<憑依>ムスメの身代金 ②変えられちゃう

何者かに憑依されてしまった娘の亜優美。

彼女は父親に容赦なく、悪意に満ちた要求を
突きつけていくーー。

父に、娘を救い出すことはできるのかー。

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「私は……亜優美…」
亜優美は一人、誰もいない家で呟いていた。

憑依している男の家だ。

家の証明はほとんどが消され、暗闇に包まれている

その中で、亜優美は一人、しっかりとした口調で言う。

「私は亜優美…
 お父さんは、あの人の大切なモノを奪った人間のクズ…」

亜優美は一言、一言かみしめるようにして言う。

男が使った緑色の液体、
憑依シロップと名付けられている薬品には
もう一つの効力があった。

その効力とは、
時間はかかるものの、憑依している間に、
あることを強く念じることによって、
憑依された人間自身の記憶や思考にも
少しずつ影響を与えていく… というものだった。

憑依されている間に、憑依している人間の
思考が、徐々に、その肉体の記憶や思考にまで
影響していくのだ。

「…私はお父さんを許さない」

「…私はお父さんを許さない」

何度も、何度も、
亜優美の体で、亜優美の声でそう呟いた。

そして一人笑う

「お父さん、急がないと…
 わたし、本当に変わっちゃうよ…?

 ウフフフフ…」

その笑顔はーー
優しい亜優美のものなどではなく、、
悪魔の微笑みのようだったーー。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

…娘が憑依されてから1日。

妻にも話すことができず、
俺は交渉は順調に進んでいるから大丈夫だと
妻にそう伝えた。

ーだが、、長引かせるわけにもいかない。
高校には体調不良だと連絡を入れた。

警察にも相談できない。

人質ーー
と、いうよりは娘そのものが奪われている状態ではーー
うかつなことはできない。。

亜優美の黒く染まった笑顔を思い出す。

そして、優しい本来の笑みを思い出す。

「亜優美ーーー」

俺は涙をこらえて頭を抱えたーーー

俺に何か恨みがある人間の仕業かー?

会社を拡大するために、俺は確かに多くの
人間を傷つけたかもしれないーー

だがーーー。

ーーー電話が鳴った。
その音は、まるで死のサイレンかのようだった。

電話に出ると、
聞きなれた声が聞こえてきた。

「--おとうさん!
 亜優美だよ~!

 今日も私と会いたい?」

亜優美の元気な声が聞こえる。

かけがえのない存在ーー

けれどもーー
俺の手は今の亜優美には届かない。

「場所は?」
俺が聞くと、亜優美が笑った。

「私ね~
 今日は西区の公園にいるの!

 学校サボってね!
 ウフフ…
 どう、おとうさん~?
 私、悪い子になっちゃった!あは!」

俺は受話器を握りしめた。
そのまま受話器が砕けるのではないかと
思うぐらいに、力強くーーー。

受話器がギシギシと音を立てて…

絶対に許さない。
亜優美に憑依しているヤツを、
必ず引きずり出してやる。

俺は指定された公園へと向かった。

ーー夕方。
公園に辿り着いた俺は亜優美を探した。

「---お父さん!」
背後から亜優美の声がした。

「---あーーー、、」
名前を呼びかけて俺は言葉を失った。

亜優美は胸元を強調したブラウスに
今にも見えてしまいそうなぐらい短い、
赤いミニスカートという派手な格好で
こちらを見ていた

「貴様ーー亜優美になんて格好させるんだ!」

俺は思わず声を荒げた。

亜優美はー控えめな子だ。
いつも優しく、真面目でーー
俺にとっては大切なーー。

その亜優美がこんな男を誘うような格好を
させられている。

それだけでーー
俺の中の”殺意”は最高潮に達した。

拳を握りしめる。

だがーーー

「え~?可愛いでしょ!
 
 今日もさっきから、男の人が結構
 亜優美のこと見てるの!

 なんだか快感!」

亜優美がそう言うと、俺に近づいてきた。

「私とお話しするなら、
 100万円よ?

 おと~さん!」

そう言って無邪気に手を差し出す。

亜優美の真似をして、
馬鹿にしたような態度をとるコイツが
にくい!

今この場でぶん殴ってやりたい。

だが、殴っても傷つくのは亜優美だ。

憑依しているヤツじゃない。

俺はお金を渡すと、亜優美が
「バカなおとうさん♪」と笑いながら
お金を受け取った。

「じゃあおとうさん、、
 まずは~私の靴を舐めなきゃね?」

そう言うと、綺麗な足をこちらに差し出した。

今日はハイヒールを穿いている。

「貴様…」
俺は亜優美を睨んだ。

だが、今日言うとおりにしなければ、
亜優美はさらに汚されてしまう。

俺は目をつぶって
亜優美のハイヒールを舐めた。

地面に這いつくばって、
プライドを捨てて…

「あはははははは!
 お父さん、そんなに私のことが大事なんだ!
 うれしい~!」

亜優美が大笑いする。

「ホラ!もっと舐めなさい!
 もっともっと!あはは!あははははは!」

周囲の公園の利用客が異常なモノを
見るようにして俺を見ている

「あ~~~傑作!
 はい~~~合格~♡」

そう言うと、亜優美は足を下げた。

「はぁ~本当に私って可愛いよね。
 こんなに大胆に足を出しちゃって…
 …男の人に声をかけられるのも
 時間の問題かな~」

亜優美がうっとりとした顔で言う。

「くっ・・・・・・靴は舐めた!
 亜優美を解放しろ!」

俺が言うと、
亜優美がバカにした笑みを浮かべてこちらを見た

「……おとうさんさ、
 タバコ吸ってるよねいつも?
 今、持ってる?」

亜優美がそう言った

「…持ってはいる。
 だが、そんなこと関係ないだろ!
 亜優美を返せ…」

そう言うと、亜優美が手を差し出した。

「1本 私にくれる?」

俺は凍りついた。
亜優美は17だー。

まだ、たばこを吸う年齢じゃない。

「---ねぇ、早く!」
亜優美がいらだった様子で言う。

俺にーーー

俺の手でーーー

娘に喫煙させろと言うのかーー?

ふざけるなーー
そんなことーーー

俺が黙り込んでいると亜優美が冷たい声で言った。

「ねぇ、おとうさん。
 私ね、こんな風に全部、好きにされちゃってるけど、
 本当はこんなことしたくないのー。

 今も本当の私は心の奥底で泣き叫んでる。
 わかる?

 こんなことやりたくない、
 こんなことしたくない! ってね♪

 でも、今の私はしちゃうの!
 だって操り人形なんだもん!

 この体でい~~っぱい遊んで、
 真面目な亜優美を
 どんどん壊していっちゃうの!

 うふふふ…
 真面目な私がどんどん変わっていく。
 興奮しない?」

亜優美ーーー

亜優美ーーーー!

許してくれ!

「……くっ」
俺は涙をこらえながらタバコとライターを差し出した

「最初から、そうしなさいよ」
亜優美が乱暴にタバコを取り上げると、
ライターで火をつけ、美味しそうに煙草を吸い始めた。

可愛い娘がーー
嬉しそうに煙草を吸っている。

「--あ~美味しい~。
 あ~あ、また一つ、私、悪い子になっちゃった♪

 どうする、お父さん?」

俺は無言で亜優美を睨みつけた。

「…こわ~い!
 怒ってるの~?」

…俺は答えない。
挑発に乗るまいとして、
俺は黙した。

「あ、私の太もも見てるの?それとも胸?
 やだ~お父さんたら、下心丸出しじゃない!

 娘の私の体が、そんなに好きなの~~

 プっフフフ…気持ち悪い~!」

なおも亜優美が挑発を繰り返す。

「ふっ…ふざけるな!!
 亜優美で遊ぶな!

 貴様!ぶっ殺すぞ!」

俺は怒りのあまり物騒な言葉を
口走った。

「---じゃあ、殴りなよ?
 私、悪い子だもんね。

 悪い子にはしつけが必要でしょ?

 ホラ!早く!思いっきり私を殴ってよ!」

ーー殴れ。
これが次のヤツの要求なのだろうか。。

だがーー
それだけはできないーー

娘を俺自身の手で傷つけることなんてーー

「殴れないっていうの?

 お父さんが怒らないと~
 私、もっと悪い子になっちゃうよ?」

そう言うと、亜優美は煙草を乱暴に投げ捨て、
吸い殻をヒールで踏みつぶして俺の方に
近づいてきた。

「ホラ…」

亜優美が俺の手をつかみ、自分の胸に押し付けた

「街中で…こんな風に、エッチなこと、
 しちゃうよ…?」

俺の手が亜優美によって亜優美の胸に押し付けられている。

「はぁぁ…うふふ…♡
 気持ちイイ 感じてきちゃった…♡」

俺は必死に亜優美の手を振りほどいた。

「--ーあ、、亜優美…」

ついに俺の目は涙ぐんでしまった。

どうすることもできない無力感ーー
壊されていく娘ーーー

「ーーー終了~~~!」
亜優美が満面の笑みで言う。

終了…?

「5分経っちゃった!えへ!
 今日はこれまで!

 あ~あ、お父さんがたすけてくれないから、
 私、もっと悪い子になっちゃう!

 本当はなりたくないのに
 悪い子になっちゃう!

 あははは!あははは!」

亜優美は笑うと、公園の出口に向かって歩き始めた。

「---亜優美!待ってくれ!」

俺がすがるように呼ぶと亜優美は振り返った

「---亜優美、これから”面接”があるの。
 だから、バイバイ、お父さん♪」

そう言うと亜優美は足早に立ち去ってしまった。

俺はーーー無力だ。

その場で俺は膝を折った。

そして、地面に手をつき、
涙をこぼした。

「亜優美ーー
 必ず助けるからーーー

 必ずーーー…」

俺の涙はーーー
止まることなく、流れ続けた。

③へ続く

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<予告>

娘の誘拐発生から3日目…。

再び亜優美から連絡があった。

指定された場所に彼が向かうと、
そこにはメイド服を着た亜優美の姿があった。

「お父さん、私、メイドカフェでバイトはじめたよ~~
 カワイイでしょ?」

どこまでも亜優美の尊厳を踏みにじる男。

父・竜二の怒りは頂点に達していたーー。

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コメント

明日は書く時間がないので、
予め用意しておいた別のお話を掲載します!

ムスメの身代金③はあさって土曜日に書く予定です!
お待たせしてスミマセン!

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