<憑依>教室の花②~執念~

クラスの陰険女子、一美にいじめられていた
ブスな女子生徒、瑠璃子は一美が持ってきていた憑依薬を
奪い、クラス一の美少女、魅音に憑依した。

今や容姿も立場も、完全に逆転した。

しかし、一美もまだ、諦めたわけではなかった。

-------------------------------

自宅で、魅音はウェーブをかけた髪を
なびかせながら、
アイドルのような衣装を着て微笑んでいた。

「うふふ・・・♡ 似合う…!」

魅音は何度も何度も、鏡を見つめて微笑む。

瑠璃子も、おしゃれをしたかった。
けれど、おしゃれをすれば笑われるだけ。

ブスだの、きもいだの、
そんな言葉はもう聞き飽きた。

「--ふふふ♡ 可愛い!!」
自分のことを”かわいい”と口走って
満面の笑みを浮かべる魅音。

本人なら、こんなことはしなかったはずだ。

「----!」
魅音が突然表情をひきつらせた。

記憶ーーー。

憑依してから、少しずつ、魅音の記憶を読み取っている。
そして、今、ちょうど読み取った記憶の中に
”許しがたいもの”を見つけてしまった。

それはーー

”田島さん、ちょっと気味悪いな…”というものだった。

つまり、瑠璃子のことを気味悪いと思っていたのだ。

魅音は一美とは違う。
優等生で、明るく、誰にでも優しい

だからこそ、そんな風に思われているとは夢にも
思わなかった。

「---あ~~そう、
 そんな風に思ってたんだ」
魅音が怒りに満ちた表情で吐き捨てるように言う。

「---どいつもこいつも!」
鏡をグーで殴り始める魅音。

「ふざけんな!!わたしが何したっていうのよ!
 わたしだって、ブスに生まれたくて生まれたんじゃないのに!」

何度も何度も鏡に拳を叩きつける。

鏡に映った魅音を殴って、殴って、殴り続ける。

「ふざけんな!ふざけんな!!ふざけんな!!!」

鏡の一部が粉々に砕け散り、その破片が魅音の手に突き刺さる。

「はぁ~~~っ はぁ~~~~っ」
怒りが収まらない様子でその場に蹲る魅音。

魅音は体を震わせていた。

「---もう、わたしは誰にもバカにされないーー。
 どうせ、見た目なんでしょ??
 
 ふふふ、いいわよ!なら私は、あんたたちを誘惑して
 滅茶苦茶にしてあげる!」

血が床に零れ落ちる。
けれども、魅音はたまらなく愉快だった。

これから、自分をバカにしたヤツらをー
徹底的に見下してやれるんだからーーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

一美が登校すると、
一美のロッカーが壊されていた。

「---…」
一美は悔しそうにそのロッカーを見つめる。

握りこぶしを作る。
犯人は決まっている。

「--あのブス女!」
吐き捨てるようにして言うと、
背後から声がした。

「---誰が、ブスだって?」

一美がハッとして振り返ると、
そこには腕を組んで、見下すように一美を
見つめる魅音の姿があった。

何故か右手には包帯が巻かれている。

「---あんた…こ、、こんなことして!」
一美が声をあげると、魅音は笑った。

「--あんたのこと、滅茶苦茶にしてあげるから。
 知ってるよね?わたし、あんたより成績いいって」

魅音が言う。

魅音のおしとやかな感じの口調ではなく、
憎しみがこもった口調で話しているため、
一美には、魅音が別人のように思えた。

「---」

一美がいじめていた瑠璃子は成績だけは優秀だった。

けれども、一美にはそれも面白くなかった。

前に、瑠璃子のテストを取り上げてびりびりに破いたことがあった。

「頭だけ良くても、見た目がそれじゃあねぇ」、と
当時、一美は瑠璃子のことをあざ笑った。

「--どんなに良い花でも、見た目が悪い花は、需要がないでしょ?
 あんたもそれと同じよ!」

一美は徹底的に、瑠璃子を馬鹿にしていた。
テストが、自分より成績が良いのが許せなかった。

「---今のわたしは、、
 見た目も可愛いし、頭もいいし…」

魅音が近づいてくる。

「---ねぇ、、どう思う?」
魅音が笑いながら訪ねる。

「ど…どうって…」
一美は言葉が見つからず狼狽える。

「--あんたより、可愛くて頭が良いわたしのことを
 どう思うって聞いてんのよ!」

声を荒げて、
一美の背後のロッカーを思いっきり叩く魅音。

「---ひっ…!」
一美は思わず軽く悲鳴をあげてしまう。

「---わたし、アンタのこと、ゼッタイ許さないから」
魅音はそう言うと、一美を睨んで教室に入って行った。

「---」
一美はしばらく震えていたが、
すぐに心を落ち着かせた。

そしてーー。

「--あんたが、憑依してるってこと、
 ばらしてあげる!」

と、呟いて、不気味にほほ笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休み。

「--ねぇねぇ、みんな聞いて!」
一美が、いつも一緒に瑠璃子を苛めていた
友達の女子生徒二人に声をかけた。

「--?」
二人が顔を見合わせて、一美の方を見る。

「ーー魅音がさ…あのブス女の瑠璃子に
 憑依されちゃってるの。

 ホラ、この憑依薬って薬…。
 これを瑠璃子が使って魅音に憑依してるのよ!」

一美が二人に言うが、
二人はその言葉を聞き終える前に笑い出した。

「ふふふ…憑依?
 一美、どうしたの?勉強で疲れちゃった??」

あざ笑うようにして一人が言う。

「---ち、違うわよ!本当に魅音は…!」
一美が必死に信じてもらおうとする。

憑依ーー

そうだーー
そんなこと誰も信じるはずが…

「---ねぇ、そんなつまらない話聞きたくないんだけど」
もう一人の生徒も言う。

一美は悔しそうに身を震わせて座席へと戻って行った。

「-----」

放課後。

一美のところに集まっていた女子生徒たちまで
魅音のところに集まって話をしている。

一美は、次第に孤立し始めていたーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。

「ねぇ、奈央(なお)お願い!
 広報部部長にとって、とっておきのネタでしょ?」

一美が、隣のクラスの友人で、
広報部部長の比良坂 奈央に電話していた。

「---憑依なんて、本当なの?」
奈央が、電話先で言う。

「--うん、本当よ!
 魅音はあのブス女に憑依されている!
 ずっと尾行すれば、必ずボロを出すはずだから
 証拠をつかんで、広報部のネタにしてよ!」

一美が言うと、
電話相手の奈央はしぶしぶ納得した。

スクープ好き、うわさ好きの奈央なら飛びついてくると
思った。

電話を切った一美は笑う。

「見てなさい…ブス女!
 化けの皮、はいでやるんだから!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

魅音が廊下を歩いている。

ウェーブがかった髪が、今日も綺麗に
なびいている。

最近は、スカート丈も少し短くなり、
おしゃれを存分に楽しんでいるようだ。

とは言え、学校生活は真面目そのもので、
変わらず先生からの信望も厚い。

「--はぁ…憑依なんて、くだらない」
一美の友人、奈央が、魅音の尾行を続ける。

魅音が誰も居ない空き教室に入っていく。

「---何であんな教室に…?」
首をかしげながら奈央が後に続くと、
突然、教室の中に引きこまれた。

「---な、何するの!」
乱暴に引っ張られた奈央はたまらず声をあげた。

魅音は言う。

「--朝からわたしのこと、つけまわして、、、
 何のつもり?」

魅音の怒った口調に焦る奈央。

魅音が怒ることなど…

密かにスマホを使って、録音している奈央は、
内心でほくそ笑んだ。

「え、、い、、ホラ、わたし、広報部の部長だから…」
そう言うと、魅音が冷たい声で言った。

「出してー」

奈央は何のことか分からず、首をかしげる。

「---出しなさい!!!!」

魅音に怒鳴られて、スマホのことだと分かった
奈央は慌ててスマホを出した。

「一美に頼まれたのね」
そう言うと魅音は怒りに満ちた表情でスマホを壁に叩きつけた。

「ちょ、ちょっと!何するのよ!」
奈央が叫ぶと、
魅音は、奈央に近づいて低い声で言った。

「一美が最近、孤立してるの知ってるでしょ?
 あんたもそうなりたいの???

 …わたしはね…わたしを馬鹿にしたやつらを
 滅茶苦茶にしてやるの!!

 邪魔するなら、アンタも同じ目に遭わせるよ?」

魅音が狂気に染まった表情で奈央を見る。
奈央は”ほんとうに憑依されている”と確信したーー

「あ・・・あんた・・・」
奈央はそれだけ言うのがやっとだった。

「---ねぇ、ひとつ、頼みがあるんだけど…」
魅音は、奈央にそう言って、不気味にほほ笑んだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

美貌を手に入れて、地位を手に入れ、
高飛車になり始めていた魅音。

けれど、クラスの誰も魅音に逆らうことはできず、
さらに一美は孤立した。

今や、魅音がクラスの中心だ。
男子は、魅音の甘い誘惑に誘われて
完全に魅音のしもべのような状態だ。

噂によれば、2、3人とヤッたとのうわさまである。

「---許さない、、許さない…!」
陰険女子の一美は唇をかみしめる。

広報部部長の友人、奈央からも連絡はない。
”使えないヤツ”と心の中で呟くも、
他に打つ手もなかった。

クラスメイト達がこそこそ笑っている。

広報部が発行した手紙を見ているようだ。
そこにはーー

”テスト勉強疲れで”妄想”する生徒がいる”と
一美のことが書かれていた。

「---ちょ、何これ!」
一美が思わず声を荒げると、他の生徒たちが
白い目で一美を見る。

「---妄想女・・・こわ~~~~い!」
魅音があざとい仕草を交えながら一美を挑発する。

「---あんた…!」
一美が魅音を睨むと、
周囲から”そんな目で魅音ちゃんを睨んだら可哀想だよ”だとか
”魅音ちゃんとは月とすっぽんだな!”みたいな声まで聞こえた。

「--なに?文句でもあるの??」
可愛さをアピールするかのように、わざと髪を手で触りながら言う。

「---ねぇ!みんな!おかしいと思わないの!
 魅音がこんな、喧嘩をうるようなマネするわけないでしょ!
 魅音の態度を見て、おかしいと思わないの!?」

一美がたまらず周囲に叫ぶ。

しかしー
周囲の男子は「でも可愛いから、どうでもいっか!」だとか
「魅音ちゃんは魅音ちゃんだよ!」としか言わなかった。

魅音はバカにしたような目で一美を見る。

「---どう?孤立した気分は?」
小声でつぶやく魅音

「----……」
一美は無言で、不機嫌そうに机に戻っていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後、
一美は、男子生徒の西田 孝太に声をかけられた。

こうなる前に、告白して、振られた男子だ。

「--なぁ、、教えてくれ。さっき言ってた憑依って
 本当なのか?」

孝太が言う。
一美は、静かにうなずいた。

「---そっか…
 最近、変だと思ってたんだ…魅音のやつ…」

孝太の話しぶりから
魅音と孝太は既に付き合っていたのだと一美は悟る。

けれど、今はそんな場合じゃない。

「---お願い…!魅音を救ってあげて!」
一美が嘆願するように言う。

別に、魅音を助けたいとは思っていないー。
けれど、瑠璃子のやつを始末したかった。

「---わかった」
孝太はそう言うと、静かにうなずいた。

一美と別れた孝太は、
背後から声をかけられた。

「今、誰とお話ししてたの?」

・・・魅音だった。

「---魅音……お前さ…」

そこまで言うと、魅音は孝太に抱き着いた。

「---み、魅音!?」
孝太が驚く。

教室には、幸い、誰も居ない。

「---わたし、、、孝太くんのこと、本当に大好きなの…
 お願い…一美となんか一緒に居ないで…。
 わたし、、嫉妬で頭がおかしくなっちゃいそう…」

甘い声で言う魅音。

「---魅音」
孝太が、涙で目を濡らしている魅音を見つめて
複雑な気持ちになる。

魅音は、わざと胸やスカートが当たるような位置で
孝太に抱き着いていた。

「---わたし、、孝太のためなら、何でもするから…
 だから、あんな女の言葉に耳をかさないで…」

孝太は思う。

これは、魅音じゃないーー。

「---なぁ!」
孝太は魅音を引きはがす。

「ーーお前、魅音じゃないだろ!?
 聞いたぞ…一美から!
 お前・・・魅音に憑依した・・・」

突然、魅音が服を脱ぎ始めた。

「---!?」
制服がフサッと音を立てて、床に落ちる。

さっきまでの弱弱しそうな表情は消え、
自身に満ち溢れた表情で、魅音は孝太を見ている。

髪を後ろにやり、
そのまま飢えた表情で孝太を押し倒す。

「--うふふふ♡ こうた♡
 だいすきだよ♡」

甘い声でそう呟くと、倒れた孝太に向かって
魅音はそのまま熱いキスをした。

孝太の舌に自らの舌を絡めさせ、
クチュクチュと音を立てて、
二人は甘い時間を過ごす

「んふっ♡ こうたくん♡
 おねがい♡ わたしのために♡ 余計なことはしないで♡」

甘い声で、キスを繰り返しながら囁く魅音。

「--み、、みおん、、、お、、おまっ!」

言葉を続けられないように魅音が
繰り返しディープキスをしていく。

孝太は、興奮を抑えきれず、
そのまま魅音を床側にころがし、自分が上になった。

「魅音!俺も好きだ!魅音!!!魅音!!!!」
男の本能を刺激された孝太はそのまま魅音の
からだを堪能した。

「あぁ♡ うふふ♡ これが、男の子とのエッチ♡
 あぁは♡ はははっ♡ うぁぁああああははは♡ あぁはんぁ♡」

魅音は体のなかに流れてくる快感を受け入れ
大きな声で喘ぎ始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

「---何よコレ…」

一美の机はボロボロに落書きされていた。

クラスメイト全員が、その様子を見ていて、
ニヤニヤしている人もいる。

孝太も、見て見ぬふりだった。

「---ーー……クソブス女がぁ!」
一美はイライラが頂点に達し、怒声をあげて
机をなぎ倒した。

「---」
魅音が見下すような目で一美を見る。

「----あんた満足!?
 わたしがこんな目にあって、いい気味だと思ってるんでしょ!?」

一美が怒り心頭な様子で魅音に詰め寄る。

魅音は微笑みながら一美に近寄って、
すれ違いざまに耳打ちした。

「こんな最高の人生を得られる機会をありがとね…」 と。

そのまま優雅に自分の座席に戻っていく魅音。

一美は目に涙を溜めながら
拳を握りしめた。

「-------ブスのくせに・・・」

怒りに支配された一美は、
常軌を逸脱した行動に出ようとしていた…

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

最後の魅音のセリフはリクエスト内にあったものです!

ですが、私は明日の話で、その先にある深い闇に
進もうと思います(え?)

PR
憑依<教室の花>

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    深い闇…続き楽しみです

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 深い闇…続き楽しみです

    ありがとうございます!
    深い闇…恐ろしいことになりそうです^^