<憑依>歪女①~ずるい~

とある住宅街。
新婚カップルの二人は、幸せな時間を送っていた。

しかしーー
近所に新しく引っ越してきた、若い女性によって…
全ての幸せは奪われた。

ユ ガ メ テ ヤ ル ・・・

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「今日新しい人が引っ越ししてくるんでしたっけ?」

とある住宅街。

結婚したばかりの22歳女性、
五十嵐 智恵(いがらし ちえ)が笑いながら近所の人と話していた。

彼女は高校卒業後、専門学校に通い、その後公務員になったという
経歴を持つ女性だ。

高校時代からの彼氏だった、又彦(またひこ)と
3か月前に結婚して、新居に移ったばかりだった。

住宅街の一角には私道を挟んで4件の家があった。

五十嵐家と、娘が二人いる鷲野家、一人暮らしのお嬢様女子大生、
そして、先日、男性が引っ越して空き家になった家の4件だ。

明日ー
その空き家に新しく入居者がやってくることになっていた。

「---そうみたいよ~」
娘を二人持つ鷲野家の母、
鷲野 芽衣子(わしの めいこ)が言う。

もうすぐ40代ながら、なかなかの美人だ。

「---良い方だといいですね…」
智恵が言う。

ついさっき、迷惑隣人のニュースを見たばかりで
気が滅入っていた。

「ふふ、大丈夫よ。
 五十嵐さんなら、だれとでもすぐに仲良くなれるわ」

芽衣子が言う。

「そうだといいんですけど…」
智恵がそう言うと、
ちょうど、一人暮らしの女子大生、下川 詩織里(しもかわ しおり)が
家に帰ってきた。

「あ、こんにちは」
とある会社社長の一人娘でお嬢様育ちの詩織里は、
親からの仕送りで、一人暮らしを始めていた。

お嬢様育ちゆえか、少し世間知らずで、
おしゃれに異様なお金を使っているものの
礼儀は正しい。

詩織里も交えて、他愛ない話をしたあと、
智恵は家へと戻った。

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夜ー。

「ただいま」
土日関係なしに仕事の夫、
五十嵐 又彦 が帰ってきた。

「あ、おかえり~」
智恵が笑う。

高校時代からの付き合いだが、二人は未だに
大の仲良しだった。

「--そういや、明日、新しい人来るんだったっけ?」
又彦が言う。

「--うん、そうみたい」
智恵が笑いながら言うと、

「可愛い子だと良いなぁ~」と又彦がつぶやいた。

「こらっ!!」
智恵がほほ笑むながら言うと、
又彦も「冗談だよ、じょーだん!」とほほ笑んだ。

仲睦まじい二人。

しかし、二人は知らなかった。

やってくる”隣人”は悪魔であることをー。

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翌日日曜日。

ーー新しい隣人がやってきた。

可愛らしい…少女のような容姿。

智恵はたまたま玄関先の掃除をしていた。
目があったので、その少女に会釈をする。

「女子高生ーーー?
 ・・・な、わけないよね」

智恵が小さくつぶやいた。

「-------」
少女は周囲にある3件の家…
五十嵐家、鷲野家、そして一人暮らしの女子大生、詩織里の
家を見つめた。

物色するように…。

「------」
”少女”は優しく微笑んだーー。

夕方。

引っ越しの片づけが終わった少女が、
挨拶をしにやってきた。

少女の名前は、三戸 暗菜(みと あんな)。

暗菜は「ちょっと変わった漢字ですけどね」と
可愛らしく笑う。

聞けば、彼女は女子大生で、20歳だと言う。
親からの援助を受けて、引っ越してきたのだとか。

「よろしくお願いします!」
元気よく挨拶する暗菜に智恵は好感を持った。

「あ、こちらこそよろしくお願いしますね」
智恵は思うー。

自分と年もさほど変わらない。

仲良くなれそうだー、と。

「--あらぁ、あなたが新しくやってきた方?」
鷲野家の母、芽衣子が声をかけた。

「よろしくね」
一人暮らしのお嬢様女子大生、詩織里もちょうど出てきて挨拶をする。

「--あれ…?おいくつですか?」
暗菜が尋ねる。

お嬢様女子大生の詩織里は答えた。

「わたし?21よ。あなたは?」
詩織里が尋ねると、
暗菜は微笑んだ。

「あ、じゃあ私より少し先輩かな…
 わたし、20なんです!」

暗菜がそう言うと、詩織里は微笑んだ。

「--あ~わたしとほとんど同じね!
 やっぱりあなたも親の仕送り?」

詩織里が尋ねると
暗菜が一瞬表情をひきつらせた。

「・・・?」
智恵が不思議そうに暗菜の方を見る。

「---はい」
暗菜はすぐ笑顔になって微笑んだ。

「--ふふ、そっか。
 わたし、パパが大企業の社長なの!
 だから、わたしがちょ~っとお願いすれば、
 すぐお金も出してくれるのよ!
 ふふふっ!」

詩織里が嬉しそうに言う。
少しウェーブがかった薄い茶髪の詩織里。
服の最新の流行を取り入れて
惜しげもなく綺麗な足を披露している。

「---・・・ずるい」

ーーーーーー???

暗菜が小声でつぶやいた。

「---え?」
詩織里が不思議そうに言う。

「---ま、よろしくね!」
呟きに気付かなかった芽衣子が笑う。

「---」
そのやり取りを聞いていた智恵は少しだけ不安を覚えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。

新居に入った暗菜は、
部屋の明かりもつけず、
小さなデスクに小さな明かりをつけて
座っていた。

「----ずるい・・・」

不気味に呟く暗菜。

「ずるい…ずるい…ずるい…ずるいずるいずるいずるい
 ずるいずるいずるい!」

呟き続ける暗菜。
とても正気とは思えない。

そしてーーー
彼女は「紫色の液体の入った容器」を取り出した。

「わたしはーー
 いらない子…

 わたしは…

 どいつもこいつも幸せそうにしやがって…」

暗菜が表情をゆがめる。

彼女はーーーー
”望まれない子”だった。

暗菜が生まれた際、父親と母親は激しく落胆した。
二人は”男の子”が欲しかったのだ。

だからー。
父は、自分の暗い気持ちをそのまま名前につけた。

”暗菜”と。

両親は、暗菜を徹底的に無視した
”空気”として。

してくれるのは最低限のことだけ。
そこには愛情も微塵もない。

小学生になった暗菜は、いじめをうけはじめた。

暗菜の容姿は、
”歪女 (ゆがみおんな)”と呼ばれるほど、
酷いものだった。

激しくいじめられた小学生時代。
そして、中学時代。

だが、暗菜はある日、
とある人物から一つの薬を手渡された。

それが、憑依薬。

けれど、暗菜はそれを使って
人を支配しようとは思わなかった。

暗菜は憑依薬のもう一つの力を使った。

それはーーー
憑依して相手を染め上げること…。

そう、憑依薬は、憑依している間、
”他人の脳”を使う。

暗菜はそれを利用した。

一時的に相手に憑依して、
強く念じることで、憑依した子の脳に影響を与えて、
人格を変えてしまうのだ。

ーーー高校時代から、暗菜はその力を使った。
いじめてくるクラスメイトに憑依して
”わたしは暗菜の下僕”と何度もつぶやいてやった。

すると、次の日から、いじめっ子は
暗菜の下僕になったのだ。

暗菜はそこから”暴走”した。

自分に楽しいことなどひとつもなかった。
両親からは蔑まれ、
学校では虐められ、
先生たちからは、もっとはきはきしろと怒られる。

「ふふ・・・歪女で結構よ…」
暗菜は呟いた。

今の体はーー
暗菜の体ではない。

彼女は、もう一つ薬を貰っていた。
それはーーー。

彼女は”中学時代、自分を苛めていたクラスの美少女”の
”顔”を奪った。

あれからもう5年近く。

”顔”は定着した。
今では暗菜のものだ。

「くくく…。
 新婚の五十嵐家…
 幸せな家庭の鷲野家…
 一人暮らしの女子大生…」

暗菜は呟いて、
表情をぐしゃぐしゃに歪めた。

「---いいな~~~~~~~~~~~~~~~」

不気味な口調で話す暗菜。

「幸せそうで、ずるいな~~~~~」

そして、真顔になって続けた。

「-----ぶっ壊してやる」

と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その夜…

お嬢様女子大生の詩織里が、
自分の部屋でぶつぶつとつぶやいていた。

「わたしの体は宝石…
 みんなに見てもらいたい…」

「わたしは宝石…」

「わたしは宝石…」

うつろな目で呟き続ける詩織里。

彼女は、暗菜に憑依されていた。

「すべてをさらけだすーーー
 全部脱ぎ捨てるーーー

 わたしは、、、美の結晶・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

鷲野家でも、異変が起きていた。

詩織里に続いて憑依された鷲野家の母親、
芽衣子は呟いていた。

「---りこん・・・
 こんな家にもう居られない」

「今すぐ離婚したい!
 今すぐ!今すぐ!」

「こんな家に居たら…おかしくなっちゃう!」

芽衣子は一人、叫び続けた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌朝。

「おはようございます」
智恵が暗菜に挨拶をすると、
暗菜は微笑んで、家の中に入っていた。

その時だった。

「あははははははははっ!」
大笑いしながらお嬢様女子大生の詩織里が家から出てきた。

「---あ~~~五十嵐さん!おはようございま~~~す!」
いつも以上にハイテンションな詩織里。

「おはようございます」
智恵がほほ笑みながら挨拶を返す。

”今日はやけに元気だな”と思いつつ…。

「わたしの綺麗なからだ…
 五十嵐さんも見てください!」

そう言うと、詩織里は、自分の服を破り捨て始めた。

「---!?」
智恵は驚いて目を見開く。

満面の笑みで服を破っていく詩織里。

よく見ると、ウェーブがかった髪の毛も、何故か乱れきっている。

「ふふぅ~♡」
全ての服を脱ぎ捨てると、自分の体をうっとりとした表情で見つめた。

「---あ、、、、あの・・・」
智恵が言うと、詩織里が「はぁ…♡ はぁ…♡」と言いながら
飢えたメスの表情で智恵を見た。

「わたし、、宝石みたいに綺麗でしょぉ????

 あぁ…♡ きれい!まるで宝石みたい!
 きれい!きれい!きれい!」

詩織里が自分の体を力強く抱きしめて満面の笑みを
浮かべている。

「--ま、、まずいですよ!
 服を着てください!」

智恵が服を拾うが、詩織里は意にも介さずに
笑い続けた。

「おかあさん!」
鷲野家の長女、鷲野 恵菜(わしの えな)の声が聞こえた。

「--?」
智恵が横を見ると、
母親の芽衣子が荷物を持って出てきた。

「---ど、どうしたんですか?」
目の前に全裸の詩織里がいる中、
わけもわからず尋ねる智恵。

「どうって?出て行くのよ、こんな家!」
吐き捨てるようにして芽衣子がそのままタクシーに乗り込んで
走り去ってしまった。

「おかあさん…」
長女の恵菜が涙を流してうずくまる。

「はぁん♡ きれい♡ きれい♡」
喘ぎ続ける詩織里。

「---な、、、ど、、、どうなってるの…」
智恵は思わず、そう呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

カーテンを開けて、玄関前の様子を見つめていた
暗菜は微笑んだ。

「----幸せ・・・
 あんたたちだけ、、ずるい…

 ぜんぶ、、、、ゆがめてやる…!

 ユ ガ メ テ ヤル・・・」

暗菜は、呪文のようにそう呟いた。

②へ続く

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コメント

歪女・・・怖いですね(汗)

ちなみに「ゆがみおんな」と読むには本来
「歪み女」ですが、
見た目を考慮して「歪女」にしました。
あまり、深くは気にしないでください!笑

憑依<歪女>
憑依空間NEO

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