”あなたに見せたくない”
ーーこれは、そう考えた 彼女視点の物語ー。
彼女は何故、”憑依”という別れ方を選んだのかーー。
元作品はこちらからどうぞ!
彼氏、田島 雄二(たじま ゆうじ)との楽しい食事を終えた、
彼女の相原 詩織(あいはら しおり)は、病院を訪れていた。
私は最近よく咽る。
それで、何となく不安になり、1週間前に検査を受けていた。
今日はその結果を聞きに行く日でもあった。
食事が終わり、彼氏の雄二君と別れた後、
私は病院で結果を聞いたーーー
どうせいつもの杞憂だろうー。
そんな風に思ってた。
けれどーー。
それはーーー
”死”の宣告だった。
「もってーーあと1、2か月です」
末期癌ーーー。
私はーーーーーー
私は病院からの帰路、
一人泣きじゃくった。
泣く以外に、、、何も思いつかなかった。
まだやりたいことがいっぱいあるのにーーー
雄二君ともっと一緒に居たかったのにーーー。
「・・・・・・嫌だ・・・」
どうせ死ぬのならーーー。
私はそう考えた。
雄二君にーー弱っていく私を見せたくない。。
日に日に、弱っていく私を見せたくないーーー
あなたにーー私の弱い姿をーー
”あなたには見せたくない”---
私は…いつも気丈に振る舞って
人に弱みを見せないー
そんな感じだったと思う。
今更、、弱いところなんて見せたくない。。
私はーー最後の最後まで、
意地を張ったーー
ふと思い出す。
昼間、彼氏の雄二君が
”憑依モノが好き”と言っていたのをーーー
「---・・・」
私はネットで
”憑依モノ”と呼ばれる小説をいくつか読んでみた。
「---フフッ・・・
雄二ったら、趣味悪いなぁ・・・」
思わず笑ってしまう。
でも、、その目からは自然と涙があふれる。
「本当はーーー
もっと一緒に居たのにーーー
どうしてーー」
涙は止まらないーーー。
けれどもーー。
雄二君に辛い想いをさせるわけにはいかないからーーー。
何より、弱いところを見せたくないからーー。
私は涙をふいて、
手紙を書き始めた。
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雄二君、お久しぶり、
詩織だよ?覚えてる?
もう今頃新しい彼女さん出来ちゃったかな?
まず最初にお詫びしなければならないことがあるの…。
実は私、、
”憑依なんかされてない”の…。
あの日、遊園地で雄二君と話したのは
まぎれもない私。
そしてーーー
あなたがこの手紙を読んでいる頃には
私はもう、この世には居ません
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そして、私は涙を流しながら手紙を書ききり、
2か月後に届くように指定して・・・
次の日の早朝に手紙を送り出した
「----雄二君・・・ごめんね
でも、、、、私ーーーー。
あなたに看取られなんかしたらーーー
死ねなくなっちゃうからーーー
未練が残ってーーどうしようも無くなっちゃうからーー」
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…私は雄二を遊園地に呼び出した。
わざと、不機嫌な雰囲気のメッセージを送れば、
雄二君はすぐに飛んでくるだろう。
”憑依されたフリをして、雄二君と別れるーーー”
不器用な私の、
不器用なりの別れ方ーー。
やっとの思いで選んだ、
とても不器用な道ーーー。
病院に雄二君が駆け込んできたりなんかしたらーーー
私は、、耐えられそうにないからーー。
遊園地。
雄二君の姿が見えた。
ーーーついつい微笑みかけたくなる。
けれどーーー。
「---遅いんだけど」
自分でも怖いぐらいの声が出た。
彼氏の雄二君が戸惑うのが分かる。
「---悪い。。
な、何かあったのか?」
雄二君が言う。
・・・・・・一瞬、ためらいの気持ちが湧いてくる。
でもーーー
やらなきゃーーー。
私は意を決して言った。
「あははは、あはは、あは…
お前が彼氏?」
目の前にいる雄二君が戸惑った。
ーーーごめんね。雄二君・・・
そう、心で謝りながらも私は”演技”を続ける。
「お前って…え?」
間抜けな声を出す雄二君。
「……間抜け面しちゃって…」
私はそう言った。
わざと、雄二君が傷つきそうな言葉を選んだー。
そして、続ける。
「じゃ、教えてやるよ」
「---お前の彼女の体は俺が貰った」
雄二君の顔から血の気が引いていくのが見えた
ーーー本当に信じるなんて・・・
やっぱり馬鹿ね・・・
でも、、、そういうところがーーー
ーーーー馬鹿なんだから…
「なんだって…?」
「じょ、、冗談よせよ、
いくら昨日そんな話したからって
悪ふざけがすぎるぞ」
雄二君の言葉を聞き、私は馬鹿にするようにして
笑った
「バカなヤツ…
お前の彼女の体はもう俺のモノなんだよ…
見てろよ」
ーーーもっと、もっと迫真の演技をしなきゃ。
私はそう考えて近くを歩いていたイケメンに
声をかけ、誘惑し始めた
こんなことしたくないーーー
けれどーーー
「お、、おい!やめろ!!」
雄二君の手が触れるーーー。
ーーーごめん。
ごめん。。。
でも、、、貴方に本当のことを言えば
あなたはーーーー。
だからーーー
「……ってことで、別れろ」
雄二君に冷たく言い放った。
「……まさか本当に・・」
雄二君が絶望の色を顔に浮かべた。
私は、さらに続ける。
「そうだよ!詩織が男を誘ったりするか?
しないだろ?
……だからもう諦めて別れろ。
別れないなら、
この体で遊びまくってやるぞ。
詩織が壊れるまでな」
私は意地悪そうに笑ってみたーーー
こんな風にーー笑えるなんてね・・・
「ふざけるな…!」
ーーー
あの観覧車ーーー
雄二君から告白された場所ーーー
私はつい懐かしくなってそれを見たーーー
涙が溢れそうになるーー
でも、ここで泣いちゃったらーーー
全部、吐き出してしまうからーーー
全部、言ってしまうからー
「………」
「……おい、何とか言えよ」
泣き出しそうになる私を、雄二君の声が
私の涙をかろうじて食い止めた。
私はハッとして演技を続けた。
「……ウフフ…
絶望させてあげる」
私はスマホを開きながら、
雄二君の方を見た。
そしてーーLINEやツイッターの画面を次々と開き、
雄二君の連絡先を全て消して行った。
心が壊れそうになるーーー
でもーー
あなたに看取られるのはもっとつらいからーーー。
「フフ…アンタとはもうお別れ。
この体で私は好きなように生きる…」
「---お前」
雄二君が絶望の表情を浮かべる。
そんなに信じるなんて思わなかったーー。
でも、、あなたのそういうところが、、
そういう馬鹿なところがーー
私には、とっても愛おしかったーー。
「詩織を返せ!」
雄二君が叫ぶ。
もっと、、もっと演技をしなきゃ…
「イヤだね!この体で詩織のコト、
遊びつくしてやるから!
この女が壊れるまで!ハハハ!」
パチン!
雄二君の手が、私の頬に触れたーーー
「ふざけるな!」
雄二君がーーー私をーー。
そこまで、、、私の事を。。
必死に涙をこらえて、私は意地悪に笑みを浮かべた。
「……ウフフ…それでいいのよ」
頬を抑える…
ありがとう…雄二君。
「……俺は」
雄二君がそう言いかけて止まるーー
雄二君は今、、何を考えているのだろうーー
「…やめとけ。諦めろ」
私はーーーさらに演技を続けた。
すると、雄二君が悲しそうな声で言う。
「俺はこれからもずっと一緒に居たかった…」
ーーーわたしもだよーー
本当はいつまでも私だってーーー
でも!!
「---諦めろよ。
もう、この女は心も、体も支配されたんだからよ…。
別の女を探しな」
私は…笑みを浮かべて続けた。
表情とは裏腹に…
本当は今にでも泣きだして・・・
雄二君に飛びつきたい…
でも、私は馬鹿だからーー
最後まで素直になんかなれないからー。
「……」
ダメ!
これ以上、ここに居たら…
私、、、泣いちゃう…
そう思って私は叫んだ。
「あ~~面倒くさい!
早く分かれろ!で、ないとこの女の体でそこら中の男と
遊びまくるぞ!」
目から涙が少し溢れた。
雄二君がそれを見て不思議そうな顔をするーー。
「……くっ・・・…わかったよ」
雄二君の、、、悔しそうな声が聞こえる…
ーーーどこまでもーーー
純粋なんだからーーー。
馬鹿…
「じゃ…」
私はそう言い、雄二君に背を見せて歩き出した。
けれど…
私と雄二君を、遊園地の幻想的な光が照らす。
「---一つだけお前に教えておいてやるよ」
・・・これは、、私からのお別れの言葉ーーー
「ーーこの女、お前のこと、本当に愛していた。
好きで好きで、たまらなかった…。
今も、貴方のこと、いつまでも好き、と…
コイツの心が叫んでる」
…本当は”自分の言葉”で伝えたかったーーー
でもーーー
私は涙を見せないように背を向けながら続けた。
「あと、もう一つー。
お前には見せたくないってさ」
あなたにはーーーー
「……肉体関係の…事か?」
雄二君がそう尋ねてきた。
「…………」
あなたにはーーー
私の弱いところーーー
見て欲しくないのーーーー
「……」
雄二君も沈黙している
あなたには見せたくないーーー
だからーーーー
「じゃあな、、この女の事は忘れて、
新しい相手でも探すんだな ハハハ」
さようならーーー
私はそう心で呟きながら、、、、
泣きながら、、
2度と雄二君に顔を向けずにーーー
そのまま立ち去ったーーーー。
それからーーー
私はどんどん弱って行ったーー
雄二君は今、どうしているのだろうーーー
私が送ったあの手紙を受け取るとき、
雄二君はーーー。
私は、、静かに死を待った。
けれどもーーー
何故だか、、私は死ねなかった。
苦しくてーーー
苦しくて仕方が無いのに…
「---」
ふとカレンダーを見る。。
明後日、、、
わたしの手紙が…届く日・・・
私の頬から涙が流れる。
もう、ほとんど声も出せないーーー
体も動かない。。けれどーーーー。
”もう一度だけ、、、会いたいよ…”
やっぱり…
素直になっておけばよかった…
わたし…
寂しいよ…
ーーーそして…
私は生きてしまったーーー
その日までーーー。
彼がやってくる日までーーー。
会いたい…。
その思いが…
私の生きる時間を少しだけ伸ばしてくれた。。
もう、、、何も見えない…
けれどーーー
彼の声が聞こえたーーーー
「おい詩織!」
ーーーーーーーと
うっすらと彼の姿が見えたーーーー。
ーーーーー動いて…私の口!
「----馬鹿…
だから、、、イヤだったのーーーーーー
あなたがそうやってーーー悲しむから…---
でもーーーー
ありがとうーーーー 」
最後まで………
強がりなんて……馬鹿だな……わたし…。
それがーーー相原詩織の最後の言葉ーーー
そして最後の想いだったーーー。
彼女は眠りについたーー
満足そうな笑みを浮かべながらーーー
「ありがとうーーーー」
最後に、、そう念じて…。
おわり
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コメント
「あなたに見せたくない」の彼女視点です!
憑依小説ではないのですが…。
せっかく作ったのでこれも公開しておきます!
明日は新作の続きを…。
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