憑依された娘の亜優美ーー。
ついに、その解放の日がやってきた。
優しい亜優美の笑顔ー
想いの果てにー取り戻すことはできるのか?
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色とりどりの光が、俺たちを照らすーー
去年の冬、家族でイルミネーションを見に行った。
幻想的な光がー
家族を照らす
「お父さんーー私ね、
介護方面の仕事に就こうと思ってるんだ」
亜優美がほほ笑みながら言う。
「介護ー?
別に俺の会社に入ってもいいんだぞ?
亜優美ならすぐに…」
俺はこれでも会社の社長だ。
亜優美一人を会社に入れることぐらいカンタンだ。
だが、亜優美は首を振ってほほ笑んだ
「ううん…
お父さんに頼ってばかりじゃいけない気がするから…。
私、自分の力で頑張ってみる」
亜優美の意思は強かった。
その言葉に俺も力強くうなずいた。
「お父さんとお母さんには、
いっぱい親孝行するから、楽しみしててね♪」
「あぁ、楽しみにしてるよー」
俺が、そう言うと、亜優美は笑って、
再びイルミネーションの方に視線を移した。
ーーいつでも愛おしい娘の姿ーー。
けれどーーー
そんな娘がーー
遠くに行ってしまう気がする。
二度と手の届かないところへーーーーー
「----亜優美!」
俺は絶叫と共に目を覚ましたーーー。
自分の寝室だったーーー
「夢…か」
そうだ…
今日は・・・
「おめでとう!お父さん!
合格だよ♪」
昨日、確かにヤツはそう言った。
そうだ…
あと少しなんだ。
亜優美は戻ってくるんだ。
何も、心配することなんてないじゃないか。
---だが、何故だろう。
俺の胸騒ぎが消えないのはーーー。
俺は不安に包まれたまま、
亜優美から誕生日に貰った大切なワインを見つめたーーー。
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とある部屋の一室。
亜優美が、高校の制服を綺麗に着こなし、
鏡の前でほほ笑んだ。
「--亜優美、これからお父さんのところに帰るね」
昨日は茶色に染めていた髪の色も黒に戻っている。
制服は落ち着いた着こなし…。
”いつもの亜優美”の姿がそこにあった。
亜優美は微笑みながら、
部屋の隅にある写真を見た。
”もう、何をしても体の痙攣は無くなった”
痙攣は恐らく、
封じ込められた亜優美本来の意識の抵抗。
特に、父親に対する辛辣な言葉を口から出すときには
体がひどく痙攣した。
だがーーー
昨日の昼を最後に…
「フフ…もう私、壊れちゃったのかもよ…」
写真に写っている
白髪まじりの男と、同い年ぐらいの女ーー
そして亜優美にどことなく似た雰囲気の女子高生を見て呟く
「---奪われたモノは、、奪い返す」
亜優美の表情に狂気が浮かび上がった。
ーーーそして、
寝室に寝かせてある自分の体ーーー
今ではすっかり白髪になってしまった男の体を
運び出す。
非力な亜優美の力ではかなり重い荷物だったが、
なんとか自分の体を車に乗せた。
そしてーーー
「今、行くね おとうさん!」
亜優美は静かに、
そして邪悪にほほ笑んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昼。
亜優美から連絡があった。
”これから向かう” とー。
妻は仕事で今日は不在だ。
俺はただ、ひたすらリビングで亜優美がやってくるのを待った。
「お父さんーーー
いつでも大好きだからねーー」
亜優美の笑顔が目に浮かぶ。
亜優美ーー
お前を取り戻すためなら俺は・・・
家の近くに黒いワゴンが止まった。
「ーーー亜優美…?」
玄関をノックする音が聞こえて、
俺が慌てて玄関を開けると、
そこにはーーーー
黒い髪、優しい笑顔、そして制服姿の
亜優美の姿があった。
「あ、、、亜優美」
俺が嬉しそうに叫ぶと亜優美が首を振った。
「あはは…気が早いよ おとうさん…
亜優美が、元に戻るのはこれからだよ!」
亜優美がバカにしたように笑う。
チッ…まだ憑依された状態だったか。
俺は心の中で毒づいた。
「---おとうさん、本当にありがとう!
亜優美の為に必死に頑張ってくれたんだよね!
亜優美、嬉しいよぉ?
でもね、お父さん…
ちょ~っと遅かったかもよ?」
亜優美が俺を見ながら言う。
「遅かった…?」
俺が訪ねると、亜優美が笑う
「ウフフフ…
今から分かるかもよ~~~
じゃあおとうさん!
合格おめでとう!
今から亜優美、解放されま~す!」
亜優美がふざけたポーズをとると、
突然、口から緑色の光が飛び出し、
亜優美が白目を剥いてその場に倒れた。
緑色の光は外にいる黒いワゴンカーの方に
向かって行った。
「亜優美!亜優美!」
俺が亜優美の体をさすると、亜優美が「う~~ん」と
声を上げた
そして亜優美が目を開いた
「あれ……お父さん…わたし…?」
うつろな目で俺を見る亜優美。
正真正銘の亜優美だーー。
「良かったーーー
本当に良かったーーー」
目から涙があふれる。
この瞬間をどれかけ待ったことかーー。
「---ちょ、ちょっとやめてよーー」
亜優美が俺の手を振り払って壁際に移動する。
「…ど、、どうした亜優美。
もう大丈夫だ…
ヤツは俺が必ず…」
俺が戸惑いながら亜優美に言う。
しかし亜優美は、俺を不快そうに
見つめているだけだった。
「---ーーお父さん、
私、お父さんのことーーー」
亜優美が汚物を見る様な目で俺を見る。
ーー何かがおかしい。
「---お父さんだなんて思ってないから!
…ほんっとうに最低!」
亜優美が敵意をむき出しにして
言い放つ。
「なっ……ど、、、、どうしたんだよ」
俺が近づこうとすると、
「近寄らないでよ!
人殺し!」
と、亜優美が叫んだ。
ーー人殺しーー?
あの自殺の事を言ってるのか…?
「あ、、、亜優美、落ち着けって」
俺はハッとした。。
まさか、、まだ憑依されてるのか?
「まさかお前・・・
まだ亜優美の中に居るんだな!
そうなんだろ!おい!なんとか言え!
俺をおちょくるのもいい加減にしろ!」
俺は怒鳴った。
しかし亜優美は戸惑いの表情を浮かべている。
その時だったーーー
「---初めまして おとうさん」
玄関から、白髪の薄ら笑みを浮かべた男が入ってきた。
「貴様…」
俺がその男を睨みつける。
コイツが、亜優美に憑依していたーーー。
「あ♡おとうさん!!」
亜優美が満面の笑みで、その男の方に向かっていき、
その男に抱き着いた。
とても、嬉しそうに。
男は笑う
「おぉ~よしよし…もう大丈夫だからね」
あ・・・亜優美…?
俺は事態を飲み込めず、その場に立ち尽くした。
「---ホラ、”前の”お父さんにご挨拶して」
白髪の男が言うと、
亜優美がこちらを向いた。
その目は敵意に満ちている
「私、会社のコトしか考えない
お父さんなんてだいっ嫌い!
だからね、私、もうお父さんの娘、
辞めることにしたの!
これからは~
新しいお父さんの娘になるの!」
嬉しそうに言うと、亜優美は白髪の男の
腕の中で満足そうに微笑んだ。
「---どういうことだ…」
俺は唖然として、二人を見る。
亜優美とーー
白髪男はーー本当の親子のようだ。
亜優美が笑ってコチラを見るーー
白髪の男もーーー
「亜優美に何をしたぁ!」
俺が怒鳴ると、白髪男は笑った。
「憑依薬…
あれで憑依している間、
娘さんの脳を使って色々なことを思考するわけですー」
男が淡々と説明を始めた。
「乗っ取られている時間が長くなれば長くなるほどーー
乗っ取っている私の思考が娘さんに影響を与えていくんですよ。
私は毎日のように、
あなたへの恨み言を亜優美さんの体で呟かせて頂きました。
そして、私がおとうさん だとも…
分かります?
乗っ取られている間に、亜優美さん自体の脳にも影響を
与えたんですよ。」
白髪男がニヤついて言う。
その言葉を亜優美は聞き入るようにして聞いている。
「…ふ、、ふざけるな!亜優美を元に戻せ!」
俺が言うと、白髪男は首を振った。
「無理ですよ。言ったでしょう。
思考そのものが書き換えられた、、とでもいいましょうか?
私が亜優美さんの脳を使っているうちに、亜優美さんの
思考にも影響を与えた。
だから、今ここにいる亜優美は、操られているわけでも
何でもありません。
”自分の意思”であなたと縁を切り、私を新しい
おとうさんに定めた。 そういうことです」
白髪男は満足げにうなずいた。
ーー馬鹿な!
そんなことがあってたまるか!
「亜優美!思い出せ!
お前はその男に体を乗っ取られて
好き放題されてたんだぞ!
乗っ取られる前のことを思い出せ!亜優美!」
俺は亜優美の方に手を触れながら
必死に叫んだ。
ーーパチ!
亜優美の手が俺の手を振り払う。
「---触らないで!人殺し!」
心底、憎むような視線を亜優美は俺に送った。
「---お父さんは私のためを思って
やってくれたのーー。
だから、私は全然気にしてないよ」
そう言うと、亜優美は白髪男に優しく微笑みかけた。
そしてーーー白髪男の方を向いて
嬉しそうに亜優美が言う。
「お父さんには、
いっぱい親孝行するから、楽しみしててね♪」
ーーーあの、去年の冬、俺に行った時と同じようにーーー
心からの優しい笑顔でーー。
「だから、お父さん…ううん、
もう”おじさん”かな?
これでお別れ。サヨナラ…」
そう言うと、亜優美は笑って玄関から外に出て行こうとした。
「----あ、、、亜優美ーーーーー」
俺は泣き叫んで
床に手をついた。
ーーーもう、どうすることもできない。
白髪男が俺の肩に手を置いて言う。
「アンタ、思い出してみなさいよ…
娘さんが憑依されたあと、娘さんに
何をしてあげましたか?」
男の言葉を聞き、俺は顔を見上げて睨みつけた。
「あなた、
”お金は払う”
”謝る”
”娘を返してくれ”
それしか言ってませんでしたよねぇ?
娘さんには一度も何も、呼びかけもしなかった。
いつもいつもアンタは自分の事だけだ。
娘さんを心配するような言葉の一つもなかった。
金を返す。娘を返せ。謝る。 そればかり。
亜優美ちゃんに何一つ、言葉をかけてあげなかったーー」
ーーー俺はーーー
俺は確かに、乗っ取られた亜優美を前にーーー
亜優美本人に何の言葉もかけてやれなかったーー。
亜優美の親友の美月という子は、
亜優美をビンタして、心からの言葉でーー亜優美に語りかけていた。
だが、、俺はーー
金、土下座、、金、、
結局、、、俺は・・・。
「---アンタに親でいる資格はない」
白髪男は耳元でそうささやくと立ち上がった。
「じゃ、行こうか亜優美」
男がそう言うと、亜優美が「うん、お父さん」と笑みを浮かべた。
そして白髪男が振り返った。
「---奪われたモノは、、奪い返す」
そして笑みを浮かべると、亜優美を抱き寄せ、
二人で玄関から出て行った。
「--あ、ども、宅急便です!」
ちょうど顔なじみの配達員が家にやってきた
「あ、亜優美ちゃん!
お父さん泣いて喜んでたよ!良かったな!」
配達員が亜優美に話しかける。
例の誕生日プレゼントのワインの事だーーー。
その言葉を聞いて亜優美が笑う
「あんな高いワインをプレゼントになんて買って…
お金の無駄しました」
それだけ言うと微笑んで、
白髪男と車に乗り込んで走り去って行ってしまった・・・
「うっ…うっ…うっ…亜優美…」
俺の涙は止まらなかった。
いつまでも、いつまでも
廊下で俺は涙を流し続けた
「---ど、、どうしたんすか?」
配達員の男が聞く。
「----帰ってくれ」
俺がそれだけ言うと、配達員の男は気まずそうに帰って行った。
亜優美の笑顔が浮かぶーーー。
大切なーー
何よりも大切なーーー
あの笑顔ーーーー。
もう、、、2度、この手は亜優美には届かないーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日。
高校には、亜優美の姿があった。
親友の美月が笑う。
「良かった~
無事に解放されたんだね!
お父さん、喜んでたでしょ?」
美月の言葉に亜優美は微笑んだ
「うんーー。
とっても喜んでくれたよ!
”新しいお父さん”---」
美月は、その言葉に首をかしげる
「--新しいお父さんーー?
何のこと??」
その問いに、亜優美は微笑むだけで何も答えなかったーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…道行く学生が、明日の時間割は地獄だなー なんて言いながら
談笑している。
”地獄”かーーー。
君たちは見たことがあるのか、
本当の地獄をーーー?
大切な娘を奪われーー
目の前で娘を好き放題にされーーー
その娘自身に罵られーー
最後には娘そのものを奪われるーーー
そんな本当の地獄を君たちは見たことがあるのかーーー?
俺は、うつろな目で、夕方の街を歩いていた。
「お父さんーーー」
亜優美の優しい声が聞こえた。
泣いても、泣いても、
涙が止まらないーーー。
俺は手を伸ばすーーー
もう決して届かない娘の”幻”に向けてーーー
ーーーこの手はもう届かないーー
どんなに俺が願っても
どんなに俺が苦しんでもーーー
もう、あのイルミネーションの光に包まれた
幸せな日々は戻ってこない。
ーーー永遠に。。
<完>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
予告
<ムスメの身代金 ~最後のキボウ~>
娘の亜優美を奪われた父は夢を見たー。
亜優美が、自分に助けを求める夢をーーー。
亜優美はもう変わってしまったのではないのか-?
それともーまだ、希望はあるのかーー?
父は、全てを失う覚悟で、白髪男の住む自宅を訪ねる。
娘をー
亜優美を取り戻せるならばーー
他にはーーー何も要らない!
父の想いはーーーー
亜優美を救うのかーー
それとも、さらなる地獄が待っているのかーー。
ツイッターフォロワー様によるリクエスト
”ハッピーエンド”も見てみたい にお応えした続編!
リクエストが亜優美を救うことになるのでしょうか!
それともーーー?
6月中旬~下旬掲載予定です!
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コメント
無事に書き終えることができました!
お読み頂いた皆様、本当にありがとうございます~!
ダーク展開…
父親も、横暴な会社経営をしていたので、どちらが悪いか…とは
言いきれませんが、
娘の亜優美は一番の被害者だと思います。
予告にも書いた通り、リクエストを頂きましたので
続編も書く予定です!
リクエストによって、救いはあるのかどうか…
もし良ければまたよろしくお願いします!
明日からは憑依暗殺部隊の大仕事 を書いていきます!
コメント
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洗脳のされ方が凄く好み。こっからどうなっていくのか続編楽しみに待ってます
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> 洗脳のされ方が凄く好み。こっからどうなっていくのか続編楽しみに待ってます
ありがとうございます^^
続編は少し間を空けてから書いていきます!
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憑依と復讐の組み合わせは最高です!
こういう作品もっと見たいです。
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> 憑依と復讐の組み合わせは最高です!
> こういう作品もっと見たいです。
ありがとうございます!
復讐系も、また書いていきますので
よろしくお願いします^^