一人暮らしを始めることになった女子大生。
彼女は、家賃の安さから
事故物件を選択するー。
それが、運のつきだったー…。
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「--真由美(まゆみ)、一人暮らし始めるんだ~!」
「うんうん~そうなの~!」
女子大生の中宮 真由美は、
実家から大学に通っていたが、
高校時代からのバイトでお金も貯まって来たし、
実家から大学まで1時間以上かかるために、
大学の近くの物件を探して一人暮らしを始めることにしていたー。
友人の奈津(なつ)と楽しく談笑している真由美。
「--遊びに行ってもいい?」
奈津が言う。
「もちろん!」
真由美は嬉しそうに微笑んだ。
真由美は、心優しく、明るく、誰にでも親切なので
大学内でも人気がある。
バイト先でも真面目に働いており
店長やバイト仲間からの信頼も厚い。
「--どこのアパート?」
奈津が微笑みながら聞く。
真由美は、そのアパートをスマホで表示させると
奈津にそれを見せた。
「ここだよ!」
とー。
笑顔を浮かべていた奈津の
表情が曇って行くー
「ねぇ、ここってー?」
奈津が言うー。
そう、そこはー
数か月前に、入居していた男が自殺した
”事故物件”だったのだー
自分を包丁で切り刻み、
自らの血で、壁に
”この世の全てが憎い”と
書き残して、その男は自殺したのだった。
「---そ、事故物件ってやつね。
でも、すっごく安かったんだよ」
前の入居者が世の中を呪うような言葉を
書き残して自殺するような物件は
敬遠された。
俗に言う事故物件だ。
しかも、そのニュースは当時、大々的に
報じられたために、
どんなに家賃を下げても、なかなか
人が寄りつかなかったのだ。
がー
大学から近く、土地柄、破格の家賃であるこの部屋を
見つけた真由美は、迷わず契約した
「そこ、やめたほうがいいって…」
怖がりな一面を持つ奈津が言う。
真由美はそんな奈津を見ながら微笑んだ。
「事故物件?大丈夫大丈夫。同じ部屋であることに変わりないし、
だったら家賃安い方が助かるもん!」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そしてー
入居当日ー
真由美は、部屋に入ると、
早速、予め移動させておいた荷物の
整理整頓を始めた
初めての一人暮らし。
なんとなく、ワクワクな気分になる。
女子大生らしいおしゃれな部屋に
模様替えされていく部屋。
もちろん、
自殺した男が書き残した血の文字は
消えているし、
部屋は綺麗になっている。
「--みんな事故物件事故物件言うけど、
そんなに気にすることかなぁ…」
真由美は呟く。
真由美が事故物件に入ることに驚いたり、
反対したのは奈津だけではなかった。
真由美の両親も、
真由美の彼氏も、
みんなみんな反対したー
けれどー
真由美はそんなこと気にしなかった。
「呪いだとか、そんなこと言う人もいるけど、
そうやって避ける方がよっぽど失礼じゃないかな~」
真由美はそんな風に呟きながら
ご機嫌に、色々なものを設置していくのだった。
夜ー。
真由美は眠りについたー。
ガタ…
”黒い影”が動いたことに
熟睡している真由美は気づかなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日
「龍太(りゅうた)くん、明日の土曜日、
わたしの家に遊びに来る?」
真由美が微笑みながら言う。
「--ん?あぁ、一人暮らし昨日からだったな~」
彼氏の龍太が笑う。
もちろん、龍太も真由美が事故物件に
引っ越したことは知っている。
龍太は中学時代の同級生で、高校は別だったものの、
偶然大学で再会して意気投合し、
彼氏彼女の関係になったのだった。
「明日か~うん、いいよ!
俺も真由美の部屋を見てみたいし…
何か起きたら悪霊なんて俺が追い払ってやる!」
そんな風に言いながら
龍太は笑うのだった。
その日の夜ー。
真由美は、いつものように、スマホをいじったり、
読書したり、のんびりしながら過ごしていたー
真由美には騒がしい弟がいたが、
それも居ないー。
ちょっとさみしいなぁ、と思いながらも
落ち着ける時間だなぁ、とも思いながら
一人暮らしを満喫していたー。
ガタ
「---!?」
ふと、何か音がした気がして、
真由美が壁の方を見る。
「---気のせいかな」
真由美は微笑んだ。
事故物件だなんてこと
全く気にしていないー。
夜に物音がするなんてことは
特別不思議なことではないし、
真由美は何も気にしていなかった。
しかしー
ガタガタガタガタ
明らかにおかしい音がする。
「--なに?」
さすがの真由美も首をかしげた。
一瞬地震かと思った。
けれどー
揺れていない。
これは、地震ではない。
ネズミー?
次に真由美はそう思った。
けれどー
ネズミの音ではない。
ガタガタガタガタ
音はー
男が自殺した際に
”血で文字を刻んだ壁”から発されていた
「な…なに…何なの…?」
真由美が不思議そうに、音のする壁を見つめる。
するとー
そこに、赤い文字が浮かび上がってきた
”この世のすべてが憎い”
とー。
「---!!」
真由美はゾッとした。
これはー
自殺した男が書き記した言葉。
しかしー
事故物件だとか、怨念だとか
そんなものを信じていない真由美は笑った。
「ーー奈津?それとも龍太くん??」
真由美は得意気に笑う。
「そうやってわたしを驚かそうとして~!
もう~!」
真由美は、ドッキリだと思い、
隠れているのであろう奈津か、それとも龍太か、
他の誰かか、分からないけれども声をかけた。
しかしー
部屋の壁が、赤く染まって行くのを見て
真由美は顔色を変えた。
とても、人間に出来ることじゃない…!
とー
「きゃああああああああ!」
真由美は悲鳴を上げる。
そして、一目散に玄関の方に向かった。
がーー
黒い謎のモノに捕まれて、
身動きが取れなくなってしまう。
「--この世の全てが憎い…」
真由美が、驚いて目を見開くー
そこにはー黒く染まった人影…
この部屋で自殺した男の亡霊がいたのだった。
「ひっ…!?」
真由美は思わず目から涙をこぼす。
黒い影は、真由美の方に近づいてくる。
「---全てを、壊してやる…」
聞き取りにくい、不気味な声。
真由美は叫んだ。
「た、、助けて…!!!!」
と。
だが、黒い影はさらに真由美に近づくと、
不気味に囁いた。
「--この世が憎い…」
とー。
男はー
真面目に頑張ってきた
生まれてから、ずっとずっと。
両親からの期待に応え、
優等生として、成績を上げて
有名大学を卒業したー。
だがー
容姿には恵まれず、キモいだの臭いだの言われ続けたし、
あるときから、両親は不仲になり、
両親は、離婚し醜い争いを繰り広げた。
入社した有名な会社の上司にパワハラを受け、
さらには、理不尽なリストラー
彼の人生は散々だった。
そして、絶望した彼は
”この世が憎い”と書き残してー
自殺した。
しかし、自殺したあとも
彼の憎しみは消えなかった。
”この世が憎い”
「た、、、助けて!!!!!!」
真由美は大声で叫ぶ
なぜ、自分がこんな目に遭わなくちゃいけないのかー
普通に、一人暮らしを始めただけなのにー
黒い影が、煙のようになって
口から、耳から、鼻から
真由美の中に入り込んでいく。
「んぐぐ…あ、、、あああ…!」
真由美はその場に倒れ込み、
激しく痙攣を始める。
「んああああああああっ…!
ああああああああ!」
全身を掻き毟るような仕草をしながら
苦しむ真由美
何かが自分の中に入り込んだ。
その恐怖感を感じながらも
激しく痙攣して、
真由美は自分の身体を思うように
動かすことができなかった。
「--んああああああああっ…
がっ…!」
真由美が、意識を失う。
白目を剥いて、
明らかにおかしな痙攣を繰り返している。
そしてー
「---どうしましたか!?」
アパートの隣の部屋の住人が
扉をノックする。
真由美の激しい悲鳴を聞きつけたのだ。
ガチャ。
真由美が不思議そうな顔をして
外に出てくる。
「---え」
隣の部屋のおじさんは、気まずそうな表情を浮かべる。
真由美はにっこりと笑みを浮かべた。
「こんな夜遅くに…何か用ですか?」
とー。
「あ…あれ?
す、、すみません…今、悲鳴が聞こえたような気がして」
おじさんが頭をかきながら苦笑いする。
「--ふふふ…そんなことあるわけないじゃないですか。」
真由美は可愛らしく笑って見せた。
「あ…は、、はい、そうですよね。失礼しました」
おじさんは照れ笑いを浮かべながら帰って行く。
真由美はクスっと笑いながら
扉を閉じた。
「----この世のすべてが憎い」
ぼそっと呟く真由美の目が赤く光るー。
乱暴な雰囲気で、
ベットの上に座ると、
足を組んで笑い出した。
「くくくくくく…
ふふふふふふふ…」
自分の手を見つめながら笑う真由美。
「まさかこんなカワイイ身体が手に入るなんてな…
ひひひひひひひひ…
あはははははははははははっ!」
真由美の可愛らしい声ー。
しかし、その笑い声は狂気に染まっていた。
真由美は目を再び赤く光らせながら
狂ったように笑いつづけた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ここか~」
彼氏の龍太が、真由美のアパートに遊びに来る。
昨日の夜から
LINEを送っても返事がない。
少し気になりはしたが、
既読はちゃんとついているし、
大丈夫だろう。
「--真由美?」
龍太が部屋をノックすると、
真由美が中から出てきた。
可愛らしいミニスカートと黒タイツ姿の真由美が
「あ、龍太くん」と微笑む。
いつもの真由美だ。
「--LINEの返事がないから心配したよ」
龍太がそう言いながら笑うと、
真由美は「ごめ~ん」と笑いながら答えた。
部屋の中を眺めながら龍太は笑う
「--真由美もついに一人暮らしかぁ…
あ、そうだ、何か手伝うことは?」
引っ越してきたばかりの真由美。
まだ色々と手伝うことがあるだろう。
龍太はそう思いながら部屋を眺めているー
「--!?」
ふと、部屋の奥の壁がへこんでいることに気付く。
「…あれは?元から?」
龍太が聞くと、
真由美はそのへこんだ壁を見て
意味深な笑みを浮かべた。
「---だって、この世が憎いんだもん。
ウザいことだらけじゃない?」
笑う真由美。
「--真由美?」
その言葉に違和感を感じながらも、
龍太は真由美に出されたジュースを手に、
それを飲み始める。
「龍太くんさぁ…」
真由美が龍太に背を向けながら呟く。
「ん?」
振り返った真由美の目が赤く光った。
ーー!?
「幸せなやつを見てると、
それをめっちゃくちゃに壊してやりたくなるよね?」
真由美は笑っている
しかしー
その声は低く、脅すような口調だ。
「ま…真由美!?」
龍太は驚いて立ち上がる。
「---俺はさぁ、ずっとずっとキモいって
言われ続けてきたんだ。
女たちからな。
何をやってもうまく行かない。
最後には、俺は自ら命を絶ったよ。
この世の全てを憎んでな」
真由美が豹変して
男言葉で叫ぶ。
「--ま、、まゆ…み?」
龍太は混乱しながらも、ふと思い出す。
そういえば、この事故物件ー
前の入居者は自殺ー
最後に壁に”この世の全てが憎い”と書き残していたと
言われていたー。
「--俺をキモいって言ってた女ども…
くくく…でもな、今じゃ俺が女だよ!
こんなカワイイ身体を手に入れたんだ!
くふふふふふふ」
真由美が自分の足を黒タイツの上から
なぞりながら涎を垂らすー
「---うひひ…
俺の大嫌いなリア充女の体を利用して
世の中に復讐してやる…
くひひひひひひ…
あひゃひゃひゃひゃ~!」
真由美が狂気の笑みを浮かべた。
「お……おい…
俺をびびらせようとしているな?」
龍太は笑った。
「---いくら俺が事故物件にちょっとびびってるからって
それは…」
そこまで言うと、龍太は自分の身体がしびれてきたことに気付く。
「--大好きな彼氏のジュースに、
毒をいれちゃいました~!
あはははははははっ!」
真由美が笑う。
龍太は目を見開きながら倒れる。
真由美の目が赤く光り、
龍太に近づいてくる。
そしてー
ゾンビのようによたよたと歩きながら
龍太に近づくと、
龍太の目の前で今一度、目を赤く光らせたー
その目に見つめられた龍太は
異変に気付く。
紫色の霧のようなものが
龍太の周りに現れて龍太を包むー
まるで、怨念の塊のようなー
「憎い憎い憎い憎い憎い」
真由美が呪いのように呟く。
そしてー
龍太の身体は溶けるようにして蒸発し、
消えてしまったー
「--ふぅぅぅぅぅぅぅぅ~」
真由美が、邪悪な笑みを浮かべる。
そして、
この世から消えた龍太が持ってきていた鞄を乱暴にゴミ箱に
放り投げると、
ケラケラと笑いだした。
「この女の身体で、この世に復讐してやるーー」
真由美はにやりと笑みを浮かべて、
ご機嫌そうに、部屋の奥へと歩いていくのだったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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事故物件の霊に憑りつかれてしまった真由美は
どうなってしまうのでしょうか…!
続きは明日デス~
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