憑依小説 ”悪の魂” ③

悪の魂に侵されゆく
西原愛華ー。

やはり、悪の魂に打ち勝てる人間はいないのかー。

ジョーの鋭い目線が、愛華の行く末を見つめるー

--------------------------------------------------------

あるとき、親友に悪の魂について告げた

「--つまり、その人間の意識を乗っ取るということか」
親友はそう言った。

「違うな」
俺はそう修正した。

”悪の魂”に意思はない。
死した人間の魂はカラっぽだ。

そこに意識はない。

だから、悪の魂を入れられた人間は他の人間の意思に
乗っ取られているわけではない。

あくまでも本人の意思のまま、
その人間は”悪”に染まっていくのだ。

「……そうだな 例えるならこんな感じだ」

俺はグラスに注いだコーヒーの中に
カップミルクを入れた。

コーヒーは、ミルクと混ざり合い、
ちょっとだけ白くなった。

「……そう。
 善の人間という存在に、”悪”が注がれることによって、
 その人間は悪に染まっていくんだよー」

コーヒーにミルクを入れると、甘い味に変わっていくようにーーー

人に”悪”と言う名のミルクを入れると、人はいとも簡単に悪に染まっていくのだー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ジョーは見つめていた。
西原愛華の様子を。

いじめられっ子の黒滝に罵声を上げて以来、
彼女は変わっていった。

1日、1日、日が経つごとに
少しずつ、けれども確実に変わっていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私は自分の財布の中身を確認した。
お札がたっぷり入っている。

親友の紗枝ちゃんが、
無防備に鞄に財布を入れたままにしていた。

誰も見ていないのを確認して、私は財布の中身を
全て抜き取った。

ーーーでも、誰も私を疑わなかった。

「なんだ、カンタンじゃん」

私はそう思った。

今までは罪悪感を感じてしまい、できなかった。
でも、今はできるー。

私は、悪い事だと思っていた。

でも、違う。
いつも私は学校行事から生徒会活動、
あの臆病者の黒滝のことまで、
何でもかんでも、面倒を見てきた。

なのに、みんなは私に「ありがとう」と言うだけ。

確かにうれしかった。
でも、今は違う。

少しぐらい、私がご褒美をもらうのは何も悪くない

紗枝は悲しんでいた。

「誰が盗んだんだろう?」とも。

私は「気を落とさないで」と笑顔で励ました。

カンタンだー。
私は優等生なのだから。

何をしても、何をしても、みんなにはばれない。

本当に馬鹿なヤツら!

私は一人、笑みを浮かべた。

そういえば、今日は昼休みに黒滝と会う約束がある。
行かなくちゃ。

ーーーー。

「また栗本さんたちに嫌がらせされちゃったよ…」

黒滝が言う。

「うん…大変だったね。。」
私はそう返事をした。

ちょっと前まで、私は親身にコイツの話を
聞いていた。
でも、今は馬鹿らしくなってしまった。
それどころか、凄くイライラする。
なよなよしやがって…。

「黒滝君にもさ、
 何か問題があるんじゃない?」
私は優しい笑顔を作ってそう言った

「えーーー。そ、それは…」

黒滝は黙り込んだ。

何よ!私が少し煽っただけで!

「---僕は、ただ…
 皆と仲良くできたらいいな…って」

「ふぅん…そっか!
 優しいんだね黒滝くんは」

私は心にもない言葉を口にした

ーーーいつからだっただろうか。

コイツがむかつくようになったのはーーー

先週からだっただろうか。

「うんーーーありがとう」

黒滝が満面の笑みで私を見た

その顔を見て、私の中の怒りが込み上げてきた。
理由は分からない

ウゼェ!ウゼェ!ウゼェ!

私の心がそう叫んでいる。

ダメーーーー
私は優等生なんだからーーー

「………また何かあったら言って」

私は話を切り上げて、
立ち去ろうとした。

「西原さんーーー
 実は僕ね…」

黒滝が私を呼び止めた

「西原さんの事、
 ずっと…その、、、、、
 気になって」

あ??

あぁああ?

告白されてんの?私?

こんなゴミみたいなやつに?

ウッッッッゼェェェェ!

「調子こいてんじゃねーよ!」

私の怒りが爆発した。

「え、ごめ…」

馬鹿がおびえている。

私は馬鹿の顔をビンタして、
続けて顔をわしづかみにして壁に叩きつけた

「ヒッ…」

「私がさ、大人しくしてりゃ、何なの?ねぇ…。
 いつもいつも お前もクラスの奴らも、
 私にばっか 面倒ごと押し付けてさぁ、
 何なの?

 私は貴方の召使い?しもべ?
 何?言ってみなさいよ!」

私はありったけの怒りをこめて言い放った。

むかつく!
本当にむかつく!

「…や、やめてよ…西原さん!何かあったの?」

馬鹿が私にそう言った。

「ちげーよ!」
私は黒滝を床にたたきつけた

「もういいわ、辞める。
 優等生やめる

 私ばっか損して!
 ばかばかしい!

 ふざけんな!」

そう言って、私は廊下に飛び出した。

どいつもこいつも、
ふざけんな!!

私はずっと、良い子だった。

皆が喜んでくれることがうれしかった。

でもーーー。

馬鹿じゃねーの!
やってられるかよ!

私は決めた。
もういい、一度きりの人生。
好きなだけ楽しんでやる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ジョーはそんな様子を見つめ、失笑した。

「彼女も……壊れたか…」

ジョーは目の前にあるグラスに入ったサイダーを見つめた。

サイダーにメロンシロップを入れる。

「……純粋で無垢な色ほど、
 別の色に染まりやすい…。

 彼女のような、真面目で、純粋な子には、
 悪の魂は荷が重すぎた…か」

彼女は自らの意思で、悪の道に堕ちてしまったのだ。

翌日から、彼女は不良生徒に成り下がった。
授業をさぼり、いじめっ子の栗本らをこき使うようになり、
幼馴染の黒滝を徹底的にいじめた。

そのうち、髪を染めだして、地元のワルと付き合うようになった。

あまりの豹変ぶりに西原愛華の周囲では
”彼女は悪魔に憑かれたー”とまで噂された。

「----悪魔…か。」

あながち間違えではないな、とジョーは一人笑った。

さて…と次は…

ジョーは次のターゲットに悪の魂をねじ込むことにした。

もう、西原愛華はダメだろう。
悪の魂に勝てる人間は、やはり居ないのだろうか?

新婚の、藤森 彩乃(ふじもり あやの)
次のターゲットだ。

「---今度こそ、人間の可能性を、見せてくれよ」

ジョーは次の”悪の魂”を手にそうささやいた。

第2部へ続く

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コメント

悪の魂 第1部終了です。

自分で書いておいて言うのもアレですが、
このジョーと言う人は一体何なんでしょう(笑)

次は第2部。
また別の人間が悪の魂のターゲットになります。

次回更新からはいったん別の小説を書いて、
その後に悪の魂 第2部を書く予定なので、
またその時はよろしくお願いします!

PR
憑依<”悪の魂”>

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    2部楽しみに待ってます

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ありがとうございます!
    なるべく毎日更新してるので、
    そう遠くないうちに2部もお届けできると思います!

    > 2部楽しみに待ってます