<憑依>蜘蛛女①~蜘蛛~

幸せに暮らしているカップルー。

しかし、”1匹の蜘蛛”が
その幸せを打ち壊すー。

蜘蛛に憑依された彼女を前に、彼氏は…?

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大学生カップルの2人は、
最近、同居を始めていた。

黒野 圭(くろの けい)と、
白松 麗菜(しらまつ れいな)は
小さい頃からお互いを知る幼馴染で
大の仲良しだった。

高校は別々だったものの、
大学で再会を果たして意気投合、
今ではこうして同居するまでになっている。

最初は別々の場所で一人暮らしを
していたものの、
この方が家賃的にも、という提案で
二人で同居することになったのだった。

「--ただいま~」
麗菜が帰宅する。

「お、おかえり!」
先に帰宅していた圭が麗菜を出迎える。

二人はとても仲良しで
喧嘩をすることも、ほとんどない。

小さい頃からずっと同じような関係だ。

麗菜が帰宅したタイミングで
二人は晩御飯を食べ始める。

「でもさ~、まさかこんな風に2人で
 本当に暮らすことになるなんてびっくりだよね」

麗菜が言う。

麗菜は大学でも”かわいい”と言われるほどの
美貌の持ち主ー。
圭からすると、どう表現したらいいか分からないけれど、
とにかくかわいい。王道系美女ー
という感じだろうか。

小さい頃から可愛かったが
まさかこんなにきれいになるなんて。

「--そうだな~。
 結婚相手が、麗菜だなんてなぁ~」
圭が笑いながら言うと、
麗菜は「結婚!?」と驚く。

「--このまま結婚しそうじゃん」
圭が言うと、
麗菜も「うん!するする~!」と
笑ながら答えた。

このままー、

このまま幸せな家庭を築くはずだったー

しかしー
その、幸せは、この日、終わりを告げる。

「明日の準備はできてるの?」
麗菜が鞄を指さしながら言う。

圭は頷く。

「あぁ、もう準備万端だ」

圭はー、
明日から3日間、実家に帰る予定になっていた。

そのため、その間は家を留守にする。

「--楽しんできてね」
麗菜が言うと、
圭は「あぁ、もちろん」と微笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「いってきます」
圭が優しい笑みを浮かべて
玄関から外に出て行く。

「いってらっしゃい」
麗菜も微笑みながら
圭を見送った。

圭の姿が見えなくなると
麗菜は少しさびしそうに
家の中へと戻った。

大学はちょうど休みの期間ー。
圭の両親とも面識があるし、
圭も”いっしょに行くか?”と
聞いてくれたのだが
麗菜は遠慮した。

久しぶりの両親との時間を
ゆっくりさせてあげたいと思ったからだ。

「----!!!」
部屋の中に戻った麗菜は
目を疑ったー

部屋にーーー
緑と青の縞模様の
謎の蜘蛛がいたのだー。

しかもー
そこそこでかいー。

大蜘蛛、、とまではいかないまでも、
プチトマト1個分ぐらいのサイズの
奇妙な色の蜘蛛が居る。

「--ひっ?!」
虫が苦手な麗菜は思わず声をあげた。

「も~~…」
麗菜は思わずつぶやく。

どうせなら、圭が出て行く前に
姿を見せてくれればよかったのに…

と、毒づきながら麗菜は
玄関先に置いておいた殺虫剤を手にする。

奇妙な蜘蛛はじーっとしていて動かない。

「-----」
麗菜はその蜘蛛をじーっと見つめる。

急に動き出す可能性もあるからだー。

「---も~…イヤだなぁ」
麗菜の苦手な虫のひとつが、蜘蛛だ。

いや、
ゴキブリも蚊も、ハエもカナブンも蝉も
みんな苦手だー。

「---」
手を震わせながら麗菜は
殺虫剤の舎弟範囲に入りー

そして、蜘蛛に殺虫剤を吹きかけた。

勢いよく
シューっという音が部屋に響き渡る。

しかしー

「--えっ…」
蜘蛛は、無傷だった。

「---!?!?!?!?」
麗菜は驚いて、再び
殺虫剤を吹きかける。

しかし、蜘蛛は反応しないー

ふつう、昆虫に殺虫剤を
吹きかければ、すぐに反応して
苦しみだすはずなのだ。

苦しまないまでも、
何の反応もないということは
考えられないー

では、この蜘蛛は、何か?

麗菜は”もう死んでるの?”と思いながら
蜘蛛に近づいて行く。
プチトマトサイズの蜘蛛。
よく見かける蜘蛛より、大きい。
しかも、色が不気味だ。

しばらく様子を見つめる麗菜。

時間だけが過ぎて行くー

やがてー

麗菜は、”圭がドッキリで
リアル昆虫フィギュアでも設置したんじゃないか”
という考えに辿り着いた。

少なくとも、
生きているなら、数十分間動かないと言うことは
あり得ないー

麗菜は、蜘蛛に近づいて行くー

そしてー
恐る恐るティッシュを掴んで―

蜘蛛に近づいたその時ー

蜘蛛が、突然、ジャンプしたー

「---!?!?!?!?」
驚く麗菜ー

蜘蛛は、麗菜の口の中に飛び込んだ。

「ひっ!あ、、えっ…?いや…いやぁぁ…!」
蜘蛛が口の中で動き回り、
無理やり喉の奥に入り込んでいく。

「げほっ!げほっ!げほっ!げほっ!」
麗菜は思わず蹲って咳をし始める。

しかしー
蜘蛛は、出てこなかった。

「ひっ…く、、蜘蛛飲んじゃった…」
慌ててうがいをする麗菜。
半分パニックになっていた。

もし、毒蜘蛛だったらー?

麗菜は怯えながらうがいを終えるー

しかし、苦しい感じはしないー

「だ、、大丈夫かな…」
心配になりながらも、麗菜は部屋の椅子に座り、
心を落ち着かせる。

なんだか、今日はスカートがやけに落ち着かない。

「ふぅ~」
額から流れる冷や汗。

もしも調子が悪くなったらと、机の上に
保険証を用意しておく麗菜。

何かあったら、すぐに病院に駆け込めるようにしておきたい。

「--はぁ…はぁ…」

蜘蛛を飲み込んでから30分ー
麗菜は、まだ落ち着きを
取り戻すことができていなかったー

”----人間の身体”

「---!?」

麗菜は驚いて振り返った。

しかしー
そこには誰も居ない。

「だ、、だれ …!?」
麗菜は驚いて声を出す。

”人間の身体だー”

確かに声が聞こえる。

麗菜は怯えながら叫んだ。

「だ、、だれなの!?!?
 ど、どこにいるの??」

”ぐふふふふふふ…
 もうすぐ…もうすぐ…”

麗菜は恐怖でいっぱいに
なりながら部屋の中を
探し回る。

人の声がする。
脳に直接語りかけられているような声ー

「--はぁ…はぁ…はぁ…!」
麗菜は焦りながら
部屋中を探し回る。

パニックからかー
麗菜はやがて部屋中のものを
乱暴に散らかし始めた。

「どこっ!?どこにいるの!?
 あなたはだれ!?」

麗菜は叫ぶ。

”--お前の、中”

そう聞こえたー

麗菜に語りかけているのはー
さっき、麗菜の中に飛び込んだ、蜘蛛だー。

蜘蛛が麗菜の脳を刺激して、
麗菜に言葉を伝えているー。

蜘蛛がしゃべっているわけではないが、
刺激された麗菜の脳は、蜘蛛の意思を
”幻聴”のようなかたちで麗菜に伝えている。

「--な、、なか!?
 わたしのなか…!?!?
 なにをいってるの!?」

麗菜が呟く。

”オマエノ身体を、貰う”

声が聞こえる。

「わたしのからだを…

 ど、、どういうこと!?」

麗菜はパニックになった。
四つんばいになって、自分のスマホの置いてある方を目指す。

麗菜はー
自分が四つんばいで部屋を移動していることに
違和感を抱けなくなっていたー。

スマホのところに到着したころには
麗菜は、スマホで彼氏の圭に電話しようと
していたことをもう忘れてしまっていた。

”…ぐ…ふふふふ”

身体に入り込んだ蜘蛛が、
苦しそうな声を出したー

”憑依蜘蛛”

まだ、表向きにはなっていない新種の蜘蛛ー。
この蜘蛛は、人間に入り込み、
憑依し、身体を支配するー

より強い身体を求めてー
より多くの仲間を繁殖させるためー。

政府は憑依蜘蛛の存在が表向きになれば
パニックになると判断して
現在、その隠蔽に成功しているー

だがー。
憑依蜘蛛の存在が明るみに出るのは
時間の問題だったー

「---あ…あ…」
麗菜は激しく痙攣を始める。

麗菜に入り込んだ蜘蛛は
殺虫剤をかけられた影響で、
まもなく死のうとしていたー。

あえて殺虫剤をかけられたあとに、
人間の身体に入り込み、
人間の体内で死にー
”霊”となるー。
そして、人間の身体をそのまま支配するー

それが、憑依蜘蛛だった。

「---あ…あぁあああああ…」
激しく痙攣しながら白目を剥く麗菜。

スカートの中が見えるのもおかまいなしに
床を転がりまわる。

やがて泡を吹き出し、
そのままピクピクして動かなくなってしまった。

まるでー
死んでいるかのように、動かない麗菜。

しばらくすると麗菜は、
ひゅー、ひゅー、と不気味な呼吸をし始めて
ゆっくりと起き上がったー

「これが…人間の…からだ…」
まるでロボットのような感情のない声でつぶやく麗菜。

麗菜はゆっくりと四つんばいの姿勢を取ると、
そのまま動き始めた。

「シャアアア…」
不気味な音を立てて口から糸のようなものを
吐きだす麗菜。

麗菜の身体は急速に変異を起こしていたー

可愛らしい瞳が、
不気味な瞳に変わっているー
昆虫の目のようなー
不気味な瞳にー

「--ふふふふふふ…
 わ、た、しは、、れいな…」

麗菜は興奮していたー。
いや、正確には、麗菜に憑依した蜘蛛は
興奮していたー

人間の身体を自由自在に動かしていることにー
そして、何の関係もない女性の身体を
自分が乗っ取って、これから好き放題できることにー

麗菜はニヤニヤしながら顔を赤らめ、
アソコを濡らしながら、ぽたぽたと口から涎を垂らす。

そして、麗菜はそのまま四つんばいの姿勢で壁に張り付くと、
そのまま天井の方に向かって、
歩きはじめたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--どうかした~?」

彼氏の圭は実家で
久しぶりの時間を過ごしていた。

圭の妹・達子(たつこ)が
圭に声をかける。

せっかく実家に帰ってきたというのに
圭がスマホばかりいじっているからだ。

「いや、それがさ…」
圭は不安そうな表情で達子の方を見る。

”実家についたよ”という連絡に
既読がつかないのだー。

最初は特に不思議に思わなかったが
夜になっても既読がつかない。
麗菜はLINEやSNSで案外すぐに反応するタイプ
だったし、ここまで反応がないというのは
珍しい。

だから、圭は不安になった。

「--麗菜さんだって
 色々あるんだよ~!
 だいじょうぶだいじょうぶ!」

妹の達子が言う。

「そ、そうだよな」
圭は立つこの言葉を聞いて
”心配しすぎだよな”と自分に
言い聞かせ、今はひとまず久々の実家を
楽しむことにしたー

・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「やっぱ、俺、一度様子を見てくる」

圭が母親に向かって言った。

不思議そうな顔をする母親。

昨日から、麗菜と連絡が取れない。
翌朝になっても一切連絡が取れないというのは
おかしいー

LINEも電話も、SNSも応答がないし、
麗菜のツイッターの更新も止まっているー。

何かがおかしい。

「う~ん、確かに心配だね」
妹の達子が言う。

年の近い達子も大学生。
ちょうど達子も大学の休み期間に
入っていた。

「久々に麗菜さんに挨拶したいし、
 わたしも一緒に行くよ~!」

達子が笑う。

「--え、達子も?」
圭は最初は断ろうとしていたが
達子に押されて
しぶしぶ達子と共に
麗菜と同居している家に戻ることになった。

車で雑談しながら
ようやく家についた圭。

自宅の様子は特に変わった様子ではない。

「達子、一応、ここで待っててくれ」
圭は言う。

「え?どうして~?」
助手席の達子が反論する。

圭はすかさず口を開いた

「念の為さ」

とー。

もしも、もしも万が一麗菜が
何か事件に巻き込まれていた場合を
考えて、圭はまず、一人で家の中を
覗きに行くことにした。

達子を車で待たせて
圭は自分の部屋へと向かうー。

インターホンを押す。

返事は、ないー。

「--麗菜…いないのか?
 麗菜?」

嫌な予感がするー。

ポストの郵便物も
少し貯まっていたー

圭は意を決して、
部屋の扉を開く。

部屋の中に入った圭ー。

「--麗菜?いないのか!」
部屋の中に向かって叫ぶが、
麗菜からの返事はないー

圭は思うー

これってー。

ドラマとか映画でよく見る展開な気がする。
部屋の奥ー
あるいは浴室あたりに
変わり果てた麗菜の姿がー

いやいや、そんなはずはない

圭は自分に”だいじょうぶだ”と言い聞かせながら
奥へと進んでいくー

「---麗菜」
圭は安心した。麗菜が、部屋の雑巾がけを
していたー

麗菜は無事だった。

「麗菜!連絡も紅から心配して様子を…」

そこまで言いかけて、
圭は言葉を止めたー

部屋の中のあちこちにー
”蜘蛛の巣”があったからだー。

それも、かなり大きいサイズのー

「れ…麗菜…」

圭の呼びかけに、麗菜はクスクス笑いながら、
四つんばいのまま振り返るー。

麗菜は、雑巾がけなどしていなかったー

そしてー
振り返った麗菜の瞳は、
不気味な瞳に変貌していたー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

昆虫に憑依されるお話デス!
最初「ゴキブリ」の予定だったのですが
蜘蛛の方が異様な部分(蜘蛛の巣とか)が
書けるかな~!ということで
蜘蛛になりました☆!

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憑依<蜘蛛女>

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