる」
山瀬の言葉に、神(佳織)は
希望に満ちた表情を浮かべながらも答えた。
本当に、この人は信用できるのだろうかー。
「ありがとうございます。
けどー、どうして入れ替わったことに気付いたんですか?
それに…どうしてわたしを助けてくれるんですか・」
神(佳織)の質問に、山瀬は頭をかきながら答えた。
「---……」
少し、都合が悪そうな表情を浮かべると
山瀬はようやく口を開いた。
「--ニュースを見てね。」
確かに、ニュースでは神や、佳織のことが報道されている。
それを見れば
”入れ替わり”だと勘づくことも
入れ替わり薬の開発者なら
可能かもしれない。
「--入れ替わり薬は
元々俺が作りだしてしまった過ちだ…
俺の過ちによって、誰かが被害を受けてるなら、
俺には、それを助ける義務がある」
山瀬はそう答えた。
神(佳織)は、
ほかに手段もないし、この人を信じるしかない、
少なくとも嘘はついてなさそうだと判断して
山瀬を信じることにした。
「---でも、、わたし…」
神(佳織)が呟く。
「身体が戻っても、わたし…」
佳織の身体は既に、親友の亮子を殺してしまっている。
つまりー
戻っても自分は殺人者なのだ。
「--それなら心配ない」
山瀬は笑みを浮かべた。
「政府も、入れ替わり薬は明るみに出したくないから
俺が掛け合えば、君の身体の罪は、無くすこともできるさ」
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元・入れ替わり薬開発担当の山瀬と出会ったことで、
神(佳織)には希望が見えてきた。
あの凶悪犯罪者から、自分の身体を取り戻す…!
山瀬の言うとおり、
自分の件は、ニュースで報道されなくなった。
報道されているのは
凶悪犯・神沼神の方だけだ。
「---」
神(佳織)は見つからないように、
自分の家へと向かう。
山瀬から受け取った入れ替わり薬を手に…。
もう一度入れ替わって、
自分の身体を取り戻す。
「いやああああああああ!」
家の中から悲鳴が聞こえた。
「---!!」
神(佳織)は家の玄関の扉があいていることに気付き、
中へと侵入した。
今の悲鳴はー
妹の梓紗の声。
佳織の部屋から
聞えてきた。
「--梓紗!」
神(佳織)は叫んだ。
口から出るのは男の声。
でも、もうそれも終わり。
この身体を返却して
自分の身体を取り戻す。
父と母の姿が見えなかったが、
この時間帯は、父は仕事、
母は買い物に行っていることが多いから
そのためだろう。
「--梓紗!」
神(佳織)が叫んで部屋に飛び込むと、
そこには佳織(神)が笑みを浮かべて立っていた。
梓紗は倒れている。
「梓紗に何をしたの!」
神(佳織)が叫ぶ。
図太い男の声で、女言葉を発するー
なんとなく違和感を感じながらも、
神(佳織)は入れ替わり薬を飲みほした。
「--あんた…!」
佳織(神)の表情から笑みが消える。
そしてー
佳織(神)が机に置いてあるスマホを取ろうと
動き出したー。
「---私の身体を、返して!」
佳織(神)が神(佳織)の方を見ながら
警察に電話を入れる。
「テ、テレビでやってる犯人が、家に…!」
佳織(神)が電話でそう叫んだ。
ーー逮捕されるのは、あんたよ!
神(佳織)はそう叫んだ。
そしてー
無理矢理抱き着いてキスをするー。
自分とキスをする…
変な感覚…
ふいに、力が緩んでくる。
もがく佳織…
数秒の沈黙ー
身体に力が戻ってきた。
自分の、身体にー。
「---…やった…!も、戻れた!」
佳織は嬉しそうに叫ぶ。
神は、驚いた表情でふらふらして倒れる。
「---も、もしもし!」
元に戻った佳織は慌てて電話を手にした。
そして、警察に伝える。
”神沼神がここにいるんです!”
とー。
神は倒れ込んだまま起き上がらない。
「--梓紗!」
同じく倒れたままの梓紗に駆け寄る佳織。
「う…」
梓紗は生きていた。
何をされたの?と心配になりながら
梓紗の方を見ると、
梓紗は安心したように、笑みを浮かべて
「お姉ちゃん…!」と佳織に抱き着いた。
ほどなくして、警察が到着する。
神は、警察が到着した直後に、
意識を取り戻したが
もう手遅れだった。
神がこっちを見て何かを叫んでいる。
けどー
警察の声と、凶悪犯の逮捕ということで
周囲に集まった野次馬にその声は
かき消されてしまったー。
連行されていく神。
「--お姉ちゃん…」
「---梓紗…ごめんね」
佳織と梓紗は、
お互いの無事を喜び、抱き合ったー
平穏な日常が戻ってきた。
一時はどうなるかと思ったけれどー、
佳織は再び元の日常を取り戻すことができたのだった。
逮捕された神沼神は、この後に及んで
容疑を否認して、何か意味不明なことを
口走っているのだとか。
本当に、往生際が悪いなぁ、などと佳織は
呆れながら、今日も学校に向かうのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「-----さよなら」
夜の廃虚ー。
そこにはー
自らに包丁を突き立てて、
冷たくなってしまった
入れ替わり薬の元研究者・山瀬の
姿があった。
不気味な人影が、
月の光に照らされてゆらりと浮き上がるー
その人影は不気味に笑いながら
夜の闇へと消えて行くのだったー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
今日は神(佳織)視点でした!
ハッピーエンド!!~???笑
明日は佳織(神)視点で
真実を明かしていきますよ~!
おたのしみに~!

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