<憑依>勇者崩壊③~魔王~(完)

勇者セブンを支えてくれていた少女・ルナ。

彼女が憑依されているとは夢にも思わず、
勇者セブンは、魔王の元を目指すー…

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「---あ…♡ あ…♡ あ…♡」

魔王の城…
東側では、巫女のセレスが
服を引きちぎられて、
ルナに身体をしゃぶりつくされていた。

「や…やめて…」
セレスが目から涙をこぼす。

綺麗な色白の肌が、
露出して、
身体からは愛液が流れている。

「んふふふふぅ♡」
ルナはそれを指につけて舐めると笑う。

「--お前たち人間の身体が
 こんなに気持ちイイものなんて…
 ぐふ…ぐふふふふふ♡」

自分の胸を触るルナ。

ルナはセレスの上に乱暴に乗っかると
片手で自分の胸を、
もう片手でセレスの胸を掴み、
乱暴に揉み始めた。

「いいもん持ってるではないか…
 ぐへへへへへへ♡」

激しく興奮した様子で笑うルナ。

「---ル…ルナさんを返して・・・!」
セレスは弱気な様子で叫ぶ。

しかしー
ルナは言った。

「返さないー…
 この身体は、我のものだ…」

自分の顔をイヤらしく撫でまわすルナー

そしてー

「むっ…」
ルナは何かを感じ取ったかのように
呟いた。

”部下の魔力が消えた”

「--ククク…そろそろ時間だ」
ルナは冷たい表情でセレスの方を見ると、
セレスに向かって魔力を注ぎ始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---そ…そんな馬鹿なぁ~!」

魔王城西部ー。

魔王配下の大幹部・デッドナメクジが、勇者セブンの
必殺技を喰らい、最後の断末魔をあげていたー

セブンの背後で、
デッドナメクジは大爆発を起こして消滅するー。

手ごわい相手だったー

恐らくは今まで戦った大幹部、
ケルベロスやサキュバスよりも、
その力は上だっただろうー

しかしー

「--俺は、負けないー」

デュオとウイングを失った
勇者セブンの怒りが、
それを超越したー。

デッドナメクジを倒した勇者セブンは、
魔王城を駆け上がるー

そして、ついに最上階に辿り着いた。

「---魔王クロノス!」

魔王の間ー。

いかにもな雰囲気の広々とした
部屋に入って行くー。

そこにはー
背を向けるようにして玉座が存在していた。

誰かがそこに座っているー

「--お前が、魔王・クロノスか!」

勇者セブンは剣を向けて叫ぶ。

「---くくくくくく」
魔王の笑い声が響くー

「くくくく、あはははははははははは!」

部屋中に響き渡ったのは
女の声ー。

「(魔王は、女だったのか?)」
勇者セブンは思うー

確かに、魔王クロノスと直接対峙したことはないー
先入観から男だと思っていたが
女だったということだろうー

だが、男であろうと
女であろうと、
凶悪な魔王は、討伐しなくてはならないー

「--」
玉座が回転してー
魔王が姿を現すー

足を組み、妖艶な悪の女王のような格好をした
魔王はー
セブンの方を見て、笑みを浮かべたー

「----!!!」
セブンは驚いて目を見開く。

「---我が魔王クロノスだー」
微笑む女ー

それはー

「ル、、、ルナ!!!」

さっき別れたときと格好が違うが
確かに、ルナだったー

「--くくく…どうした?勇者セブンよ…」

妖しい格好のルナが玉座から立ち上がって、
セブンを見下す。

「---魔王にふさわしい、綺麗な身体だろう?」

ルナの声ー

優しかったルナの声が、
今は低く、悪魔のようなトーンに聞こえる。

「お…俺達を…騙していたのか…?」

セブンは絶望の表情を浮かべるー

セブンもー、
巫女のセレスと同じように
”ルナが憑依されている”とは考えなかったー

”ルナは最初から、自分たちを騙すために近づいてきたー”

そう思った。

「---くくくくく…」
ルナは笑うだけで返事をしない。

「---貴様…!」
セブンの愛が、一気に憎悪に変わる。

信じていたのにー

あの笑顔もー
涙もー
全部嘘だったって言うのかー!

信じられないという表情で
セブンはルナに襲い掛かる。

怒りのセブンは、
デッドナメクジをも圧倒したその力で、
ルナを追い詰めていくー

「(ククク…怒り狂え勇者よ)」
ルナは剣を振るいながら笑みを浮かべる。

この身体は元々剣術に
たけてなどいないが、
今は魔王の身体ー。
剣技もお手のものだったー

「--くそぉおおお!」
セブンが剣を振るうー

ルナの持っていた剣がはじき飛ばされる。

「はぁ…はぁ…」
セブンがルナの方に剣を向けた。

妖艶な格好をしたルナが
地面に這いつくばって
セブンの方を見る。

「--くくくくく…
 お前に我は殺せない…」
ルナが低い声で
おかしそうに笑う。

「--……ルナ…」
セブンは目から涙をこぼすー

だがー

「--俺は…俺は…!」
セブンは涙を流しながら叫んだ。

「--俺はおまえなどに屈しない!」

セブンは、ルナを剣で斬りつけた。

「ぎゃあああああああ!」
悲鳴を上げるルナー

ルナの身体から、黒い煙が
放出されるー

「あ………」
ルナの身体から血が流れて、血だまりが出来上がるー

”くくくくくく…”

ルナから放出された黒い煙が、笑うー。

”お前は、最愛の女性を
 自分の手で斬ったー”

魔王・クロノスが笑うー

「---な、、なに!?」

勇者セブンは、
苦しむルナと、黒い煙を見ながら言う。

黒い煙はーーー
部屋の奥の方へと流れていくー

「---せ…セブン…
 わ、、わたしは…」

ルナが苦しみながら
喋りはじめる。

「ど…どういうことだ!?おい!」
セブンがルナを抱きかかえながら
黒い煙の向かった部屋の奥に向かって叫ぶ。

「----くくくくくく」
別の女の声ー

コツコツと、ヒールのような音がこちらに近づいてくるー

そしてー
部屋の奥の闇から姿を現したのはー
ルナと同じように、魔王の好みに着替えさせられて
妖艶な巫女服に着替えさせられた
巫女のセレスだった。

憑依されていたルナに襲われたセレスは、
魔力で眠らされて、いざというときの身体として
この部屋に連れてこられていたのだった。

「セレス!?」
セブンは叫ぶ。

「--うふふふふふふ…
 ”この身体”のほうがより強力な魔力があったし、
 われの好みなのでな…
 この身体を我の身体にすることにした」

巫女セレスの優しい声が、
悪魔のような言葉を告げる。

セレスは自分の胸を触って微笑むー

「--痛い…痛いよ…」
セブンに抱えられているルナが
泣きながら弱弱しく呟いた。

「--ル…ルナ……!これは…」
セブンは呆然とした表情で言う。

巫女のセレスが
勝ち誇った表情で両手を広げて叫んだ。

「この小娘も、そのルナという小娘も、
 我が憑依して身体を奪って
 好き勝手操っていたのだー

 ぐははははははははは!」

セレスの言葉を聞いて、
唖然とするセブン。

「なん…だと…」
苦しむルナの方を見つめるー

「--お前たちがサキュバスを倒したあとー
 我は、そこのルナという小娘に憑依したー
 そして、デュオとウイングを殺しー
 ここに貴様を呼び寄せたのだ」

いつも穏やかな口調で話す巫女のセレスが
強気な口調で話すー
妖艶な格好をしているせいもあり、
まるで別人のようだ

「お前は、、そうとも知らずに
 大事な女を、その手で斬った…
 くくくくく…」

セレスが身体を震わせる。
笑いをこらえきれず、セレスは
大声で笑いはじめる。

「あはははははははははははっ♡」

セレスの笑い声が響き渡る中、
ルナは苦しみの表情でセブンを見た。

「いたい…よ…
 さむいよ…セブン…」

ルナが涙を流しながら
弱り切った手で、セブンを掴む。

自分が妖艶な格好をさせられていることにも
気付けないほど、ルナは弱っている。

「--ルナ…!ルナ…!」
セブンは泣きながら
ルナを抱きかかえた。

一緒に生き延びるって約束したのにー

「-なんで…どうして…」
ルナが苦しみながら言う。

憑依されていた間の記憶がなく、
前後の記憶があいまいなルナは
”いきなりセブンに斬られた”
そう思っていた。

「---」
魔王に憑依された巫女・セレスは
その様子を見ながら
わざとらしく叫んだ。

「--セブンさん!ルナさんを
 斬るなんて!ひどい!」

セレスはニヤニヤしながら
そう叫んでいるー

その言葉が耳に入ったのか
ルナは目から大粒の涙をこぼす。

「ひどいよ…いたいよ…
 なんでよ…」

ルナの言葉に、
セブンは「ちがう…ちがうんだ!」と叫んだ。

”ルナが憑依されている可能性”
そんなこと、セブンは全く考えずに、
ルナを斬ってしまったー

魔王クロノスがルナという少女に化けて
最初から騙すつもりで近づいてきた、と
そう判断して斬ってしまった

「---ルナ!!!」
セブンはうつろな目になっていく
ルナに向かって叫ぶ。

「---や…だ……しにたく…ないよ…」
ルナはそう呟くと、
力なく、上げていた腕を落としたー

もう、ルナは動かない

「うわあああああああ!」
セブンはルナを抱きかかえて泣き叫ぶ。

「--くくくく…
 あ~ははははははははは♡」

セレスが笑う。

「うううぅううう」
セブンは泣きながらセレスの方を見る

「--我が憎いか?斬るか!?
 来いよ!!」

セレスがセブンを挑発する。

優しい巫女の面影は、もうどこにもないー

「くっ…セレス…」
セブンはセレスの方を見る。

「---目を覚ましてくれ!セレス!」
セブンは叫ぶ。

しかし、セレスはふざけたポーズを取りながら

「わ・た・しは正気ですよ♡
 うふふふふふふふふ!」

と笑って見せた。

「くそっ…セレス…」
剣を手に震えるセブン。

セブンに、仲間を斬ることなどできない。

ましてや、
目の前にいるセレスは魔王に憑依されているだけー、
と知ってしまっている。

斬ることなどできるはずもないーー

「うぅぅぅ…」
セブンは剣を捨てた。

そして、土下座のようなポーズで
セレスの方を見るー

「---俺は…
 仲間を斬ることはできない…」

セブンは真剣なまなざしでセレスの方を見た。

妖艶な姿のセレスが近づいてくる。

「--ふふふふふふふ…
 バカなやつだ」

モデル歩きをしながら近づいてくるセレスを
見ながら、セブンは叫ぶ。

「セレス…!頼む…目を覚ましてくれ!
 闇になんか負けるな!」

セブンは必死に呼びかける。
心の奥底に封じ込められているであろう
セレスに向かってー

「・・・・!!」

セレスが不快そうな表情を浮かべるー。

「--俺といっしょに、魔王を倒そう!
 セレス!!!」

セブンがセレスの目を見て叫ぶー

その目はーーー
強い意識が込められていたー

仲間のセレスに対する強い想いもー。

「----」
セレスは紫色に染まった魔王の剣を手に
セブンの方を見つめる。

「セレス!!!!闇に勝つんだ!!!!!」

セブンの叫び声がーー
魔王城に響き渡ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

拍手に迎えられるセブン。

勇者は、帰還したー

自分の故郷に帰ってきたセブンー

ようやく、戦いは終わった。
セブンの隣には、いつものように
優しく微笑むセレス。

魔王クロノスの闇に打ち勝ち、
セレスは、魔王を身体から追い出した。

そして、巫女セレスの技と
勇者セブンの連携攻撃で
ついに魔王クロノスを倒すことが
できたのだった。

「---これが俺の故郷だよ」
セブンが微笑む。

「--そうなんですね…素敵な場所…」
巫女・セレスが微笑む。

「--ルナに…見せてあげたかったな…」
セブンが悲しそうに呟くー

ルナー
デュオ―
ウイングー

本当はみんなに見せてあげたかった

でも、
もうそれは、叶わないー

セレスが、セブンの腕を握る。

「---セブンさんは、よく戦いました…
 ルナさんたちも、恨んでなんかいませんよ」

セレスの言葉に、
セブンは「…そうだといいな」と呟いた。

故郷の村人たちが
セブンを迎えるー

晩餐会が開かれるー

セブンとセレスはどんどん親しくなりー、
元々セブンに好意を抱いていたセレスは
急接近して、ついにセブンと結婚したー

セブンは、幸せな日々を送るー
セレスと共にー

「--平和って…いいもんだな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「平和って…いいもんだな…」

血まみれになって
床に倒れー
うつろな目でセブンは呟いた。

その言葉を聞いて
妖艶な姿をした巫女・セレスが笑う

「--くくく…死ぬ直前に
 幻でも見ているのか??」

セレスの剣は、血に染まっていたー

セブンの言葉は、セレスに届かなかったー

斬られたセブンはー
死の間際ー
夢を見たー

それは、とても幸せな夢ー

「---ぐふふふふふ
 この世は、我ら魔族のものだ!」

セレスが両手を広げて勝利宣言する。

「--我は魔王・クロノス…いや、
 今日からは女王・セレスよ…!
 くくく…あはははははははは!」

女の身体に快感を見出した魔王クロノスは、
この日から、自ら女王セレスと改名し、
人々をさらに恐怖に陥れるのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---平和って、いいもんだな…」

セブンは、
死の間際の夢の中で、そう呟いた。

セレスと結婚してー
子供を授かってー

「----…あれ」

セブンは、村に誰もいないことに気付く。

「--セレス?
 みんな??」

誰もいない村ー

「---セブン」

ふと、懐かしい声が聞こえる。

振り返ると、
そこには
光の扉ー

その先にはー
ルナ、デュオ、ウイングの姿ー

セブンは、
笑みを浮かべる。

「なんだ…そういうことか…」

セブンは全てを理解したー

「---みんな…ごめん」

目から涙をこぼしながら
セブンは、扉の方に向かうー

そしてー

彼の意識は
光に包まれて―
永遠の眠りについたのだった。

醒めることのない、眠りにー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

デッドナメクジは倒せましたが、
魔王を倒すことはできませんでした…汗

これからは
女王セレスの弾圧に
苦しむことになりそうデス…!

お読み下さりありがとうございました~!

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憑依<勇者崩壊>

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