<皮>我が社は全員、OLです③~決断~(完)

入社した会社で、
皮にされた”同期の子”を着て、OLとして働くように
命じられた彼ー。

罪悪感を感じながらも、
彼は会社に従うしかなくー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーうんー…うんー
 わたしは元気だからー、うん、大丈夫ー。

 ふふー、ありがとー」

実家にいる親に”電話”をしながらそう言葉を口にする梨絵ー。

しかし、今の梨絵は”梨絵”であって、”梨絵”ではないー。
その中身は同期の新入社員・和樹だー。

指導役の麗香から、”実家に電話を掛けるタイミング”などを指示され、
その通りにしている梨絵を乗っ取った和樹ー。

「はぁ…」
電話を終えると、梨絵は大きくため息をつくー。

「まさか、”娘”の中身が”娘”じゃないだなんてー
 思ってないだろうなぁー…」

強い罪悪感を感じながら、梨絵を着ている和樹はそう呟くー。

が、”会社”に逆らうことはできないー。
”皮”を着た時点で、既に自分は”共犯”だと言われたー。
確かに、そうなってしまうかもしれないという恐怖から、
和樹は何もできずにいたー。

そんなある日ー

「ーへへへー今日も俺が奢ってやるよー」
静奈が嬉しそうに笑みを浮かべるー。

「ーふふー…”静奈ちゃん”ってば、金遣いが荒いなぁー」
中性的な男子・雄介が乗っ取った野々花が笑いながら言うと、
ゴツイ男・恵三が乗っ取った静奈は「ふふー」と微笑むー。

入社当時、大人しそうな風貌だった静奈は
今では派手な風貌の女に変貌していて、
まるで元の静奈の面影はないー。

しかもー、最近は仕事が終わると、夜の街で
男から金を貰って、男と寝たりしているらしくー、
金をたくさん持っていて、金遣いが荒くなっているー。

「ーーほら、”梨絵ちゃん”もそんな顔してないでー」
野々花が笑うー。

「ーーーう、うんー」

”この状況を楽しめていないのは俺だけー”
和樹は梨絵の身体のままそんなことを思うー。

そんな環境にずっといると、
”俺がおかしいのかもしれない”と、そんな風に思ってしまうー。

休日に、”野々花”からショッピングに誘われた”梨絵”を着ている和樹は
”俺も、楽しまないと”と、誘いに乗り、
共に”OLの休日”を楽しんだー。

けれどーーーー
ショッピング中にふと、鏡に”梨絵”が写ってー、
やっぱり罪悪感を感じてしまったー。

「ーー…ーーー”まだ”ー気にしてるの?」
野々花が不満そうに言うー。

「あ、いやー…う、ううんー」
”梨絵”としてそう返事を返すと、野々花は不満そうに
「ー楽しみなよー仕事がきついわけじゃないんだからー」と、
そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー……」

数日後ー
和樹は決断していたー。

”梨絵”の皮を見つめながら、
入社初日に梨絵と出会った時のことを思い出すー。

野々花も、静奈もー、
”普通に同期として”一緒に働けるーー
はずだったー。

ここが”普通の会社”であればー。

けれどー
ここは普通の会社じゃなかったー。

”俺は共犯扱いされてもいいーけどー”
和樹はついに意を決するー。

”自首”しようー、とー。
梨絵の皮を着たまま警察に足を運んで
全てを暴露しようー、とー。

この会社の悪事を伝えれば、
例え自分が捕まっても、
会社は警察の捜査を受けることになり、
梨絵も、野々花も、静奈もー、
そしてあの指導役の麗香って人ーー…
恐らく、同じように”皮”にされて乗っ取られているだけのあの人も、
みんなみんな助かるはずだー。

「ーー俺はー、お前たちの言いなりになんてならないぞー」
和樹はそう言葉を口にすると、その夜ー、
梨絵の皮を着たまま、会社を抜け出そうと動き始めたー。

寮の部屋を出て、警備員の男に挨拶をするー。
この男が初日に”珍しいねー”と言っていた理由が分かったー

この会社にはOLしかいないからー。
だから、珍しいね、と言ったのだー。

そう思いつつ、会社を抜け出す梨絵ー。

しかしーーー

「ーーーーーーー」
会社の一室の窓から、指導役の麗香が冷たい目で
それを見つめていたー。

「ーーあのクソ野郎ー」
そう呟く麗香ー。

が、次の瞬間、麗香は笑っていたー。

「ーまぁ万が一のための”仕掛け”も施してあるからねー
 裏切ろうとすればーー…」

麗香は笑うー。

新入社員たちには
ある細工が施されているー。

入社後の健康診断の際に、
”あるDNA”を、注射を介して植え付けてあるのだー。

それはー
”裏切ろうと具体的な行動を起こし始めた瞬間にそれを検知しー、
 本人に”激痛”を与えるー”という、細工だー。

さらには、裏切ったらどうなるかー、その”幻覚”を見せる作用も働くように
”リミッター”が施されているー。

裏切ろうとしても、無駄なのだー

「ーーエロイ身体を手に入れたんだからー
 楽しめばいいのにー

 ーー馬鹿なやつー」

麗香はそれだけ言葉を口にすると、ガムを噛みながら移動しようとするー。

そこにー、ツインテールの専務・美鈴がやって来ると、
「ひとりは失敗だったようだなー」と、笑うー。

「ーまぁ、ハズレはたまに引きますからねー
 でも、リミッターは完璧です。問題ありませんよ」
麗香はそう言葉を口にすると、そのまま歩き出すー。

「ーー麗香ちゃんー。やっぱ”ガム”似合わないと思うケドなぁー」
美鈴がニヤニヤしながら言うと、麗香は「ふふーギャップがいいんですよ」と、
そう言葉を口にしながら立ち去って行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー!!!」

警察署に向かっていた梨絵を着ている和樹は
”強烈な頭痛”に襲われていたー

「くそ……なんだ、これー」
梨絵は青ざめながら頭を抑えるー。

そしてーーー

”裏切ればーーー死”
そんな言葉が脳裏に響くー

それと同時に、梨絵は気づいたら”中身である和樹”の実家にいたー。

実家の両親が殺され、火がつけられている光景ー。

「ーな、な、なんだこれはー……!?」

”裏切ろうとしたもの”を検知しー、
和樹自身の脳に植え付けられた特殊なDNAが裏切りを検知ー、
それによって見せられている幻覚ー。

和樹は次々と恐ろしい光景を見せられー、
さらには、乗っ取った梨絵に恨み言を言われる光景や、
自分自身が皮にされてしまう光景ー、
そんな光景が次々と広がるー。

頭の激痛に、その場に蹲るーーー

「ーーぐ…くそっーー」
少し後ずさり、警察署がある方向から離れようとすると
途端に症状が落ち着くー。

和樹は悟ったー。

これはー”裏切り防止のための何か”だとー。

「ぐぐぐぐ…ぐぐぐぐぐぐぐぐー」
梨絵の皮を着たまま、和樹は「俺は…負けねぇ…」と、
そう言葉を口にしながら、警察署に向かうー

幻覚も、激痛もさらに悪化するー

この世の終わりのような幻覚ばかりが浮かびー、
そのまま頭が割れてしまいそうなほどの痛みに耐えるー。

”ふふふふー…バカな奴ー”
会社内の一室で、案内役も務める麗香は笑みを浮かべるー。

”和樹の脳”に植え付けられた特殊な成分が”反応”しているのが
モニターに表示されているー。

「無理をすれば、廃人になるだけー。
 裏切ろうとしても無駄なんだよー」
麗香が邪悪な笑みを浮かべるー。

無理をすれば、”脳”に植え付けた”DNA”が、
脳を破壊するー。
和樹は廃人となり、それで終わりだー。

「無駄なことをー」
麗香はガムを噛みながら、和樹の脳に植え付けたDNAから
発進される信号を見つめてあざ笑うー。

それでもーーー
和樹は、梨絵の姿のまま、這いずって警察署に向かうー。

「ーーー俺はーーー俺はーーー負けねぇーーー」
血の涙を流しながら、梨絵の姿のまま、
警察署に向かうーー

何度もー、
何度も、意識が遠のきそうになるー。

何度も、何度も、幻覚に飲み込まれそうになるー。

「ぐ…ぐ…ぐぐぐぐぐぐぐーーー」
それでも、彼は歯を食いしばってー
警察署にたどり着いたー。

梨絵の身体のまま、髪は乱れ切ってー、
冷や汗を垂らしながら、警察署にたどり着いた和樹はー
その場で「助けて下さいー。俺の会社がーー人を皮にー」と、
そう叫んで、梨絵の”皮”を目の前で脱いで見せたー。

梨絵の皮を脱ぐと同時に、既に限界を迎えていた和樹は
その場に崩れ落ちるように倒れ込みー、
警察署内は騒然とした空気に包まれるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

株式会社”ミストネットワーク”
前代未聞の凶行が発覚ー。

数日後ー
ニュースでは大々的にそんな報道が行われていたー。

ミストネットワークとは、
和樹が勤務していた会社の名前だー。

「ーーーーーチッー」
ガムを噛みながら、指導役だった麗香が表情を歪めるー。

「まさか、幻覚と激痛の中、警察署までたどり着くとはー」
麗香はそう言葉を口にすると、そのまま自宅を片付けて、
どこかへ身を隠す準備を始めるー。

「もうあの会社はダメだー。
 こうなったら俺はしばらく海外に飛んで
 身を隠すことにするぜー」
麗香がそう言葉を口にしながら、家の玄関の扉を開けて、
外に出ると、ふと”声”が聞こえたー。

”やっぱ、ガム、似合わないよ 麗香ちゃんー”
とー。

「ー!?」
麗香が振り返ると、そこにはツインテールの専務・美鈴の姿があったー。

美鈴はスカートの中から、小さな針のようなものを取り出すと、
一瞬でそれを麗香の首筋に突き立てて、
そのまま何事もなかったかのように立ち去っていくー。

直後ー、”脳細胞を一瞬にして破壊する劇薬”を投与された麗香は
その場に崩れ落ちて倒れ込むー。

「ーーー…新人の指導はお前に任せただろうがー
 このクズがー」
専務の美鈴はそれだけ呟くと、”役立たず”の処分を終えて
そのまま闇の中へと姿を消したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー…助けてくれて、ありがとうー」

病院ー。
正気を取り戻し、”皮”から、元の状態に戻った
同期の梨絵が、入院中の和樹の元を訪れて
そう言葉を口にしたー。

「ーーーーいえーー」
和樹はそう言葉を口にすると、
「ー俺も、しばらくの間、鮎川さんの身体を勝手に使ってたわけですし
 あいつらの共犯ですー。すみませんでした」と、
自分が乗っ取っていた梨絵に対し、謝罪の言葉を口にするー。

「ーーー」
梨絵はそんな和樹を見つめながら、少しだけ溜息を吐き出すと、
「ーー”同期なのに敬語はいらない”って言ったでしょー」と、
和樹に対して言い放つー。

「ーーあ…ーーそ、ーーはいー」

「ーーーまた敬語」

梨絵は呆れ顔でそう言うと、
少し間を置いてから言ったー。

「ーーでも、永嶋くんが会社の悪事を伝えようって思ってくれなかったら
 わたしも、同期の子ふたりも、そのままずっと乗っ取られたまま
 だったかもしれないしー、
 ーーーだからーー……そんなに自分を責めないで」

梨絵のその言葉に、和樹は少しだけ照れ臭そうにしながらも、
「ーー他の二人は、元気ですーーー…あ、いやー元気ー?」
と、敬語を途中でやめて、静奈・野々花の二人のことを確認するー。

「ーー野々花は元気ー。もう新しい職場も決まったしー。
 もう一人のー…静奈ちゃんの方はまだ落ち込んでるみたいだけどー
 でも、きっとそのうち元気を取り戻すと思うよー」

梨絵はそこまで言うと、
「ーあの会社も、業務停止命令を受けて、もう再起不能みたいだしー」
と、和樹たちが勤務していた会社の”現状”を口にするー。

「ーーーははー…そっかー」
和樹はそう言葉を口にすると、
そのまま病室のテレビに表示されている画面を見つめるー。

”警察はー、現在行方を晦ましている代表取締役及び、専務の行方を追っておりーーー”

そんな報道がされているー。

”名前”と”顔”は、恐らく社長も専務も”乗っ取られている子”の可能性が高いためか
報じられていないものの、残りのメンバーも捕まるのは時間の問題だろうー。

けれどーー

「ーーー俺ー…退院したら、罪を償おうと思ってますー」
和樹がそう言うと、梨絵は少しだけ間を置いてから、
「ーーーーーーま~た敬語ー」と、笑いながらそう言葉を口にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーー」
眼鏡をかけたスーツ姿の女が、夜の闇の中を歩くー。

”株式会社ミストネットワーク”の社長ー、
神宮寺 凛(じんぐうじ りん)ー

当然、中身は”神宮寺 凛”の身体を奪った男で、
凛はただ、皮にされた哀れな被害者ー。

”まさか、会社がダメになるとはー、
 だがー、あの技術さえあればーー”

凛は、そう言葉を心の中で呟くと
そのまま闇の中へと姿を消したー。

社長と専務ー
この二人の身柄は確保されることなく、
そのまま闇の中へと消えたのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

最終回でした~!★

不穏な要素も残ってはいるものの、
とりあえず平和な部分もある終わり方でした~★!

…ちなみに、同期の男子社員ふたりは
乗っ取っていた身体から追い出されて、
現在は警察で取り調べを受けるなどしている設定デス~!

お読み下さりありがとうございました~!★

コメント