ゆるキャラに支配されてしまった彼女。
ゆるキャラの”ランドくん”は
現世への未練を露わにし、
紅葉の身体を使って、暴走を続ける…。
狂気のゆるキャラ。
その結末は…?
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房夫が目を覚ますと、
遊園地にはパトカーも駆けつけていた。
「お…俺は…?」
房夫が周囲を見渡す。
房夫は、ランドくんの着ぐるみを
着こんだ紅葉によって、
殴り飛ばされて気を失っていたのだった。
「--僕の要求は3つだ!」
ランドくんが、メリーゴーランドの前で叫んだ。
「---よ、要求?」
警察官たちが、ランドくんを取り囲みながら言う。
ランドくんの近くには、二人の子供が居た。
人質だろうか。
「---ひとつは、僕の廃棄を撤回すること!
僕はまだ消えたくない!
もっともっと、子どもたちと遊びたい!」
確かに紅葉の声だ。
着ぐるみを着こんでいるから、
確証はないが、中身は紅葉だろう。
紅葉はランドくんのファンなどではないし、
ランドくんのことすら知らなかった。
房夫は疑問に思う。
どうして紅葉がこんなことをするのかと。
「ーーふたつめ!
僕の代わりにりょっしーを廃棄すること!」
ランドくんが叫ぶ。
その声は涙声になっているようにも思えた。
「そして最後!
遊園地は、僕を散々利用して廃棄しようとした
事実を認めて、謝罪すること」
ランドくんがそう言うと、
警察の反応を待って、警察たちの方を見た。
「--あ、、あの、」
遊園地の園長が警察たちに写真を渡す
「中身の子は、この子です」
紅葉の写真を渡すと、
警察官が言った。
「マスコットキャラ引退の日に、
こんな騒動を…
おそらくこの子は、”ランドくん”のファンだったのだろうな」
警官が言う。
その推測は間違っている。
紅葉はランドくんなど知らない。
ランドくんの思念に憑依され、
憑代として、着ぐるみを動かすためのコアとして
利用されているに過ぎない。
「--どうしたんだ!
ボクの要求を受け入れるのか!?」
紅葉が大声で叫ぶ。
「おおおおおおおい!何やってるんだ!」
警察の包囲網を勝手に突破して、
房夫が紅葉に近づく。
「--なんだ、きみは!」
紅葉が言う。
「なんだ君はじゃないよ!
紅葉!なりきりごっこなんてしてる場合じゃないぞ!
見ろよ!警察沙汰にして!
いったい何がしたいんだ!」
房夫が叫ぶと、ランド君は言った。
「紅葉?あぁ、中身の子のこと?
中身の子はボクの言葉を伝えるための、
僕を動かすための動力源だよ!」
紅葉の声でランドくんが言う。
「ボクは見ての通り着ぐるみだ!
着ぐるみのままじゃ、動けないし、
喋れない!
だから、中の子の身体を借りて
こうしてみんなにボクの意思を伝えているのさ!」
ランドくんが紅葉の身体を使って叫ぶ。
「な…なんだって…」
紅葉は、ランドくんに乗っ取られているとでも
言うのか?
だが、確かに紅葉がこんなことをするはずがない。
と、なればランドくんに…
「き、君!君は何だね?」
包囲している警官の一人が言う。
「お、俺は、中身の子の彼氏です!」
房夫が言う。
普通であれば、房夫はすぐに取り押さえられるだろう。
しかし、今のランドくんの言葉を聞いていた
警察官たちは戸惑っていた。
中身の子が、ランドくんに支配されている?
そんな、非現実的なこと、
あり得るはずがないと思いつつも、
警官たちは戸惑っていた。
「--僕は消えたくない!
消えたくない!」
ランドくんが叫ぶ。
「--うるせぇ!」
房夫がランドくんの頭の部分を殴りつけた。
すると、ランドくんの頭が吹っ飛んだ。
中からはー
紅葉の顔が出てきた。
紅葉は、白目を剥いて、
痙攣したまま
まるでイッてしまったかのような笑みを浮かべている。
「ぼぼ、僕の、、僕の頭ををををを!」
紅葉が痙攣しながら叫ぶ。
明らかにおかしい。
「--お、、おい!
クソゆるキャラ!
俺の彼女を返しやがれ!」
房夫が叫ぶ。
しかし、紅葉は、着ぐるみの頭の部分を
拾いに行こうとする。
房夫は「ふざけるな!」と言って
紅葉を抑えた。
「はぁ…はぁ…」
紅葉の荒い息遣いが聞こえる。
ランドくんに身体を酷使されて
肉体が悲鳴をあげている。
「お、おい!紅葉!目を覚ませ!おい!」
房夫が呼びかけるも、
紅葉は痙攣しながら
「ぼ、、、ぼく、、ぼくは、、ぼくはぼくはぼくは
消えたくない」と呟いた。
「くそっ!」
房夫は険しい表情で叫ぶ。
紅葉は完全に支配されている。
しかも、着ぐるみに。
今、紅葉の身体を動かしているのjは、
ゆるキャラのランドくんであることは
間違いないだろう。
しかし、どうすれば良いのか。
「---そうだ!着ぐるみを剥がせば…!」
頭部だけではなく、下の部分の着ぐるみも
剥がせば、ランドくんの支配から、
紅葉が解放されるかもしれない。
紅葉が乱暴に房夫を突き飛ばす。
「どけ!僕は、僕は消えない!
僕はランドくんだ!」
紅葉が大声で叫ぶ。
「この遊園地のマスコットキャラは僕だ!
りょっしーなんかに渡さない!」
紅葉は、はぁはぁ言いながらそう叫ぶと、
痙攣したまま、自分の頭=ランドくんの頭の部分を拾いに行こうとする。
「--紅葉!許してくれ!」
房夫はそう叫ぶと、紅葉を思いきり蹴り飛ばした。
着ぐるみの下の部分を着たまま
吹き飛ばされる紅葉。
「とにかく、どうにかしないと」
多少手荒になっても仕方がない。
このままじゃ、紅葉がランドくんの
道具になってしまう。
「--おのれ~~~!」
紅葉が顔に擦り傷を作りながら、
房夫の方に襲い掛かってくる。
警察官たちは、二人を包囲しているだけで、
何もしてくれない。
「---紅葉!目を覚ませ!」
房夫が叫ぶ。
その時だった。
「--ランドくん!」
「--ランドくん!」
紅葉が動きを止める。
ふと、紅葉が声のした方向を見ると、
子供や学生たちが
ランドくんのことを呼びかけていた
「ランドくんが暴力をするところなんて見たくない!」
「ランドくんはみんなを笑顔にするんじゃなかったの!」
ランドくんのことが好きな子たちだろうかー?
その言葉に、紅葉が動きを止めて、
白目のまま目から涙を流す。
房夫もその子供たちを見る。
ふと、その近くにいた年配の警官が、
房夫に目配せして、
何かのジェスチャーをした。
房夫はその意をくみ取った。
”今のうちに着ぐるみをはがせ”と
言いたいのだと。
「うああああああああ!」
房夫が紅葉を思い切り突き飛ばし、
倒れた紅葉から、無理やりランドくんの
胴体部分の着ぐるみを脱がせようとした。
「--やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!!!!」
紅葉が大声で叫ぶ。
しかしー
房夫はなんとか着ぐるみを剥がした。
「う…」
紅葉がその場に気絶する。
「---き、救急車を!」
房夫が叫ぶと、
警察はただちに救急車を手配した。
紅葉の身体は痙攣したままだ。
警察がランドくんに呼びかけた子供たちに礼を言う。
状況を見守っていた警察が
ランドくんに紅葉が憑依されていることを理解し、
普通の子供たちに”ランドくんに呼びかけてくれ”と依頼
していたのだった。
隙を作るために
「ユルサナイ…ユルサナイ…」
!?
房夫がふと、見ると、
ランドくんの頭部が赤い光を放ちながら
浮かび上がっていた。
「な、何だこれは・・・!」
警察官たちが声を上げる。
「---ボクハ、キエタクナイ!ボクハ!」
狼狽える房夫と警察官たち。
しかしー
「撃て!」
年配の警察が指示をすると、
警察官がランドくんの頭部に発砲し、
ランドくんの頭部は、穴だらけになって
地面に落ちた。
「・・・・・・・・・」
房夫は思う。
”お前の気持ちもわかるけどよ…”
少しだけ、ランドくんに同情した。
彼は、ただマスコットキャラ…ゆるキャラとして
生きたかっただけなのだろう。
誰だって死ぬのは怖い。
”廃棄”ということはゆるキャラにとって
死を意味するのかもしれない…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2週間後。
紅葉は無事に退院し、
平穏な日々が戻った。
今日は、房夫が紅葉の家に遊びに来ている。
紅葉がスマホで何やら微笑みながら文章を
入力している。
「何、入力してるんだ?」
房夫が笑いながら言うと、
紅葉がほほ笑んだ。
「わたし、ランドくんのこと、ブログにすることにしたの。
ほら、だって、何か可哀想じゃない?」
紅葉は退院してから、
ランドくんのブログを書き始めている。
ランドくんの悲痛な叫びを、紅葉も聞いていたらしい。
部屋には、ランドくんのぬいぐるみがいくつか置かれている。
「---みんなに忘れられて、
消えちゃうなんて、可哀想だし、
せめて、わたしがランドくんのこと、伝えてあげようかなって」
紅葉が笑うと、
房夫も微笑んだ。
「優しいな、紅葉は!」
房夫はそう言いながら、
”これでアイツ(ランドくん)も少しは浮かばれるんじゃないかな”と思う。
「--あ、ちょっとトイレ借りていいか?」
房夫が言うと、紅葉がうん!とほほ笑んだ。
一時はどうなるかと思ったけれど―。
こうして、また、平穏な日常を
房夫は取り戻すことができたのだった。
・・・
・・・・・
・・・・・・
「クスッ」
紅葉が笑う。
「---もっと、もっと、僕のこと、広めなきゃーーー」
紅葉はランドくんのぬいぐるみを抱きかかえながら
不気味にほほ笑んだ
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ゆるキャラの恐怖、いかがでしたか?
色々登場して消えていくゆるキャラたち。
こんなこともあるかもしれませんネ!
お読み下さり、ありがとうございました!
コメント
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これは焦らず説得を続けた方が良かった。
そうすれば成仏するか上手く収まっただろう
まあ房夫がトイレ逝った時点で何気にバッドは予想してました。
あと余計なお世話だろうけど、もしかして作者疲れてる?
今回、以下の文
紅葉は完全に支配してされている。
しかも、着ぐるみに。
今、紅葉の身体を動かしているのjは、
何か誤字が目立ったので
多少冗談だけど、憑かれないよう無理せずほどほどに・・・まあ自分も人の事は言えないけど汗
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ありがとうございます!
ちょっと憑かれてきてるかも…
と、いうのは嘘です(笑
速筆だとどうしても誤入力が
増えてしまいます…汗