善意から、クラス一の美少女に憑依した譲治。
ただ、可愛い子になって、
モテない男子たちを喜ばせたい。
そう思っただけだった。
けれど、自分勝手な善意が、取り返しのつかない事態を招く。
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バレンタインデー当日。
たくさんのチョコを持って、学校へとやってきた亜津美。
亜津美は思う。
「昨日のは、何だったのだろう…」と。
昨日は、亜津美が自分の事を好きだと知って、
不覚にも譲治の理性が壊れてしまった。
亜津美のからだを好き放題もてあそんでしまった。
絶対に、許されることではない。
けれどー。
何故だろう。
昨日、亜津美のからだで激しい行為をしている最中、
何故だか自分が亜津美のように思えた。
鏡の前で「僕は神木譲治…」と言った時よりも、
「わたしは堀本亜津美」と言った時の方が
しっくりきたのだ。
喘ぐ声も自然と心の底から吐き出されるような、
そんな不思議な感覚だった。
結局、絶頂を迎えて、正気を取り戻したとき、
譲治は自分の罪の重大さに気付いた。
亜津美のからだを、本人の許可なく、
弄んでしまったー。
大変なことをした。
「--おはよ、亜津美!」
昨日、一緒にチョコを作った女子生徒
史子がやってきた。
「今日、神木くん来てるといいね…」
亜津美が本命チョコを渡そうとしている
神木 譲治は昨日、休みだった。
熱を出したのだと言う。
「--そうだね」
亜津美はそう呟く。
譲治くん…来てるといいな…
そう思いながら
教室に向かう。
「--そ、そんな真剣な顔しないでさ、
来てなかったら家まで持っていけばいいよ!」
史子が言う。
「そ、そうだね…」
亜津美は心臓のドキドキが止まらなかった。
大好きな神木くんに告白する。
そう思っただけでー。
「---放課後、お話しできるかな?」
そう言うつもりだった。
教室に入って、クラスを見渡す亜津美。
けれどー。
そこに譲治の姿はなかった。
「あらら…神木くん、また休みかな?
ま…インフルエンザとか流行ってるしね…」
史子がそう言い、”元気だしなよ”と
付け加えて座席に歩いていく。
「---神木君」
ボソッとつぶやく亜津美。
ショックだった。
バレンタインデーの本命チョコを作ってきたのに…
座席について、悲しそうに譲治の机を見つめる亜津美。
・・・・・・・・!?
「-----え???」
亜津美が突然、我に帰る。
「---い、、、いまのは…」
亜津美は恐怖した。
”神木 譲治が来ていない”
当たり前だ。
譲治は自分だ。
今、自分は亜津美に憑依しているんだ。
なのにーー
何故ーーーー???
校舎に入るまでは分かっていた。
自分が譲治だと。
けれど、校舎に入って史子と話をしたころから、
まるで自分が本当に亜津美かのように、
神木君に会いたい、とそう思っていた。
会えるわけないのにー
「---ど、どうしちゃったのかな…」
亜津美は頭を押さえた。
憑依薬の副作用なのだろうか。
ともかく、このまま亜津美のからだに居るのは
危険な気がする。
亜津美には悪いけれど、
早めに早退して、家で、寝て、そのまま亜津美の体から
抜け出そう、
譲治はそう思った。
「あ、、」
亜津美は”本来の目的”を思い出した。
男子にチョコ配るんだった!
「---あの、、みんな…今日バレンタインだから…
みんなにチョコ作ったの!良かったら食べて!」
亜津美を演じながら笑みを浮かべて、
いつも譲治がつるんでいる友達たちに
チョコを手渡す。
「わー!堀本さんの手作りかよ!俺、一生大事にするぜ!」
「バカ!チョコを腐らせる気かよ!」
「---僕、チョコは食べない主義だけど、ま、貰っとくか」
モテない男子たちがそれぞれの言葉を
呟きながらチョコを受け取る。
「----喜んでもらえてよかった♪」
嬉しそうに言うと、亜津美は座席へと戻って行った。
「---ふふ、よかった」
呟く亜津美。
いつもチョコが貰えないと嘆いている男子たちが、
とても嬉しそうにしている。
亜津美は、この光景が見たかった。
「---これで…神木くんもいたらよかったのにな…」
亜津美はそう呟いた…。
昼休み。
亜津美はトイレで異変に気付く。
「---ど、、どうしよう…」
下着が濡れてしまっている。
異様に心臓がドキドキしている。
鏡に自分の顔が映るー。
「あぁ…♡ 可愛い…♡」
亜津美はうっとりとした表情で言う。
「---わたしは…亜津美…
わたしは…あつみ♡ うふふ♡」
自分のからだが愛おしくてたまらない。
何なら今ここで喘ぎ狂ってしまいたいところだった。
ふと可愛らしい腕時計を見る亜津美。
「---ちょっとだけならーー」
自分の胸を触ったところで亜津美が手を止めるー。
「------……ち、、、違う!」
亜津美は苦悶の表情を浮かべて首を振る。
「僕は…僕は譲治だ!神木譲治だ!
おかしい……おかしいよ!やばいよ!」
譲治は我を取り戻した。
亜津美の意識が戻っているわけではない。
なのに、なぜだろう。
自分自身が亜津美のような気がしてきてしまう。
チョコを渡した時の男子たちの嬉しそうな顔。
譲治はもう満足だった。
あとはーー
亜津美から抜け出して、
亜津美に自分から告白しよう。
そうすれば、
僕は亜津美とー。
ううん、わたしは亜津美とー。
ーーー?
わたし…
・・・わたしは、、、だれ…
「---…い、、、、だ、、だめだ!急がなきゃ!」
亜津美は危機感を感じて、お手洗いから飛び出した。
自分が譲治なのかー
それとも亜津美なのかー
分からなくなってきていた。
亜津美は先生たちに何も告げることもなく、
そのまま外へと飛び出した。
このままじゃ…
僕はおかしくなってしまう!
譲治はそう思って、亜津美の家へと急ぐ。
「---た、、ただいま!」
家に飛び込んだ亜津美。
母親が何か言っていたが、そんな場合じゃない。
「----神木くん…いなかった」
亜津美は部屋について、涙を流し始めた。
「--せっかく、本命チョコ作ったのに…」
悲しい…。
本命チョコを学校で渡したかった。
亜津美は、譲治の住所を知らない。
だから、もう、チョコは今日は渡せない。
「---神木君…」
落ち込んだ様子で、自分の机に座り、うなだれる亜津美。
「------わたし……」
亜津美がぼーっとした様子で前を見る。
「----!!!」
再び我に返った亜津美は、慌ててベットに飛び込む。
「もう寝なきゃ…僕は、、僕は神木譲治だよ!!!
----もういい、憑依なんか、お終いだ!」
そのまま必死に目をつぶり、
10分ほどで、亜津美は眠りについた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
譲治が目を覚ますと、
自分の部屋だった。
「---はぁ…ここは…」
譲治が口を開いて、
周囲を見渡す。
「---ここは…」
譲治が怯えた表情で言った。
「ここは…どこ…?」
ーーー既に、譲治の思考は、
亜津美のからだに影響されて、亜津美そのものになってしまっていた。
「いやっ…こ、、、これは…
わ、、わたしは…」
譲治が女言葉でしゃべる。
決して、亜津美の精神が譲治の体に飛ばされたわけではない。
譲治の精神が、亜津美のからだに浸食され、
亜津美色に染まってしまったのだ。
「--ぼ…ぼくは…譲治…??
ちがう…わたしは亜津美!
わたしは亜津美よ!」
譲治の人格はーーー
この時、完全に消え去ってしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日、
譲治が登校すると、
教室には、亜津美の姿があった。
「--わたしのからだを返して!」
そう叫びたかった。
けれどー。
どこかで、
”自分は亜津美じゃない”という潜在意識が残っていた。
だからーー
言わなかった。
譲治のフリをした。
自分は、譲治なのか。亜津美なのか。
分からない。
自分では、自分を亜津美だと思う。
けれどー、
自分は譲治”だったのかも”しれない。
「---なぁ譲治!昨日さ、亜津美ちゃんが
みんなにチョコをさ~」
友達の一人が声をかけてくる。
譲治としての記憶も、
亜津美としての記憶もある。
これは何なのだろう。
そんな風に思いながら、譲治は
”わたしは亜津美…”と思いながらも
”譲治として振る舞うこと”に決めた。
「・・・・・・・・・だめ・・・」
亜津美がつぶやく。
朝から亜津美はからだを震わせていた。
心配した友人の史子が尋ねる。
「亜津美?どこか、調子でも悪いの?」
すると、亜津美が顔を真っ赤に赤らめて
史子の方を見た。
片手では自分の胸を触っている。
「んふ…♡」
亜津美が小声で甘い声を出す。
「--ちょ、ちょっと亜津美!?」
史子が驚いた直後、亜津美は、史子の唇に自分の唇を
押し付けて、そのまま押し倒した。
「--ちょ、、やめ!!」
史子が叫ぶ。
けれど、亜津美は飢えたメスのような表情で、
髪を振り乱しながら、あおむけに倒れた史子の方を見つめた
「ごめん史子…
わ、、わたし、もう我慢できないの!!
どうしちゃったんだろう…
昨日の夜から…ずっと、、ずっと、、
えっちな気持ちが止まらないの!」
亜津美が言った。
亜津美はーー、
譲治と混ざったりはしていなかった。
けれどー、
憑依されて強制的に眠らされている状態…
”脳が無防備な状態”で、
譲治が亜津美のからだで絶頂を迎えてしまった。
そのときの激しい快感が、
脳を直撃した。
亜津美の脳は、それしか考えられなくなってしまったー。
「---史子!!!ごめん♡
でも、もう我慢できないょ…♡」
そう言うと、周囲に悲鳴が響き渡る中、
亜津美が自分の服を脱いで、史子を襲い始めた。
「あはははははははっ♡
あぁあああ♡ あぁああっ♡」
亜津美の甘い声が教室に響き渡った。
「---わ、、、…」
譲治はそこまで言いかけて首を振った。
”わたしの体を返して”
そう言いそうになった。
けれどーー。
もう、何が何だか分からないー。
譲治はその場で頭を抱えて、蹲ってしまった。
ほどなくして、先生が駆け付け、
亜津美は取り押さえられた。
それでも亜津美の興奮は収まらず、愛液をボタボタ垂らしながら
淫らな格好で生徒指導室へと連れて行かれてしまった…。
その後、亜津美を見たものはいないー。
そして、ほどなくして、譲治は
”自分が亜津美”だと思い込んでしまい、
女装をし始め、家族と喧嘩別れのようになり、
家を飛び出し、行方不明となってしまった…。
「----バレンタインの悪夢…」
翌年のバレンタイン、
史子はそう呟いた。
「えーー?」
史子の彼氏が不思議そうに言う。
「ううん…
ホラ、去年退学になった亜津美と神木くん…
あの二人、お互いがお互いのこと好きだった
みたいなんだけどさ…。
バレンタインの翌日からおかしくなっちゃったでしょ?二人とも」
史子が言う。
「--あぁ、そうだったな」
彼氏の言葉を聞いて、
史子は切なそうな表情で、空を見つめた。
「あの二人、今、どうしてるのかな…」
史子の寂しい想いを現すかのように、
寂しげな雪が降り始めていた・・・
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依薬も使うものを間違えると大変ですね!?
皆様も気を付けましょうー!
コメント
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最高です。いやほんと最高です(語彙力低下)
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> 最高です。いやほんと最高です(語彙力低下)
ありがとうございます^^