事故で赤ちゃんと入れ替わってしまった女子大生ー。
”自分が電車の中で見かけた赤ちゃんになってしまっていることー”
それ以外に状況が分からないまま、
彼女の焦りばかりが膨らんでいくー。
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”ーー先日の、路線への立ち入りによって
生じた事故によってー、
警察はー、故意に電車の運行を妨害したとしてー…”
家の中で流れているニュースの音声が聞こえて来るー。
”ーーわたしが乗ってた電車のー…”
優斗(希海)は赤ちゃん用のベッドの上で横たわりながら、
そんなことを心の中で思うー。
どうやら、あの時乗っていた電車の”急ブレーキ”は
線路内に人が立ち入ったことによる急ブレーキだったようだー。
ニュースによると、その男は自ら命を絶とうとしていたとか、
そういうことではなくて、
友達と悪ふざけをしていた20代の若者で、
そのうちの一人が、悪ノリで電車の前に飛び出したのだというー。
その男自体は、ギリギリで電車を自ら避けたため
無事ではあったものの、
悪質な行為として警察に逮捕されたそうだー。
「も~…本当に嫌になっちゃうよね~どうしてこういう
訳の分からないことするんだろう…?」
母親の幸恵のその言葉に、
幸恵の夫である男・達弘(たつひろ)も「そうだよなぁ」と、
それに同意する言葉を口にするー。
「でも、優斗が無事でよかったー」
母・幸恵のその言葉に、
父・達弘は「ああ」と、言葉を口にしてから、
「もちろん、幸恵も無事でよかったよー」と、
そう付け加えたー。
”ーーごめんなさいー…無事に見えるかもしれないけどー…
無事じゃないっていうかー…”
そう思いながら、優斗(希海)は悲しそうな表情を浮かべるー。
この両親の息子である”優斗”の”身体”は無事だー。
が、中身は分からないー。
まだ、赤ちゃんだから、このまま黙っていれば
中身が変わったなんてことは夢にも思わないだろうし、
気付かないとは思うー。
でも、希海だって、”希海”に戻りたいし、
ずっとこのままでいるわけにはいかないー
「う~~~ぁ~~~~!」
「あ~~~~!」
「だ!!だ!!」
なんとかして、言葉を発しようとするも、
それは叶わないー
まだ、言葉を発することができるほどに
成長していないのかもしれないー。
そして、必死にベッドの中で立ち上がろうとするも、
やはりそれも叶わないー
まだ、歩行することも
周囲とまともな会話をすることもできない年齢ー。
そんな子と、希海は入れ替わってしまったー…。
”ーーーはぁ…早く、この状態を伝えないといけないしー
わたしがどうなってるのかも知りたいしー
みんなも心配してるだろうしー”
彼氏の佳弥や、友達の美彩ー
他の周囲の人々のことを思い出す優斗(希海)ー
身体は赤ちゃんでも、
頭はハッキリしているー。
最初は、赤ちゃんの身体になったことで、
自分のことも何も分からなくなってしまうのではないかと
そんな風に心配はしたけれどー、
記憶に関する部分は”別”なのか、特に今のところ、
自分が自分であることを認識できなくなってしまったり、
そういった感じはないー。
”なんかー…
ハッキリとした自我があるのに、赤ちゃんやるってー
変な感じー”
”赤ちゃん”の頃はこんなにも暇だったのかなー、と考えたり、
ずっと寝転がったりしているだけで良い状況に、
なんだか不思議な気持ちを感じたり、
色々なことを考えるー。
”ー普通は、経験できないことだもんねー”
別に経験したいわけではないけれど、
何となく、不思議な気持ちになってしまうー。
優斗(希海)はそう心の中で呟きながら、
「優斗~どうしたの~?」と、言葉をかけてきた
母・幸恵のほうを見つめるー。
やはり、言葉は通じていないー。
これ以上騒いでも伝わらないだろうし、
心配かけちゃいけないと思い、ベッドで大人しくする
優斗(希海)ー
”早く言葉を喋るか、歩けるようになればいいけどー”
ーーとは言っても、
歩けるようになっただけでは、
どうにもならないかもしれないー。
仮にこの赤ちゃんの身体で歩けるようになっても、
家の玄関の扉を開けて外に出ていくのは難しいし、
仮に逃げ出したりすれば大騒ぎになるー。
当然、この両親にも心配をかけてしまうし、
外で”優斗”のような赤ちゃんー、小さな子が一人でよちよちと歩いていたら
それこ通報モノになってしまうー。
優斗(希海)は小さく息を吐き出すー。
”歩けるようにならないとだし、喋れるようにならないとー”
優斗(希海)は焦る気持ちを抑えて、心の中でそう呟くー。
がー、その時だったー。
「ーー最近、優斗、あまり泣かなくなった気がしないー?」
ふと、優斗の母親である幸恵が心配そうにそんな言葉を口にしたー。
「確かにー…まぁ、だんだんと成長してきてるってことじゃないかー?」
父親の達弘が言うと、幸恵は「それならいいけどー」と、
そう言葉を口にしながらも、
「”あの事故”の日から、あまり泣かなくなった気がするのよねー」と、
そんな言葉を口にしたー
”ーーーし、心配かけちゃってるー…”
優斗(希海)は赤ちゃん用のベッドからその会話を聞きながら
少し気まずそうに表情を曇らせるー。
”そ、そうだよねー赤ちゃんだから、泣かないとダメだよねー”
そんなことを思いながら、優斗(希海)は、
”今”いきなり泣き出したら、まるで両親の話を理解しているかのような
感じになってしまって、より心配をかけてしまうと思い、
今日はとりあえずそのまま過ごしー、
その次の日から、定期的に”わざと”泣くようにするのだったー。
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優斗(希海)は焦る気持ちを抑えながら、”赤ちゃん”として
過ごしつつ、歩けるようにー、喋ることができるようにと、
自分の中で練習を始めていたー。
もちろん、練習しても赤ちゃんの身体がすぐに進化するわけではないため
時間はかかるー。
けれども、少しずつ1歩、また1歩と前に進んでいく必要が
あるのも事実だったー。
そんな中ー、両親が見ていたテレビのニュースの音声から
”電車での事故”の際の”犠牲者は0人”であるということが
聞こえて来たー。
犠牲者が0人ー
それはつまり、”希海は死んでいない”ということを示していたー
”わたしの身体も生きてるんだー…よかったー”
優斗(希海)は内心でそんなことを思いつつも、
”でも、今、わたしはどんな状況なんだろうー?”と、
心配になってしまうー。
希海が今、こうして優斗になっているということは、
”希海”の身体は昏睡状態になっているのだろうかー。
それともーーー
優斗(希海)は、赤ちゃんの身体で
険しい表情を浮かべるー。
まるで大人のような真顔を浮かべている優斗の姿を見たら、
また、両親が心配してしまうかもしれないー
でも、険しい表情を浮かべずにはいられなかったー。
”まさか、この子がわたしの身体に入ってるなんてことはー…?”
優斗(希海)はようやく”入れ替わり”の可能性も
頭に浮かべるー。
自分が優斗になっているということは、
優斗が希海になっていたとしてもおかしくないー。
けれど、もしもそうなっていたとしたら、
”中身は赤ちゃんのわたし”が、わたしの身体で泣き叫んでいるかもしれない、と、
そんな強い不安を覚える優斗(希海)ー
そしてー、
もう一つ、優斗(希海)は”ある可能性”を考えるー。
それはー
”わたしは、わたしで普通に生活しているのではないか”という
恐ろしい”可能性”ー
希海自身は、赤ちゃんの身体になっているはずなのにー、
一方で希海の身体も普通に”希海”としてそのまま生活しているのではないかという
そんな恐怖が頭の中に浮かんだー
もしも、そうなっていたら、”わたしが希海なの!”と言っても、
どうすることもできず、”希海”に戻れなくなってしまうー。
幸いー、この”恐怖の可能性”は杞憂に過ぎないものの、
今の希海からすれば、”わたしの身体がどうなっているのか”を
確認する方法がないために、焦りばかりが膨らんでしまうー。
”ーー焦っちゃだめーとにかく、喋れるようになってー
この子のお母さんとお父さんに事態を伝えなくちゃー”
優斗(希海)はそんな風に思いながら、
ひたすら”赤ちゃん”としての生活を送るー。
”~~~~…大学生になって粉ミルクを飲むことになるなんて~…”
優斗(希海)は、赤ちゃん用の粉ミルクを飲まされながら、
内心で苦笑いするー。
”こんな味だったんだー…”と、既に自分自身が赤ちゃんであった時に
飲んだであろう味を覚えていない希海は、
新鮮な気持ちになりながら、それを飲み干すー。
”ーーう~ん……この身体じゃ、まだ普通のご飯は
食べられないもんね~…”
別の日には、離乳食を食べたー。
大学生になって離乳食を食べるなんて、と
やはり思ってしまうものの、
優斗の身体でご飯を食べたり、お菓子を食べたりすることは
まだできないー。
優斗の口で食べることにも、離乳食の味や食感にも、
不思議な感覚を覚えながら、希海は優斗としての食事を
繰り返していくー。
”~~~~~~~~~~~~~~~~”
さらにー、母親ー幸恵の母乳を飲むことになって、
優斗(希海)は心底戸惑うー。
自分が赤ちゃんだったときに
こうしていた時の記憶はないし、味も覚えていないー。
優斗(希海)はその感覚や味ー、
そして、”わたし、あなたの子供じゃないんですー…”と、
何となく申し訳なさも感じながらも、
だからと言ってここで泣いて叫んで、母乳を拒否したら
それはそれでまた心配されそうだと思い、
大人しくそれを受け入れるー。
赤ちゃんとしての生活は、本当に大変だったー。
がー、やがてー
「あ~~ぅ~~…
からーー からーーぁ」
わずかにー、
”喋る”ことができるような兆しが見えて来たー。
「ーーー優斗?」
母・幸恵が、優斗(希海)が少しずつ喋り出したことに
驚きの表情を浮かべるー。
「ーーーぁ から ぁ が いれかーーぁ」
何とかその状態で伝えようとするも、
優斗(希海)は、まだハッキリとした言葉を
発音することができないー。
”ーー今はまだ無理ー。でもー、もう少しー”
優斗(希海)はそう思いながら、
今日は”伝える”ことを諦めるー。
そうこうしている間に、少しだけ立てるようになって、
よちよちしながらではあるものの、
移動もできるようになったー。
”そうだー…ペンー…ペンで文字を書けたらー”
移動できるようになった優斗(希海)は、
部屋の中の”ボールペン”や”鉛筆”を探すー。
がー、赤ちゃんがボールペンや鉛筆を手にしてしまったら
危ない、という両親の配慮なのだろうかー。
結局、”筆記用具”のようなものは
優斗の身体で取ることができる場所にはなくー、
文字で状況を伝えることも断念せざるを得なかったー。
移動できるようになってー、
少しずつ、できることが増えていくー。
そしてー、ついにー…
優斗(希海)は喋ることができるようになったー。
「ーごめんなさいー…
わ、わたしは優斗くんじゃなくてー
4か月前の電車の事故のときにー」
ぎこちない口調であるものの、ちゃんと単語を
喋ることができるー。
優斗の口が、喋ることができるぐらいに発達した今ー、
大人にしかできないような会話も普通にできるようになったー。
何故なら、中身は希海なのだからー。
驚く母親の幸恵と、父親の達弘を前に、
自分の状況を包み隠さず、全て伝えていくー。
あの日の事故のことー、
それ以降、ずっと自分が優斗であったことー、
早く伝えたかったけれど、喋ることが出来ずにずっと伝えられなかったことー
そして、元に戻るために自分の身体ーー
希海自身の身体の元に足を運んで、
今後のことを相談したいー、と、いうことー
それらを全て、伝えたー。
「ーーーー優斗ー…い、いえ、あなたは
本当に優斗じゃないー…のね?」
優斗の母・幸恵は戸惑いの表情を浮かべながらも、
赤ちゃんがこんなにペラペラと難しいことを話すはずがない、と、
戸惑いの表情を浮かべながら”希海”が今どうなっているのかを
確認しー、そして、話をする機会を作ってくれると、
そう、約束してくれたー。
この時、既に事故から”4か月”が経過していたー。
③へ続く
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コメント
ようやく入れ替わりを伝えることができましたネ~!
②では”あえて”希海になった優斗が今どうしているのか
一切描きませんでした~★
”わたしの身体が今どうなってるの?”が、分からないドキドキ…なのデス…!
明日もぜひ楽しんでくださいネ~!!

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