幸せに暮らしているカップルー。
しかし、”1匹の蜘蛛”が
その幸せを打ち壊すー。
蜘蛛に憑依された彼女を前に、彼氏は…?
--------------------—
大学生カップルの2人は、
最近、同居を始めていた。
黒野 圭(くろの けい)と、
白松 麗菜(しらまつ れいな)は
小さい頃からお互いを知る幼馴染で
大の仲良しだった。
高校は別々だったものの、
大学で再会を果たして意気投合、
今ではこうして同居するまでになっている。
最初は別々の場所で一人暮らしを
していたものの、
この方が家賃的にも、という提案で
二人で同居することになったのだった。
「--ただいま~」
麗菜が帰宅する。
「お、おかえり!」
先に帰宅していた圭が麗菜を出迎える。
二人はとても仲良しで
喧嘩をすることも、ほとんどない。
小さい頃からずっと同じような関係だ。
麗菜が帰宅したタイミングで
二人は晩御飯を食べ始める。
「でもさ~、まさかこんな風に2人で
本当に暮らすことになるなんてびっくりだよね」
麗菜が言う。
麗菜は大学でも”かわいい”と言われるほどの
美貌の持ち主ー。
圭からすると、どう表現したらいいか分からないけれど、
とにかくかわいい。王道系美女ー
という感じだろうか。
小さい頃から可愛かったが
まさかこんなにきれいになるなんて。
「--そうだな~。
結婚相手が、麗菜だなんてなぁ~」
圭が笑いながら言うと、
麗菜は「結婚!?」と驚く。
「--このまま結婚しそうじゃん」
圭が言うと、
麗菜も「うん!するする~!」と
笑ながら答えた。
このままー、
このまま幸せな家庭を築くはずだったー
しかしー
その、幸せは、この日、終わりを告げる。
「明日の準備はできてるの?」
麗菜が鞄を指さしながら言う。
圭は頷く。
「あぁ、もう準備万端だ」
圭はー、
明日から3日間、実家に帰る予定になっていた。
そのため、その間は家を留守にする。
「--楽しんできてね」
麗菜が言うと、
圭は「あぁ、もちろん」と微笑んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「いってきます」
圭が優しい笑みを浮かべて
玄関から外に出て行く。
「いってらっしゃい」
麗菜も微笑みながら
圭を見送った。
圭の姿が見えなくなると
麗菜は少しさびしそうに
家の中へと戻った。
大学はちょうど休みの期間ー。
圭の両親とも面識があるし、
圭も”いっしょに行くか?”と
聞いてくれたのだが
麗菜は遠慮した。
久しぶりの両親との時間を
ゆっくりさせてあげたいと思ったからだ。
「----!!!」
部屋の中に戻った麗菜は
目を疑ったー
部屋にーーー
緑と青の縞模様の
謎の蜘蛛がいたのだー。
しかもー
そこそこでかいー。
大蜘蛛、、とまではいかないまでも、
プチトマト1個分ぐらいのサイズの
奇妙な色の蜘蛛が居る。
「--ひっ?!」
虫が苦手な麗菜は思わず声をあげた。
「も~~…」
麗菜は思わずつぶやく。
どうせなら、圭が出て行く前に
姿を見せてくれればよかったのに…
と、毒づきながら麗菜は
玄関先に置いておいた殺虫剤を手にする。
奇妙な蜘蛛はじーっとしていて動かない。
「-----」
麗菜はその蜘蛛をじーっと見つめる。
急に動き出す可能性もあるからだー。
「---も~…イヤだなぁ」
麗菜の苦手な虫のひとつが、蜘蛛だ。
いや、
ゴキブリも蚊も、ハエもカナブンも蝉も
みんな苦手だー。
「---」
手を震わせながら麗菜は
殺虫剤の舎弟範囲に入りー
そして、蜘蛛に殺虫剤を吹きかけた。
勢いよく
シューっという音が部屋に響き渡る。
しかしー
「--えっ…」
蜘蛛は、無傷だった。
「---!?!?!?!?」
麗菜は驚いて、再び
殺虫剤を吹きかける。
しかし、蜘蛛は反応しないー
ふつう、昆虫に殺虫剤を
吹きかければ、すぐに反応して
苦しみだすはずなのだ。
苦しまないまでも、
何の反応もないということは
考えられないー
では、この蜘蛛は、何か?
麗菜は”もう死んでるの?”と思いながら
蜘蛛に近づいて行く。
プチトマトサイズの蜘蛛。
よく見かける蜘蛛より、大きい。
しかも、色が不気味だ。
しばらく様子を見つめる麗菜。
時間だけが過ぎて行くー
やがてー
麗菜は、”圭がドッキリで
リアル昆虫フィギュアでも設置したんじゃないか”
という考えに辿り着いた。
少なくとも、
生きているなら、数十分間動かないと言うことは
あり得ないー
麗菜は、蜘蛛に近づいて行くー
そしてー
恐る恐るティッシュを掴んで―
蜘蛛に近づいたその時ー
蜘蛛が、突然、ジャンプしたー
「---!?!?!?!?」
驚く麗菜ー
蜘蛛は、麗菜の口の中に飛び込んだ。
「ひっ!あ、、えっ…?いや…いやぁぁ…!」
蜘蛛が口の中で動き回り、
無理やり喉の奥に入り込んでいく。
「げほっ!げほっ!げほっ!げほっ!」
麗菜は思わず蹲って咳をし始める。
しかしー
蜘蛛は、出てこなかった。
「ひっ…く、、蜘蛛飲んじゃった…」
慌ててうがいをする麗菜。
半分パニックになっていた。
もし、毒蜘蛛だったらー?
麗菜は怯えながらうがいを終えるー
しかし、苦しい感じはしないー
「だ、、大丈夫かな…」
心配になりながらも、麗菜は部屋の椅子に座り、
心を落ち着かせる。
なんだか、今日はスカートがやけに落ち着かない。
「ふぅ~」
額から流れる冷や汗。
もしも調子が悪くなったらと、机の上に
保険証を用意しておく麗菜。
何かあったら、すぐに病院に駆け込めるようにしておきたい。
「--はぁ…はぁ…」
蜘蛛を飲み込んでから30分ー
麗菜は、まだ落ち着きを
取り戻すことができていなかったー
”----人間の身体”
「---!?」
麗菜は驚いて振り返った。
しかしー
そこには誰も居ない。
「だ、、だれ …!?」
麗菜は驚いて声を出す。
”人間の身体だー”
確かに声が聞こえる。
麗菜は怯えながら叫んだ。
「だ、、だれなの!?!?
ど、どこにいるの??」
”ぐふふふふふふ…
もうすぐ…もうすぐ…”
麗菜は恐怖でいっぱいに
なりながら部屋の中を
探し回る。
人の声がする。
脳に直接語りかけられているような声ー
「--はぁ…はぁ…はぁ…!」
麗菜は焦りながら
部屋中を探し回る。
パニックからかー
麗菜はやがて部屋中のものを
乱暴に散らかし始めた。
「どこっ!?どこにいるの!?
あなたはだれ!?」
麗菜は叫ぶ。
”--お前の、中”
そう聞こえたー
麗菜に語りかけているのはー
さっき、麗菜の中に飛び込んだ、蜘蛛だー。
蜘蛛が麗菜の脳を刺激して、
麗菜に言葉を伝えているー。
蜘蛛がしゃべっているわけではないが、
刺激された麗菜の脳は、蜘蛛の意思を
”幻聴”のようなかたちで麗菜に伝えている。
「--な、、なか!?
わたしのなか…!?!?
なにをいってるの!?」
麗菜が呟く。
”オマエノ身体を、貰う”
声が聞こえる。
「わたしのからだを…
ど、、どういうこと!?」
麗菜はパニックになった。
四つんばいになって、自分のスマホの置いてある方を目指す。
麗菜はー
自分が四つんばいで部屋を移動していることに
違和感を抱けなくなっていたー。
スマホのところに到着したころには
麗菜は、スマホで彼氏の圭に電話しようと
していたことをもう忘れてしまっていた。
”…ぐ…ふふふふ”
身体に入り込んだ蜘蛛が、
苦しそうな声を出したー
”憑依蜘蛛”
まだ、表向きにはなっていない新種の蜘蛛ー。
この蜘蛛は、人間に入り込み、
憑依し、身体を支配するー
より強い身体を求めてー
より多くの仲間を繁殖させるためー。
政府は憑依蜘蛛の存在が表向きになれば
パニックになると判断して
現在、その隠蔽に成功しているー
だがー。
憑依蜘蛛の存在が明るみに出るのは
時間の問題だったー
「---あ…あ…」
麗菜は激しく痙攣を始める。
麗菜に入り込んだ蜘蛛は
殺虫剤をかけられた影響で、
まもなく死のうとしていたー。
あえて殺虫剤をかけられたあとに、
人間の身体に入り込み、
人間の体内で死にー
”霊”となるー。
そして、人間の身体をそのまま支配するー
それが、憑依蜘蛛だった。
「---あ…あぁあああああ…」
激しく痙攣しながら白目を剥く麗菜。
スカートの中が見えるのもおかまいなしに
床を転がりまわる。
やがて泡を吹き出し、
そのままピクピクして動かなくなってしまった。
まるでー
死んでいるかのように、動かない麗菜。
しばらくすると麗菜は、
ひゅー、ひゅー、と不気味な呼吸をし始めて
ゆっくりと起き上がったー
「これが…人間の…からだ…」
まるでロボットのような感情のない声でつぶやく麗菜。
麗菜はゆっくりと四つんばいの姿勢を取ると、
そのまま動き始めた。
「シャアアア…」
不気味な音を立てて口から糸のようなものを
吐きだす麗菜。
麗菜の身体は急速に変異を起こしていたー
可愛らしい瞳が、
不気味な瞳に変わっているー
昆虫の目のようなー
不気味な瞳にー
「--ふふふふふふ…
わ、た、しは、、れいな…」
麗菜は興奮していたー。
いや、正確には、麗菜に憑依した蜘蛛は
興奮していたー
人間の身体を自由自在に動かしていることにー
そして、何の関係もない女性の身体を
自分が乗っ取って、これから好き放題できることにー
麗菜はニヤニヤしながら顔を赤らめ、
アソコを濡らしながら、ぽたぽたと口から涎を垂らす。
そして、麗菜はそのまま四つんばいの姿勢で壁に張り付くと、
そのまま天井の方に向かって、
歩きはじめたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--どうかした~?」
彼氏の圭は実家で
久しぶりの時間を過ごしていた。
圭の妹・達子(たつこ)が
圭に声をかける。
せっかく実家に帰ってきたというのに
圭がスマホばかりいじっているからだ。
「いや、それがさ…」
圭は不安そうな表情で達子の方を見る。
”実家についたよ”という連絡に
既読がつかないのだー。
最初は特に不思議に思わなかったが
夜になっても既読がつかない。
麗菜はLINEやSNSで案外すぐに反応するタイプ
だったし、ここまで反応がないというのは
珍しい。
だから、圭は不安になった。
「--麗菜さんだって
色々あるんだよ~!
だいじょうぶだいじょうぶ!」
妹の達子が言う。
「そ、そうだよな」
圭は立つこの言葉を聞いて
”心配しすぎだよな”と自分に
言い聞かせ、今はひとまず久々の実家を
楽しむことにしたー
・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「やっぱ、俺、一度様子を見てくる」
圭が母親に向かって言った。
不思議そうな顔をする母親。
昨日から、麗菜と連絡が取れない。
翌朝になっても一切連絡が取れないというのは
おかしいー
LINEも電話も、SNSも応答がないし、
麗菜のツイッターの更新も止まっているー。
何かがおかしい。
「う~ん、確かに心配だね」
妹の達子が言う。
年の近い達子も大学生。
ちょうど達子も大学の休み期間に
入っていた。
「久々に麗菜さんに挨拶したいし、
わたしも一緒に行くよ~!」
達子が笑う。
「--え、達子も?」
圭は最初は断ろうとしていたが
達子に押されて
しぶしぶ達子と共に
麗菜と同居している家に戻ることになった。
車で雑談しながら
ようやく家についた圭。
自宅の様子は特に変わった様子ではない。
「達子、一応、ここで待っててくれ」
圭は言う。
「え?どうして~?」
助手席の達子が反論する。
圭はすかさず口を開いた
「念の為さ」
とー。
もしも、もしも万が一麗菜が
何か事件に巻き込まれていた場合を
考えて、圭はまず、一人で家の中を
覗きに行くことにした。
達子を車で待たせて
圭は自分の部屋へと向かうー。
インターホンを押す。
返事は、ないー。
「--麗菜…いないのか?
麗菜?」
嫌な予感がするー。
ポストの郵便物も
少し貯まっていたー
圭は意を決して、
部屋の扉を開く。
部屋の中に入った圭ー。
「--麗菜?いないのか!」
部屋の中に向かって叫ぶが、
麗菜からの返事はないー
圭は思うー
これってー。
ドラマとか映画でよく見る展開な気がする。
部屋の奥ー
あるいは浴室あたりに
変わり果てた麗菜の姿がー
いやいや、そんなはずはない
圭は自分に”だいじょうぶだ”と言い聞かせながら
奥へと進んでいくー
「---麗菜」
圭は安心した。麗菜が、部屋の雑巾がけを
していたー
麗菜は無事だった。
「麗菜!連絡も紅から心配して様子を…」
そこまで言いかけて、
圭は言葉を止めたー
部屋の中のあちこちにー
”蜘蛛の巣”があったからだー。
それも、かなり大きいサイズのー
「れ…麗菜…」
圭の呼びかけに、麗菜はクスクス笑いながら、
四つんばいのまま振り返るー。
麗菜は、雑巾がけなどしていなかったー
そしてー
振り返った麗菜の瞳は、
不気味な瞳に変貌していたー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
昆虫に憑依されるお話デス!
最初「ゴキブリ」の予定だったのですが
蜘蛛の方が異様な部分(蜘蛛の巣とか)が
書けるかな~!ということで
蜘蛛になりました☆!
コメント