<憑依>身体を賭けたおとり捜査③~渦巻く陰謀~(完)

憑依を悪用する犯罪組織を潰すために、
彼女は自ら憑依されたー。
仲間たちが、必ず目的を達してくれると信じてー。

その果てに待つ結末はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”このままじゃ、先輩がー”

憑依されてすっかり悪女となってしまった野々花ー。
もちろん、そういう野々花の姿を見ることになってしまうのは
想定済みで、葵もそれは覚悟していたー。

しかしー
野々花に憑依した犯罪組織アビスの幹部・敷本は、
アビスの現首領・魔崎に対して
反乱を起こそうとしている様子で、
このままでは野々花の身体にも危険が生じるー。

「ーーわたしが、どうにかしなくちゃー」
葵は、そう思いつつ、犯罪組織アビスのアジトの
周辺に陣取るー。

野々花の姿を確認したら、計画よりも2週間ほど
早いけれど、野々花を確保して、
本部に連れ帰るー。

宮根班長には何か言われるかもしれないけれど、
それでも、このまま野々花の身に危険が生じることは
放っておけなかったー。

葵は、野々花を止めようと、
憑依された野々花との接触を図ろうとするー。

”ーーーーーーーーーー”
アビス対策班本部では、宮根班長が
険しい表情でモニターを見つめていたー。

「ーーー」
部下である野々花の無事を願っているのかー、
それとも”別の目論見”があるのかー
それは、彼本人にしか分からないー。

「ー班長ー」
背後から軽口の捜査官・石島 暁人が姿を現すー。

「ーー西山さん、やばいみたいじゃないですかー。
 葵ちゃんから聞きましたよー?
 どうやら、西山さんに憑依した野郎ー、
 アビスのリーダーを裏切るつもりだってー」

暁人がそう言うと、宮根班長は静かに頷くー。

がー、宮根班長は”まだ”作戦の中止を命じなかったー
あくまでもあと2週間ー
当初の予定通り、憑依された野々花を1ヵ月泳がせるー。

そしてーーー

”もしも、野々花に憑依した幹部の敷本が、
 そのまま裏切りに成功すれば、アビスのリーダー・魔崎を
 仕留めることができる”と、
そんな期待もしていたー。

「ーー石島ー。君は、引き続き待機をー」
宮根班長の言葉に、暁人は「へいへいー」と、いつものように返事を返したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー。

野々花が、犯罪組織アビス本部の前に車でやって来ると、
赤い派手なパーティドレス姿で車から姿を現したー。

”ーー先輩ー”
憑依されているとは分かっていても、別人のような姿に
心を痛める葵ー。

「ーーお前はここで待機ー
 お前はあっちだー。

 俺がアビスの”女王”になったら
 お前たちにいい思いをさせてやるからなー」

野々花はそう言いながら、部下の男たちに
一人一人キスをしていくと
「あ、ありがとうございます!」と、部下たちは
顔を赤らめながら微笑むー。

「ーーこれから俺は”魔崎さん”と会うー。
 俺が魔崎さんを仕留めたら本部から出て来るやつらを
 拘束しろ」

野々花はそう言葉を口にすると、笑みを浮かべながら
本部の中へと入っていくー。

「ーーーー」
葵は、取り返しのつかないことになる前に、
なんとか野々花を止めようと動き出すー。

がー
その時だったー。

「ーー!?」
葵が振り返ると、そこには黒い手袋をはめた男が立っていたー。

すぐに身を守ろうとする葵ー。
しかし、何かを撃ち込まれて葵はその場に倒れ込んでしまった…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”この身体”を手に入れて俺は変わったー。

野々花に憑依している犯罪組織アビス幹部・敷本は
野々花の手を見つめながら笑みを浮かべるー。

ずっと、”魔崎さん”についていこうと思っていたー
けれどーー

ヒールの音を立てながら妖艶に歩く野々花は
ニヤリと笑うー。

「ーこの美貌に満ちた身体を手に入れた俺こそがーー
 上に立つにふさわしいー」
ニヤッと笑う野々花ー

野々花の身体を手に入れて”女の身体”を武器に
暗躍して半月以上ー
幹部・敷本は”野心”に目覚めていたー。

「ーーー悪の女王として組織のトップに立てるんだぜー
 喜べー」

廊下の鏡を見つめながら、野々花本人に向かってそう囁くと、
「ーまずは魔崎さんーそして、それが済んだらこいつの両親も
 仕留めてやるー」と、野々花は笑いながら、
リーダー・魔崎の部屋に足を踏み入れたー。

魔崎は、書類に目を通している最中で、
野々花に気付くと、顔を上げて笑みを浮かべたー。

「ーーー敷本ー今日もまた派手な格好だなー」
魔崎はそう言葉を口にすると、 
野々花は笑みを浮かべるー。

そしてー
野々花は少しだけ微笑むと、そのまま”銃”を手にしたー。

「ー何のつもりだ?」
魔崎が、少しだけ表情を歪めるー。

「ーー魔崎さんーへへー
 悪く思わないでくださいよー?
 こんなに綺麗な肉体を手に入れた俺ならー
 魔崎さんよりももっともっと、
 ”アビス”を大きくできるー

 女という武器を最大限利用してー、
 女王として犯罪組織の頂点に君臨できる」

野々花が狂った笑みを浮かべながら言うー。

その言葉に、魔崎は「貴様ー裏切るつもりかー」と、
怒りを露わにするー。

「ーーへへー
 最高の身体に憑依させてくれて、ありがとうございますー」
野々花はニヤニヤしながら、そう言葉を口にすると、
魔崎に向かって銃弾を放ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー…!」
野々花の後輩・葵が目を覚ますと、
そこには、宮根班長の姿があったー

「ーーは、班長ー!?」
驚いた様子の葵ー。

宮根班長は、
「危ないところだったー」と、そう言葉を口にするー。

犯罪組織アビスの本部周囲で、野々花の様子を見ていた葵は、
背後からアビスの構成員に襲われて連れ去られそうになっていたのだというー。

それを、宮根班長が助けたと、そう説明したー。

「ー気持ちは分かるー。が、単独行動はやめるんだー。
 西山の”身体をかけた捜査”も台無しになってしまうー」
宮根班長がそう言うと、葵は「で、でもー」と、そう言葉を口にするー。

「ーー大丈夫だー。俺は誰一人仲間を死なせないー」
宮根班長はそう言うと、”犯罪組織アビス”本部の方を見つめるー。

本部内から銃声が聞こえたー。
”野々花に憑依した幹部・敷本”が、首領の”魔崎”を撃ったのだろうー。

「ーーーーーー」
宮根班長は少しだけ笑みを浮かべるー。

憑依された野々花からの”情報収集”も、もちろん狙いの一つー。
しかし、宮根班長には”さらに別の狙い”もあったー。

それは、リーダーの”魔崎”を消すことー。

事前に、犯罪組織アビスの幹部連中のデータを徹底的に調査した結果ー、
”敷本”という男なら、野々花のような身体を手に入れれば、
やがて野心が芽生えて、自分がアビスのトップになろうとするのではないかと
そう考えたのだー。

そしてーーー

宮根班長は”どうだ?”と、無線機で小声で呟くー。

”ーー狙い通りですー”
そう返事が戻って来るー。

実はー、幹部・敷本の信頼する部下の一人に、宮根班長が”自分の部下”を
既に潜入させていたー。
その潜入捜査官が”野々花に憑依した敷本”を煽てて、煽って、
魔崎を裏切るように仕向けたのだー。

憑依された野々花に、魔崎を殺させてー、
そしてー、憑依された野々花を確保ー、
リーダー死亡で混乱している犯罪組織アビスを一気に壊滅させるー。

それが、宮根班長の狙いー。

”毒”には”毒”をー。
犯罪組織アビスという巨大組織を壊滅させるために
警察上層部がアビス対策班の班長に選んだ男ー・宮根は、
一見、頼れる上司のように見えるものの、
”事件壊滅のためなら手段を択ばない”毒蛇”の異名を持つ警察官ー。

「ーーーー魔崎は死んだー。
 西山が出て来たら、予定より早いが確保するぞー」
宮根班長がそう言うと、葵も頷くー。

がーーー
犯罪組織アビスの本部内から銃声が何度も響き渡り始めるー。

「どうした?何があったんだー!?」
本部の周辺で待機していた”野々花に憑依している敷本”の部下たちも
中に入っていくー。

やがてー、
銃声が鳴りやむと、
本部からー、”野々花”が出て来たー。

がー、野々花はふらふらと歩きながら、
倒れ込むと、奇妙な笑い声を上げながら、
ピクピクと痙攣し始めたー。

「せ、先輩ー!」
葵がたまらず、野々花の方に近付いて行くー。

「おい!待て!」
宮根班長はそう声を上げるも、葵は
そのまま、野々花に近付くー。

「先輩!!先輩!!!」
葵が、野々花にそう呼びかけるー。

しかし、野々花はけらけらと笑うだけで、
完全におかしくなっていたー。

そしてーーー
犯罪組織アビスのリーダー・魔崎が中から出て来たー

「ーー!」
葵が驚くー。

「ーーーーお前はー?」
アビスのリーダー・魔崎はそう言うと、
「ーあぁ…この女の仲間かー」と、静かに頷くー。

そして、言葉を口にするー。

「そいつに憑依してた俺の部下が、俺を裏切ろうとしたんでなー
 ”脳”を焼いてやったよー。
 もう、その女も、そいつに憑依してたやつも、元には戻らないー」

魔崎はそう言うと、
目に涙を浮かべる葵を見つめるー

「ーーークククククー
 そうそう、この本部は”破棄”だー
 裏切者は皆殺しにしたー。
 中に転がってるゴミの処理は、お前ら警察に任せるとしようー」

魔崎はそれだけ言うと、立ち去ろうとするー。

がー
葵は、泣きながらそんな魔崎に銃を向けると、
「動かないで!」と叫ぶー。

「ーーーー」
それを無視して立ち去ろうとする魔崎ー。

葵はもう一度「動かないで!」と、そう叫ぶも、
なおもそれを無視した魔崎に対して、
銃を放ったー。

がーーー
魔崎はそれを身体を動かして回避すると、
「ーー俺は”動体視力”に優れるんでなー」と、
笑みを浮かべながら
そのまま立ち去ってしまったー。

「ーーー…先輩ー…先輩ーー…!」
葵が涙目で叫ぶー。

そこに、宮根班長がやってくると、
野々花の方を見つめながら、表情を歪めたー。

”脳を焼いた”
何をされたのかは不明だが、
野々花も、野々花に憑依しているであろう敷本という男も
もう”再起不能”ということだろうー。

「ーーーー…ーーー」
宮根班長は歯軋りをするー。

すると、そこに宮根班長が事前に潜入させていた部下の男もやってきて
「ーーーこれではー……作戦は失敗ですね」と、
表情を歪めながらそう呟いたー。

宮根班長はしばらく沈黙するー。

がーーー
突然、銃を取り出すと、自分の部下の捜査官の男の頭を撃ち抜いたー

「ーーえっ…」
葵が目に涙を浮かべたまま、驚いていると、
「ー君達は、犯罪組織アビスとの銃撃戦の末に殉職ー。
 そういうことにするよ」と、宮根班長はそう言葉を口にするー。

「ーど、どういうことですかー?班長ー!?」
廃人状態になったパーティドレス姿の野々花を心配そうに抱えながら
目に涙を浮かべる葵ー。

すると、宮根班長は穏やかに笑いながら言ったー。

「ーー俺は、大勢を救うために少数を殺すー
 そういう人間なんだー。
 すまないなー」

それだけ言葉を口にすると、宮根班長は
何のためらいもなく、葵に銃弾を放ったー。

そして、廃人状態の野々花をそのまま抱えると
「アビスを壊滅させるために、自ら憑依される道を選ぶなどとは
 驚いたよー。西山。
 お前の犠牲は無駄にはしないからな」と、
そう言葉を口にしてから、宮根班長は
野々花を車の後部座席に乗せて、そのままその場から撤収していったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

宮根班長は、アビス対策班のメンバーたちの前で
話をしていたー。

「ーー今回の任務で、大事な仲間の命が2つ、失われたー」
目に涙を浮かべながら宮根班長は、
葵と、アビスに潜入させていた男性捜査官の死を語るー。

軽い振る舞いの捜査官・暁人も、その話を聞きながら、
怒りを滲ませているー。

「ーー犯罪組織アビスをこれ以上野放しにするわけにはいかないー!
 我々が全力を以て、奴らを潰さなくてはならないー。」
目に涙を浮かべながら、熱弁する宮根班長ー。

アビス対策班の捜査官たちは、
まさか”対策班のメンバーを奮い立たせるため”に、
葵と男性捜査官の二人を、宮根班長自らが射殺したとは
夢にも思わずに、”仲間たちの仇だ!”と、盛り上がりを見せるー。

「ーー二人のためにも、我々は戦うー!」
宮根班長がそう言い放つと、捜査官たちが声を上げるー。

”ーーこれでいい”
宮根班長は内心で笑うー。

あの二人が”アビスとの抗争に巻き込まれて死んだ”となれば
捜査官たちも怒りで奮い立ち、戦意が高まるー。

アビスを叩き潰すための近道になるー。

宮根班長はそう思いながら、
”回収”した野々花がいる部屋に向かうー。

拘束されている野々花はニヤニヤしながら
涎を垂らしているー。

アビスの首領・魔崎は”脳を焼いた”と言っていたー。
何をされたのかは不明だが、
もう元の野々花にも、野々花に憑依している敷本にも、
戻ることができないー。

「ーーこの状態では記憶の抽出は上手くいかないかー?」
宮根班長が、研究者のような男に向かって言うと、
「ーー現時点では難しいです」と、そう返事をするー。

「ーーー西山の身体が壊れても構わないー
 手段を択ばず、憑依されている間の記憶を取り出せー。
 解体してもいい」

宮根班長はそれだけ言うと、研究者のような男は
戸惑いながら「わ、分かりましたー」と頷くー。

部屋の外に出る宮根班長ー。
”表向きの頼れる班長”の仮面をかぶり、
今日も捜査員たちに言葉をかけていくー。

”犯罪組織アビスー。
 必ず、俺が叩き潰してやるからなー”

宮根班長は心の中でそう言葉を口にしながら、
笑みを浮かべるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

不気味な色の光が交錯する場所にやってきた
犯罪組織・アビスの首領、魔崎は笑みを浮かべるー。

アビスで研究している寄生虫を寄生させて
側近にした女たちに出迎えられながら
魔崎は笑みを浮かべるー。

”俺は、何度死にそうになりながらも、
 ここまで上り詰めたー”

魔崎は笑うー。

”ー死地を潜り抜け続けた俺に、潜り抜けられない地獄はないー”

犯罪組織アビスは、拠点をいくつも抱えているー。
壊滅したのはそのひとつー。

対策班がいくら動こうともーーー

”無駄なあがきだー”
魔崎は邪悪な笑みを浮かべると、そのまま拠点の一つの中へと入って行ったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

最終回でした~!★

身体を賭けたおとり捜査は失敗…★!
やっぱり、憑依されるのは危険ですネ~!

お読み下さりありがとうございました~!!

コメント

  1. TSマニア より:

    スゴい展開でしたネ!★

    宮根班長は戦国時代の武将だったら、かなりの大物になってましたね!☆

    憑依できる限りアビスは崩壊しないですネ(-_-;)汗

    流石の展開でしたっ!!

    宮根班長も、そのうち内部の者に消されそうですネ!!

    • 無名 より:

      ありがとうございます~~!★★★!

      いつかまた、何か続きのようなものが
      あるかもしれませんネ~笑