罪を犯して逃亡中のお嬢様ー。
付き合っている裏社会組織の男から受け取った
”変身銃”を用いて、他人を自分の姿へと変身させて、
彼女は逃亡を続けるもー…?
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「ーー俺は、俺は花坂 美鈴じゃねえって言ってんだろ!!」
美鈴に変身させられてしまった挙句、
美鈴と勘違いして逮捕されてしまった男は、
怒りの形相を浮かべながらそう言葉を口にするー。
しかし、警察官は
「ーそんな言い訳が通ると思っているのか?」と、
不満そうに言葉を口にするー。
それでも、美鈴の姿に変身してしまった茶髪の男は
「だから違うんだよ!本物のあの女がー!」と、
自分は、”本物の美鈴”に変身させられたのだと
そう言葉を口にするー。
が、警察官は呆れ顔で首を横に振ると、
「そんなのが通用するわけないだろう」と、
改めて言葉を口にするー。
「ーーいや、でもよぉ…!本当なんだよ!
本物のあの女が、変な銃みたいなものを使ってー」
美鈴の姿のまま、悪態をつく男ー。
警察官は「いつまでもそんな言い訳が通用すると思うなよ」と、
それだけ言葉を口にすると、
そのまま立ち上がるー。
”ーーくそっー…あの女ー…いったい何なんだー
どうしてこんなことにー”
美鈴に変身させられてしまった茶髪の男は、
内心でそんなことを考えながら、苛立ちを露わにするー。
しかし、この状況では
”俺は花坂 美鈴じゃねぇ”と、何度騒いでも警察が
信じて貰えないことぐらいは、彼にも理解できるー。
”ーーエロい身体になれたってことは嬉しいんだけどなー
でも、この状況じゃ楽しめやしねぇしー、
代わりに逮捕されるなんてごめんだぜー”
美鈴の姿をしている茶髪の男は、さらにそんなことを考えるー。
”花坂 美鈴”の犯した罪は知っているー。
両親や、使用人たちを大勢殺して逃亡中の”お嬢様”ー
つまりは、ヤバいお嬢様だー。
そんなお嬢様の代わりに逮捕されたとあれば、
最終的に、自分が代わりに死刑になってしまう可能性があるー。
そんなことは、絶対に避けなければいけないー。
”ーーー”
美鈴の姿をした男は、表情を歪めるー。
仲間だった”金髪の男”=海司(かいじ)は、
美鈴の姿に変身させられたあとに逃亡したー。
それに、美鈴本人も逃亡中で、
恐らく美鈴はあの”よく分からない銃”をまた使うかもしれないー。
そうなればー…
やがて”美鈴本人”、あるいは”美鈴の姿をした誰か”が、
警察に見つかるのは時間の問題のはずだー。
”今は焦らず待つかー”
美鈴に変身してしまった茶髪の男は、
そんなことを内心で考えながら静かに笑みを浮かべたー。
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”花坂 美鈴 容疑者を逮捕ー”
そんな報道を見つめながら、
サングラスをかけた本物の美鈴が
ため息を吐き出すー。
「ーーこれならー…わたしはー」
美鈴は安堵の表情を浮かべるー。
美鈴の”変身銃”によって、
美鈴の姿に変身させられた茶髪の男が
警察に逮捕されたー。
その結果、”花坂 美鈴”は逮捕されたことになり、
容疑者逮捕で、美鈴が起こした事件の決着はついたー…。
後は、変装しつつ
”銀狼”に所属する彼氏である冬也からの連絡を待てば、
それでー…
「ーー……」
美鈴は、家電量販店入口付近でテレビを見つめながら
今後のことを考えるー。
が、人が多くなってきたために
その場から立ち去ると、
美鈴は”ー後は、上手く変装しながら身を隠していれば大丈夫ー”と、
そう言葉を口にするー。
美鈴は、大きな罪を犯したー。
例えば、自由を縛るような両親だったとしても、
その命を奪ってしまうことは許されないことだということは
理解はしているし、
何の罪もない使用人まで複数人殺めてしまったー。
でも、それでもー、
美鈴は捕まりたくなかったー。
「ー絶対にー絶対に捕まらないからー…!」
こうして手に入れた”自由”ー。
もう絶対に手放さないー。
美鈴はそう思いながら、ゆっくりと裏路地の方に向かって
姿を消したー。
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「ーーーーチッ!く、くそっ!」
一方、美鈴に”変身銃”を撃ち込まれて美鈴の姿に
変身してしまったもう一人の男、金髪の男・海司は
警察に見つかってしまい、”美鈴”として追跡されていたー。
「ーふざけんなー!俺はこの女じゃねぇんだ!」
可愛い声でそう叫ぶ美鈴になってしまった海司。
しかし、やはり警察には信じて貰えず、
そのまま取り押さえられてしまうー。
「ぐぐぐぐ…くそっ!待て!
俺は男だー!」
美鈴の姿に変身している海司がそう叫ぶもー、
その身体をどう見ても女にしか見えないし、
花坂 美鈴にしか見えないー。
が、美鈴に変身させられてしまった海司はすぐに
”そういや、既にアイツは捕まってたよなー”と、
茶髪の友人が”美鈴”の姿のまま捕まっていたことを思い出し、
慌てて口を開くー。
「す、既に”花坂 美鈴”は捕まってるはずだろうが!
俺は、本物の花坂 美鈴じゃないんだよ!」
美鈴の姿をした海司が必死に叫ぶー。
警察官たちも当然、”美鈴”は既に逮捕されていることー、
そして、その美鈴が”俺は美鈴じゃない”とずっと主張し続けていることは
把握しているー。
少しだけ、美鈴に変身している海司の言葉に戸惑いはしたものの、
それでも”凶悪事件を起こした女”の姿をしている人物を
そのまま野放しにすることはできなかったー。
「とにかく、話は署で聞くー」
そのまま警察官は、美鈴の姿をした海司を逮捕ー、
警察へと連行していくのだったー。
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”両名とも、DNA鑑定や指紋が花坂 美鈴 容疑者と一致しており、
警察では現在、詳しい状況を確認していますー。
また、既に逮捕された2名の花坂 美鈴 容疑者は
いずれも花坂 美鈴本人であることを否定しており、
警察は既に逮捕した2名の花坂 美鈴が、
本物ではない可能性も視野に捜査を進めていますー”
金髪男・海司が美鈴の姿のまま逮捕された2日後ー。
そんなニュースが報道されていたー。
”茶髪男”の読み通りー、
自分一人だけが捕まった状態では
”俺は花坂 美鈴じゃない!”と、叫んでも
信じてもらうことは難しかったけれど、
今は違うー。
”二人の美鈴”がこうして実際に捕まっているのだー。
警察も”二人が偽物”である可能性も入れて
既に捜査を始めているー。
その報道を見た”銀狼”の構成員で、
美鈴の彼氏でもある冬也は表情を歪めるー。
先日、美鈴が逮捕されたというニュースを目にした時には、
本物の美鈴が逮捕されたのかと思っていたものの、
”2人目の美鈴”が逮捕されたというニュースを見て、
冬也は、美鈴に与えた変身銃を、美鈴は
”自分が他人の姿に変身する”のではなく、
”他人を自分の姿に変身させる”という使い方をしたことを悟ったー。
「ーー美鈴ー」
冬也は険しい表情を浮かべながらそう言葉を口にすると、
美鈴について報じているニュースを見つめながら、
小さくため息を吐き出したー。
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美鈴本人も、
”2人目の美鈴”が逮捕されてしまい、
警察が”既に逮捕した美鈴は偽物なのではないか”と、
そう疑い始めたことを知ったー。
「ーー…あの時、一人だけ変身させていればー」
美鈴は変身銃を見つめながら表情を歪めるー。
あの時、美鈴に絡んで来た二人組のうち、
”二人とも”変身させてしまうのではなく、
二人のうち、どちらか一人だけを変身させていれば
こんなことにはならなかったと、美鈴は後悔の表情を浮かべるー。
”一人だけ”しか、美鈴が掴まなければ、
美鈴に変身させられた男がどんなに”俺は美鈴じゃない!”と
叫んだとしても、
本物の美鈴が身を隠している限り、
”そんなわけあるか!”で終わっていただろうからー。
けれど、二人とも美鈴に変身させてしまったことによって
”美鈴が二人いる”ということになって、
”本物はまだ逃亡中”である可能性に警察がたどり着いてしまったー。
「ーー…ーーーでも、わたしは絶対に捕まらないー」
美鈴は、両親に”束縛”されていた頃の自分を頭の中に
思い浮かべるー。
あんな状態にまた戻るのは絶対にイヤだー。
絶対に、あんな状態には戻りたくない。
そう思いながら、美鈴は”変身銃”を見つめるー。
「冬也から貰ったこれがあればー大丈夫ー」
美鈴はギュっとそれを握りしめると、
そのまま移動を始めるー。
しかしー…。
「ーおい、そこの君ー」
巡回中の警察官に”不審者”と思われて声を掛けられてしまう美鈴ー。
「ーー!」
美鈴は青ざめながら、慌ててその場を離れると、
路地裏を必死に走り始めるー。
そして、大通りに出ると
変身銃を手に、おじいさんに向かってそれを放つー。
おじいさんの姿がみるみるうちに”美鈴”になっていくー。
美鈴に変身させられてしまったおじいさんは
「な、なんじゃこれは…!?」と、
美鈴の姿で驚いた表情を浮かべているー。
「おぉっ!?おほっ…♡」
おじいさんになっても、衰えぬ下心を持っていたのか、
美鈴の姿になったおじいさんはニヤニヤしながら、
早速胸を揉み始めるー。
しかし、そこに巡回中の警察官が駆け付けて、
「お前はー!」と、そう言葉を口にして、
美鈴に変身したおじいさんを確保するー。
が、すぐに「ー!」と、本物の美鈴の方にも気づくと、
「逃亡中の花坂 美鈴らしき人物を発見ー。
複数人確認できるー応援を要請したい」と、
そんな言葉を続けたー。
美鈴は青ざめながらさらに逃亡を続けるー。
道端のおばあさんに変身銃を放ち、
おばあさんを美鈴の姿に変身させるー。
親子連れの子供の方に変身中を放つと、
その子供が大人である美鈴の姿に変身していくー。
「ーえっ!?えっ!?ど、どういうことー?!」
まだ小さい息子がいきなり”美鈴”に変身してしまったことで
母親は心底混乱した様子でそんな声を上げるー。
その様子も見つめながら、
美鈴はさらに遠くへと逃亡していくー。
「ーー花坂 美鈴!」
応援で駆け付けた警察官が
”美鈴に変身させられた”おばあさんに声を掛けるー。
が、おばあさんは自分の姿が美鈴の姿に
なってしまっていることにも気付いていなかったのか、
きょとんとした表情を浮かべるー。
「ー花坂ー?わたしは、梅子(うめこ)ですが?」
心底困り果てた様子の、美鈴の姿をしたおばあさんを前に
警察官も困り果てるー。
一方、別の警察官は
”美鈴”に変身させられた子連れ親子の息子の方を確保していたー。
「そ、その子はうちの息子なんです!
急に大人になってーー
ほ、本当なんです!」
母親が戸惑いながら叫ぶー。
警察官は困惑の表情を浮かべながらも
「花坂 美鈴を複数人確保ー。ただしいずれも本人ではないと
主張しており、原因は不明」と、
そう言葉を口にするー。
警察官が増員される中、美鈴は路地裏のホームレスに
変身中を撃ち込むと
「えっ…!?おぉっ!?」と、困惑した様子の美鈴になったホームレスを見て
そのままその場から移動するー。
移動中だったOLー、
ベビーカーに乗っていた赤ん坊ー
道端でスマホをいじっていた男子大学生ー
色々な人々に”変身銃”を撃ち込み”美鈴”を増やしていくー。
美鈴の姿に変わってしまった”ベビーカーに乗っていた赤ん坊”は
急に身体のサイズが変わったことでベビーカーを破壊してしまって、
そのまま路上で足をばたばたさせながら泣き始めるー。
美鈴は”自分の赤ちゃんのような姿”に困惑しながらも、
足早にその場所からも姿を消すー。
街中は騒ぎになっているー。
けれどー、
美鈴はそんな様子を見つめながら笑みを浮かべたー
「これでいいのー。これでー」
美鈴は当初、”他人をわたしに変身させて”
身代わりにしようとしていたー。
けれど、ついパニックになって二人組の男を、
二人とも美鈴に変身させてしまったことで、
”偽物を逮捕させて、それで事件終了”という幕引きが
できなくなってしまったー。
だから”作戦”を変えたー。
”大量にわたしの偽物を作って逃げる”ー
という作戦に。
そして、もしも捕まってしまった時には
”わたしも本物じゃありません”と、とぼけて
逃れるつもりだー。
だからこそ、”美鈴”をたくさん増やす必要があるー。
”捕まっても、”こいつも偽物だ”で終わるぐらいに”ー。
美鈴はそう思いながら
変身銃を握りしめると、そのまま人通りの少ない道の方に
入っていくのだったー
③へ続く
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次回が最終回デス~!☆
他人を自分に変身させて
逃げきりを図るお嬢様…☆!
どんな結末が待っているのかは
明日のお楽しみデス~!!

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