帰宅した彼氏を待っていたのは、
蜘蛛に憑依されて正気を
失ってしまった、彼女の麗菜だったー。
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「れ…麗菜…な、、何があったんだ?」
散らかったままの部屋ー。
蜘蛛の巣まみれになった部屋ー
そして、四つんばいの麗菜ー
服も、昨日の服のままー。
何かが起きている。
圭は直感的にそう感じた。
「---ひひひひ…ひひひひひひひ」
麗菜が不気味な笑い声をあげた。
「--わたしは、、蜘蛛になったの」
麗菜が微笑む。
憑依してから一晩で、人間としての
発音などにだいぶ慣れてきていたー
「---く、、蜘蛛に…?」
圭は唖然とした表情を浮かべる。
麗菜が、何を言っているのか
分からないー。
「--人間の身体って、
わたしたちが育つには最適な環境なの…ぐふふふふふ」
麗菜はそう言うと、
突然、激しく咳き込みだした。
「---れ、麗菜!?」
慌てて駆け寄る圭。
しかし、麗菜は圭を振り払った。
「触るな!」
突き飛ばされる圭。
乱れた服装、
乱れた髪型ー
目の前にいる麗菜が麗菜じゃ
ないようにすら見える。
咳き込んだ麗菜は、
何かを吐きだしたー。
麗菜の口から出てきたのはー
”謎の蜘蛛”だったー。
プチトマトぐらいのサイズの蜘蛛を
一匹、2匹と吐きだしていく麗菜。
「えへ…えへへへへへ…♡」
麗菜は顔を真っ赤にしながら
興奮した様子で言う。
「わたしの…子供たち…♡」
麗菜は心底嬉しそうにそう呟いた。
「な…な、、何を言って…」
圭は唖然としている。
何が起きているのか
まったく分からない。
麗菜のドッキリか?
いやー
今、口から蜘蛛をー
「--!!」
そんな風に考えているうちに、
麗菜が四つんばいのまま、
壁を登り始めた。
やがて、天井に張り付くと、
スカートがめくれ、綺麗な黒髪が
垂れさがるのを気にもせずに、微笑んだー
よく見ると、スカートの中に穿いていたはずの
下着が見当たらないー
「--れ…れ…麗菜…!?」
人間が天井に四つんばいで張り付くことなど
できるはずがない。
麗菜の身に、何が起きている?
圭は戸惑いながらも叫んだ。
「--な、何があったんだ!?」
圭はなおも叫ぶ。
何かが起きているー。
麗菜を助けなくてはならないー
その一心で。
ブチュ…という嫌な音がしたー
そして、何かが落ちてくる。
「---…!」
圭は、思わず目を逸らす。
天井にいる麗菜が、
肛門から何かを出しているー
汚物とーー
それに混じって、プチトマトサイズぐらいの蜘蛛をー
「---あぁぁ…子供が、、生まれるぅ♡」
嬉しそうに叫ぶ麗菜。
完全に興奮しきっている。
「--れ…麗菜!」
麗菜はおかまいなしに口から白い糸を吐きだす。
天井の蜘蛛の巣を補強しているようだ。
「--麗菜!」
叫ぶことしかできないー
圭の叫び声をうるさいと感じたのか
麗菜はようやく圭の方をしっかりと見据えた。
「わたしは蜘蛛ー」
麗菜が、産んだばかりの蜘蛛を指さしながら言う。
「---わたしたちはね、
人間の身体を使って、繁殖、するの」
言葉がところどころ片言だー
しかも、表情がおかしいー。
「--人間の身体に入り込んで、
人間を使って繁殖するー
特に女の身体は繁殖に適しているー」
麗菜はクスクスと笑っている。
「–蜘蛛…」
圭は開いた口が塞がらない。
何を言っているのか、
もはや目の前で起こっていることに
ついていけなくなっていたー。
麗菜から生まれたプチトマトぐらいの
サイズの”憑依蜘蛛”が圭にとびかかる。
圭はとっさに憑依蜘蛛を避けて
それを潰した。
「----あ~」
麗菜ががっかりした様子で言う。
”憑依蜘蛛”は潰されたらそこで終わりだ。
”殺虫剤をかけられて、死ぬ前に人間の体内に入り込む”ということが
人間を支配する条件だ。
その厳しい条件ゆえに、
人間への憑依が成功する個体はわずかー。
だが、蜘蛛に殺虫剤をかける人間は
少なからず存在するー
チャンスは、ある。
だからこそー
人間に憑依成功した個体は、
大量の子供を産む―。
「ーーいひひひひひひ…
け、い…圭って言うんだ~
わ、、わ、、わたし、、の彼氏???
か、れ、し?」
記憶を読み取りながら麗菜が笑う。
「--ふ、ふざけるな!麗菜を返せ!」
圭は叫ぶ。
ようやく、目の前にいる麗菜が蜘蛛に
支配されていることを悟るー。
そんなことあるはずがない、と
思いながらも目の前の麗菜の姿を
見たら、信じるしかなかった。
「---れいな??
うふふ…わたしはもう、蜘蛛よ」
麗菜はそう叫ぶと、
さらに激しく咳き込み始めた。
少し血も混じっている。
急激な身体の変化に
麗菜の身体がついていけていない。
それでもお構いなしに
体内で育てた蜘蛛を吐きだす麗菜。
蜘蛛が圭の方に向かうー。
だがー
圭に直接飛び込んでも、
憑依できないー
”体内で死ぬ”ことが絶対条件だ。
その前に消化されてしまっては話にならない。
「---くそっ!麗菜!目を覚ませ!麗菜!」
圭は叫ぶー
麗菜は自分の口から吐きだした蜘蛛を
自分の身体に乗せて
嬉しそうにしていたー。
「---な、なにこれ?」
背後から声がしたー。
「--!!」
圭は嫌な予感を覚えて振り返る。
そこにはー車で
待機させていたはずの妹・
達子の姿があった。
「来るな!!!」
圭は大声で怒鳴った。
「え?」
達子が不思議そうな顔をする。
「しゃああああああ!」
麗菜が嬉しそうに天井から飛び降りて四つんばいの
状態で達子の方に向かう。
そして、泣くフリをしながら
達子の方に向かって行くー
「---た、助けて!蜘蛛が!」
麗菜はそう叫んだ。
「えっ!?」
達子は混乱している。
麗菜が四つんばいのまま殺虫剤を達子に手渡す。
殺虫剤を受け取る達子。
麗菜の背後から
プチトマトサイズの蜘蛛が迫る。
「きゃああああああ!」
虫が苦手な達子は悲鳴を上げて
わけもわからないまま
殺虫剤を蜘蛛の方に向けた。
「--や、やめろ!」
圭は叫ぶ。
しかしー
達子は”憑依蜘蛛”に殺虫剤を
吹きかけてしまった。
「あは、、あははは、あはははははははは!」
それを見てゲラゲラ笑う麗菜。
殺虫剤を吹きかけられた憑依蜘蛛が
嬉しそうに達子にとびかかる。
「--ひっ!?」
殺虫剤を落す達子。
しかしー
達子は口を閉じていた。
鼻から侵入しようとする憑依蜘蛛を振り払う。
「--達子!
その蜘蛛はヤバい!
身体の中にいれるな!」
圭が叫ぶ。
「--ひっ!?」
達子は慌てて耳に近づいていた憑依蜘蛛を
振り払う。
その様子を見ていた麗菜が、
四つんばいをやめて、
達子に抱き着いた。
「ねぇ、、、はぁ…はぁ…♡
いっしょに、蜘蛛になりましょ??」
嫌がる達子を無理やり押さえつける麗菜。
麗菜は達子が抵抗できないように
抱きしめて、そのままキスをしたー
彼女と、妹のキスー。
圭はそんな場面見たくねぇ!と思いながら
二人を引き離そうとする。
しかし、麗菜に抱き着かれて
抵抗できない達子の耳からー
殺虫剤をかけられた
憑依蜘蛛が侵入してしまったー
「--ふふふふ」
笑う麗菜。
やがて、達子は苦しみだした。
床の上で転がりまわる達子。
「--うふふふふふ…
いっしょに子供をいっぱい生みましょ!」
麗菜が達子を投げ飛ばすと、
四つんばいに戻って、ゲラゲラ笑いだした。
「達子!くそっ・・・!
お、おい!麗菜!目を覚ませ!」
圭は二人に向かって叫ぶ。
しかしー
麗菜は完全に乗っ取られていて
正気を取り戻す気配はないー
やがて、達子も四つんばいになって
動き始めたー
「---く、くそっ!麗菜!達子!」
悲痛な叫びをあげる圭ー。
麗菜も達子もニヤニヤしながら
口から”憑依蜘蛛”を吐きだしているー
麗菜も達子も目の色が
変わっているー。
四つんばいで歩きながら
”子供”たちを吐きだしているー
二人とも顔色が悪い―
無理やり蜘蛛に乗っ取られて
身体がその変化に追い付いていない。
「やめろ…!頼む…!
目を覚ましてくれ!」
圭は必死に呼びかけた。
けれどー
無駄だった。
「うふふ…わたしは蜘蛛…!
こんな女はもう、わたしのもの」
麗菜がクスクスと笑うー
乱れきった格好でも、気にする様子はまるでない。
「--あぁ♡」
妹の達子が口から憑依蜘蛛を吐きだす。
恐ろしい速度で繁殖しているー
”憑依蜘蛛”なんて
聞いたことがない。
圭は”このままでは人類が乗っ取られてしまう
のではないか”などとスケールの大きなことを
考えてしまうー
「---くそっ!」
圭は”このままここにいたら自分もやられる”と悟るー。
ここで麗菜と達子を説得しても、
蜘蛛に完全に乗っ取られている2人が
目を覚ますとは思えないー
ここはー
「--」
圭はスマホを取り出した。
そして、警察に電話を入れる。
”とにかく、助けてもらわないといけない”
麗菜と達子が天井に張り付きながら
不思議そうに圭の方を見ている。
圭は、家の玄関に向かいながら
警察との通話を始める
「--た、助けて下さい!
俺の彼女と妹が…!」
一度ここから脱出して
警察と共に再度ー
そう思っていた圭は、異変に気付いた。
「--!?」
身体が、動かないー
「---ひひひひひひひひひひひ」
背後から麗菜の笑い声が聞こえた。
「--わたしの巣に、ひっかかっちゃった♡」
笑う麗菜。
「---な…」
圭はスマホをその場に落とす。
スマホからは応対した警察官の
声が聞こえるー。
圭はー
憑依蜘蛛の巣に
引っかかってしまった。
普通の蜘蛛の巣よりはるかに強い糸-。
圭は身動き一つとることもできなくなって
もがいたー
「ねぇねぇ…」
麗菜が近づいてくる。
「や…やめろ…!」
圭はもがくー。
だが、身体は動かない。
「この身体、なんか、興奮してるの…
あなたのこと、好きみたい…」
麗菜が甘い声を出しながら言う。
「---や、、やめろ!やめろ!助けてくれ!」
圭は必死にもがいた。
けれどー
無駄だった。
麗菜が口から憑依蜘蛛を吐きだす。
そして、達子が殺虫剤を拾うと
生まれたばかりの憑依蜘蛛に殺虫剤をかけた。
憑依蜘蛛が苦しみながら歩き回る。
そんな蜘蛛を麗菜は優しくつかむと、
圭の方を見て微笑んだ。
「--わたしといっしょに、蜘蛛になろ?」
優しく微笑む麗菜。
「--や、やめろ!助けて!助けて!」
圭は、自分が助かりたい一心で
必死に叫び声をあげたー
けれど、
もう遅かった。
麗菜に口を無理やりあけられてー
殺虫剤で弱った憑依蜘蛛を口の
中に放り込まれてしまったー
激しく咳き込む圭。
やがて、意識が薄れて行くー。
殺虫剤で弱っていた憑依蜘蛛が
圭の体内で死に、霊となり、
圭に憑依したー
しばらいくすると圭は、
ニヤニヤしながら、四つんばいになって歩き出したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー
圭の家だった場所ー、
今は”蜘蛛の巣”に成り果てた場所に、
特殊部隊が駆け付けていたー。
”憑依蜘蛛”を秘密裏に処理するための部隊ー
こんな危険な蜘蛛を、表ざたに
するわけにはいかないー
乗っ取られた人間ごと、抹消するー
「---」
特殊部隊の隊員3人が、
圭の家の中に飛び込んだー。
飛び込んできた特殊部隊たちを見て、
中にいた麗菜はにっこりとほほ笑んだー
お腹がパンパンに膨れ上がっている麗菜。
麗菜は、苦しそうにしながら
笑みを浮かべて呟くー
「--子供が、、生まれる…♡」
とー。
次の瞬間、麗菜のお腹が破裂して、
中から数百匹の憑依蜘蛛が飛び出したー
発砲する特殊部隊ー
その様子を圭と達子は
嬉しそうに見つめるのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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蜘蛛と憑依のお話でした!
お話の内容とはまったく関係ないのですが、
このお話を書いている途中に
部屋の中で蜘蛛を見つけました(笑)
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