<入れ替わり>家出したのはわたしじゃない①~異変~

ある日、突然様子がおかしくなって
そのまま家出してしまった妹ー。

兄は、妹の急な豹変に困惑していたものの、
家に”わたしが妹”だと名乗るガラの悪い男子生徒がやってきてー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーねぇねぇお兄ちゃんー」

ある日の夜ー。
部屋で配信されたばかりの見たかった映画を
見ていた男子大学生・福村 雄平(ふくむら ゆうへい)の部屋に
妹の福村 樹里(ふくむら じゅり)が、やってきたー。

「ーーん?樹里ーどうかしたか?」
映画の途中ではあったものの、雄平はイヤそうな顔一つせずに、
振り返ると、
樹里は少し申し訳なさそうに
「来週のテストなんだけどー…どうしてもこれが分からなくてー」と、
数学のノートと教科書らしきものを手に、
それを兄・雄平に見せて来たー。

雄平は「ははー…こういうやつ、難しいよなー」と、
妹・樹里の数学のノートを見つめながらそう呟くと
「これはー…」と、その問題の解き方を丁寧に説明し始めるー。

3つ離れている兄と妹ー。
二人は小さい頃からとても仲良しで、
ほとんど喧嘩のようなものもしたことがないぐらいだったー。

喧嘩と言えば、二人ともまだ小さい頃に
言い合いを何度かしたことがあるぐらいで、
大きくなってからは、二人とも一度も喧嘩という喧嘩を
したことがなかったー。

特に兄・雄平は妹をとても大事にしていて
かと言って、過保護になり過ぎたり、
異様な愛情を注いだりするようなこともなく、
”適切な距離で妹を大事にしている”そんなお兄ちゃんであるために、
樹里からも強く信頼されていたー。

「ーーと、こんな感じで大丈夫かなー?」
一通り説明を終えると、雄平は少し苦笑いしながら
そう言葉を口にするー。

すると樹里は「うんうん!すっごく分かりやすかった!さすがお兄ちゃんって感じ!」と
嬉しそうに言うと、
「お兄ちゃんが先生だったらよかったのに~!」と、冗談めいた口調で言うー。

「はははー…まぁ、俺は1対1だからこんな丁寧に教えられてるだけだし、
 先生はさー、ほら、大勢に一気に教えるからー。

 俺にはそんなことできないし、やっぱ先生ってすごいよー」

雄平はそれだけ言うと、
「まぁ、でも、樹里に分からないことがあったら、
 俺で良ければいつでも力を貸すからー」と、そう言葉を口にしてから
「じゃ、テスト頑張れよ」と、それだけ言葉を口にするー。

樹里は「いつも本当にありがとうー!」と、お礼を口にして
そのまま「邪魔してごめんね」と、部屋の外に立ち去っていくー。

そんな樹里を見送ると、
雄平は少しだけ微笑んでから、
再び途中まで見た映画を再生して、
それを眺め始めたー。

兄・雄平と妹・樹里ー。
二人は今までも、これからも、
”仲良し”のはずだったー。

しかしー…

”異変”が起きたのは
その翌日のことだったー。

突然、玄関の扉が乱暴に開くー。
両親も含めて、普段、そんな乱暴に扉を開ける人間は
家族にはいないため、
今日は大学が早めに終わって、一番最初に帰宅していた
雄平は少し驚いたような表情を浮かべるー。

するとー、
家に入って来たのは、妹の樹里だったー。

樹里はいかにも気怠そうな雰囲気を見せていて、
制服も何だか着崩したような、だらしない雰囲気になっているー。

「ー何かあったのかー?」
雄平は、何かトラブルがあったのではないかと、
心配そうな表情を浮かべながら樹里に声を掛けると、
樹里は「ーーあ?」と、今までに見せたこともないような
不満そうな、敵意に満ちた表情を浮かべて
雄平の方を見つめたー。

「ーえーー…い、いや、だ、大丈夫かー?」
雄平は妹・樹里の今まで見たことのない表情に
心底不安を覚えながらそう呟くと、
樹里は「ーうぜぇなー。何だよお前ー」と、舌打ちしながら
そのまま、雄平の横を通り過ぎていくー。

「じ、樹里?ど、どうしたんだよー!?」
雄平はさらに不安そうに、そう声を掛けるも、
樹里はそのまま雄平を無視して、2階へと上がって行ってしまったー。

「ーーな…なんだー…?な、何があったんだー?」
雄平は、樹里の異様な態度に困惑の表情を浮かべるー。

学校で何かイヤなことでもあったのだろうかー。

そんな風に思いつつも、
雄平は少し間を置いてから、2階へと向かうー。

すると、妹・樹里の部屋から物音が聞こえて来たー。

部屋の中で、歩きまわっているのか、
あるいは何かモノの出し入れでもしているのか、
騒がしい感じだー。

「ーー樹里ー?」
雄平が部屋をノックして樹里に声を掛けるー。

しかし、樹里から返事はないー。

雄平は「あ、あのさー…何かあったのかー?」と、
そう確認するー。

しかし、それでも樹里から返事はないー。

「ーひ、一人にしておいて欲しいならそれでもいいけど、
 何かあったならー…」
雄平は”俺が力になるからー”と、そう言い放とうとするー。

がーー

”うるせーな!!!あっち行け!”と、
そんな樹里の声が部屋の中から響いたー。

「ーじゅ、樹里ー…」
昨日までの樹里が嘘のように、
苛立った様子の樹里を前に、雄平は衝撃を受けつつも、
「わ、分かったよー」と、咄嗟にそう答えると、
「でも、何か相談したいことがあったら、いつでも聞くからー
 落ち着いたら、いつでも話してほしいー」と、
それだけ伝えるー。

樹里から返事はなかったものの、
恐らく、聞こえてはいたはずだと、
そう思いつつ、雄平はそのまま樹里の部屋の前から
一旦立ち去って、自分の部屋へと戻って行ったー。

「ーーー…いったい、どうしたんだー?
 樹里があんなにイラついてるなんてー…」

部屋に戻ると、雄平は動揺した様子で
そう呟くー。

学校で嫌なことがあった時にも
友達とトラブルになった時にも、
樹里は元々穏やかな性格で、今みたいに
露骨にイライラした様子を見せることはなかったー。

それが、あんなに鬼のような形相で、
乱暴な言葉を投げかけてくるなんてー、
一体、どれほどの事態が起きたのだと、戸惑ってしまうー。

そんなことを考えているうちに、今度は、
妹・樹里の部屋から”声”が聞こえてきたー。

「ーーー?」
雄平は困惑した表情を浮かべながら、
耳を澄ませると、
樹里が気持ち良さそうな声を繰り返し発していることに気付くー。

「ーーじゅ、樹里ー…?」
隣の部屋にも聞こえるほどの、樹里の欲望に溺れた声ー。

もちろんー樹里だって高校生だし、
そういうことを、一人で楽しんでいる時間もあるかもしれないー。

が、露骨に、こんな風に隣の部屋まで喘ぐような声が
聞こえてきたことはないー。

樹里の声はどんどん興奮したようなものに変わっていき、
ドキドキするような、耳を塞ぎたくなるような、
複雑な気持ちになって雄平は
どうしていいのか分からずに狼狽えるー。

たまらず、部屋を出て、樹里の部屋の前に行くも、
樹里に声を掛けることもできず、
そのまま1階に下りると、雄平は1階のリビングで
困惑の表情を浮かべながら頭を抱えたー。

この世には、分かり合えない兄と妹は
たくさんいるー。

”妹が何を考えているのか分からないー”
そんなことを言っていたクラスメイトもいるー。

ただー、雄平は今まで妹の樹里が何を考えているのか
分からず、困惑するような経験は一度もなかったー。

もちろん、どんなに仲良しな兄と妹だって、
相手の全てを理解しているわけではないし、
分からないことは色々とあるものだー。

けれど、ここまで妹の樹里が何を考えているか
分からないと思ったのは初めてだったー。

「ーー…こういう時、どうすればいいんだろうなー…?」
急な妹の豹変に、今までそういう経験が全くなかった雄平は、
逆にどうして良いのか分からず、戸惑っていたー。

しかし、考えても答えは出ないー。
それに、今の樹里には何を言ってもキレられるだけで、
まともに話ができるような状況ではないように見えるー。

”ー母さんと父さんも、今日は帰りが遅いしなー…”

雄平は時計の方をチラッと見つめると、
そんなことを考えるー。
よりによって、今日は両親二人とも帰りが遅いー。

「ーー…とりあえず、母さんか父さんが帰ってきたら
 もう一度話をしてみるかー」
雄平は、そう言葉を口にすると、自分自身も落ち着こうと
今一度ため息を吐き出すー。

気持ちを落ち着けながら1階のソファーに座って
スマホをいじったり、少し本を読んだりしつつ
両親の帰りを待っていると、
やがて、樹里が1階に降りて来たー。

「ーー樹里」
雄平がそう声を掛けるー。

樹里は、”地雷系”と呼ぶのだろうかー。
そんな格好をしていて、
その姿を見るだけで違和感を感じるー。

確か、この服は以前、
祖母から誕生日プレゼントに送られてきた服で、
地雷系とかそういうのが全然分からない祖母が
”これ、可愛いわよねぇ”と、送って来てしまったものだー。

ただ、樹里本人は”なんか、外に着ていくのはわたしには無理かも~”と
言っていて、祖母に感謝はしつつも、一度も着たことはなかった服だー。

”お兄ちゃんの前でこういう格好するのも何だか恥ずかしいしー”と
照れ臭そうにしていたのも覚えているー。

それが、今になっていきなりどうしたのだろうかー。

雄平は不安そうな表情を浮かべながら
「じゅ、樹里ー、それで外に行くのかー?」と、
そう言葉を口にするー。

別に、地雷系の服を着て外に行っちゃいけないなんて
ルールはないし、世間的にも問題はないー。

ただー、樹里がこんな格好で外に出る、ということは
雄平からすれば信じられないことだったー。

「ーーーっていうか樹里、どこに行くんだー?」
雄平が声を掛けても”無視”を貫く樹里に対して
雄平はなおも心配そうに声を掛け続けるー。

すると、樹里は露骨に不機嫌そうに舌打ちをすると、
面倒臭そうに振り返ったー。

小さい頃からずっと一緒に暮らしてきた妹・樹里の
”よく知る”顔ー。

けれど、今の樹里が浮かべている表情は
まるで別人のように敵意に満ちていたー。

「ーーうるせーな」
樹里はそれだけ言葉を口にするー。

が、それでも雄平が心配そうな表情を浮かべると、
「ちょっとコンビニに行くだけ」と、
樹里は面倒臭そうに呟くー。

そして、”これ以上話すことはない”と言わんばかりに向きを変えると、
樹里はそのまま玄関の扉を開けて
外に出て行ってしまったー。

「ーーーーー」
雄平は心配そうな表情を浮かべながら、
一瞬、樹里を尾行しようか迷ってしまうー。

樹里の様子がどう考えてもおかしいー。
何か悪いことに巻き込まれたり、
誰かに脅されてあんな格好で外に出たりしているのではないかと
そんな不安も膨らんでしまうー。

が、そんなことを考えているうちに
母親が帰宅ー、
雄平が樹里を尾行するタイミングを逃してしまい、
「あれ?樹里はー?」と、樹里の姿が見えないことを
不思議に思った母親に対して
「じ、樹里は今コンビニに行ってるー」と、
それだけ言葉を口にするのだったー。

しかしー…
何分経っても樹里は帰宅せずー、
やがて、父親の方が先に帰宅してしまうー。

雄平も、両親も流石に心配になって
樹里に連絡を入れたものの
電話も、メッセージも応答がない状態ー。

雄平は、両親に学校から帰宅したあとの
樹里の様子がおかしかったとそう説明すると、
「ちょっと俺、樹里を探してくるー」と、
慌てて家を飛び出すー。

「樹里ー…いったい、何があったんだー…」
雄平は夜の街を走りながら、
”家出”してしまった妹・樹里の姿を探すのだったー。

しかしー…
”樹里の身に起きたこと”は、
雄平が想像しているよりも、はるかに恐ろしくー、
現実離れした出来事だったー。

「ーへへへへへーすげぇ…福村のやつ、マジでかわいいじゃんー」

夜の公園のトイレで鏡を見つめながら
地雷系の服を着た”自分”にドキドキしたような表情を浮かべるー。

しかもー、
”福村のやつ”と、自分自身であるはずの”福村 樹里”のことを
まるで他人のように呼ぶ樹里ー。

それもそのはずー
樹里はーー
今、樹里であって樹里ではないからー…

樹里は今日、学校で
クラスの不良男子・藤島 健也(ふじしま けんや)と
入れ替わってしまっていたのだー。

「ーへへへへへー」
樹里(健也)は地雷系の服を身に纏ったまま
満足そうに笑みを浮かべると、
「へへーさてと、アイツもそろそろ来る頃だろー」と、
そう言葉を口にしてから、夜の闇へと消えていくのだったー…

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

お兄ちゃんの知らないところで、
妹が不良男子と入れ替わってしまったお話デス~!!

まずは、入れ替わりが起きていることに
お兄ちゃんが気付かないと妹を救出できないのデス……!

続きも楽しみにしていて下さいネ~!

続けて②をみる!

「家出したのはわたしじゃない」目次

コメント

  1. TSマニア より:

    宇宙編の次は…妹が不良と入れ替わったお話しですネ!!

    雄平は優しいお兄ちゃんですネ☆

    樹理を助けることができるのか…!?

    地雷系!☆!★笑

    無名さんのクローゼットにも地雷系が…!?笑

    お家の中で楽しむ分はいいですよネ…地雷系メイクして…ふふふ…(*´艸`)笑

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~!★

      色々な入れ替わりがありますネ~!!

      地雷系も…ありますよ~笑
      外には着ていきませんけどネ~!!