憑依小説 あなたに見せたくない①

この手はもう永遠に彼女には届かないー。

何故なら彼女は・・・
数か月前に彼女は”憑依されてしまったからー”

俺の想いはーーもう、
彼女には…

--------------------------------------------------—

「なんで…もっと早く言ってくれなかったんだよ…

 どうして…そうやって一人で…」

止まることのない涙が俺の頬を伝うー。

誰も居ない、俺一人だけの部屋で…
俺はたった今、自宅に届いた手紙を見て、
ただ、ひたすらに涙を流した。

明かされた真実を前に、
俺は、涙を流すことしかできなかった。

ーーもう、俺の手は彼女には届かない。

そう、永遠にーーーー。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2か月前。

俺の名は田島 雄二(たじま ゆうじ)
大学生だ。

今日は彼女の相原 詩織(あいはら しおり)と
食事に来ていた。

彼女は俺にとって、とても大切な彼女だ。
ちょっとおせっかいで負けず嫌いなところが
あるけれども、
俺にも、周囲にも、とてもよく気配りのできる子だ。

「---趣味悪いよ~」
汐莉は笑いながら言う。

手元にあるソフトドリンクのストローで、
氷をかき回しながら俺は言いかえした

「そうかなぁ?別に現実でそういう趣向があるわけじゃないし。
 あくまで物語上の趣味だよ!」

俺がそう言うと、
詩織は首を振った

「人から人に憑依する作品が好きだなんて…
 私以外に絶対言っちゃだめだよ~?

 嫌われちゃうからね」

俺は憑依モノの作品が好きだ。
よく家で、色々なサイトを探しては小説を読んでいる。
時には夢中になり、そのまま朝を迎えてしまったことも
あるぐらいだ。

話の流れでそのことを汐莉についつい話してしまったら、
ドン引きされてしまった。

まぁ…そうだよな…
自分もそういう目で見られてるかと思うと、
気持ち悪いモンな。

「ちょっとゴメンね…」
詩織が突然、そういうと少し咽だした。

「大丈夫か?」
俺が聞くと、
彼女は優しく微笑んだ

「大丈夫。ちょっと風邪ひいちゃってね。
 気にしないで」

詩織はすぐに話題を変えた。

彼女は人の面倒見が良い反面、
自分の事は何でも、自分で抱え込んでしまう子だ。
今回のように風邪を引いても、人に弱みを見せることをしない。

俺は、そんな彼女の力になりたいとも思っていた。

でも、、そうさせてくれない。。

「あ、再来月だっけ?雄二の誕生日?」
詩織が言う。

「おう、そうだけど…
 ま、あまり気にしなくていいよ」
俺は言った。
彼女に気を使わせすぎるのも悪い。

「またまた~そんなこと言って~!
 本当は期待してるんでしょ?」

詩織が可愛らしく俺を覗きこむ。

「楽しみにしててね!」

ーーー永遠に続くかと思っていたこの幸せー。

あるのが当たり前だと思っていた”目の前の幸せ”

ずっと続くと思っていた。
ずっとーー
ずっとーーー。

けれども、もう俺の手は彼女には届かない。
何故ならーーーーーーー彼女は。。

現在。

俺は一人、届いた手紙と、腕時計を見つめていた。

「約束したよねーーー?
 ハイ、プレゼント。

 雄二ったら、いつもボロボロの腕時計なんかしてるから、
 ホラ…腕時計。

 大切にしてね。

 そしてーーーーーー」

その先の言葉は、、目に涙があふれて読めなかった。

全てが変わったのはあの翌日だった。

レストランで詩織と何気ない1日を送ったあの日の
翌日。

”話があるんだけど”

突然、彼女から短文のLINEが届いた。

大学は休みだったから、俺は彼女の元に
会いに行った。
何故か、遊園地を指定している。

遊園地の待ち合わせ場所に行くと、

詩織は不機嫌そうな態度で立っていた。

「---遅いんだけど」
いつも優しく、明るい詩織とは思えない、
不機嫌そうな表情。

何かしたかと不安になる。

「---悪い。。
 な、何かあったのか?」

俺が聞くと、
詩織は俺の方を見て、笑い出した

「あははは、あはは、あは…
 お前が彼氏?」

詩織が訳の分からないことを言う

「お前って…え?」

わけもわからず俺は間抜けな声を出してしまう。

遊園地特有の楽しそうな声が周囲に響き渡る。
だが、俺は全く楽しくない。

「……間抜け面しちゃって…」

よく見ると、詩織はいつもの詩織らしからぬ、
服装をしている。髪型もいつもと違う気がする。

服装は元々、可愛い系を好んでいたが
どことなくジャンルが違う気がするのだ。

「じゃ、教えてやるよ」
詩織が突然 乱暴な口調で言った

「---お前の彼女の体は俺が貰った」

ーーーー!?!?!?!?!

俺は凍りついた。

「なんだって…?」
俺が驚きのあまり声を上げる

「じょ、、冗談よせよ、
 いくら昨日そんな話したからって
 悪ふざけがすぎるぞ」

俺が言うと、詩織は馬鹿にするようにして
笑った

「バカなヤツ…
 お前の彼女の体はもう俺のモノなんだよ…
 見てろよ」

そう言うと、彼女は近くを歩いていたイケメンに
声をかけ、誘惑し始めた

「お、、おい!やめろ!!」

俺はあわてて詩織を引きはがした。

イケメンが「なんだよ」とつぶやいている。

「……ってことで、別れろ」
詩織が俺に言う。

「……まさか本当に・・」
絶望のあまり声が小さくなる。。

「そうだよ!詩織が男を誘ったりするか?
 しないだろ?
 ……だからもう諦めて別れろ。

 別れないなら、
 この体で遊びまくってやるぞ。
 詩織が壊れるまでな」

詩織が笑みを浮かべて言う

「ふざけるな…!」

そう言うと、詩織が一瞬、悲しげな表情で
観覧車の方を見た。

そういえば、あの観覧車の中で、俺が告白したんだったな…

「………」
詩織が沈黙する。

「……おい、何とか言えよ」
俺がそう言うと、詩織が再び俺の方を見た

「……ウフフ…
 絶望させてあげる」

いつものような詩織の口調で、
詩織はスマホを開いた。

詩織はLINEやツイッターの画面を次々と開き、
俺の連絡先を削除したり、ブロックしたりしていった。

「フフ…アンタとはもうお別れ。
 この体で私は好きなように生きる…」

「---お前」

俺は絶望の淵に追いやられた。
彼女の様子はどう考えてもおかしい…
演技でこんなことをするはずがない。

まさか、、この世に本当に憑依なんてことが…

「詩織を返せ!」
俺は叫んだ

「イヤだね!この体で詩織のコト、
 遊びつくしてやるから!
 この女が壊れるまで!ハハハ!」

狂ったように笑う詩織を見て、
俺は初めて彼女に手を挙げた。

「ふざけるな!」
俺が罵声を彼女に浴びせた。

「……ウフフ…それでいいのよ」
詩織は叩かれた頬を抑えながら俺の方を見て
そう言った。

そして…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あの時、詩織が何故、
”観覧車”を見て寂しげな表情を浮かべたのかーーー。

ーーーーどうして、、気づいてやれなかったのかーーーー

後悔しても、、もう遅い。

2度とあのときには戻れないーー。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント

ちょっと変わった作品になります。。
最後まで読めばその意味が分かるかと思いますが、、
まだ言わないでおきます(笑

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ネタがわかってしまったかもしれない

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    分かりやすいかも知れないデスね…(笑)
    元ネタは…たぶん無いと思いますが、
    無意識のうちに…ってこともあるかもしれません(汗

    > ネタがわかってしまったかもしれない