カードを現実化(リアル化)させる力を持った
”リアル・デュエリスト”。
今日も、そのリアルの力を持つ一人の人間が、
悲劇を巻き起こそうとしていた。
カードで”元カノ”を傷めつけていく元カレ。
その狂気の行く末はー。
リアルデュエリストの新作です。
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「なぁ…俺と別れてから2ヶ月でもう新しい彼氏作ったのかよ?」
高校生の鬼塚 京介(おにづか きょうすけ)が、
目の前に居る女子高生を睨んでいる。
「---あ、、あなたとは、ちゃんと別れたでしょ!」
魔法カード、しびれ薬の効果で、
身動きのとれない女子高生、八雲 静香(やぐも しずか)。
リアルの力を持つー、
リアルデュエリストの元カレに下校時に
「憑依するブラッドソウル」のカードによって、憑依され、
元カレである鬼塚の家に無理矢理連れ込まれたのだ。
「ちゃんと別れたぁ…?
フン…俺は認めてねーぞ!」
粘着質な鬼塚は、
別れたあとも静香に執拗に付きまといをしていた。
そして、彼は先日、
偶然「リアルの力」を手に入れてしまったのだ。
力を手に入れた彼がすることは一つー。
元彼女である静香への復讐。
そして、静香の新しい彼氏、勝鬨 瀬戸(かちどき せと)への
復讐だった。
「---は、、離して!こんなことして
ただで済むと思ってるの!?」
静香が気丈にも叫ぶ。
だが、鬼塚は静香の胸を触りながら笑う。
「-お前は、俺のものだ」
鬼塚の目に狂気が走る。
「---俺の彼女にもう一度なれ!」
「---イヤよ!」
静香が否定の言葉を口にする。
「---俺だってよ、無理矢理彼女にするなんて
ことはしたくねぇんだ。
さっきみたいに、俺が憑依するブラッドソウルという
モンスターの姿になって、お前に憑依することもできる。
洗脳ブレインコントロールというカードを使って
洗脳することもできる」
静香が、恐怖で身を震わせる。
「--でもよ、
お前だって、洗脳なんかされたかねぇだろ?
だったらよ…」
パチン!
しびれ薬の効果から抜け出した静香が
鬼塚の頬にビンタした。
「--アンタ最低!」
静香の言葉に、鬼塚はショックの表情を浮かべる。
「ふふふ…
俺をどこまでも拒絶するか!」
鬼塚は狂気の表情で叫んだ。
「--揺るさねぇ!地獄を見せてやる!」
そう言うと、鬼塚はカードをかざした。
”アリの増殖”
そのカードにより、
アリが大量に、這い出てくる。
静香は虫が大の苦手だった。
「いやあああああっ!」
恐怖に悲鳴を上げる静香。
「--俺を裏切った罰だ!
新しい彼氏なんかつくりやがって!」
「あ、、アンタが暴力を振るうからでしょ!」
静香が反論すると、
京介は笑った。
「テメェ、減らず口叩きやがって!」
魔法カード”電撃鞭”をかざす京介。
そして、鞭を手に持ち、叫んだ。
「黙って、俺の彼女になりやがれ!」
電撃鞭を思いっきり振って、
静香に叩きつける。
「きゃあああああああああっ!」
電撃が体に走り、静香が悲鳴をあげる。
「--くへへっ!
いい声で泣くじゃねぇか」
京介は笑う。
「--ー静香、お前を痛めつける気はないんだよ。
ただ、俺の彼女に戻ってくれれば…」
京介がそこまで言うと、静香が、唇をかみ締めて痛みに
耐えながら呟いた。
「---わたしは…、
アンタと一緒になんてならない!」
決意のまなざしー。
「-----」
京介の中で「ブチッ」と音がした気がしたー。
”理性”がはじけ飛んだ音ー。
「--ひひひひひひ、じゃあしかたねぇな!
力づくでも、彼女になってもらうぜ!」
ーーそう言うと、京介は、
「心変わり」魔法カードを手にして笑った。
「---お前のその心…変えてやるよ」
そのカードを見て、静香は目を見開く。
「い…いやっ!それだけはやめて…!ねぇ、、お願い!」
静香が叫ぶ。
そして逃げ出そうとする。
「---にがさねぇよ!」
京介が叫んだ。
「万力魔人バイサー・デス!」
拷問機械のようなモンスターを彼は”召還”した。
自分がモンスターの姿に変わるのではなく、
その場に、モンスターが出現した。
そして…
バイサーデスが静香の頭に装着される。
「きゃあああああああああっ!」
頭を締めつけるような痛み。
静香は悲鳴をあげて叫んだ。
「--これでもう、お前は逃げられない」
京介が言う。
そして、
京介はカードをかざす。
”心変わり”のカードを…!
「----お願い やめ…」
静香の頭に、衝撃が走る。
言葉では言い表せないような衝撃。
京介は、バイサーデスのカードを外し、
静香の拘束を解いた。
「あっ…あっ・・・」
静香が目から大粒の涙を流している。
けれどーーー。
「---くくく、お前の彼氏は誰だ?」
京介が意地悪そうに尋ねる。
「うーーー…あっ… あっ…」
全てが塗り替わっていくような不気味な感覚。
大切なモノが”塗り替えられていく感覚”
けれども…
それが”何か”を思い出すことができない。
「あっ…あっ…ああああ…」
静香は、ただ、”喪失感”に襲われて涙を流し続けた。
その、心が塗りつぶされていく。
”新しい心”にー。
「---ふん、俺を怒らせると
どうなるか分かったか!」
京介が叫ぶ。
そしてーー、
カードを手に…
「---鬼塚!」
背後から、静香の彼氏、勝鬨の声がした。
「---ようやくお出ましかぁ!」
京介が嬉しそうに振り返る。
鬼塚 京介はクラスでもトップクラスの
”粘着質”な性格で、”面倒くさい”生徒だ。
同じクラスの勝鬨も当然それを知っていた。
「--お前…静香に何をした!」
勝鬨が叫ぶ。。
放心状態でその場にうずくまっている静香。
「--くく…
”心変わり”をさせてやったんだよ!」
京介が憎しみをこめて言う。
そう、これは罰ー。
彼氏である俺を捨てて、新しく”勝鬨”という彼氏を
作った静香に対する、罰だ。
「--静香!おい、しっかりしろ!」
静香を抱える勝鬨。
だが…
「汚い!触らないで!」
勝鬨の手を振り払って、侮蔑のまなざしを向ける静香。
「---鬼塚ァ!俺の彼女に何をした!」
勝鬨が叫ぶ。
京介は笑った。
「--俺さ、カードを現実化させる力を持ってるんだよ。
その力でさ…
”心変わり”って魔法カードをそいつにつかったんだよ!」
京介のそばに静香が甘い笑みを浮かべながら近づいていく。
「---なんだって……」
”カードをリアル化(現実化)させる力を持った人間、
「リアルデュエリスト」その言葉は聞いたことがある。
と、いうことは目の前に居る静香は
”心変わりによって…?”
「静香!俺だよ!俺が分かるか!」
勝鬨が叫ぶ。
だが、
「気安く呼ばないでくれる?」と、
静香は嫌悪感をあらわにした。
「--静香…
目を覚ませ!お前は”心変わり”のカードで!」
勝鬨が叫ぶ。
しかし、静香は、京介の腕の中に抱かれて
嬉しそうな表情をしている。
「---京介ぇ・・・
わたし、あなたのことがやっぱり…だいすき!」
うっとりとした表情で言う静香。
「ーーねぇ!わたしを抱いて!もっと力強く!
抱いて!」
飢えた表情で静香が言う。
「---やめろ!!目を覚ませ!」
静香と京介の間に割って入った
勝鬨は叫ぶ。
「--何よ!邪魔しないで!
私は京介のことがだいすきなの!」
静香がわめく。
ーーーリアルデュエリストの力がここまで強大だなんて。
「---許さない」
勝鬨が京介を睨む。
「--ふはっ!怖いねぇ!
そんな怖い顔で睨まれると参っちゃうな…!」
そういうと、京介はカードをかざした。
ティオの蟲惑魔ーーー。
「---おまっ!ふざけんな!」
小さな少女の姿になった勝鬨が叫ぶ。
ーーしかし、その声は”可愛らしく”、
迫力がない。
「おー、おー!
可愛いねぇ!ふははははは!
そのからだじゃ、怒っても迫力ないぜ!」
京介はそう言うと、静香を抱きしめた。
「--静香、お前は俺の女だ」
「---うん♪」
静香が嬉しそうに言う。
「--お前はの体は、俺のものだ」
京介が言う。
普通なら驚くべき言葉ー。
けれど”心変わり”していた静香はそれを受け入れた。
「---うん♪」
許可を貰った京介は”憑依するブラッドソウル”の
カードを使い、自分がブラッドソウルの姿となり、
静香の体に飛び込んだ。
彼の目的はーーー
静香を自分ものにすることー
「くふふふふふふっ…
ははははははは!ついに、ついに
俺がー、いや、わたしが静香になったのよ!」
そう叫んで、勝鬨の方を・・・
突然ーー
静香の手に火花が散った。
「あちっ!」
静香が叫ぶ。
「---なっ」
静香は驚いて目を見開いた。
ーー勝鬨が「火の粉」のカードをかざしている。
静香の中に居る京介はニヤリと笑う。
「---そうかぁ…お前も”リアル・デュエリスト”なのか」
静香が男言葉で言うと、
勝鬨は静香を睨んだ。
「--静香は俺の彼女だ!
返してもらう!」
勝鬨が叫ぶ。
「--俺もさ…3ヶ月前にこの力を手に入れたんだけど
危険な力だから絶対に使わない、って心に決めてた…。
けど・・・」
デッキを手に、京介のほうを見る。
「--静香を弄ぶお前をーー
俺は許さない」
その言葉を、静香の体を支配した
京介が笑う。
「--はっ…俺と…
いや、わたしとリアルデュエルをするというの?
バカにしないで頂戴!」
静香の真似をしながら言う京介。
睨む合うふたり。
そしてーーー
「現実決闘!(リアル・デュエル!)」
二人がデュエルの開始を告げた。
「---俺のターン!火の粉発動!」
火の粉が静香の周囲に現れ、
静香は手を火傷する。
「チッ…私のターン!」
静香がカードを引いてかざした。
「---うふふふふ…
勝鬨くぅん…地獄を見せてあげる!」
「千本ナイフ!」
魔法カード、千本ナイフを発動する静香。
その表情は悪魔のように歪んでいた。
「くくく…
彼女のわたしに、殺されなさい!」
静香が叫ぶ。
「ーーーーくそっ!静香を返せ!」
勝鬨が叫ぶ。
「---ふふふっ!嫌よ!
これは、俺を裏切った罰だ!
2度と裏切れないように、俺が静香になるんだよ!
あはははははっ♡」
大笑いする静香。
そして、笑い終えると勝鬨の方を見た。
「…にしても、可愛い姿ね♡」
ティオの蟲惑魔の姿になった勝鬨を笑う静香。
そして…。
「---千本ナイフ!死になさい!」
千本のナイフが勝鬨のほうに向かって飛ぶ。
「あははははははははは♡
あはははっ♡
わたし♡ 彼氏を殺しちゃった♡
あはははははっ!あっははははははは~♡」
胸を狂ったように揉みながら、
大笑いして、足をじたばたさせる静香。
「リアルデュエルはわたしの勝ちっ♡」
可愛らしくポーズを決める静香。
しかし…
可愛らしい声が響いた
「--それはどうかな?」
とーー。
勝鬨だった。
勝鬨がーー
魔法カード、防御輪を発動してナイフをガードしていた。
本来のデュエルでは、相手ターンに魔法カードは
一部を除いて使えない。
だが、これはリアル・デュエル。
そもそもターンの概念など、ないのだ。
「---くそっ!大人しく沈めよ!
俺に気持ちよく、静香を楽しませろよ!」
静香に憑依している京介が叫ぶ。
ーー可愛らしい姿のまま、京介を睨む勝鬨。
そして勝鬨は叫んだ
「よくも俺の彼女を!!
懺悔の用意はできているか!?鬼塚!」
京介に向かって、そう叫ぶと、
勝鬨は、「融合解除」というカードを発動した。
融合解除ならば、もしかしたら…
静香と京介を分離させられるかもしれない。
「ごふっ!」
ーー静香の体から、京介がはじき出された。
「---貴様ァ…」
うずくまる京介。
意識を取り戻した静香が京介のほうに駆け寄って
心配そうに京介を見つめる。
そう、まだ”心変わり”の効果が残っている。
「----くくく、勝鬨!
残念だったな、静香の心は俺が・・・… はっ!」
勝鬨が”狂戦士の魂(バーサーカーソウル)”というカードを発動していた。
モンスターカードをドローするたびに、攻撃できるカード。
「---静香に手を出しやがって!許さねぇ!」
勝鬨はそう叫ぶと、デッキからカードをドローした。
ドロー!モンスターカード!
と。
ドローされたモンスターが京介を襲う。
京介は吹き飛ばされて、壁に体を打ち付ける。
「うぐぁっ・・・」
ドロー!モンスターカード!
勝鬨が再びモンスターをドローした。
そのモンスターの剣に切られ、血を流して吹き飛ばされる勝鬨。
静香が目に涙を浮かべてその様子を見る。
「---きょ、、京介!!!」
ーーー勝鬨は知っていた。
”心変わり”のカードの効力を消す方法は
リアルデュエリスト界では無い。
ーー魔法除去の類でも元に戻らないし、
心変わりをもう一度使っても、何故だか元に戻らない。
なぜかは分からないが、
それがリアルデュエリストにおける心変わりというカードだ。
だから、もうー。
静香の心は…!
ドロー!モンスターカード!
静香の心を奪われてしまった憎しみから、
勝鬨は12枚目のモンスターカードをドローした。
京介はとっくに倒れて、既に動いていない。
「--ドロー!」
勝鬨がカードをドローしたそのとき、
その腕がつかまれた。
「もうやめて勝鬨くん!
京介のライフはとっくに0よ…!」
静香が泣きながら勝鬨の手を押さえた。
勝鬨は我に返って
京介を見つめる。
可愛らしい少女の姿のままで。
「----はぁ…はぁ…」
静香を狂わせた男、
鬼塚 京介は
”本当の意味での”ライフが0になっていた。
つまりー。
彼は、もう。
「----…京介!京介ぇぇぇ!」
心変わり させられてしまった静香が
京介の死に泣き喚く。
「----・・・!!」
京介の手元にカードが握られている。
「----」
勝鬨はそのカードを見て、目を見開いた。
それはーーー
京介が死の直前、ギリギリで発動したカード。
ーーーー”自爆スイッチ”
直後、その京介の家からは
激しい爆発音が響き渡ったーー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「-ー人とは愚かなものだ」
”リアル”の力を分け与えている謎の男が呟く。
彼はモニターで、リアルの力を手に入れた人間のことを
観察している。
だがー、
力を手に入れたものの大半は力に溺れる。
勝鬨も、京介もそうだった。
「---人にーー未来などない…か」
彼はそう呟くと、
人への絶望の言葉を口にした…。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
実際のルールは知っているのですが
リアルデュエリスト用に、ルールは都合よく改変しています(笑)
お読み頂きありがとうございました!
コメント
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
名作だ、、、、。
SECRET: 0
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> 名作だ、、、、。
ありがとうございます!
これからも頑張ります^^