<憑依>ゆるキャラ①~消えたくない~

とあるテーマパークのゆるキャラ。

時代の流れと共に、人気は低迷ー。
そしていよいよ、最後の日を迎えようとしていた。

ゆるキャラ”ランドくん”の怨念が引き起こす悲劇とは。

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緑風遊園地。

緑が多く、
家族連れでにぎわう人気の遊園地だ。

そんな遊園地には2体のマスコットキャラクター
”ゆるキャラ”が居た。

1体は、ランドくん。
緑風遊園地がオープンしてから30年、
人気キャラクターとして君臨したゆるキャラだ。
しかしながら、最近は人気が低迷しており、
いよいよ”最後の日”が決定してしまった。

もう一体は”りょっしー”。
5年前に新たに生まれたゆるキャラで、
背中に子供を乗せてくれたり、突然意味不明な
行動をしたりで、人気を得たゆるキャラだ。

りょっしーの登場以降、
ランドくんの出番は減り、
緑風遊園地のスタッフはいよいよ、
今月末を持って、
ランドくんの役目を終えることを決断したのだった。

ランドくん引退の日ー。

しかし、特にイベントをする予定もなく、
普通にいつものように園内を歩かせた後に、
ランドくんの着ぐるみは廃止する予定だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--へぇ~日雇いバイトかぁ。
 何するんだ?」

大学生の貴田 房夫(きだ ふさお)が
興味深そうに尋ねる。

「え?遊園地の着ぐるみだよ~
 ランドくんって、知ってる?」

房夫の彼女、紅葉(もみじ)が笑いながら言う。

「ランドくん?知らないなぁ」
房夫が言うと、
紅葉も笑う。

「そうだよね。わたしも知らなかった!」

大学生カップルの房夫と紅葉は、
ちょうど夏休みだった。

紅葉は欲しいモノを買う為に、
日雇いのバイトをするようだ。

「--実はね、りょっしーっていう
 ゆるキャラもいてね~、
 そっちのバイトもあったんだけど、
 ランドくんの方にしたんだ~!」

紅葉が言う。

「へぇ、どうして?」
房夫が言うと、
紅葉がほほ笑む。

「だって、同じ時給なら人気ないキャラのほうが
 楽でしょ?

 人生、賢く生きなきゃ!」

”人生を賢く生きる”
それが、彼女の口癖だった。

「確かになぁ、りょっしーは俺も知ってるし、
 人気だからな…
 ランドくんとかいうキャラなら、暇そうだし…

 さすが紅葉!相変わらずかしこいなぁ~!」

「ふふ、ありがと!」

笑いながら話を終える二人。

翌日はその、着ぐるみのバイトの日ー。
紅葉は、ランドくんの引退日にランドくんの
着ぐるみを着るのだが、
特にイベントも無く、
普通に遊園地をウロウロしているだけで、良いようだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

「--じゃあ、よろしく」
説明係の男が、ランドくんの基本仕草を
紅葉に教えた。

「まぁ、正直、もうランドくんは人気ないからさ、
 あんまり子供も寄ってこないと思うけど、
 テキトーにやっててくれればいいから」

男が言うと、紅葉が「はい」とほほ笑んだ。

紅葉の隣では、りょっしーの着ぐるみを着て
準備している同じぐらいの年齢の女性の
姿が見えた。

”人気の方を選ぶなんて、
 物好きだなぁ”と思いながら
紅葉も、ランドくんの着ぐるみを着るのだった。

ランドくんの着ぐるみを着ながら遊園地を
徘徊する紅葉。

風船を持って配りながら徘徊しているが、
子供たちは風船にだけ興味があるようで、
ランドくんには興味を示さない。

確かに可愛いと言えば可愛いのだが
ありきたりの丸い目の特徴のない
マスコットキャラクターだし、
奇抜なデザインで言動も奇抜な設定の
りょっしーに、負けて、消えてしまうのは
仕方のない事だろう。

「--ふぅ、疲れた」
休憩場所で、頭の部分だけをとって
休む紅葉。

「--はぁぁ、わたしも疲れました」
りょっしーも休憩所にやってきて、
中の女性が姿を現す。

会釈をする紅葉。

一見、お姉さん風に見えたから
同じ女子大生だと思っていたが
聞けば女子高生なのだと言う。

「--ランドくん、今日で最後みたいですね」
りょっしーの中の人が言う。

「--え、あぁ、そうですね。
 でももう、十分じゃないですか。
 りょっしーの人気、凄いですし」
紅葉が言うと、
りょっしーの中の人は呟いた。

「でも…なんか廃棄されちゃうなんて
 ちょっとかわいそうだな~って」

可哀想。

紅葉には無かった感情だ。
ゆるキャラと言えど、所詮は着ぐるみ。
人気が無くなれば淘汰されるのは当然だし、
当たり前の事だ。

「-あ、そろそろわたし、行きますね」
少女が再び着ぐるみを着て、
”りょっしー”として園内に出ていく。

「--可哀想…ね」
紅葉は、ランドくんの顔を見ながら呟く。

「--ぜ~んぜん、そんなこと、思わないけどなぁ」
紅葉が失笑すると、
突然、声が聞こえた

”いやだ”

と。

「---え?」
紅葉が振り返る。

今、誰かの声がしなかっただろうか?
と不思議に思いながら。

しかし、振り返っても、誰もいない。

”いやだ”

今度ははっきりと聞こえた。

「--な、何?誰ですか?」
紅葉が声を上げる。
どうせ誰かのくだらないイタズラだろう、と
思いながら。

「-----!?」
紅葉が視線を、ランドくんの頭の方に戻すと、
その頭が浮かんでいた。

「---ひっ!?」
休憩のために脱いでいたランドくんの頭の部分が
空中に浮かび上がって、自分の方を見ているのだ。

「---あ、、あひっ!」
紅葉は思わず、変な声を出してしまった。

「---いやだ いやだ きえたくない
 いやだ いやだ いやだ」

声は、ランドくんの頭から発されていた。

「--な、、な、、何よ!
 この着ぐるみ、喋るの?」

紅葉は”ずいぶんハイテクな着ぐるみじゃない”と思う。
しゃべるぬいぐるみとかもあるし、
ランドくんが喋っても、別に不思議ではない。

「-ぼくは…きえない」
ランドくんはそう言うと、
無理やり、紅葉の頭にかぶさった。

「--ちょ…!」
紅葉はランドくんの着ぐるみを脱ごうとする。

しかし、何故だか脱げない。

そして、頭にまるで電撃が走ったかのような
強烈な刺激が加えられた。

「ンンンンンアアァアアアアアアア…!」
紅葉が苦しそうな悲鳴をあげる

グリグリと奇妙な音がしている。
紅葉はランドくんの着ぐるみを剥がそうと
するもはがれない。

「ンッ♡ あぁっ♡ ぁああああアッ♡」
喜びに満ちたような奇妙な声が
着ぐるみの中から聞こえてくる

「んひぃ♡ あぁあ♡ いひひ♡ ぁあああっ♡」

ガクガクと震えるランドくんの着ぐるみを着た紅葉。

やがて、紅葉は、悲鳴をあげるのをやめて、
ゆっくりと立ち上がった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

遊園地の園内にランドくんが
姿を現した。

とても」ハイテンションに手を振ったり、
スキップしたりしている。

「---」
りょっしーの中に入っている女子高生は
”午前中とは違ってずいぶん張り切ってるな~”などと思った。

ランドくんは一生懸命子供たちのところに向かっては
風船を渡している

しかし、子供たちは”ランドくん”には見向きもせずに
風船だけをとって、すぐに”りょっしー”の方に
向かっていく。

りょっしーの中にいる女子高生が
”子供たちは正直だなぁ”などと思っていると
ランドくんがスキップしながら近づいてきた。

「---!?」
突然、ランドくんがりょっしーを
殴り始めた。

「---きゃっ!?」
思わず声をあげてしまうりょっしーの中の
女子高生。

周囲の遊園地利用客たちが悲鳴をあげる。

「--ぼくは、きえない!ぼくは、きえない!」
紅葉の声が着ぐるみの中から聞こえてきた。

「ちょ、、な、、何をするんですか!ねぇ!」
りょっしーの着ぐるみを殴り飛ばされた女子高生は、
頭だけ出ている状態で叫ぶ。

「--おまえがぼくの人気を奪った!
 ぼくは、、ぼくはおまえをゆるさない!」

ランドくんは、容赦なく、りょっしーを
叩き続けた。

りょっしーの中身の女子高生は
顔面を殴られ、その場に倒れる。

「---みんな、ぼくランドくん!
 みんな、ぼくと遊んでよ!」

ランドくんの着ぐるみを着たまま、
紅葉は叫ぶ。

周囲の子供たちが逃げ出した。

「-みんなみんなみんな、
 僕をひとりぼっちにするんだ!」

紅葉は大声で叫ぶ。

時として、着ぐるみや人形、ぬいぐるみには意思が
宿ることがある。
紅葉はそんなランドくんの意思に支配されてしまったのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さてさて…!」
遊園地の入口。

何も知らない彼氏の房夫は、
着ぐるみを着ている紅葉をからかおうと、
遊園地にやってきていた。

遊園地の中から悲鳴が聞こえる。

「なんだぁ?」
房夫は悲鳴の聞こえる方に向かって走った。

すると、
そこにはー、
係員や警備員と乱闘している
ランドくんの姿があった。

「--な、なんだありゃあ」
房夫は思う。

待てよ…と。

そういえば、紅葉のやつ、
ランドくんのバイトをするって
言ってなかったっけ?と思った房夫は
不安に思う。

しかし、
紅葉が乱闘なんかするはずがない。

中身は別人だな、と
厄介ごとには関わらないように、と
別の場所に向かって歩き出そうとした。
その時だった。

「--おまえら、用済みになったら僕を捨てるのか!」
ランドくんが大声で叫んだ。

着ぐるみを着てはいるが、
その声は、紅葉の声だった。

「も、紅葉!?」
戸惑う房夫。

そして、房夫はランドくんの方に駆け寄る。

「お、おい紅葉!何やってんだよ!?」
房夫が言うと、
ランドくんが動きを止めた。

着ぐるみの笑った顔が無表情で、房夫を見ている。

「--ど、どういうことだよ?
 な、何があったんだ?」
房夫がそう言うと、
ランドくんは叫んだ。

「僕の邪魔をするな!」と。

ランドくんの強烈なアッパーが直撃して、
房夫の意識は遠のいて行った…。

②へ続く

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コメント

ゆるキャラの憑代にされてしまった紅葉。
着ぐるみを着こんだまま暴走している彼女を
救い出すことはできるのでしょうか?

ゆるキャラの怨念、恐るべし、デス!

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コメント

  1. より:

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    ヤベエ自分はご当地ゆるキャラさえ知らねえ
    という事で早速ハザードマップのついでってわけじゃないけど、調べてきます。
    前の話と違って今回はうまく対応すれば怨念を浄化できそうな気もするけど、肝心な彼氏が気絶したのでやっぱ無理か。
    だが何故か俺が諦めた時奥義「逆運」が結構発動するから、もしかすると