<憑依>バレンタインの悪夢②~悲劇~(完)

善意から、クラス一の美少女に憑依した譲治。

ただ、可愛い子になって、
モテない男子たちを喜ばせたい。
そう思っただけだった。

けれど、自分勝手な善意が、取り返しのつかない事態を招く。

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バレンタインデー当日。

たくさんのチョコを持って、学校へとやってきた亜津美。

亜津美は思う。
「昨日のは、何だったのだろう…」と。

昨日は、亜津美が自分の事を好きだと知って、
不覚にも譲治の理性が壊れてしまった。

亜津美のからだを好き放題もてあそんでしまった。

絶対に、許されることではない。

けれどー。
何故だろう。
昨日、亜津美のからだで激しい行為をしている最中、
何故だか自分が亜津美のように思えた。

鏡の前で「僕は神木譲治…」と言った時よりも、
「わたしは堀本亜津美」と言った時の方が
しっくりきたのだ。

喘ぐ声も自然と心の底から吐き出されるような、
そんな不思議な感覚だった。

結局、絶頂を迎えて、正気を取り戻したとき、
譲治は自分の罪の重大さに気付いた。

亜津美のからだを、本人の許可なく、
弄んでしまったー。
大変なことをした。

「--おはよ、亜津美!」
昨日、一緒にチョコを作った女子生徒
史子がやってきた。

「今日、神木くん来てるといいね…」

亜津美が本命チョコを渡そうとしている
神木 譲治は昨日、休みだった。

熱を出したのだと言う。

「--そうだね」
亜津美はそう呟く。

譲治くん…来てるといいな…

そう思いながら
教室に向かう。

「--そ、そんな真剣な顔しないでさ、
 来てなかったら家まで持っていけばいいよ!」

史子が言う。

「そ、そうだね…」
亜津美は心臓のドキドキが止まらなかった。

大好きな神木くんに告白する。

そう思っただけでー。

「---放課後、お話しできるかな?」
そう言うつもりだった。

教室に入って、クラスを見渡す亜津美。

けれどー。
そこに譲治の姿はなかった。

「あらら…神木くん、また休みかな?
 ま…インフルエンザとか流行ってるしね…」

史子がそう言い、”元気だしなよ”と
付け加えて座席に歩いていく。

「---神木君」
ボソッとつぶやく亜津美。

ショックだった。

バレンタインデーの本命チョコを作ってきたのに…

座席について、悲しそうに譲治の机を見つめる亜津美。

・・・・・・・・!?

「-----え???」
亜津美が突然、我に帰る。

「---い、、、いまのは…」

亜津美は恐怖した。

”神木 譲治が来ていない”

当たり前だ。

譲治は自分だ。
今、自分は亜津美に憑依しているんだ。

なのにーー
何故ーーーー???

校舎に入るまでは分かっていた。
自分が譲治だと。

けれど、校舎に入って史子と話をしたころから、
まるで自分が本当に亜津美かのように、
神木君に会いたい、とそう思っていた。

会えるわけないのにー

「---ど、どうしちゃったのかな…」
亜津美は頭を押さえた。

憑依薬の副作用なのだろうか。

ともかく、このまま亜津美のからだに居るのは
危険な気がする。

亜津美には悪いけれど、
早めに早退して、家で、寝て、そのまま亜津美の体から
抜け出そう、

譲治はそう思った。

「あ、、」
亜津美は”本来の目的”を思い出した。

男子にチョコ配るんだった!

「---あの、、みんな…今日バレンタインだから…
 みんなにチョコ作ったの!良かったら食べて!」

亜津美を演じながら笑みを浮かべて、
いつも譲治がつるんでいる友達たちに
チョコを手渡す。

「わー!堀本さんの手作りかよ!俺、一生大事にするぜ!」

「バカ!チョコを腐らせる気かよ!」

「---僕、チョコは食べない主義だけど、ま、貰っとくか」

モテない男子たちがそれぞれの言葉を
呟きながらチョコを受け取る。

「----喜んでもらえてよかった♪」
嬉しそうに言うと、亜津美は座席へと戻って行った。

「---ふふ、よかった」
呟く亜津美。

いつもチョコが貰えないと嘆いている男子たちが、
とても嬉しそうにしている。

亜津美は、この光景が見たかった。

「---これで…神木くんもいたらよかったのにな…」
亜津美はそう呟いた…。

昼休み。
亜津美はトイレで異変に気付く。

「---ど、、どうしよう…」

下着が濡れてしまっている。
異様に心臓がドキドキしている。

鏡に自分の顔が映るー。

「あぁ…♡ 可愛い…♡」
亜津美はうっとりとした表情で言う。

「---わたしは…亜津美…
 わたしは…あつみ♡ うふふ♡」

自分のからだが愛おしくてたまらない。
何なら今ここで喘ぎ狂ってしまいたいところだった。

ふと可愛らしい腕時計を見る亜津美。

「---ちょっとだけならーー」
自分の胸を触ったところで亜津美が手を止めるー。

「------……ち、、、違う!」
亜津美は苦悶の表情を浮かべて首を振る。

「僕は…僕は譲治だ!神木譲治だ!
 おかしい……おかしいよ!やばいよ!」

譲治は我を取り戻した。
亜津美の意識が戻っているわけではない。

なのに、なぜだろう。
自分自身が亜津美のような気がしてきてしまう。

チョコを渡した時の男子たちの嬉しそうな顔。
譲治はもう満足だった。

あとはーー
亜津美から抜け出して、
亜津美に自分から告白しよう。

そうすれば、
僕は亜津美とー。

ううん、わたしは亜津美とー。

ーーー?

わたし…

・・・わたしは、、、だれ…

「---…い、、、、だ、、だめだ!急がなきゃ!」

亜津美は危機感を感じて、お手洗いから飛び出した。

自分が譲治なのかー

それとも亜津美なのかー

分からなくなってきていた。

亜津美は先生たちに何も告げることもなく、
そのまま外へと飛び出した。

このままじゃ…
僕はおかしくなってしまう!
譲治はそう思って、亜津美の家へと急ぐ。

「---た、、ただいま!」
家に飛び込んだ亜津美。

母親が何か言っていたが、そんな場合じゃない。

「----神木くん…いなかった」
亜津美は部屋について、涙を流し始めた。

「--せっかく、本命チョコ作ったのに…」

悲しい…。

本命チョコを学校で渡したかった。

亜津美は、譲治の住所を知らない。
だから、もう、チョコは今日は渡せない。

「---神木君…」
落ち込んだ様子で、自分の机に座り、うなだれる亜津美。

「------わたし……」
亜津美がぼーっとした様子で前を見る。

「----!!!」
再び我に返った亜津美は、慌ててベットに飛び込む。

「もう寝なきゃ…僕は、、僕は神木譲治だよ!!!
 ----もういい、憑依なんか、お終いだ!」

そのまま必死に目をつぶり、
10分ほどで、亜津美は眠りについた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

譲治が目を覚ますと、
自分の部屋だった。

「---はぁ…ここは…」
譲治が口を開いて、
周囲を見渡す。

「---ここは…」
譲治が怯えた表情で言った。

「ここは…どこ…?」
ーーー既に、譲治の思考は、
亜津美のからだに影響されて、亜津美そのものになってしまっていた。

「いやっ…こ、、、これは…
 わ、、わたしは…」

譲治が女言葉でしゃべる。

決して、亜津美の精神が譲治の体に飛ばされたわけではない。
譲治の精神が、亜津美のからだに浸食され、
亜津美色に染まってしまったのだ。

「--ぼ…ぼくは…譲治…??
 ちがう…わたしは亜津美!
 わたしは亜津美よ!」

譲治の人格はーーー
この時、完全に消え去ってしまった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日、
譲治が登校すると、
教室には、亜津美の姿があった。

「--わたしのからだを返して!」
そう叫びたかった。

けれどー。
どこかで、
”自分は亜津美じゃない”という潜在意識が残っていた。

だからーー
言わなかった。
譲治のフリをした。

自分は、譲治なのか。亜津美なのか。
分からない。
自分では、自分を亜津美だと思う。
けれどー、
自分は譲治”だったのかも”しれない。

「---なぁ譲治!昨日さ、亜津美ちゃんが
 みんなにチョコをさ~」

友達の一人が声をかけてくる。

譲治としての記憶も、
亜津美としての記憶もある。

これは何なのだろう。

そんな風に思いながら、譲治は
”わたしは亜津美…”と思いながらも
”譲治として振る舞うこと”に決めた。

「・・・・・・・・・だめ・・・」
亜津美がつぶやく。

朝から亜津美はからだを震わせていた。

心配した友人の史子が尋ねる。

「亜津美?どこか、調子でも悪いの?」

すると、亜津美が顔を真っ赤に赤らめて
史子の方を見た。

片手では自分の胸を触っている。

「んふ…♡」
亜津美が小声で甘い声を出す。

「--ちょ、ちょっと亜津美!?」
史子が驚いた直後、亜津美は、史子の唇に自分の唇を
押し付けて、そのまま押し倒した。

「--ちょ、、やめ!!」
史子が叫ぶ。

けれど、亜津美は飢えたメスのような表情で、
髪を振り乱しながら、あおむけに倒れた史子の方を見つめた

「ごめん史子…
 わ、、わたし、もう我慢できないの!!
 どうしちゃったんだろう…
 昨日の夜から…ずっと、、ずっと、、
 えっちな気持ちが止まらないの!」

亜津美が言った。

亜津美はーー、
譲治と混ざったりはしていなかった。

けれどー、
憑依されて強制的に眠らされている状態…
”脳が無防備な状態”で、
譲治が亜津美のからだで絶頂を迎えてしまった。

そのときの激しい快感が、
脳を直撃した。

亜津美の脳は、それしか考えられなくなってしまったー。

「---史子!!!ごめん♡
 でも、もう我慢できないょ…♡」

そう言うと、周囲に悲鳴が響き渡る中、
亜津美が自分の服を脱いで、史子を襲い始めた。

「あはははははははっ♡
 あぁあああ♡ あぁああっ♡」

亜津美の甘い声が教室に響き渡った。

「---わ、、、…」
譲治はそこまで言いかけて首を振った。

”わたしの体を返して”

そう言いそうになった。
けれどーー。

もう、何が何だか分からないー。

譲治はその場で頭を抱えて、蹲ってしまった。

ほどなくして、先生が駆け付け、
亜津美は取り押さえられた。
それでも亜津美の興奮は収まらず、愛液をボタボタ垂らしながら
淫らな格好で生徒指導室へと連れて行かれてしまった…。

その後、亜津美を見たものはいないー。

そして、ほどなくして、譲治は
”自分が亜津美”だと思い込んでしまい、
女装をし始め、家族と喧嘩別れのようになり、
家を飛び出し、行方不明となってしまった…。

「----バレンタインの悪夢…」

翌年のバレンタイン、
史子はそう呟いた。

「えーー?」
史子の彼氏が不思議そうに言う。

「ううん…
 ホラ、去年退学になった亜津美と神木くん…

 あの二人、お互いがお互いのこと好きだった
 みたいなんだけどさ…。

 バレンタインの翌日からおかしくなっちゃったでしょ?二人とも」

史子が言う。

「--あぁ、そうだったな」
彼氏の言葉を聞いて、
史子は切なそうな表情で、空を見つめた。

「あの二人、今、どうしてるのかな…」

史子の寂しい想いを現すかのように、
寂しげな雪が降り始めていた・・・

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依薬も使うものを間違えると大変ですね!?
皆様も気を付けましょうー!

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    最高です。いやほんと最高です(語彙力低下)

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 最高です。いやほんと最高です(語彙力低下)

    ありがとうございます^^