<皮>先生は怪物だった!?③~悪意~(完)

担任の先生が”怪物”だったー。

”皮”を一時的に脱いでいるところを
目撃してしまった教え子の彼はー、
担任の”橋口先生”は怪物だと、周囲にそう言い始めるー。

しかし、誰にも信じて貰えないまま
ついに彼は学校にも来なくなってしまいー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー今日も休みかー」
今日も”担任の優しい先生”として
振る舞いながら京香は、
そう言葉を口にするー。

”ーーーまさか、こんな理由で俺のクラスから不登校が
 出ちまうとは思わなかったけど、
 まぁ、仕方ねぇー”

京香は少しだけ溜息を吐き出しながら、
心の中で呟くー。

京香を乗っ取った隆司の目的はあくまでも
”新たな人生を、やりたかった仕事をやりながらまっとうに生きること”だー。

別に教え子たちを傷つけるつもりはないし、
本当に大事にはしているー

「ー先生ー」
そんな中、翔太の隣の座席に座っている菜緒が、
京香の元にやってきたー。

「ー先生ー緒方くんが言ってたことー…」
菜緒が、少し心配そうに呟くー。

”先生は怪物”ー
そんな言葉を、最近になって菜緒は少し考えるようになったー。

翔太は”嘘ばっかり”で、菜緒もいつも”どうしてそんなに嘘ばっかりつくの?”と
思っていたものの、
今回ばかりは”何だかいつもと違う”そんな気がしていたのだー

「ーーーーー大丈夫ー。わたしは怪物なんかじゃないよ」
京香は優しく微笑むー。

教え子たちに危害を加えるつもりはないー。

確かに、自分は”怪物”だー。
他人の身体をこうして乗っ取り、その人生を奪っているのだから、
その行為自体は”怪物”以外の何物でもないだろうー。

ただーー
それでも”大丈夫”と言ったー。

今、目の前にいる菜緒にも、他の教え子たちにも
危害を加えるつもりは全くないー。
適当に先生をやるつもりもないー。

ちゃんと、必要なことは教えて、
ちゃんと、送り出すー。
先生としてー。

だから、大丈夫だと言ったー。

「ーー先生は、怪物じゃー…ないですよねー?」
菜緒が不安そうに言うと、
「ーうんー。当たり前でしょー。先生は、先生だよ」
京香はそう言葉を口にすると、
「でも、緒方くんのことも心配だしー。先生も今度お話してみるからー」と、
そう言葉を口にしたー

”面倒くせぇガキだけどー、でもまぁこのままにしておくのも良くねぇよな”

一人になった京香はそう呟きながら、
髪を少しイライラした様子でかきむしると、
「まぁ、教え子のトラブルを解決するのも、先生の役割だよな」と、
静かにそう言葉を口にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー!!」

”不登校”になった翔太は
意味もなく、家でのんびりと過ごし続けているわけではなかったー。

”あること”をずっと調べ続けていたのだー。
親の目を盗んでは親のパソコンを使って、
調べて、調べて、調べ続けたー。

まだ、2年生の翔太は彼なりに
先生を助けようと、必死に、必死に調べ続けたのだー。

そしてーーー

”ーー俺も見たことあるよー”

ネットで”先生の頭が割れて、中から男の人が出てきた”
”俺の先生は、怪物なんだ”と、書き込んでいた翔太ー。

当然、写真も動画も用意していない翔太のそんな発言を
真に受ける人間はおらず、
翔太の”先生を助けるための情報収集”は難航していたものの、
今日ー、ついに”そんな情報”が寄せられたのだー

「えっ」
翔太は”俺も同じことを見たことがある”と称するその男に
詳しく話を聞くー。

”その先生を助ける方法、知ってるから、今度の土曜日会って話、できるかなー?”
そう相手から言われた翔太は
”橋口先生を助けるため”にと、そのままその場所へと向かうことを
決意するのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

土曜日ー

翔太が”相手”から指定された場所にやってくると、
そこに姿を現したのはーー

可愛らしい女子高生だったー。

「君が、緒方 翔太くんー?」
微笑む少女ー。

彼女は佐田 茜(さだ あかね)ー。

ーー”橋口先生”を皮にしている隆司の仲間で、
共に人を皮にする力を手に入れて、
”JKになりたい”と、茜の身体を乗っ取った男だー。

先日”ヘマ”をして、隆司が”先生”として学校にいる時間帯に
電話をかけて、隆司から怒られた張本人だー。

その茜が笑みを浮かべながら翔太に近付くと、
「ーーふふーー君の言ってた話だけどー」と、
そう言葉を口にするー。

翔太は不安そうに茜のほうを見つめると、
茜は邪悪な笑みを浮かべたー。

「ー”怪物”なんていないよー」
と、そう言葉を口にしながらー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーは~い、また明日~」

今日も、”先生”としての1日を終えて
京香は教え子たちにさよならの挨拶をしていたー。

それもひと段落したタイミングで、
京香のスマホに連絡が入ったー。

「ーー!」
その連絡を見て、京香は思わず表情を歪めるー。

”ーーこの前は悪かったなー
 詫びと言っちゃなんだがー、
 お前のことネット上で騒いでたガキを捕まえたぜー?”

そんなメッセージと共に、
可愛らしい雰囲気の”茜”と、ボロボロになった翔太が
並んでいる写真が送られてきていたー

「ーーあ、あのガキー」
京香は、翔太が”不登校になった”と見せかけつつ、
自分のことをまだ調べていたことに驚きつつも、
「ーチッー」と舌打ちをするー。

翔太がネットでどんなに騒ごうと、
”先生が怪物だ”なんて言葉は誰も信じやしないー。
ましてや、翔太は隆司が”京香”を脱いでいた場面を”見た”だけで
動画を撮影していたり、写真を撮影していたりしたわけじゃないー。

そのまま”放置”しておけば問題なかったはずだー。

それにーー

”散々痛めつけられた”様子の翔太の写真を見て
京香は歯軋りをするー。

”ーこれから、こいつを”皮”にして処分するから、お前も来いよ”

隆司の友人、”真壁”ー…茜を乗っ取っている彼からは
そんなメッセージも添えられていたー。

「ーくそっー…」
京香は舌打ちしてから、そう言葉を口にすると、
そのまま学校を飛び出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーへへへへー
 クソガキがー」

茜が、翔太をグーで殴りつけると、
「ー先生が来たら、お前を”皮”にしてやるからなー?」
と、茜の顔に似合わぬ邪悪な言葉、邪悪な表情を浮かべるー。

「ーー助けてー」
翔太が涙目でそう呟くー。

しかし、茜は制服姿のまま、翔太の足を踏みにじると
「うるせーんだよクソガキ」と、そう言葉を口にするー。

その時だったー。

廃工場の倉庫の扉が開き、そこに”先生”がやってきたー。

「ーーよぉー遅かったじゃねぇか」
茜が笑みを浮かべながら言うー。

「ーー先生ー」
ボロボロになった翔太がそう言葉を口にすると、
中に入ってきた京香は、翔太の方を見つめたー。

茜は笑みを浮かべながら
「俺、もう1個手に入れたんだよー」と、
人を皮にする針を見せ付けながら、笑うー。

”茜”の身体でヘマをした真壁が”乗り換え”するために
用意したものだったものの、
これを翔太を始末して口封じするために使うのだと、
茜はそう説明したー。

「ーーーーー」

そんな茜を見つめながら
京香は言ったー

「ーーわたしの教え子をこんなに傷つけるなんてー」
とー。

「ーーは?」
茜は、表情を歪めるー。

「ーおい、何言ってんだよーお前ー」
茜がそこまで言いかけると、
京香は怒りの形相で「教え子を傷つけるなんてー、許せない」と、
”隆司”としてではなく”京香”としてー、
先生としてそう言葉を口にしたー。

「ーはぁ?ふざけんじゃねぇ!俺はお前のためにー!」
茜がそう叫ぶと、京香は、茜を無視して拘束された翔太に駆け寄り、
「緒方くんー、もう大丈夫だからねー」と、それだけ言葉を口にするー

「ーふざけやがって!!裏切者が!」
茜が声を荒げて襲い掛かって来るー。

人を皮にする針を持つ手を叩き、
それを落とさせると、
京香の身体のまま、茜と戦う隆司ー。

「くそっ!何のつもりだ!」
茜が鬼のような形相を浮かべながら声を荒げるー。

「それはこちらのセリフだ!」
京香はそう言い放つと、
「ーよくも大事な教え子をこんな目に!」と、
ボロボロになった翔太を見つめながらそう叫ぶー。

そして、廃工場の倉庫の外に茜を押し飛ばすと、
京香と茜ー、
お互い、他人を皮にして乗っ取った隆司とその友人の”真壁”は
戦いを続けるー。

事情を知らない人間から見れば
女性教師と女子高生が戦っている異様な光景ー。

しかし、幸いー、
この廃墟地帯には誰か”観客”が訪れてしまうことはないー。

「ーーこの…裏切者め!」
茜が声を荒げながらそう叫ぶと、
「ーー俺の教え子に手を出しやがって!」と、
京香は反論するー。

「ーお前のためを思って俺は!」
茜は、なおもそう主張するー。

「昔からお前はツメが甘いし、暴走しがちだった!」
京香がそう言い放つと、
茜は「うるせぇ!」と、近くにあった鉄の棒を拾って
そのまま襲い掛かって来るー。

その攻撃をなんとか回避した京香ー。

「ーーくそっ!このガキの身体ー、貧弱だなー」
茜は不満そうにそう呟くと、そのまま後頭部に手をかけて
”茜”を脱ぎ捨てるー。

中から出てきた”真壁”が、鉄の棒を手に
京香に襲い掛かろうとしたその時だったー。

さっきー、”茜”が落として
拾っておいた”人を皮にする針”を、
京香は真壁に突き刺したー

「ーーー!」
真壁が表情を歪めながら鉄の棒を落とすー。

「ーーー悪いなー真壁ー」
京香はそれだけ言うと、
ゆっくりと目を閉じるー。

友人の真壁が”皮”になっていくー

「ーー俺は、教え子たちを傷付ける奴は、許せないー」

真壁にかけたその言葉は、聞こえていたかどうかは
分からないー。

目を開くと、京香の足元には完全に”皮”になった真壁が
横たわっていたー。

「ーーー」
京香は、建物の中に戻ると、
ボロボロになった翔太に声をかけるー

「ーー緒方くんー」
京香がそう言葉を口にすると、
翔太は京香のほうを見つめるー。

「ーーー先生は、怪物だー」
翔太がそう言葉を口にするー。

そんな翔太を静かに見つめる京香ー。

がー、翔太は続けて言葉を口にしたー

「ー先生は、怪物だけどー
 でもーーー…俺ーーー」

こうして、自分を守ってくれた先生ー。
その先生の一生懸命な姿と、優しい姿はー、
翔太が入学した時から知る先生の姿と、
同じだったー。

「ーーーでも、俺ーーー
 先生が怪物だったとしてもー
 
 ーーありがとうー」

翔太のそんな言葉を聞いて、
京香は少しだけ微笑むと、
「ーーわたしは怪物じゃないよー」と、改めてそう言葉を口にしてから、
翔太に対して手を差し伸べるー。

翔太は、そんな京香の手を掴むと、
「ありがとう先生ー」と、今一度そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”これで、あのクソガキも、元通りってわけだなー”

後日、京香は、教室を見渡しながら
そんなことを考えていたー

心の中ではそう言いつつも、
隆司にとって、今や教え子たちは宝のような存在だー

「ーーなぁなぁ、昨日、俺見たんだよ!宇宙人!」
翔太が教室で、隣の座席の菜緒に向かって
そんな言葉を発しているー

「え~~~~……またそういう話~?」
菜緒はイヤそうにしながらも、
翔太の言葉に耳を傾けているー

そんな光景を見つめながら、
京香は少しだけ微笑むと、
”お前たちのこと、ちゃんと先生が担任のうちは守るからなー”と、
静かにそう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅した京香は、
回収した”真壁”の皮と、”茜”の皮を見つめていたー。

皮になった人間を元に戻す方法は分からないー。

いつかは、二人を元に戻す時が来るかもしれないー。
けれど、今はどうすることも出来ないー。

”茜”や”真壁”が行方不明になっても、
ひとまず、皮になった二人を回収しておけば、
少なくとも誰かに気付かれることはないだろうー。

「ーーー」
京香は、鏡を見つめるー。

自分は”優しい先生”ではないー。
人の人生を乗っ取った悪党だー。

そのことはこの先、何をしても、
どんなに善行をしても変わらないー。

けれどー、教え子たちは絶対に守るー。

悪人だけど、それだけは譲れないー。

「ーーーー」
クラスの集合写真を見つめながら
京香は少しだけ微笑むと
「先生は怪物だけどー
 でも、お前たちのことは絶対に守るからなー」と、
静かにそう言葉を口にしたー

おわり

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コメント

最終回でした~!★

翔太くんはこのあと、先生に対しては
怪物だ~!と言いながらも、
普通に接してくるようになったようデス~!★

お読み下さりありがとうございました~~!!

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