佳奈美の体を手にして、
学年のアイドルとしての地位を奪い取った桃子。
反対に、桃子の体に憑依させられ、
どん底につき落された佳奈美ー。
果たして、二人の運命は…?
-------------------------
「おはよう佳奈美!」
クラスメイトの女子たちが、佳奈美の方に集まる。
「おはよう♪」
佳奈美が元気よく笑顔を振りまく。
「ね~ね~昨日さ~」
明るく社交的な佳奈美の周囲には、いつも多くの
クラスメイトが集まっている。
「------」
桃子はその様子を悔しそうに見つめる。
”あれはわたしじゃない!
どうして誰も気づいてくれないの?”
桃子は、あれから数日。
必死に周囲に”自分が佳奈美だと”
訴えた。
だが、誰一人として、信じてくれなかった。
「---」
うなだれる桃子。
桃子の前の座席の佳奈美が戻ってきて
桃子に挨拶する。
「おはよう、辻村さん」
その表情は勝ち誇っていた。
”自分が全て奪い取ってやった”という
優越感に浸っていた。
「----おはよう」
歯を食いしばりながら桃子は挨拶を返した。
佳奈美が鼻で笑って、
耳打ちした。
「あたしは佳奈美になったの。
あんたは桃子。
わかる??
あたしは皆に愛される学年のアイドル。
アンタはブスで陰険で、素行不良の取り柄のない生徒。」
そう耳打ちすると、佳奈美は笑みを浮かべて
自分の座席に着席した。
「---許さない」
桃子はそう呟いた。
まだ、手はあるー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後。
桃子は図書室に居た。
「---……俺は、お前の味方だ」
親しくしていた男子生徒の翔真が言う。
「ありがとう…稲田くん」
桃子が目に涙を浮かべる。
稲田 翔真。
彼だけは、佳奈美の話を信じていた。
桃子に自分の体を奪われ、
佳奈美が桃子の体に憑依させられた、という話を。
「---でもさ…どうするんだよこれから?」
翔真が尋ねる。
「---わからない…
わからないよ…
わたし、どうしたらいいの…?」
桃子が涙を見せる。
翔真は一瞬 イヤそうな表情を浮かべた。
彼はー
桃子が嫌いだった。
陰険で、いつもクラスをかき乱す様なことをして、
ブスなのに、似合わないおしゃれをして、
しかも、素行不良。
真面目な翔真にとって、腹立たしい存在だった。
例え、中身が佳奈美でも、
許せないのだ。
「---あのさ…
家には行ってみたのか?」
翔真が言う。
「---ううん」
桃子が首を振る。
「--両親なら、姿は変わっても、
佳奈美は佳奈美だって、気づいてくれるさ…。
俺一人じゃ、力になってあげるにも限界がある。
だから、まずは味方を増やさないと…」
翔真の提案に、
桃子は微笑んだ。
「そうね…うん、、ありがとう
わたし、頑張るね」
その表情を見て、
翔真が露骨に目を逸らした。
「---翔真…くん?」
桃子が悲しそうに言う。
「---悪い…
俺、、、辻村さんのこと、、嫌いでさ…・
本当にごめんな…
中野さん、中身は中野さんなんだって
わかってる。
けどさーー。
どうしても俺…。」
その言葉に桃子は首を振った。
「ううん…仕方ないよ…
でも、ありがとう…。
翔真くんが居てくれるだけで…
本当にうれしい…」
桃子の言葉に翔真はうなずく。
そして言った。
「でも不思議だな…
外見が辻村さんだと、
なんか、性格まで辻村さんに見えてくるよ…」
冗談のつもりだった。
けれどーー
その言葉は、桃子…いや、その中にいる佳奈美を傷つけた…。
「----…」
暗い表情を浮かべる桃子。
「---あ、、ごめん…」
翔真が申し訳なさそうに言うと、「気にしないで!」と明るく振るまって
桃子は図書室から出て行った。
「…はぁ…」
翔真がため息をついて立ち上がる。
そして、図書室から出るーー。
図書室から出た翔真は顔を上げた。
「----中野さん…」
目の前にーー
佳奈美ーー
中野佳奈美が立っていたー。
中身は桃子。
そうとは分かっていても、内心好意を抱いていた
翔真はドキッとしてしまう。
「---ねぇ…
騙されないで翔真くん・・」
佳奈美が口を開く。
「---何がだよ」
翔真が言う。
他のクラスメイトや先生は気づいていない。
だが、翔真だけは、なんとなく、わずかな違いから
「入れ替わり」を信じた。
「---あたしが佳奈美だよ…。
さっきのは桃子…」
佳奈美が翔真に近づく。
「---…な、、中野さん…」
上目遣いで、翔真を見て微笑む佳奈美。
「…や、、やめろ。俺には分かっている…
お前は、辻村さんだろ!
佳奈美の体をかえーー」
その時だった。
佳奈美が翔真に抱き着いてキスをした。
甘い感触が、翔真の唇に触れる。
ちょうど通路から死角となる部分に立っていた二人は、
そのまま抱き合った。
違うーー
これは佳奈美じゃないーー
こいつは桃子ーーー
そう思いながらもーーー
翔真は自分の理性を抑えきれなくなった。
違うーーー
でもーーーー
見た目は佳奈美じゃないかーー
佳奈美は、佳奈美じゃないか!
中身なんてーーー
「---ふふっ♡」
佳奈美が翔真から離れる。
いつも通りの優しい笑みを浮かべて。
「---ねぇ、、あたし、翔真くんのこと
ずっと好きだったの…
もしよかったら…
あたしと……その…」
わざと恥ずかしそうに言う佳奈美。
その仕草が、翔真の心を射抜く。
「---お…俺は…」
違うーー
コイツは佳奈美じゃないーー
違うーー。
俺が好きなのは佳奈美ーー
「---…あたし…翔真くんの
彼女になりたいの…」
佳奈美が顔を赤らめて言う。
「---」
その表情を見た翔真は
心臓がバクバクして止まらなった。
「--中野さん…俺…」
翔真は顔を赤らめて口を開いた。
「俺も…、俺も、、中野さんが好きだ!」
翔真はそう言って佳奈美の方を見る。
「--俺の方からもお願いするよ!
中野さん…いや、、佳奈美!
俺と付き合ってくれ・・・!」
翔真の理性がーー壊れた。
分っているーー
けれど、、
中身がどうあれーー
目の前にいるのは…
学年一のアイドル、中野佳奈美なんだ。
そして、アイツはーー
アイツはブスな桃子なんだーー
「ありがとう…嬉しい…!」
佳奈美が満面の笑みで笑う。
そうだ…
俺は”この笑顔を守りたい”
中身なんてーーー
関係ない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--お願い!お母さん!信じて!私が佳奈美なの!」
”中野”と書かれた玄関先で
嘆願する桃子。
だがーー
母は信じなかった。
「ごめんなさい。忙しいので…
あと、佳奈美ならもう帰ってきてるから」
母が言う。
自分の母に他人行儀で話される辛さ。
「わたしは…わたしは…
おかあさん!私が佳奈美よ!!!
小学6年生の移動教室のとき、高熱を出して・・・」
そこまで言うと、
玄関から佳奈美が出てきた。
「--先生がお母さんに連絡してあたしを
迎えに来てくれた。
…でしょ?」
佳奈美が見下したような目で言う。
「---ど、、どうして…」
絶望する桃子。
”自分しか知らないハズのーー
少なくとも、桃子が知らないハズのことを何故”
佳奈美はうろたえる桃子を見ながら内心で笑う。
桃子の使った憑依薬は、記憶を引き出すことも
できるのだった。
「--お母さん、辻村さん、、学校でもよく問題行動起こしてるの…
最近、あたしが狙われちゃって…」
佳奈美が横にいる母に向かって言う。
「--本当に…
ねぇ、あなた、うちの娘が困ってるの!
そういうことしないで頂戴!」
母が、怒りを桃子にー
いや、”実の娘”に向けた。
佳奈美が邪悪な笑みを浮かべながら家の中に入っていく。
「----どうして… どうしてよ!!!」
桃子は叫んだ。
だがー
その声は母には届かなかった…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
土曜日。
今日は、体の入れ替えをされる直前に、
佳奈美が、翔真と”とある約束”をした日だー。
一緒に勉強するという約束。
翔真の家で一緒に勉強する予定だった。
桃子は、”自分を佳奈美だと信じてくれている”
翔真のもとに向かおうと準備をしていた。
翔真は、自分の部屋に女子をあげても、
襲うようなやつじゃない。
これまでも佳奈美は何度か翔真の家を訪れている。
桃子の家庭は、滅茶苦茶だった。
父は酒におぼれ、母はアイドルにどっぷりはまって借金までしているおっかけだ。
佳奈美の家庭とは正反対。
ーーーーーー。
桃子が翔真の家を訪ねた。
すると、翔真が出てきた。
「---…あ、つじむ・・・いや、中野さん」
翔真がどことなくよそよそしい。
「--朝、連絡したけど、返事がなかったから…
ホラ、土曜日、勉強の約束してたでしょ?」
桃子がほほ笑む。
「-----帰ってくれ」
ーーーー?
翔真の言葉に、桃子が表情をゆがめる。
「---帰ってくれ。俺が勉強を約束したのは、、
なか、、、いや、辻村さん、君じゃない」
翔真が言う。
冷たい口調で。
「---え??…ど、、どうして…!
何か用事…?」
その時だった。
「お待たせ!翔真くん♪」
可愛らしいミニスカート姿の自分の体ーー
佳奈美が姿を現した。
「---えっ…」
桃子が唖然とする。
「---あ、佳奈美!
待ってたよ!さ、中に…」
翔真が言うと、佳奈美はにっこりとほほ笑んだ。
桃子が佳奈美の方を睨む。
すれ違いざまに佳奈美が
桃子に小声で話しかける。
「--人ってさ…外見が全てなのよ。
翔真君、中身よりからだを選んだの。
ふふふ…♡
ざんねんだったね、辻村さん」
佳奈美がそう言うと、
桃子の方に勝ち誇った表情を浮かべて
翔真の方に歩いていく。
「--初デートが勉強なんて、うふふ・・・♡」
佳奈美が言うと、
翔真が顔を赤くして微笑んだ。
「---・・・・」
桃子は握りこぶしを作った。
そして、叫んだ。
「----ふざけないでっ!」
強引に玄関の方に向かう桃子。
「--あんた!翔真君を騙したの!?
それとも誘惑したの?」
服をつかまれた佳奈美が笑いながら振り返る。
「やめてよ!もう、もうやめてよ!
わたしの体を返して!!
わたしの体をもて遊ばないで!!!
そんな格好で外出しないで!」
色っぽいミニスカート姿の佳奈美…
自分の体を見て叫ぶ桃子。
「あら、辻村さん、
あたしに嫉妬してるの?
うふふ・・・
まぁ、そうよね。
可愛くて、こ~んなに良い体していて、
頭も良くて、愛嬌もある。。
おまけに家庭も幸せ!
うふふふ・・・
ごめんね~
あたしも辻村さんは不憫だと思うけど、
人生変わってあげることはできないの♡
ね~翔真くん♡」
佳奈美が翔真の方を向いて、同意を促すと、
翔真が「あ、、あぁ…」と同意の言葉を口にした。
「---ね、、ねぇ翔真君!
やめてよ!分かってるでしょ!
私が佳奈美!
そっちにいるのが辻村さんよ!」
桃子は涙ぐんで叫んだ。
「--うっさいわね!ブス女!」
佳奈美が叫ぶ。
パチン!
桃子が佳奈美にビンタを加えた。
「--ブスなのはアンタのほうよ!
私の体を奪って、そんなに楽しいの??
私の体を奪ったって、
辻村さん、アンタはずっとブスのままよ!」
桃子は泣き叫んだ。
悔しくて、悔しくて…
「----帰れよ」
翔真が低い声で言った。
「---え」
佳奈美が驚いた表情を浮かべる。
桃子も驚く。
やっぱり翔真はーーー
「---帰れよ…
これ以上、佳奈美に迷惑かけんなよ!」
翔真がー
”帰れよ”といったのは、佳奈美が憑依させられているー
桃子の方だった。
彼はーー
”心”ではなく”体”を選んだのだ。
「--翔真くん……
ひ、、、酷い!私が佳奈美だってわかってるよね!?
それなのにーーー」
桃子は叫んだ。
けれどーー
「---これ以上、佳奈美のフリするんじゃねーよ!ブス女!」
翔真が叫んだーーー
翔真は
”佳奈美”の体を選び、中身が桃子だと知りながら
佳奈美の体の方を選んだ自分にも腹が立っていた。
その苛立ちを、、ぶつけるかのように叫んだ。
「---ぶ……ひ、、、酷い…酷い…酷い…
うぅっ…ううううううううっ、ああああああ!」
桃子が泣きながら走り去る。
佳奈美は勝ち誇った様子でその様子を見つめていた。
「---さ、翔真君、勉強しましょっ♪」
「・・・あぁ」
その日ー
佳奈美と翔真は勉強をしーー、
そして、体の関係を持ってしまった…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1週間後。
翔真と佳奈美がイチャイチャしながら登校する。
「--うふふっ♡ 今週も勉強に行っていい?」
佳奈美が言うと、翔真は笑みを浮かべた
「もちろんだよ、佳奈美!」
翔真はーー
”佳奈美は佳奈美だー
中身なんて関係ない”という答えに辿り着いていた。
中身が誰であろうと、
可愛いモノは可愛いのだ。
クラスの誰も、佳奈美のことを疑わなかった。
そしてーー
佳奈美は”不登校になった”桃子の机を見つめたー
「ふふ・・・
あたしが代わりに佳奈美として生きて行ってあげる…。
うふふ・・・あたしが、中野 佳奈美…」
彼女は邪悪な笑みを浮かべて微笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜の繁華街。
一人のギャルが、暴走族の男と戯れていた。
「あははははははは!
チョ~うける!」
暴走族の話を聞いて笑う少女。
お世辞にも可愛くはない。
だが、超がつくほど派手な衣装で、
彼女は、ギャルメイクをして、
暴走族の男と笑っていた。
「それにしても、お前 学校とかいいのかよ?
親とかは?」
男が尋ねる。
すると少女は答えた。
「いいの、いいの!ど~せ私はブスですよ~!
ど~せ、誰も私のことなんか必要としてないの~!
も~バカらしくなっちゃった!
今まで真面目にやってきたの、何だったんだろう!
あはははは、ほんっとうにバカみたい!
あははははははっ!あははははははははっ!」
少女が自暴自棄に笑う。
「--へっ、まぁ、いいじゃねぇか。
一緒に走りまくろうぜ、
なぁーーー、桃子」
ギャルメイクの少女はーーー
変わり果てた佳奈美だった。
桃子の体に憑依させられ、
自分の人生と体を奪われ、
唯一信じてくれていた翔真をも失った佳奈美の心は壊れた。
自暴自棄になり、
本来の桃子と同じように、失墜していった。
そしてー
ついに家を飛び出し、不登校になり、
暴走族とつるみだしてしまったのだった…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3か月後。
桃子はそのまま退学になった。
その行方は、誰も知らない。
「---」
佳奈美は、学年のアイドルとして、
楽しい日々を送っていた。
「---こんなに楽しいなんてね…」
佳奈美は窓の外を見て微笑んだ。
ふしぎ・・・。
彼女はそう思う。
この体を奪ってから、心が穏やかになった気がする。
気持ちに余裕が持てて、
何もかもが楽しくなった。
「・・・・やっぱ…人間見た目なのよ…うふふ♡」
佳奈美はそう呟いて、
放課後の教室を後にした…。
通学路を歩く佳奈美。
その後姿を見つめている男女がいた。
「--ーアイツか?桃子。
お前のことを見下していた”学年のアイドル”ってのは?」
暴走族の男が言う。
「そうよーーー。」
ギャルに成り果てた桃子が言う。
かっての自分の体を憎悪のまなざしで見つめながら。
「---佳奈美…わたしはアンタを許さない。
メッチャクチャにしてやるわ…くくくく」
二人の優劣は逆転したー。
桃子は佳奈美の体と人生を奪いとり、
学年のアイドルとして、輝かしい人生を。
一方の佳奈美は桃子の体で人生を送る羽目になり、
グレて、道を踏み外し、暴走族と夜の街を走るギャルになってしまった。
そしてー。
逆転した優劣はー
さらなる悲劇を起こそうとしていた。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
リクエスト作品、ようやくお届けできました!
満足できる内容になっていれば嬉しいです!
続きは…ご想像にお任せします!!!(逃)
コメント
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うほぉw
ODでも立場逆転で、興奮しました!
桃子に入った元優等生が堕ちていって、元ギャルが優等生っぽくなるという展開はやばすぎw(いい意味で)
この後元佳奈美は何するのか…
なかなか面白かったです!
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> うほぉw
> ODでも立場逆転で、興奮しました!
> 桃子に入った元優等生が堕ちていって、元ギャルが優等生っぽくなるという展開はやばすぎw(いい意味で)
> この後元佳奈美は何するのか…
> なかなか面白かったです!
ありがとうございます!
楽しんでもらえて何よりです!
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この後どうなったのか凄く気になります!
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> この後どうなったのか凄く気になります!
コメントありがとうございます!
確かに気になりますね(笑)
機会があったら書いてみるかもしれません!
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機会があれば、憑依しかえして優越感に浸る佳奈美になった元桃子を落とす復讐物を期待します。
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> 機会があれば、憑依しかえして優越感に浸る佳奈美になった元桃子を落とす復讐物を期待します。
時間はかかるかもしれませんが、考えておきます!