インフルエンザウイルスが変異した。
P型ー。
新たに出現したP型は、人の意識を乗っ取り、
宿主を操り、インフルエンザを流行させていく
驚異のウイルスだった…!
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夏野 希未(なつの のぞみ)は、
不愉快な思いをしながら、授業を受けていた。
別に、授業が不愉快なわけではない。
授業自体は、お気に入りの先生である、
加納先生の授業だし、
強化も、得意な社会科だから、
不愉快になる理由などない。
不愉快なのはーー
「ゴホッ! ゴホッ!」
背後で咳をしているクラスメイトー
三田 衣織(みた いおり)のせいだ。
「--ちょっと…そんなに咳をかけないでよ」
希未が言う。
希未は、自分が風邪をひいたときには
必ずマスクをする。
自分がこれ以上、体調を崩さないように、と言う意味も
勿論あるのだが、
それ以上に、周囲にウイルスをばらまいたら申し訳ない、という
良識からだ、
だがー
背後に座っている衣織はそうではないのか、
咳を平気で人に吹きかけている。
しかも、今は1月。
インフルエンザが流行している季節で、
既に、数名のクラスメイトが
インフルエンザに倒れている状況なのだ。
そんな時にゴホゴホと咳をするなんてどうかしている。
希未はそんな風に思った。
「ごめんねぇ~くふふ・・・」
衣織は何故だか苦しそうにしながらも、
とても嬉しそうにしている。
「な…何笑ってるの…?」
希未は、不愉快な気持ちと、
不気味な気持ちに包まれ、そう呟いた。
「べっつに~~
ゴホッ!ゴホッ!」
衣織が、希未の顔面に唾を飛ばすほどの
大きな咳を2回ほどした。
「--ちょっと!」
希未がそう言うと、
衣織は「うへへ ごめんね~」と
反省する様子もなくつぶやいた。
希未は呆れた様子で前を向いた。
「--もうすぐ学年末テストなのに!
風邪がうつったらどうするのよ!」
と、希未は小声でつぶやいた。
・・・・・・・・
夜―
「なんか、喉が痛い…」
希未は嫌な予感を感じながら
熱を測ることにした。
クラスメイトの4人が、
既にインフルエンザに倒れている。
そして、今日、後ろの席でごほごほしていた
衣織だって、インフルエンザかもしれない。
しかも、既に休んでいる4人の
インフルエンザ患者は、LINEの返事もない。
それほどまでに、
調子が悪いのだろう。
ピピっ ぴぴっ!
体温計が、計測終了の合図を鳴らす。
熱はー
38度2分だった。
「あぁ~~もうヤダ!」
希未は叫んだ。
これはほぼ間違えなくインフルエンザだろう。
まだ熱が出始めだから、おそらくもうちょっと熱が上がるのだろう。
「---最悪っ!」
希未は、クラスでも成績上位の生徒だった。
容姿も良く、明るい性格であることから、
男女問わず、友達も多い。
「--はぁぁ…
衣織~~次会ったとき、覚えてなさいよ~」
恨み言を口にする希未。
おそらく、伊織もインフルエンザだろう。
希未は、ため息をつきながらも、
今日は早めに寝ることにした。
インフルエンザにせよ、
ただの風邪にせよ、早めに安静にすることは
とても大切だからだ。
「もう寝よ…」
希未はそう呟いて、眠りについた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夢を見たー
暗闇の中を歩いている希未。
普段、夢なんて見ないのにー。
なんだか、とっても、暗くて、不安になる夢ー
「----みーつけた」
背後から声が聞こえた。
振り返ると、そこには、見たこともない、
少女が立っていた。
「--この姿の方が、話しやすいでしょ?」
「あ、あなたは誰?」
希未が声をかけると、少女は笑った。
「--わたしはね・・・
あなたたち人間が言う
”インフルエンザ”」
その言葉に、希未が不思議そうな表情で
その少女を見る。
「--人間ってさ、
わたしたちに感染するとマスクしたりとか、
薬飲んだりとか、
移さないようにするでしょ?
それが困るんだよね。
だから、わたしたち、進化したの」
少女が不気味に笑う。
「し・・・進化・・・?」
希未が言うと、
少女が、突然、煙のようなものに包まれて姿を変えたー。
悪魔のような姿にーーー
「人間の体に憑依して、
自分たちから感染を広めに行けばいいんだ・・・!ふはは!」
インフルエンザを名乗るものは笑った。
「お前のクラスメイトの女、
お前にわざと咳をかけてただろ?
あれはな~、
わたしたちが憑依して、あの女を操ってるからだよ!」
悪魔は言った。
「そ、、そんなこと・・・!」
希未は信じられずに呟く。
「--お前のクラスメイトの4人が一向に
インフルエンザから回復もせず、
LINEとやらに応答しないのは
何でかなぁ~?」
悪魔が言う。
「--ま、、まさか!」
希未が言うと、
それは笑った。
「ピンポーン!わたし達が乗っ取ってるから、
もう学校なんかに行くことはないんだよ!
あはははは!
そしてーー
お前もこれから、ワレワレのために
働くんだ!」
悪魔がそういうと、
突然、全身が燃えそうなほどに
熱くなった
「うぁ・・・あ、、あつい・・・あついよぉ!」
希未が苦しそうにうめく。
しかし、その熱は収まらない。
「あぁ・・・あ・・・あ!」
あまりの熱さに、脳がダメージを受けて
何も考えられなくなる。
そしてー
「くくく・・・お前の体、貰うよ」
インフルエンザは、彼女の中枢に、
憑依したーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ」
うなされていた希未は冷や汗だらけになっていた。
しかし、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「--わたしは、インフルエンザ」
そう呟くと、嬉しそうに微笑んだ。
マスクを引きちぎるようにして、
とり、そのままゴミ箱に放り投げると、
希未は、充血した目のまま
体温を測定した。
40.5度。
「くふふ・・・」
希未はそのまま、自分の部屋から出て、
家族の居るリビングのほうに向かった・・・。
汗を額から流しながらも、
希未は嬉しそうに微笑んでいる。
「ふふ・・・ウイルス…広めなきゃ…」
インフルエンザの高熱と、
ウイルスが脳に入り込んだ影響で、
希未は、新型インフルエンザの意のままに
操られていた。
「--あれ?お姉ちゃん?寝てなくて平気?」
妹の純玲(すみれ)が心配そうに尋ねる。
時間は22時を回っている。
純玲はテレビをリビングで見ながら、
一人楽しんでいる最中だった。
「---ふふ・・・」
希未は、不気味な笑みを浮かべながら
純玲に近づく。
「お姉ちゃん?解熱剤飲んだ?
ちゃんと休んだ方がいいよ?」
純玲が言うと、
希未は言った。
「そんなもの、必要ない」
希未の言葉に純玲が首をかしげる。
そしてー
「--それよりも~♡」
希未が、突然、純玲にキスをした。
驚く純玲。
希未はクチュクチュと音を立てながら
自分の唾液を純玲の中に送り込んでいく。
「ちょ、ちょっと!何するのよ!」
純玲が希未を押しtばして
怒りの声をあげる。
「--ふふ、急にキスしたくなっちゃったの~」
希未がふざけた様子で言う。
「急にキスって、ふざけないでよ!
わたしにインフルエンザを移すつもり!?」
怒りをあらわにして叫ぶ純玲。
希未は、額から汗を垂らしながら、
はぁ、はぁ、と言っている。
身体が、高熱に耐えきれていない。
「ね、ねぇ、お姉ちゃん、大丈夫?」
心配そうにする純玲。
「やっぱり、解熱剤飲んだ方がいいよ!」
熱が出てきたのが夜だから、
希未は病院に行くことができていない。
今日は、家にある買い置きの薬で
済ませよう、とさっき話をしていたばかりだった。
「いらない!」
希未が叫んだ。
「--ど、どうして?お姉ちゃん、
おかしいよ?大丈夫!?」
純玲が言う。
しかし、希未は純玲から解熱剤をとりあげて
怒りに満ちた表情で、それを踏みつぶした。
「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん!」
叫ぶ純玲を無視して、希未は
自分の部屋へと戻った。
部屋に戻った純玲は呟く
「そうだぁ…明日、学校…
た~のしみ…♡」
そう呟くと、希未はうつろな目でそのまま
その場に座り込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
「ちょっと!希未!今日は休みなさい!」
母親が言う。
しかし、希未は顔を真っ赤にしながら微笑んだ。
「だいじょうぶよ~
インフルエンザなんかじゃないし、
ただの、風邪、風邪だかラ」
発音がおかしくなっている。
熱のせいで、身体が悲鳴をあげているのだ。
「--ちょ、ちょっと!すごい熱!
休みなさいよ!」
母親が言う。
「そうだよ!お姉ちゃん! ゴホッ…」
純玲が姉を心配して言う。
しかし…
「私は学校に行くの…
仲間を増やすためにネ…
くふ、くふ、くふふふふふふう♡」
うつろな目で笑う希未。
「ダメよ!休みなさい!」
母親が希未に近づくと、
希未は「どけ!」と叫んで、そのまま振り切るように
して学校に行ってしまった。
「お姉ちゃん…
どうしちゃったの?」
純玲が困り果てた様子で呟いた。
学校に向かいながらも、希未は
はぁ、はぁ、と苦しそうな息をしていた。
しかし、顔は笑顔だった。
「おはよぅ…」
背後から真っ赤な顔の衣織が現れた。
昨日、咳をしていたクラスメイトだ。
「---あぁ、おはよう…」
希未が振り返ると、
衣織はニタリと笑みを浮かべた。
「あなたも、仲間になったのね…」
微笑む衣織
「-うん…一緒に、広めましょ…」
希未が、不気味にほほ笑む。
そして、二人は
汗を流しながら学校へと登校した。
「--ちょ、ちょっと、大丈夫?」
クラスメイトたちが、
希未と衣織を見て、心配そうに叫んだ。
二人とも、今にも倒れそうなぐらいに
額に汗をかき、
目を充血させている。
「--だぁいじょうぶよ…ふふふ」
希未が笑う。
「うん…大丈夫・・・だいじょうぶ…!」
衣織も笑う。
しかし、次の瞬間、衣織はフラフラとして、
その場に倒れてしまった。
「ちょ、ちょっと!」
驚くクラスメイトたち。
衣織は倒れながらも、
笑っていた。
「あぁ…あ・・・壊れちゃった…
でも、十分広めることができたし…
いっか…♪
くふ、、、くふふふふふふふ…」
衣織の脳は、続く高熱で完全に破壊されてしまった。
衣織はすぐに病院に運ばれたが、助からなかった。
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午後。
希未は、教室で咳をし続けて、
インフルエンザウイルスをばらまいた。
そしてー
「--はぁ…はぁ…」
彼女は満足そうに微笑んでいた。
そしてー希未はそのまま
遠ざかる意識の中、
呟いた。
「--もっと、もっと、ひろめなきゃ…ぐふふ…」
希未は、校門前で倒れて、
そのまま意識を取り戻すことはなかった。
希未は、死んだー。
しかし、彼女がまいたウイルスは、
また新たな悪夢を生み出そうとしていたー
②へ続く
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コメント
憑依?なのかどうか微妙ですが、
ウイルスに意識を乗っ取られて、
感染を拡大させる、というコンセプトの作品です!
次回はさらに恐ろしいことに・・・!?
コメント
SECRET: 1
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
全人類死滅なら問題無いが、そうで無いなら逆に死なせちゃうのはまずいのではと思いました。
でも見た所男には感染し無さそうで女子だけみたいだから大丈夫か