自分がイジメる側の立場だったはずなのに、
今や立場は完全に逆転した。
クラス一の美少女、魅音に憑依した瑠璃子は、
一美への復讐を進めていくー。
復讐の果てに待つ、本当の闇とは…。
------------------------------—
「ねぇ!元に戻す方法を教えて!」
一美は、電話で憑依薬をオークションで販売していた
出品者・愛染に、憑依をやめさせる方法を問いただしていた。
「…書いておきましたよね?
ノークレーム・ノーリターンでお願いしますって」
愛染が丁寧な口調で言う。
「--ふざけないで!
わたしの友達の、真面目な子の人生が奪われちゃったの!
ねぇ!あの子を助けたいの!」
本当はーー魅音のことなんてどうでもいい。
このままだと、魅音に憑依した瑠璃子に自分の人生が
壊されてしまう。
それが、怖かった。
「---そんなこと、君の自業自得のはずですけど」
愛染が声のトーンを低めて言う。
「--ね、、ねぇ、、!お願いします!お願いだから、、
助けて…! ねぇ!お願い!」
泣きながら一美が叫ぶ。
けれど、出品者の愛染は、相手にせず、そのまま電話を切った。
「---最悪!」
一美はスマホをベットに叩きつけた。
「--わたしが、、あのブス女に、いじめられるなんて…
ゼッタイに…絶対に許せない!」
一美は吐き捨てるように呟いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
魅音から呼び出された一美は空き教室へと足を運ぶ。
いつも、一美が瑠璃子を苛めていた場所。
「---皮肉なものよね…うふふ」
魅音が笑う。
綺麗な黒髪だった髪は
少し茶色混じりでウェーブがかっていて、
メガネをコンタクトに変え、
スカートが少し短く、おしゃれになっているので
別人のようにも見える。
「---ねぇ、、真面目な子の人生、奪って楽しいの!?」
一美が尋ねる。
”良心”に訴えることで、瑠璃子を追い出そうとしていた。
「--ふふ、すっごく楽しい!」
魅音が狂気に染まった笑みを浮かべる。
「だって見てよ、確かにわたしはブスだった!
でもホラ!今の私!
すっごくかわいいでしょ!
わたし、毎日夜、一人で喘ぎまくってるの!うふふ♡」
魅音が嬉しそうに言いながら、胸や足を
見つめて満面の笑みを浮かべている。
「このからだなら、いくらでもおしゃれを楽しめる。
こ~んな風にウェーブかけてみたり、
こ~んな風にお化粧してみたり…!
うふふふふふふふ♡
ありがとう!!本当にありがとう!!」
魅音が笑う。
もう、この子は魅音じゃないーー。
一美はそう思う。
見た目は確かに同じでも、中身は完全に別人だ。
「---ーーわたし、あんたにイジメられて
ずっとずっとつらかった。
わたし、何もしてないよね?
勉強も頑張ってたし、アンタに何も悪い事なんか
一度もしてない。
なのにアンタはいつもいつもいつもいつも
わたしのことをバカにして!」
魅音が感情的になって叫ぶ。
目には悔し涙まで浮かんでいた。
「---そ、、それはアンタが」
一美の言いかけた言葉を遮り、魅音が叫ぶ。
「ーーーふざけんな!!!!」
一美は思わずビクッとして、言葉を止める。
「--あんたさぁ、、
前にこう言ってたよね。
”あんたみたいなブスを生んだ親の顔が見てみたい”
だとか、
”親もどうせ生きてる価値のない豚みたいなやつなんでしょ”
とか…」
一美は、その時のことを思い出して、
足を震わせる。
想像以上に、瑠璃子に憎まれているー。
「---お父さんとお母さんのことまで侮辱して…
わたしの両親は…”昔、交通事故で死んでるのに”
そんなことも知らずにバカにして!」
憎しみを込めて叫ぶ魅音。
「--ご、、ごめん…
し、知らなかったの!本当に知らなかったのよ!」
一美が必死に弁明するも、
魅音は一美を睨んだままだった。
腰に手を当てて、高飛車な様子で魅音が続ける。
「--酷いよね。親が居ない苦しみも知らないで…。
わたし…決めたの。
アンタにだけ復讐する。
アンタへの復讐が終わったら、わたしは魅音として生きていく…
ううん、もう、わたしは魅音だから♡」
魅音が、一美に近づいて囁く。
「--アンタの家族も、ぶっ壊してあげるーー」
そのまま、魅音はくすくすと笑いながら、
空き教室から出て行った。
”家族も、ぶっ壊してあげるー”
一美は、恐怖で足が震えていた。
「---や、、やめて… も・・・もう…やめて…」
誰も居ない空き教室で、一美は一人、震え続けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
自宅の玄関先に、
大量の髪が貼られていた。
それは…
”一美の母親は元AV女優”だというもの。
動画のURLまで大々的に記載されており、
近所は騒然となった。
「--お母さん…」
一美が心配そうに母の事を見る。
「--だ、、大丈夫だから…」
母は疲れ切った様子で、部屋に籠ってしまった。
母は昔、荒れていたと聞く。
ーーそのときだった。
父が突然帰ってきた。
「--あ、あれ、おとうさん…?」
一美が心配そうに言うと、
父が答えた。
「---ーーーーー終わりだ」
父が放心状態で机の上に鞄をおき、
そのまま口を開いた状態で唖然としている。
「---リストラを告げられた・・・」
父はそれだけ言うと、
抜け殻のように、虚空を見つめた。
「----あのブス女!」
一美はそう叫んで、家から飛び出した。
いつもより少し早く学校に到着すると、
既に魅音は教室に居た。
「あら?どうしたの?
そんなに慌てて…
ふふふふふふ・・・」
机に乗って、足を組んでいる魅音。
完全に一美をバカにしている。
「--そこは私の机よ…!どいてよ!」
一美が叫ぶ。
だが、魅音は甘い微笑みを浮かべて言う。
「--ー”わたしから見れば”アンタもブスだし?
アンタの親になんて生きる価値も無さそうだし?
言ったよね?
わたしに、親が生きてる価値なんてないって。」
冷たい声で言う魅音。
「---お願い…もうやめて…
お父さんとお母さんは関係ない…
もう、、、やめて…」
一美は涙をボタボタ流しながら言う。
心からの謝罪ー。
もう、謝るしかない。
「---やめて???
やめてくださいでしょ!!!」
魅音が声を荒げて、一美を思いっきりビンタした。
「----うぅ……」
一美はもう、反論する力も無く、そのまま床に土下座した。
「--ふふふふふ…
わたしをいじめてたアンタのその姿!
さいっこうよ!
超ブザマ!!!あはは♡ 可愛いってほんっとうに最高!」
魅音はそう言いながら、一美の手を靴で
踏みにじる。
「--いやあああああっ」
力強く、踏みにじられ、思わず悲鳴を上げる一美。
「ほら!早く行って御覧なさい?
魅音様、大変申し訳ございませんでした! って!
床に頭をこすり付けて、言ってごらん!」
見下した表情で言う魅音。
蔑みー
憎しみー
侮蔑ーー
あらゆる感情が込められたまなざし。
「魅音、、、本当に申し訳ございませんでした」
一美は、頭を地面につけて叫ぶ。
まだ時間が早いから教室には誰も来ない。
「--魅音”様”って言いなさいよ!」
魅音がさらに力強く一美の手を踏みつけるー。
魅音に憑依している瑠璃子は、本来優しい子だった。
けれどー、
一美の執拗なイジメに対する憎しみ。
そして、魅音の美貌を手に入れたことによる暴走。
もう、歯止めがきかなかった。
「いやああああああああっ!」
叫ぶ一美の頭を踏みつけて地面に
顔をこすらせる魅音。
「ほら、ほら!わたしへのお詫びの言葉は!?
ほらほらぁ!!!」
「---、、、み、、、魅音様…
申し訳ございませんでした…」
一美がそう言うと、魅音はようやく足をどかし、
ウェーブがかった髪をとかしながら微笑んだ。
魅音を見て、一美は言う。
「--お願い…もう、、やめて…
わたしは…どうなってもいいから…」
そう言うと、魅音はいっそう微笑んだ。
「---許さない」
冷たい声ーー。
笑っているけど、心は笑っていない。
「---あんたは、天国には行けない。
地獄にも行けない。
天国と地獄の間にある”煉獄”に突き落としてやる!」
そう叫ぶと、魅音は自分の机に戻って行った。
一美の自宅への貼り紙は、地元の不良に金と体を払って
やらせたー。
いざというときの責任も不良たちがとる約束だ。
一美の父への嫌がらせは、
魅音の祖父がたまたま、一美の父の会社の取締役だったため。
カンタンなことだった。
祖父は孫娘には甘い。
「----ぶっ壊してやる…クスクス…♡」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
母への嫌がらせがヒートアップする。
すっかり母は憔悴してしまい、疲れ果てていた。
父は会社を辞めさせられ、酒に溺れるようになった。
横領の罪まで着せられたのだとか。
そしてーーー
母が”自殺”してしまったーー
「いやああああああああああっ!」
自殺現場で一美は泣き叫んだ。
「ああああああああっ…
あああっ…
うわあああああああああ!!!!」
ひたすら壁に手や頭を叩きつけて
狂ったように泣き叫ぶ一美。
そんな一美を見て父親は
「うるせぇ!どうにでもなれってんだ!」と
ひたすら酒を口に運び続けた。
ーーー家庭崩壊ーーー。
ほどなくして、父も体調を崩し、
倒れて、病院で寝たきりになってしまった。
数週間後…。
「---許さない・・・
許さない 許さない 許さない!!
許さない!!!!!!!!」
一美は、ネットで買った刃物を手に、
とある休日に、魅音を呼び出した。
夜の埠頭の片隅。
水面を見つめながら魅音は微笑んでいた。
「----ふふふ・・・一美、、
あなたが悪いのよ…」
魅音は風でなびく髪を抑えながら思う。
”もうすぐ終わる”
そしたら、自分は魅音として、生きていく。
「----許さない」
背後から声が聞こえた。
ミニスカート姿に、おしゃれなカーディガン、
タイツ姿の魅音が振り向く。
今や魅音はクラスのファッションリーダー的
存在になっていた。
「---お父さんも、、お母さんも…!」
この数週間、不登校になっていた一美は
すっかり変わり果てていた。
目にクマができ、
髪もボサボサ、
肌も荒れ果てていた。
「あら…ブスがもっとブスになったんじゃない?」
魅音は笑う。
一美が刃物を持っているのに、魅音はすぐに気づいた。
でも、そんなことは想定済み。
こういう女は、必ずそういう行動に出る。
そう、思っていたからー。
既に、110してある。
あと、数分もすれば。
「---ねぇ、教えてよ。
今、どんな気持ち?」
魅音が笑う。
一美は怒りに満ちた目で魅音を見ている。
「--ねぇ、、、わたしをイジメていたあんたが、
その立場になってみて、
どんな気持ち?
みじめ?
くやしい???
こわい???
それとも全部???
ふふふふ、あははははははははっ♡」
魅音の笑い声が埠頭に響き渡る。
物陰には、魅音の彼氏・孝太の姿があった。
一美も、孝太には告白したこともあった。
だが、今はそんな気分ではない。
「---わたしをいじめた罰よ!
苦しんで!もっと苦しんでよ!
その顔…さいっこう!!!
ゾクゾクする♡
うふふふふふふ♡
泣け!喚け!うふふ、あはははははは♡」
魅音が手を広げて大笑いする。
「---テッメェェェェェェ!」
一美が狂ったような声をあげて魅音に向かう。
”もしも一美が襲ってきたら取り押さえて”
魅音は彼氏の孝太にそう頼んでいた。
けれどー
「---……ごめん、魅音…
やっぱ俺…”本当の魅音”が好きだった…」
孝太は何もせず、その場から立ち去ってしまった・・・
ここのところの魅音の、一美に対する対応で、
孝太は心を痛めていたのだ。
「---ちょ!?」
魅音が立ち去る孝太を見つけて叫ぶ。
「うあああああああああっ!」
一美が叫びながらナイフを手に、突進した。
「-----ひっ…」
低い声をあげて、信じられないという表情で、
一美を見る魅音。
「----あ、、、あっ…」
魅音はそのまま、一美を引っ張って、
二人そろって、水中へと転落してしまう。
水上にはーー
赤い液体が浮かび上がっていたーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
30分後…
埠頭は騒然となっていた。
「----もう一人は?」
警察官の一人が尋ねるが、
もう一人が首を振る。
「--でも、酷いなぁ…
女子高生同士で殺しあいか」
警官の一人がそう言いながら、
”助け出された女子生徒”の方を見つめたーーー
助け出されたのはーーーーー
少女は、濡れた髪を抑えながら、
不気味に微笑んだーーー
「この人生はーーーわたしのものーーーーー
うふふふふふふふふ♡」
とーーーー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
リクエストありがとうございました!
リクエストを3話構成で書いたのは久しぶりだったような気がします!
最後は・・・
ご想像にお任せしますネ!
コメント
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一美は刃物を奪われて反撃されたってことなんですかね
にしてもせっかく魅音みたいな可愛い彼女がいたのに裏切ったら、こうたはもう魅音には振り向いてもらえませんね笑
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一美が刺されて死亡したことによって魅音に憑依できたという見方もできそうな終り方でもある。魅音が刺されて憑依解除された代わりに一美の身体が奪われたという見方もできる。色々考えられるこういう終り方大好きです
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> 一美は刃物を奪われて反撃されたってことなんですかね
>
> にしてもせっかく魅音みたいな可愛い彼女がいたのに裏切ったら、こうたはもう魅音には振り向いてもらえませんね笑
彼は、憑依されて、あざとくなった彼女を受け入れられなかった…
勿体無いことをしましたね^^
最後は…色々な読み方ができますね!
一応、ある程度のヒントはあったりします!
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> 一美が刺されて死亡したことによって魅音に憑依できたという見方もできそうな終り方でもある。魅音が刺されて憑依解除された代わりに一美の身体が奪われたという見方もできる。色々考えられるこういう終り方大好きです
ありがとうございます^^
最後は少しだけヒントもありますが、
色々想像して楽しんでください!
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どっちなのか気になって仕方がない
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> どっちなのか気になって仕方がない
とあることに関するヒントは、最後のシーンに
隠されています!
よ~く読んでみるとわかるかも…しれません!