<他者変身>逃亡者の悪意③~逃亡の果て~(完)

②にもどる!

変身銃を使い、他人を自分の姿に変身させて
逃亡を図るお嬢様。

その果てに待ち受けている結末は…?

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”各地で花坂 美鈴 容疑者の姿が確認されており、
 花坂容疑者が”銃”のようなものを
 無関係の人に向け、その直後、撃たれた人が
 花坂容疑者の姿に変化したという目撃情報も寄せられていますー”

そんな言葉と共に、”変身銃”を撃たれたおばあさんが
”美鈴”の姿に変身していく”視聴者提供”の映像が
ニュースに流されているー。

”これらの目撃情報から、警察は花坂容疑者が
 何らかの方法を用いて、事件とは無関係の人々を
 花坂容疑者の姿に変化させていると考えており、
 事態の究明と、本物の花坂容疑者の行方を追っています”

その報道を見つめながら、
美鈴の彼氏で、荒れくれ者の集団”銀狼”に所属している男・冬也は
「美鈴ー」と、その名前を呟くー。

美鈴に渡した変身銃ー。
当初、冬也は”美鈴自身が誰かに変身して逃げろ”という意味で
美鈴にそれを手渡したー。

変身銃を渡した時に、美鈴にそのことはちゃんと説明しているし、
美鈴もそれを承知しているはずだー。

しかし、美鈴は自分ではなく、他人を変身させる方法で、
変身銃を使ったー。

「なるほどなー。確かにそういう使い方もあるか」
冬也は、報道を見つめながらそう言葉を口にすると、
スマホを手にするー。

美鈴には、連絡用のスマホを渡してあるー。
”落ち着いたら連絡する”約束で、
それまで美鈴には自力で逃亡してほしいと、
そう伝えているー。

冬也はスマホを見つめると、
”そろそろ連絡するかー”と、そう言葉を口にしながら
静かに立ち上がったー。

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”本物の行方をー”

ニュースで、大量発生した美鈴は”偽物”であること、
そして、本物の美鈴が変身銃を撃つ場面が
既に報道されていることー

それを見た美鈴は、表情を歪めながら
変身銃を握りしめていたー。

”大丈夫ーこれがあれば絶対にー”
美鈴はそう思いながら変身銃を手に、移動を始めるー。

「ーあっ…あんたはー!」
道端で、気さくそうなおじさんにそう声を掛けられる美鈴ー。

自分の唾液を装填している変身銃を咄嗟に向けると、
そのおじさんに向かって変身銃を放つー。

変身銃を撃ち込まれたおじさんは
みるみるうちに美鈴の姿に変わっていくと
「な、な、なんだこれー…?」と、呆然としながら
自分の胸を見つめるー。

美鈴に変身してしまったおじさんは
美貌の持ち主である美鈴の姿になってしまったことに
ドキッとしつつもー、
「あ、あんたがあのテレビで報道されているー…」と、
そう言葉を口にするー。

既に美鈴が”無関係の人を美鈴の姿に変えながら逃亡している”
状態であることはニュースなどで報じられているー。

そのため、おじさんはすぐに”目の前にいるのがその美鈴”だと気付いた様子だったー

「誰か!!!例の逃亡犯の女がここにいるぞ!」
美鈴の声でおじさんが叫ぶー。

「ーーう、うるさい!黙って!」
美鈴がそう言葉を口にするー。

「ーー黙るものか!親を殺して、屋敷の人間まで殺したのだろう?
 このまま逃げられると思うな!」
ニュースで、美鈴のしたことを知っているおじさんが
美鈴の姿で叫ぶー。

美鈴は「うるさい!!わたしは…わたしはー!」と、
反論しようとするも、
このままこの場にいたら捕まってしまうと判断して
美鈴の姿になったおじさんを無視して逃亡し始めるー。

が、おじさんが叫んだことで周囲には人が集まり始めていたー。

美鈴は慌てて変身銃を放ちー、
サラリーマンの男を、男子大学生を、通りすがりのOLを、
美鈴の姿に変身させていくー。

「ーーーうわっ!?な、なんだこれ!?」

「おぉぉぉお!?俺がいきなり女に!?」

「ーーーー」

美鈴の姿になってしまい、驚くサラリーマン。
美鈴の姿になって、ニヤニヤとしてしまう男子大学生ー。
そもそも美鈴の姿になったことに気付いていないOL。

三人がそれぞれの反応を示す中、
美鈴は駆け付けたパトカーの警察官にも変身銃を撃ち込み、
さらに、逃げ切るために無差別に変身銃を撃って
そこら中に”美鈴”を作り出すー。

色々なところに美鈴の姿をした人々がいる中ー、
本物の美鈴はそれに紛れて路地裏に入ると、
変身銃の弾ー…”自分の体液”が切れていることに気付いて
表情を歪めるー。

「ーー早く、早くー」
しかし、緊張のあまり唾液が出ないー。

変身銃に込める”自分の体液”が補充できずに、
焦りを覚えるー。

パニックになった美鈴はプライドを捨てて、
身を隠したまま、変身銃に対して
自分の尿を補充していくー。

冬也は”体液”と言っていたー。
唾液じゃなくても良いのだー

スカートも下着も脱いで、変身銃に尿を補充している
自分の状況に屈辱や恥ずかしさー、
そして”汚いなぁ”という思いを感じながらも、
それでも”逃げなきゃ”という思いが勝るー。

尿を装填して、再び使えるようになった変身中を手に、
路地裏から飛び出すと、目があった男女のカップルにー、
子供を連れた夫婦と、ついでにその子供に
変身銃を撃ち込んで、合計”5人”の美鈴を増やすー。

「ーー待ちなさい!」
さらに警察官がやってきて、変身銃を握りしめている美鈴を見つけるー。

けれど、美鈴はその警察官たちにも変身銃を発射、
美鈴の姿に変身させると、
「わたしはー、わたしは絶対に捕まらない!」と、そう叫んで
路地裏に姿を消すー。

路地裏のホームレスや不良にも変身銃を発射ー、
美鈴はそのまま警察たちをやり過ごすと、
荒い息を吐き出しながらスマホを見つめたー

”ー美鈴ー会おう。例の場所で待ってるー”
彼氏の冬也からの連絡が入っていたー。

「冬也ー」
美鈴は、冬也からの連絡が入るまで逃げ切ったことを確信して
安堵の表情を浮かべるー

”例の場所”とは、元々冬也との合流に使っていた
”銀狼”が管理するバーだー。

あそこなら、警察にも感知されていないだろうし、
逃げきることができるー。

「ーーーわたし、もし捕まったらー…」
美鈴は震えるー。

元々、美貌を使って詐欺を働いていたことはもちろん、
両親の命を奪い、無関係の使用人たちの命を奪い、
さらには変身銃を使って社会を混乱させたー。

恐らく、捕まれば死刑になるー。
あるいはずっと外には出ることはできないー。

自由を求める美鈴にとって、
死刑だろうと、無期懲役だろうと、両方死刑のようなものだー。

だから、絶対に捕まるわけにはいかないー。

「どうなってるんだ!?」
「やべぇ…!この身体最高だぜ!」
「ーーちょっと!!!元に戻して!」

美鈴の姿に変身させられた人々が混乱の声を上げているのを見つめながら
美鈴はにやりと笑うと、
「わたしは、絶対に捕まらないー」と、
改めてそう言葉を口にしてから、
そのままその場から姿を消したー。

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”例の場所”である
バーの店内にやってきた美鈴ー。

その中では既に冬也が待ち構えていたー。

「よ、美鈴ー大丈夫だったか?」
冬也がそう言葉を口にすると、
美鈴は嬉しそうに「うんー」と、そう言葉を口にするー

「連絡が遅くなって悪かったなー。
 しかしまさか、変身銃を自分じゃなくて
 他人に使うとはー」

冬也が意外そうな表情を浮かべながら
そう言葉を口にすると、
「急に思いついちゃってー」と、美鈴は
照れ臭そうに笑ったー。

「ーーははー、まぁ、でも
 おかげで新しい使い方も見えて来たしー、
 いいんじゃないか?」
冬也はそれだけ言うと、
「それより美鈴。よく頑張ったなー」と、
労いの言葉を美鈴にかけるー。

「うん!大変だったんだよー。
 途中、何度も捕まりそうになっちゃってー…
 でも、冬也ともう一度会いたいって思ってー
 だから、頑張れたのー」
美鈴がそう言葉を口にすると、
冬也は美鈴の頭を撫でながら、
「もう大丈夫だー。安心しろ。俺が責任を持って逃がしてやる」と、
そう言葉を口にすると、店の外を見つめるー。

誰にも尾行されていないことを確認したのか、
冬也が安堵の表情を浮かべると、
「絶対に警察の奴らには捕まらないし、安心しろ」と、
不安そうにしている美鈴に対して言葉を口にする。

その言葉を聞いた
美鈴は「冬也も一緒に来るんでしょ?」と、そう確認すると、
冬也は美鈴を優しく抱きしめながら
穏やかな口調で言葉を口にしたー。

「ごめんー。俺は行けない」
冬也がそう言うと、
美鈴は悲しそうに「ど、どうしてー?」と、そう言葉を返す。

冬也は「俺は、まだやることがあるんだー」と、
”銀狼”としての仕事だろうかー、それともプライベートだろうかー。
そんな風に呟くー。

「そ、そっかー。じゃあ、わたし、先に行って待ってるからー。
 冬也も後で必ず来てね」
美鈴が悲しそうにしながらも、冬也の言葉に従う反応を見せると、
冬也は「ああ、必ず行く」と、そう応じた。

そしてーー

「ーーー…え???」
美鈴が驚いた表情を浮かべるー。

美鈴を抱きしめていた冬也が、美鈴を刺したのだー。

「ーーー…ぇ…?」
美鈴は”信じられない”という様子で目に涙を浮かべながら
冬也を見つめるー。

「ーそんなに驚くなよー。安全な場所に逃がしてやるって言っただろ?」
冬也の言葉に、
美鈴は血を流しながら「あ、安全な場所…って?」と、
力を振り絞りながら言葉を口にする。

「ーーあの世だよ。
 あの世までは警察も追ってくることはできねぇ。
 絶対に安全だろ?」
冬也はそう言うと、
美鈴は目に涙を浮かべながら「と、冬也ー…後から、来るってー」と、
泣きながら呟くー。

「あぁ、約束は守るさー。人間はいつかは死ぬからなー
 ま、約束を守るのは何十年後か分からないけどな」
冬也がそう言うと、
「ーーお前みたいなお嬢様は、”愛してる”とか言っときゃ
 簡単にホイホイ言う通りにしてくれて、扱いが楽だったぜー」
と、笑みを浮かべながら言うー。

冬也の”愛”は偽物だったのだー。

「ーしかし、変身銃で騒ぎを起こしやがってー
 俺はお前自身が変身しろって言ったんだぜ?
 何、他人をホイホイと変身させてやがるー。
 この馬鹿女がー」

冬也はそう言うと、美鈴の手を掴んで、刺したナイフを触らせるー。

「罪の意識で自死したお嬢様ってことで、よろしくな」
冬也はそう言うと、美鈴から変身銃を取り上げようとしたー。

がー

「う…うああああああああああああああ!」
利用されていたー
裏切られたー

そう知った美鈴は最期の力を振り絞って
変身銃を冬也に撃ち込んだー。

「ーー!?」
変身銃を撃ち込まれた冬也は、みるみるうちに
美鈴の姿に変身していくー。

「ーーーて、テメェー…」
変身銃で変身した人間は、事前に”自分の体液”を用意しておき、
それを使って変身銃を自分に撃ち込めば元に戻ることはできるー。

ただ、冬也はそれを用意していなかったー。

もうー、元の姿には戻れないー。

「ーくそ!!!!ふざけやがって!!
 クソ!!!クソ!!!」
美鈴の姿になってしまった冬也は瀕死の美鈴を蹴り飛ばすと、
変身銃を取り上げるー。

やがて、パトカーのサイレンが聞こえて来て、
美鈴になってしまった冬也は表情を歪めると、
既に動かなくなった美鈴を見つめるー。

「くそっ…!!!なんてことをしてくれたんだー…!」
美鈴になってしまった冬也は、そう言葉を口にすると
変身銃を手に、その店の裏側から脱出をするー。

しかし、変身を解除することのできない冬也は
自分が”美鈴”の代わりに”逃亡”することになってしまったー。

しかもーーー

「ーーよぉーお嬢様ー」
それから5日後ー。
美鈴の姿で逃亡を続けていた冬也の前に、
別の”銀狼”メンバーの男が現れたー。

「ま、待ってくれー。俺はこの女じゃねぇ」
美鈴の姿になってしまった冬也は
必死に”自分は美鈴じゃない”ということを
その相手の男に伝える。

しかし、”銀狼”にとって
変身銃で無駄な騒ぎを起こした美鈴は
既に処分対象ー。

「ーーククク。その手には乗らんー。
 変身銃を持ってる貴様が本物だ」
相手の男はそう言葉を口にすると、美鈴の姿をした
冬也に銃を向けたー。

銃を向けられた冬也は
思わず自虐的に笑うと、
”くそっー…あの女のところにこんなに早く逝くことになるとはー”
と、心の中でそう呟くのだったー

おわり

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コメント

変身銃を手に、逃亡するお嬢様の物語でした~!

結局、逃亡することはできませんでしたネ~!!

お読み下さり、ありがとうございました~~!!☆!!

「逃亡者の悪意」目次

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