”いつも優しい担任の先生”の
秘密を知ってしまったー…!
けれど、日頃から嘘ばっかりついている彼は、
誰にもそのことを信じて貰えずにー…?
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「橋口先生は怪物なんだー…
みんなに、みんなに知らせないとー」
翔太は、担任である橋口 京香のことを
思い出しながら職員室に向かっていたー
”京香の中”から、謎の男が顔を出したー。
まるで、着ぐるみを脱ぐかのようにー、
脱皮するかのようにー…
それが、意味するところを、翔太は完全には理解できていない。
翔太は今、学校にいる橋口先生は偽物で、
本物の橋口先生はどこかに攫われているー、と、
そんな風に思っているー。
けれどー、子供なりに
担任の先生を助けたい、と、そう思いながら
職員室に駆け込んだー
「ーは、橋口先生がー、橋口先生が怪物なんだ!」
翔太が叫ぶー。
がー、職員室にいた別のクラスの担任を務める
宮坂(みやさか)先生が、笑いながら翔太のほうを見つめたー。
「ーははは、何を言い出すんだー?緒方くんー」
宮坂先生は、50代の穏やかな雰囲気の”おじさん”という感じの先生で、
翔太たちの隣のクラスである3組の担任を務めているー。
「ーーーみ、宮坂先生!聞いてよ!
橋口先生の頭がこんな風に取れてー
橋口先生の中から、怖い男の人が出て来たんだ!」
翔太がそう叫ぶー。
宮坂先生は苦笑いしながら、
近くにいた1組の担任である藤田(ふじた)先生のほうを見つめると、
藤田先生は「ーそんなこと言って、先生を困らせちゃだめよ?」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーち、違うんだ!俺、ホントに、ホントに見たんだよ!」
翔太はなおも、”さっき見た光景”を繰り返し伝えようと言葉を口にするー。
けれど、1組の藤田先生も、3組の宮坂先生も、
翔太の言葉を信じてくれる様子はなかったー。
そうこうしているうちにー、
翔太の担任である京香が、職員室に戻って来たー。
「ーーあらー緒方くんー」
京香は少しだけ表情を曇らせるー。
表向き、”優しい教師”として振る舞っているものの、
翔太がこの職員室にやってきた理由をー、
”京香を着ている男”は、一番良く理解していたー。
がーーー
”ガキがー。いつも嘘ついてるお前の言葉なんざ、
誰も信じねぇよ”
そう思いつつ、京香は
「どうしたのかな~?」と、白々しくそう言葉を口にすると
翔太は「ー橋口先生のフリをするな!この怪物め!」と、
京香に向かってそう叫んだー
「あらあらー」
1組の藤田先生ー…40代の落ち着いた雰囲気の女性教師がそう呟くー。
3組の宮坂先生も「そんなこと言っちゃだめだぞ」などと、
諭すように言葉を口にしているー。
「ーすみませんーご迷惑をおかけしてー」
京香は、教え子である翔太が職員室で騒いでいることを謝罪すると、
「いやいや」と、3組の宮坂先生は笑いながら
「元気なのはいいことですよ」と、それだけ言葉を口にしたー。
「ーさっき見たぞ!お前は偽物だ!お前は怪物だ!」
そう叫ぶ翔太ー。
京香は「こら!他の先生も困ってるでしょ!」と、
そう言葉を口にすると、
そのまま職員室から翔太を引きずり出そうとするー。
それでも、翔太はまだ”先生は怪物”を繰り返すー。
京香を乗っ取っている男は、カッとなって翔太をビンタしそうになってしまったものの、
それを堪えて、職員室から追い出すと、
「先生は偽物なんかじゃないし、怪物じゃないよ」と、
少しきつめの口調で言い放つー。
翔太は「嘘だ!」と、なおもそう言い放つと、
京香のほうを睨みつけるー。
「ーー”嘘”をいつもついているのは、緒方くんの方でしょ」
嫌味っぽく、そう言葉を口にする京香ー。
翔太は悔しそうにしながらも、
「俺はー…俺は絶対、橋口先生を助けるんだ!」と、
そう言い放って、そのまま逃げるようにして走り去っていくー
「チッー」
一人残された京香は舌打ちをするー。
そして、少し間を置いてから静かに口を開いたー。
「ーー入学した時から、お前のこと教えてやってるのは
俺なんだけどなー?」
とー。
翔太は現在2年生ー。
京香は教え子たちが1年生の時から”2組”の担任教師をしているー。
がー、彼が京香を乗っ取ったのは”その前”だー。
そのため、これまで翔太のことをずっと教えて来たのはー
”本当の京香”ではなく、男に乗っ取られて皮にされた京香だー。
京香本人の意識はー、
翔太のことなど、そもそも知らないー
”乗っ取られる前”には、一度も会ったことなどないのだからー。
「ーーー…まぁいいー。あのガキにどうこうすることはできねぇだろうさ」
京香はうんざりした表情を浮かべながら
それだけ言葉を口にすると、静かに笑みを浮かべながら
職員室へと戻って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー本当に、本当なんだ!」
帰宅した翔太はー、
今度は両親にそのことを伝えていたー。
「ーそんなこと言って、先生を困らせちゃだめだぞ翔太ー」
翔太の父親がそう言葉を口にするー
「ー何か見間違えただけだから、心配しちゃだめよ」
翔太の母親も、そんな言葉を口にするー。
やはり、二人とも信じてくれないー。
翔太は「もういいよ!」と叫ぶと、そのまま2階に駆け上がって、
自分の部屋で頭を抱えるのだったー。
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「ーーーーは~~~疲れた」
帰宅した京香は、京香のイメージとは真逆な
少し散らかった部屋で、ぐったりとイスに腰かけると、
自分の頭に手をかけて、”京香”の頭の部分だけを脱いで、
自分本来の顔を外に出すー。
「ーーくそっー…真壁の野郎ー、
学校にいる時間に連絡してくるなって前からずっと言ってるのによー」
不満そうにそう呟く男ー。
京香を乗っ取って”先生”をやっている男の名は、
島川 隆司(しまかわ たかし)ー。
彼と、その友人の真壁は
”数年前”に、人を皮にする力を手に入れたー。
二人とも、小さい頃からの知り合いで腐れ縁とも言える間柄で、
二人とも”就職後に上手く行かずに、職を転々とする人生”を送っていたー。
”なりたい自分”に、隆司も、友人の真壁もなることができなかったのだー。
そんな中、手に入れたのが”人を皮にする針”だったー。
1回限りの使いきりであったそれを2本手に入れた二人は、
それぞれ”なりたかった自分”になるために、
それを使い、他人の身体を乗っ取ったー。
教師になりたいと若い頃は夢を思い描いていた隆司は
まだ若くー、先も長い京香を皮にして乗っ取りー、
それ以降は教師として働いているー。
もちろん、男性教師を乗っ取っても良かったのだが、
隆司自身”できるなら女の方が色々楽しそう”と、そう思って
京香を乗っ取っていたー。
「ーーーはぁ……」
胸を揉みながらため息を吐き出すー。
首から下は京香の皮を着たままであるため、
自分の顔を出していても、”身体”は
京香の感触のままだー。
「ーーーーーー…~~」
しばらく胸を揉んでいたものの、さすがに京香になってから数年ー、
最初のような新鮮味はなくなりつつあったのか、
そのまま京香の顔を再び着て、ちゃんと京香になると、スマホを手にして、
一緒に”人を皮にする力”を手に入れた相手ー、真壁に連絡を入れたー
「ー真壁ー。昼間は電話してくるなって言っただろ?
俺は先生なんだからー」
京香が不満そうにもう一度釘を刺すと、
”へへー悪い悪い”と、友人・真壁の声ー…いや、可愛らしい声がしたー。
友人である”真壁”は、JKになりたい、という理由で
当時、中学卒業を迎えたばかりの子を乗っ取っていたー。
現在は、高校3年生となっていて
”次はJDだぜ”などと、先日もニヤニヤとしていたー。
その”真壁”が、数日前にヘマをして、
立場が危うくなっている、と、そんな相談のために
昼間、電話をかけて来たのだったー。
どうやら、京香の皮を着たまま
”旧友”の一人と飲みに行ったらしく、
その帰りに酔った状態で街をふらふらしているところを
友達に目撃されてしまったらしいー。
「ケッー馬鹿がー」
京香の皮を着たまま、そう言葉を口にした隆司は、
「ーーお前は昔からツメが甘すぎるんだよー」
と、不満そうに呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーおはよ~!」
翌日ー
今日も、京香の皮を着た隆司は
いつものように”優しい先生”として学校にやって来るー。
”教師になりたい”
そんな夢を抱いていた隆司は、
京香の皮を着て、こうして教師をやることが出来ている
日々に満足していたー
彼としては、子供たちに危害を加えるようなつもりは全くないし、
子供たちにとっても”何も知らなければ”そのまま、
京香になった隆司自身もちゃんと授業もこなしているために、
”何の害もない”状態だったー。
乗っ取られている京香からすれば、
自分の身体も、人生も乗っ取られて
災難であるものの、
少なくとも、子供たちの目線で考えれば、
京香を乗っ取った隆司は、何か悪だくみを考えているわけではないため、
危害が及ぶ心配はなかったー。
”余計なこと”に気付きさえしなければー…。
「ーーーーー」
京香は険しい表情で翔太のほうを見つめるー。
一方の翔太も、京香のほうを睨むようにして見つめていたー。
がー、今日の翔太は昨日とは違って周囲に対して
”先生は怪物なんだ!”みたいなことは騒いでいないー。
”諦めたのかー?”
京香はそんなことを思いながらも、
”まぁいいー。ガキなんて押し通せばどうにかなるんだ”と、
そう言葉を口にしながら、
出席簿で口元を隠しつつ、邪悪な笑みを浮かべるー。
”俺の夢のような人生は、誰にも邪魔させねぇー”
そんなことを思いつつ、京香は笑みを浮かべるのをやめると、
出席簿を教壇の上に置いて
「じゃあ、今日も頑張りましょう」と、みんなに向かって
いつものように笑顔を振りまいたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昼休みー
「ーーーおいっ!」
そんな声が聞こえて、京香が振り返ると、
そこには翔太がいたー。
「おいっ!化け物!橋口先生をどこにやった!?」
翔太は、そんな言葉を口にするー。
「ーあははー…緒方くん~…まだそんなこと言ってたのー?」
振り返った京香は思わず笑うー。
がー、翔太は「先生はどこだ!」と、そう言いながら
京香に向かって突進してくるー。
どうやら翔太は”周囲に話しても無駄”と、そう思ったのか、
実力行使に出た様子だったー
「ーちょっと!緒方くん!何をするの!?」
京香として、そう叫ぶ隆司ー。
相手は隆司から見れば”ガキ”ー
京香は華奢な感じではあるものの、翔太を力ずくで抑え込むことは
恐らくできるー。
が、それをしてしまえば、”優しい先生”の仮面が取れてしまうー。
「ーーー本物の先生はどこだ!」
あくまでも、ここにいる京香は偽物だと思い込んでいる翔太が
そう叫ぶと、
「ーーーそこで何をしてるー!?」
と、そんな声が聞こえたー。
偶然、3組の担任の宮坂先生がその場にやってきたのだー。
突き飛ばされて、床に座り込んでいた京香を見て
「ー大丈夫ですか?」と、宮坂先生がそう言葉を口にすると、
「ー緒方くんーダメじゃないかー。どうしてこんなことをしたんだ?」と、
翔太に向かってそう言葉を口にしたー。
”担任の先生に暴力を振るった”として、
翔太の親に連絡が行き、
その日は、親に引き取られる形で翔太は下校することになったー。
「ーーどうして、そんなことしたの?」
「ー翔太ー。先生を困らせちゃだめだろ?」
両親から、そんな言葉を投げかけられる翔太ー。
翔太は悔しそうにしながら
「先生は怪物なんだ!」と、叫ぶー。
けれど、そんなことを信じてもらうことは出来ないー。
「ーーくそっ!俺は…俺は絶対に見たのにー」
部屋に戻った翔太は悔しそうにそう叫ぶー。
絶対にー…
絶対に見たのだー。
”橋口先生の中”から、男が出て来るのをー
絶対にー。
そう思った翔太は悔しそうにしながら、
親の部屋に忍び込むー。
そして、親の部屋のパソコンを勝手に起動すると、
何かを必死に調べ始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーみんなおはよ~!」
数日後ー
学校にやってきた京香は、
いつものようにそんな挨拶を口にするー。
「ーー」
翔太は今日も欠席ー。
そんな、翔太の座席を見て、
隣の座席の菜緒も、少し不安そうな表情を浮かべるー
”ーーあのガキー不登校になっちまったかー。
別にそこまで追いつめるつもりはなかったんだけどなー”
そんなことを思いつつ、京香はため息を吐き出すと、
「ま、それならそれで仕方ないー」と、
静かにそう呟くのだったー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
次回が最終回デス~~!☆
最後に何が待っているのか、
ぜひ見届けて下さいネ~!!
今日もありがとうデス~!!

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