東京湾から、大怪獣が出現したー
「DOGORA(ドゴラ)」
そう名付けられた大怪獣はー、
人間に憑依する力を持っていたー。
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東京湾ー。
そこでは、いつもと同じような時間が流れていたー。
都会ではー
海を見る機会は少ないー。
だからこそ、ここに惹かれて訪れる人も居た
しかしー
”それ”は現れた。
「--な、なんだあれは!」
一人の男が叫んだ。
「え?なになに?」
たまたま、放課後に東京湾を見つめながら
お話をしていた高校生カップルの女子高生が言う。
「--ん?」
彼氏の方が海の方を見るとー。
そこでは、水が山のように、”膨らんで”いた-
「きゃああああああああ」
「うわあああああああ!」
響き渡る悲鳴ー
そこからー
全長何十メートルもあるであろう、
異形の怪物が現れたー
「---ど…DOGORA!」
最初に声をあげた男が叫ぶー。
彼は、人気の怪獣映画に登場する怪獣の名前を
間違えて覚えており、
つい反射的に間違った名前を叫んだ。
「どごら…?」
男子高校生が言う。
「--な、、な、、なにあれ!逃げようよ!」
綺麗な黒髪の女子高生が言う。
「--あ、、あぁ」
男子高校生は言葉を失っていた。
何かのイベントかー?
あまりにも現実味がないことに直面すると、
人間は、声をあげることもできないと言うー。
まさに、その状態だった。
周囲に悲鳴が響き渡る。
某怪獣映画の怪獣に似ているような、
似ていないようなー。
ただ、背びれの部分から、謎の触手のようなものが、
蠢いているほか、
顔の周囲に謎の球体のようなものが2つ、
回転している。
「にげろぉ!」
周囲の人々が叫ぶ。
そしてー
それの触手が突然伸び始めた。
グサッ!
「--ひっ!?」
「うわああああああああ!」
最初に”DOGORA”と叫んだ男が、
触手の串刺しになり、空中で振り回された挙句、
海の方に投げ飛ばされたー。
「--きゃああああああああ!」
女子高生が叫ぶ。
そしてー
ドゴラの周囲で回転していた謎の球体が、突然、
女子高生の方に向かってきた。
「-深美!」
彼氏が叫ぶ。
「えっ…ひうっ!」
球体はそのまま女子高生、深美の身体に吸い込まれた。
ガクン、と人形のようにうなだれる深美。
「お、、おい!深美!」
彼氏が慌てて深美の方に駆け寄ると、
深美は、目を開いた。
「---人間…邪魔だ」
深美は、彼氏の腕を乱暴につかむと、
そのまま彼氏を投げ飛ばした。
彼氏を投げ飛ばした制服姿の深美は、
そのまま宙へと浮かび上がったー。
「---はははははははははは!」
両手を広げて笑いながら深美は、
ドゴラの右肩の上まで浮かんでいき、
そこに止まった。
「--この人間の身体、借りるぞ」
深美は叫んだ。
「ひぃぃいいいい」
周囲の人々はそんなことお構いなしに逃げ惑っている。
「---グるるるるるる」
大怪獣・ドゴラー。
知性を持つ謎の巨大怪獣。
しかし、ドゴラ本体は言葉を発することができないー
それを補うのが、
ドゴラの周囲に回転している2つの球体。
これは、ドゴラの魂そのものであり、
これを飛ばすことで、ドゴラは人間に憑依し、
その人間を操ることができるー。
深美は、ドゴラに憑依された。
ドゴラの意思を伝えるための身体としてー
「---ククク…」
凶悪な笑みを浮かべた深美は、
ドゴラにとっては、人間でいう
音声出力装置と変わらなかった。
風でなびく髪を気にもせずに、深美は叫んだ。
「--これは、復讐だ!」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
政府では、緊急の会議が開かれていた。
黒船(くろふね)総理大臣のもと、
大臣たちが集まり、
スクリーンの映像を凝視していた。
「これはー」
スクリーンにはドゴラの映像が映し出されている。
「信じられん。まるで映画ではないか」
桐戸(きりと)防衛大臣が叫ぶ。
「--他国からの攻撃…
お前のものは俺のものってか?」
郷田(ごうだ)農林水産大臣が言うと、
「あんな兵器、あるわけないだろう!」と、
風林火山と書かれた扇子で自分をあおぎながら
武田(たけだ)官房長官が叫んだ。
「---目撃者が、ドゴラ、と叫んでいたようです」
眼鏡をかけた頭の良さそうな
新渡戸(にとべ)国土交通大臣が言う。
「何故そいつは名前を知っている?」
苛立った様子の武田官房長官。
「恐らくは、そいつが事件に関与しているのだろう」
桐戸防衛大臣は自信満々でそう言った。
「いえ、ザンネンですが、その男は直後に
そのドゴラとやらに、殺害されています」
新渡戸国土交通大臣が、5000円札で汗をぬぐいながら言う。
「--被疑者死亡か」
髭を蓄えた紳士的な風貌の
夏目(なつめ)外務大臣がそう言うと、
官邸は沈黙に包まれた。
「---と、とにかく、事実確認を急げ
他国からの攻撃、何者かによる陰謀、
異常進化した生命体、宇宙からの侵略、
あらゆる可能性を想定しろ」
総理大臣がそう言うと、
官邸は混乱に包まれたまま、
あわただしく動き始めた。
黒船総理大臣は椅子に深く腰掛けたまま
ため息をついた。
「まさに、黒船来航というわけかー」
と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドゴラはほどなくして、東京に上陸した。
「--人間どもよ」
ドゴラの右肩に乗る深美が低い声で、大声で叫ぶ。
ドゴラに憑依されているからか、
まるで拡声器を使っているかのような不気味な大声だったー。
「これは、復讐だー
我の怒りを思い知れ!」
深美は、ドゴラに操られたまま、
ドゴラの言葉を大声で発するー。
異常な声に、声帯が痛んでいたが、
今の深美にそんなことは、関係なかったー
「…ふ…深美!」
逃げ惑う市民たちの中に深美の彼氏の姿があった。
ドゴラに投げ飛ばされながらも、なんとか無事だった
彼氏は、ドゴラの肩に乗って、
凶悪な笑みを浮かべている深美に向かって叫んだ。
「---何だ?」
ドゴラが足を止める。
同時にドゴラの肩に乗っている深美が
不愉快そうに声を出した
「ゲホッ…ゲホッ…」
ドゴラによって異常な大声を発声させられている
深美の喉はボロボロになっていた。
咳き込む深美。
「--な、、何をやってるんだよ深美!
め、、目を覚ませ!」
彼氏が叫ぶと、
深美は自分の身体をベタベタと触りながら笑った。
「この人間は、我の声を人間たちに伝えるための
道具だ。」
深美は、自分の声で自分のことを道具だと
言ってみせると笑った。
「---虫けらが」
ドゴラは容赦なく、
彼氏を踏みつぶすと、そのまま歩み始めた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
重低音が聞こえる。
ドゴラと、肩に乗る深美が振り向くと、
そこには戦闘ヘリが3台、飛んでいた。
自衛隊のヘリコプターだった。
「--大臣、攻撃の許可を!」
一人が叫ぶ。
官邸では、
スクリーンにその様子が映し出されていた。
防衛大臣の桐戸は、
「--怪物よ…1分で灰にしてやるぞ」
と自信満々に発言した。
「よし、攻撃し…」
「待て!」
防衛大臣の桐戸の指示を、
夏目外務大臣が止めた。
「--あ、、あの怪物の肩に…
人がいるぞ!」
モニターを指さす郷田農林水産大臣。
「--ー!?」
官邸からの攻撃指示が来ず、
自衛隊はドゴラに攻撃できずにいた。
「---くくく…」
深美は笑うと、
両手を広げて大声で叫んだ。
「--どうした?攻撃しないのか?愚かな人間どもよ!」
深美の声に、
自衛隊員や、官邸の人間は唖然とする。
「--我は貴様ら人間の環境汚染により、汚染された海から
目覚めた存在
これは、復讐だー」
そう叫ぶと深美が、不気味に微笑んだー。
次の瞬間、ドゴラから謎の光が放たれて、
ヘリコプターは3台とも爆発したー。
「----!」
官邸のメンバーは悲鳴をあげる。
「--くくくくく…」
ドゴラは、何事も無かったかのように、首都圏に向かって歩き出した。
「-ーわ~マジありえない!何あれ!」
「お、おい!早く逃げるぞ!!」
スマホで、ドゴラを撮影しているカップルが居た。
政府による避難誘導は間に合わず、
住民たちは、各自の判断で避難するしかなく、
まだ、ドゴラの周囲に残っている人間も居た。
「---愚かな」
深美がそう呟くと、
ドゴラの周囲に浮かんでいたもう一つの球体が、
放たれたー
そしてーー
「ひうっっ!?」
笑ながらスマホでドゴラを撮影していた
女子大生が、ドゴラに憑依された。
「---……」
うつろな目のまま、宙に浮かび、
ドゴラの左肩に女子大生が乗るー。
おしゃれな彼女は、そのまま笑みを浮かべると、
スマホを深美の方に向けた。
「---人間どもに、宣戦布告だ」
深美は微笑むと、
女子大生が動画サイトに向けて
動画の生配信を始めるのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ネットに、動画が生配信されたー
”宣戦布告”と題された動画ー
女子高生の深美が、
憎悪に満ちた表情で叫ぶ
「人間どもよー
これは、宣戦布告だ!
環境汚染によって我を、我らを苦しめた罪は重い」
動画は瞬く間に広がり、
ニュースでも取り上げられたー
官邸の面々も動画を見つめているー
「この身体は、我の拡声器だ…!
人間よ…!我はお前たちを、一人残らず滅ぼす…
我は、貴様たちを許さないー」
動画の最期に、深見がにやりと笑みを浮かべると
呟いたー
「---人類滅亡の日だ」
とー。
世間はパニックを起こした。
黒船総理率いる政府は、パニックを抑えることも、
ドゴラをどうにかすることもできず困惑するー。
しかも、ドゴラはこの官邸の方に向かっていた。
「どうすればー」
黒船総理は、
”これが黒船来航時の、幕府の気分か…”と
思いながら唖然としているー。
「総理、避難を」
新渡戸大臣の言葉に、総理は頷き、
首相官邸からの避難の準備を始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドゴラが足を止めるー
「ゲホッ、ゲホッ…ひひ…」
深美の喉は、限界だったー
「--使えない…拡声器だ…」
そう呟くと、深美の身体から、球体が飛び出し、
深美は、意識を失って、倒れ、ドゴラの肩から落下した。
グシャ、と言う音が、ドゴラの足元から聞こえる。
「--ふふ」
左肩に乗る女子大生がスマホを手にしたまま笑うと、
ドゴラは官邸に向かって、歩き始めた…
②へ続く
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コメント
怪獣映画風憑依小説デス。
とんでもない組み合わせですが
完結まで頑張ります!
コメント
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執筆予定でタイトルを見たときから気になっていた作品です。ギャグ4コマで怪獣と入れ替わる女の子のネタを見たことがあったので、そういう系統かと思いきや、意外と正当な?怪獣物でしたね。どう展開していくのか期待です。
…よく見ると閣僚たちがネタ満載でひどいw
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> 執筆予定でタイトルを見たときから気になっていた作品です。ギャグ4コマで怪獣と入れ替わる女の子のネタを見たことがあったので、そういう系統かと思いきや、意外と正当な?怪獣物でしたね。どう展開していくのか期待です。
>
> …よく見ると閣僚たちがネタ満載でひどいw
ありがとうございます☆
シリアスと憑依と怪獣の融合を目指しています(笑
官僚は、普通の名前のおじさんたちが話合っているより、この方が面白いかな…と笑
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何かもう笑うしか無いねコレは!!!
無名さんは結構怪獣好きだったりするのかな?
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> 何かもう笑うしか無いねコレは!!!
> 無名さんは結構怪獣好きだったりするのかな?
怪獣映画も好きですよ~☆
ドゴラはそんな怪獣映画と憑依を混ぜてみました笑