大怪獣ドゴラを前に反撃手段を見いだせない人類。
人類は、ドゴラに思うが儘に操られ、
そして、蹂躙されてしまうのかー。
そんな中、反撃の秘策を見出した政府は…
-------------------------—
「--お前たち人間は、罪を受け入れ、滅び去るのだ!」
清楚な雰囲気の女性が叫ぶ。
「おかあさん!おかあさん!」
ドゴラの近くで、泣き叫ぶ子供が居たー。
ドゴラに憑依された母親の息子だー
一緒に逃げているところ、ドゴラに憑依されてしまった母親は、
笑いながら、足元に居る子供を見たー
「--ククク…人間は愚かだ」
母親の表情が歪むー。
彼女にとって大切なはずの一人息子。
しかし、今ではそれを、
邪悪な目で見つめている母親。
「ーーーおかあさん!おかあさん!」
ひたすら泣き叫ぶ子-。
それを見て、ドゴラは「グフゥゥゥゥ」と低いうなり声を
あげると、母親に喋らせたー
「--わたしは、我の意思を伝えるための拡声器になったの!
あはははは!あははははははははははっ!」
大笑いする母親。
泣き叫ぶ息子が、ドゴラに踏みつぶされても、
母親は笑うのをやめなかったー。
反対側の肩に乗っている女子高生も、
嬉しそうに笑っていたー。
スマホには、友達からの、彼女の身を案ずるLINEが
たくさん届いていたが、
ドゴラに憑依された彼女がそれに返事をすることはなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---早く!早くあの怪物をどうにかして!」
臨時本部では、一人の女子大生が泣き叫んでいた。
父と母と、彼氏と妹を、東京でドゴラに殺されたのだと言う。
「---ねぇ、なんとかしてよ!」
泣き叫ぶ女子大生。
職員たちは、彼女を取り押さえるのに必死だった。
日に日に、国民は混乱しているー。
「---巻き戻せ」
目呂須大臣が、臨時本部で、
ドゴラと自衛隊の戦いの映像を繰り返し見ていたー。
最初の、桐戸大臣が指揮していた際の映像も
何度も何度も見つめる。
「----どうして、ドゴラは触手でガードしている?」
目呂須大臣は疑問を口にした。
ドゴラは、一斉射撃の際に、いつも触手でガードをしている。
ガードせずに攻撃を受けても、無傷だと言うのに、
何故だか、触手でガードをしているのだー。
「--操っている人間を守るためでは?」
一人がそう言うと、
目呂須大臣は首を振った。
「--いや、それはないな」
目呂須大臣は録画映像を指さす。
1回目の総攻撃の際ー、
上空から映像を撮影していたヘリの映像によれば、
攻撃が止んだ後、肩に乗っていた少女たちは、
ボロボロになっており、間もなくどこかへと飛ばされているー。
2回目の総攻撃の際も、
一見、肩に乗っていた地下アイドルや、OLを守ろうとしているように
見えるが、2人とも、被弾しており、直後に地面に落下して死亡しているー。
「---肩に乗っている人間を守る気などない」
目呂須大臣は気づいた。
「ドゴラが守っているのはー
”頭”だ」
映像を何度も何度も繰り返し見るー。
ドゴラは”頭”に1発の攻撃も受けていないー
「--ひょっとすると、頭は脆いのかもしれないな」
目呂須大臣がそう言うと、
周囲の職員が反論した。
「しかし、あれだけの攻撃…
全て防がれてしまうのでは、頭を狙って攻撃することなどー」
そんな話をしていると、
部屋の外から叫び声が聞こえて、
そこに女子大生が入ってきたー。
「--なんだね?」
目呂須大臣が言うと、
女子大生は叫んだ。
「わたしに、わたしに手伝わせてくださいー」
と。
彼女はー
東京湾に居た高校生カップルの女性・深美の姉だった。
姉の優美が、妹の彼氏に会いたいな~と
ワガママを言い、あの場に居たのだったー。
優美は、妹の深美がドゴラの球体に憑依され、
ドゴラの肩に乗るのを見たー。
「---破壊力の凄まじい爆弾、用意できますか?」
優美は言った。
目呂須大臣は、首をかしげながら
「話を聞こう・・」
と呟いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「-----」
東京湾に立つドゴラは、海の方を見つめていた。
雄叫びをあげるドゴラ。
それに合わせて、肩に乗っている
女子高生と、1児の母親だった女性も
雄叫びをあげる。
「--人類は、滅ぼさなくてはならない」
母親が笑いながら呟く。
ドゴラに憑依された女性たちは、
愛液を垂れ流し続けていたー。
身体が異常に興奮しているのだー
ドゴラが、人類を破壊することに対して
感じている快感が、彼女たちにも伝わり、
彼女たちは、常に異常な興奮状態にあったー。
「んあ…」
女子高生が、無意識のうちに喘ぐ。
ドゴラは、”次のターゲット”を定めて
西日本へと移動を始めるのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
政府は、女子大生・優美の協力により、
ある作戦を立案したー。
”オペレーション・D”
目呂須大臣は、
この仮説が外れれば、人類の負けだと、
そう思っていた。
ドゴラの周辺に航空部隊を展開ー。
「----…諸君らの勇敢な心に、感謝する」
目呂須大臣は呟いた。
今回、展開したのは戦闘機5機のみー。
そしてー
この戦闘機の目的は、
両肩に乗った人間を排除することー
つまりー
現在、憑依されている母親と女子高生を
排除することだー。
その後はー
目呂須大臣は目を瞑った。
5機の戦闘機がドゴラに攻撃を開始した。
「---まだ続けるか!愚か者ども!」
女子高生が、鬼のような形相で叫んだ。
ドゴラは触手で頭をガードする。
戦闘機はお構いなしに発砲を続けたー
全弾撃ち尽くすまで攻撃をやめないー
無駄だとは分かっている。
こんなもので、ドゴラに傷をつけられるとは思えない。
「--はははははははは!学習能力はないのか!」
肩に乗っている女子高生が大声で笑う。
そしてー
しかし、人類はお構いなしにドゴラへの攻撃を続けた。
ドゴラの触手が”頭”への攻撃をガードするー
攻撃が止むー
戦闘機部隊は離脱しようとしたー
しかしー
もう、遅いー。
ドゴラから大量の光の玉が放たれてー
戦闘機部隊は全滅したー
その様子を、臨時本部に居る人間たちは
黙って見つめていたー。
「---あ…貧弱な…からだ…くふふ」
血まみれになった女子高生が笑いながら、
ドゴラの肩から落下してグチャっと音を立てるー
反対側の肩に乗っていた、一児の母親も同じだー。
ドゴラの周りには、ふたたび”2つの球体”が現れていたー
ドゴラの魂の一部ー。
これを、人間に憑依させて人間を操りー
自分の意思を代弁させるー。
そんな、ドゴラの前に、一人の女子大生が近づいてきた。
妹を奪われた女子大生・優美。
彼女はー臨時本部でたまたまドゴラの頭が弱点かもしれない、
という話を聞いた。
その話を聞いた彼女は、
協力を申し出た。
”頭への攻撃が出来ないのであれば、
肩からなら攻撃できるのではないですか?”
とー。
優美は見ていたー
自分の妹・深美が操られてドゴラの肩ー
ドゴラの”頭のすぐそば”に浮かんで行ったのをー。
自分も、ドゴラに近づけばー
だが、ドゴラはおそらく、2人を同時に操るのが限界。
いつも、2人のうちのどちらかがダメになったときに、
新しく、誰かに憑依しているー。
だからー
先ほどの戦闘機は、ドゴラが”人間”を補充せざるを
得ない状況にするための攻撃ー
「---ドゴラ…」
優美は呟いた。
身体が震えている。
恐怖にー
そして、
歓喜にー。
妹の復讐を遂げられるのであれば、
彼女は、命だって惜しくないー。
「---グオオおお」
ドゴラが、優美の方を見るー。
そして、
狙い通り”2人の女性”を失ったドゴラは、
新しい意思疎通のための”拡声器”を求めて、
光る球体ー、自身の魂の一部を優美に向けて飛ばした。
優美は少しだけ悲しそうな目をした後にー
政府から預かっていた”試作段階の超小型爆弾”を手にして微笑んだ。
”30”
そう表示された爆弾のスイッチを押す。
「----深美…」
ドゴラに操られて死んだ妹の名前を呟く。
「お姉ちゃんも今、そっちに行くね…」
ドゴラの放った球体が、優美に憑依したー
そしてー
「--くくく…人間ども…!これは復讐だ!」
優美が凶悪な笑みを浮かべると、身体が宙に浮かびあがり、
大笑いしながら、ドゴラの肩の方に向かっていく。
優美がドゴラの肩に乗る。
「--地球は、人類のものではないー」
優美がドゴラの力に影響されて
不気味な大声で叫ぶ。
もう、優美の意識は、そこにはないー
ドゴラの魂に完全に押さえつけられて
身体も心も思うが儘にされているー。
「----我の…怒りを知れ!」
ドゴラに操られた優美はそう叫ぶと、
ドゴラは西日本に向けて歩き出したー。
ふと、ドゴラは、優美が何か持っているのに気付いたー。
「----ん?」
優美が目を落とす。
そこにはー
”1”と表示された爆弾が、抱えられていたー
「----!?」
次の瞬間ー
爆弾が、大爆発を起こしたー
優美の身体は一瞬にして木端微塵に吹き飛びー
そしてーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
スクリーンに、ドゴラの肩に乗った優美が
爆発した様子が映し出されているー。
”ドゴラの弱点は頭かもしれない”
しかし、攻撃は全て触手でガードされる。
至近距離に近づくこともできず、頭を攻撃することは難しいー
だが、偶然臨時本部にやってきていた優美は言った。
”わたしが操られてドゴラの肩に乗れば、攻撃できるかもしれません”とー
彼女の命をかけた決意に
目呂須大臣は感銘を受けて、
彼女の意思を尊重したー。
まず、彼女が憑依される対象になるように、
ドゴラの肩に乗せられている2名の女性を排除、
そして、彼女に新型の爆弾を持たせて、
その状態で彼女はわざと憑依されー、
肩に乗った時点で、爆弾が爆発するように
タイマーをセットするー
そういう作戦だった。
だがーー
本当に頭が弱点なのかー
仮に弱点だとしても、一撃でドゴラを葬り去ることはできるのかー
未知数だったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドゴラの巨体の頭部周辺が
煙に包まれているー
そしてー
「--ウォォォォォォォォォ…」
うなり声が聞こえたー
煙が晴れると、ー
そこにーーー
ドゴラの頭部はなかったー。
優美が抱えていた爆弾に、
ドゴラの頭部は木端微塵に破壊され、
周囲に肉片となって、飛び散っていたー
皮膚は頑丈でも、
頭部は、デリケートだったのだー
だから、ドゴラは触手で頭部を守っていたー。
自分が無傷でいられないことを知っていたからー。
「-------」
ドゴラの巨体が地震のような音を立てて、倒れるー。
「---や…やったぞ!」
スクリーンで様子を見ていた目呂須大臣が叫ぶ。
「おおおおおおおお!」
臨時本部の職員たちも、叫んだ。
人類はーー
ドゴラを葬ったのだった。
多大な犠牲を、払いながらもー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1週間後。
東京都内は、大きな被害を受けていたー
復興には、相当な時間がかかるだろう。
けれどもー。
人類は勝利したー。
未知なる、脅威に。
ドゴラの遺体は、厳重警戒のもと、
その処理の方法が検討されていたー。
目呂須大臣は、その場を訪れていたー
「---怪獣による犠牲者たちと、
勇敢な者たちに、黙とうー」
目呂須大臣と、
背後についていたものたちは、
ドゴラを前に散っていった人たちー、
ドゴラの被害者たちに対して
黙とうを捧げたー。
「--必ず、必ず、君たちの犠牲は無駄にはしない」
目呂須大臣は、それが生き残った者の責務だ、と
呟き、新たに設置された官邸へと戻って行くのだったー。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドゴラは、殺される前ー
東京湾に立ち、
海の方に向かって、
憑依した女性たち2人と一緒に、
謎の雄叫びをあげていたー
人類は、知らないー
この雄叫びの意味をー
”おまえたちも はやく あがってこいー”
海中深くー
人類の目の届かない深海ー
ドゴラの呼び声に呼応してー
そこからー
”第2”
”第3”の
”ドゴラ”が、
陸地を目指していることをー
人類は、
まだ
知らないー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
怪獣映画風TSF小説でした!
毎日書いているので、たまにはこういう変わった作品も…笑
お読みくださりありがとうございました~☆
最後は、怪獣映画にありがちな展開になりました笑
コメント
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流石は目呂須大臣。優美さんの協力があったとは言え、やはり元ネタに恥じぬ勝利を収めましたな。
しかしやはり、これで終わりとはいかず・・・続編があるとすればもう絶望的ですな。
少し前にアベマで見た某映画を思い出しました。まああちらは凄く絶望的ってわけじゃ無いけど
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倒し方に憑依を絡めてくるのは上手いですね…!
命と引き替えにドゴラを討ったと思ったら……
ハッピーエンドで終わらせない辺り、さすがは無名さんだなと笑
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> 流石は目呂須大臣。優美さんの協力があったとは言え、やはり元ネタに恥じぬ勝利を収めましたな。
>
> しかしやはり、これで終わりとはいかず・・・続編があるとすればもう絶望的ですな。
> 少し前にアベマで見た某映画を思い出しました。まああちらは凄く絶望的ってわけじゃ無いけど
ありがとうございます!
弱点が分かっているのでもしかしたら…笑
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> 倒し方に憑依を絡めてくるのは上手いですね…!
> 命と引き替えにドゴラを討ったと思ったら……
> ハッピーエンドで終わらせない辺り、さすがは無名さんだなと笑
ありがとうございます~
最後は、あっさり終わらないのが私の特徴ですネ笑