彼はーー
憑依した身体で”寒さ”を味わうことに快感を感じていたー。
”寒さ”を欲望に変える男の物語ー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーへへ…へへへへ」
ニヤニヤしながら、夜の街を歩く女ー。
真冬の寒さの中ー、短いスカートを履いて
大胆に生足を晒している彼女は、
その寒さに震えながら、興奮していたー。
普段、スカートを履かない人間は、
真冬に生足を晒している人間を見て、
”寒くないの?”と、思うかもしれないー。
しかし、見た目通り寒いー。
寒いものは、寒いー。
足を出していれば、当然、冬の冷たい空気に晒されて
とても寒いー。
女であろうと、男であろうと、
足は足ー。
冬の空気に晒されていれば、それは当然寒い。
謎の力が働いて、女子だけ寒さを感じないなんてことはないー。
もちろん、そこに個人差はあるものの
普通は、寒いものは寒いのだー。
けど、この美少女はそれに耐えて、
興奮していたー。
自分を可愛く見せたいー、
おしゃれをしたいー、
またはー、誰かによく見せたいー。
そんな、色々な願いから、
人々は寒さを我慢して足を晒したりするー。
けれど、彼女の場合は、
”己が興奮するため”に、足を晒し、
そして今まさに、興奮していたー。
「ーーっ、ぁあ~~~この寒さ、たまんねぇ…」
この寒い中、短いスカートでウロウロしながら
震えていた彼女は、
顔を赤らめながら、興奮した様子でそう言葉を吐き出すー。
「ーーあぁぁぁぁ~寒いのに見せてる快感…
ゾクゾクして鳥肌が立っちまうぜー」
興奮して鳥肌が立っているのかー、
あるいは単に寒くて鳥肌が立っているのかー、
それすらも分からなくなってしまうぐらいに、
今の彼女は興奮していたー。
「ーーーへへへへー…この震える感じ…
やっぱやめられねぇなー」
見た目からは想像もつかないような言葉を
口にする彼女ー。
それもそのはずー
今、彼女は”身体”と”中身”がそれぞれ別人ー
自分で足を晒してその寒さに興奮している彼女の名は、
島井 天音(しまい あまね)ー。
けれど、その”中身”は別の男ー。
天音は今、”憑依能力”を持ち、他人の身体を乗っ取っては
お楽しみを繰り返している男ー、
小山田 哲昭(おやまだ てつあき)に憑依されて、
自分の意思とは関係なく”寒さ”を楽しんでいたー。
他人の身体に憑依して、
色々なことを楽しむ者たちー
通称・”憑依人”は、
世の中の裏に、複数存在しているー。
けれど、その”癖”は、人それぞれー。
同じ”憑依能力”を使う者たちの間でも、
憑依したあとにその身体で楽しみたいことは異なるー。
彼、小山田 哲昭の場合は
”寒さ”を楽しむことー。
憑依した女の身体で、わざと露出度の高い格好をして、
その格好ならではの寒さを楽しむことが、
彼の”癖”だったー。
「ーーーはぁ~~~……えへ…えへへへへへ」
身体をぶるぶると震わせながら、
憑依されている天音は嬉しそうに笑うー。
「しかし、男だと真冬に半ズボン履いて
外ほっつき歩いてたら”なんだあいつ”って目で
見られるのにー、
女だと、”かわいい”とか、そういう風に見られるのって
理不尽だよなぁ~」
天音は下品な笑みを浮かべながら
一人でそう呟くー。
さっきからー、通行人たちの”視線”を時々感じるー。
天音の綺麗な生足に視線が注がれているのが、
天音に憑依している哲昭にもよく分かったー。
「ーーしっかし、”意外と”見られてるのって分かるもんだなー
俺も普段、気を付けないとな」
天音はニヤニヤしながら言うー。
色々な子に憑依してみて、分かったことがあるー。
それは、
”案外、人の視線というものは分かるもの”だということだー。
今もそうー
天音のことをチラッチラッと、さりげなく見ているやつの視線はよく分かるー。
”憑依能力”と出会う前までは
”女なんて自意識過剰なやつばっかりだ”と、哲昭は
そんな風に思っていたものの、
今ならよく分かるー
意外と、”感じる”ことをー
「ーくくくく…後ろのおっさんも見てるなー
”俺”のことをー」
天音はゾクゾクしながら、背後にいるおじさんに背を向けたまま
ニヤニヤと笑うー。
そしてー、”わざと”一度振り返ると、
おじさんは慌てた様子で目を逸らしたー。
「ーへへ…ビンゴだな」
天音はご機嫌そうにそう呟くと、
そのままゆっくりと歩き始めるー。
がー、やがて、哲昭は天音の身体に飽きたのかー、
それとも”寒さ”が限界だったのか
”そろそろ抜けるか”と、ボソッと呟くと、
そのまま天音の身体から抜け出し、
自分の身体へと戻っていくー
「~~~~~~~~」
身体を支配していた哲昭が抜けたことで、
しばらくの間”抜け殻”のようにその場で棒立ちしていた天音は
やがてハッとした様子で意識を取り戻すと
「あ…あ…あれっ…?」と、周囲を見渡すー
「えっ…さ…さむっ……
えっ……な、なにこれー…?」
天音はその寒さと、自分がここにいる理由と、
こんな格好をしている理由ー
色々なことに戸惑いながら、困惑の表情を浮かべると、
「わ、わたしー…どうしてこんなところにいるの?」と、
そんな言葉を口にしたー。
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「あ~~~…
寒かったぜー」
自分の身体に戻り、ストーブで十分暖まっている部屋に
戻って来た哲昭は、満足そうに笑うー。
「ーーーーま、俺の身体は十分暖まってるんだけどなー」
それだけ言葉を口にすると、哲昭は
立ち上がって、少しよろよろとしながら歩くー。
自分の身体に戻って来たばかりの時は
寝起きのような状態になっているほかー、
”ついさっきまで使っていた他人の身体”とは
少し歩く時の感覚が異なるために、
結構戸惑うことがあるー。
今回も、そんな戸惑いを感じながら
少しだけよろめくと「へへー」と笑いながら、
「次は、肩出しで外を歩くかなー」と、そんな風に言葉を口にして、
笑みを浮かべたー。
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数日後ー。
哲昭は仕事から帰宅すると、
再び”憑依”を楽しもうと笑みを浮かべたー。
いつものようにストーブを入れて、部屋を十分に暖めてから
イスに腰かけると、”憑依能力”を使う準備を始めるー。
彼はー、”夏”にはあまり憑依しないー。
何故なら、彼の一番の”癖”である
”寒さを楽しむこと”ができないからだー。
そのため、彼は冬になると集中的に憑依を楽しみ、
暖かい季節の間はほとんど憑依しないー。
「今日は腕と足ー、両方で楽しむかーへへー」
そう言葉を口にすると、哲昭はそのまま幽体離脱をして、
”良さそうな憑依相手”を探すために上空を浮遊し始めるー。
やがてー、
「おっ!」と、ちょうど自分の住んでいるアパートであろう場所に
帰宅している最中の女子大生ー、あるいは社会人になったばかりぐらいに
見える子を見つけると、そのまま「今日は君に決めた」と、
ニヤニヤしながら、自分の霊体を移動させていくー。
そしてー、そのままその身体に憑依するため、
霊体を重ねると、「ひっ!?!?!?」と、その声が声を上げて
ビクンと震えるのが分かったー
「ーへへへー」
が、すぐにその子は、にやりと笑みを浮かべると、
「憑依された瞬間にいい声出す女もゾクゾクするぜー」と、
そう言葉を口にしたー。
憑依した時にどんな声を出すか、どんな動きをするかも
人によって違うー。
そんな違いを楽しむのも、哲昭のお楽しみの一つではあったー。
が、しかしー
やはり、彼の一番の”お楽しみ”はー、
”寒さ”を味わうことー
”寒さ”という名の快感を乗っ取ったこの身体で
存分に楽しむことー。
その一つだったー。
「ーー」
乗っ取った子の身体で、そのままアパートの部屋の中に入ると、
もこもこした上着を脱ぎ捨てて
「ーーへへ…この子は寒がりなのかなー」と、そう言葉を口にしながら
部屋の奥へと進むー。
せっかく”帰宅”していたにも関わらず、
”乗っ取った”側の彼にはそんなことは関係ないー。
哲昭は今日も”寒さ”を感じようと、
乗っ取った子の身体で、衣類を漁り始めるー。
「へへへへー…寒くてゾクゾクしそうなものはー…」
帰宅しようとしていた時には浮かべていなかった
下品な笑みを浮かべながら、乗っ取られたその子は
自分の服を雑に漁り始めるー。
”後のことなどお構いなし”と言わんばかりに
手当たり次第、服を取り出しては
哲昭にとって用のない服は、その場に適当に
放り投げていくー。
哲昭に憑依されてしまった人々に
”憑依されている間の記憶”は残らないー。
そうなれば、当然、正気に戻った時に
自分の記憶が飛んでいることを不思議に思うだろうし、
本人は戸惑うだろうー。
がー、”どうせ”
哲昭に憑依されていた、などと気付く人間はいないー。
だからこそ哲昭は、”憑依”から解放するタイミングも
特には考えなかったし、
”憑依”している最中に散らかしたものを片付けることも
しなかったー。
”どうせ、違和感を抱かれるなら、下手な隠蔽のようなものは
する必要がないー”
と、そう判断していたからだー。
「ーーへへへ…このショートパンツとか最高だなー
たっぷり寒さを味わえそうだぜー」
ケラケラと笑いながら、乗っ取られたその子は
嬉しそうに自分の唇をペロリと舐めると、
「そうそうー、こいつの名前ー」と立ち上がって
自分の鞄を漁り始めるー。
せっかく乗っ取った身体ー
”名前”が分かるのであれば、名前も知っておきたいー。
その方が、なんとなく興奮するからだー。
そう思いつつ、鞄の中から”学生証”を見つけると
「ーへへ…女子大生かー」と、自分のことをニヤニヤしながら
呟く彼女ー。
「ーー名前はー大沼 紗枝(おおぬま さえ)ちゃんかー
へへへー」
乗っ取られた紗枝は、自分の名前をたった今、知ったかのような
傍から見ればとても不自然な言葉を口にしてから、ゆっくりと立ち上がるー。
「ーさぁ、着替えて今日も寒さを味わうとするかー
くくくくー」
紗枝は、これから感じる”寒さ”に
ゾクゾクとした興奮を覚えながら、幸せそうな笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
足が凍り付くほどの寒さー
ガクガクと震えるほどの寒さー。
それを味わいながら、紗枝はニヤニヤと笑みを浮かべるー。
「ーはぁぁぁぁ…こんなに寒いのに、
こんなに生足を晒しちゃってー…
へへー…うへへへへへへ♡」
紗枝は顔を真っ赤にしながら
嬉しそうに、寒くて仕方がない自分の足を見つめるー。
「ーしかもー…へへーエロいぜー…
男が真冬にこんな風に足を晒してたら
ただの馬鹿扱いされるのにー
女だとー へへー」
紗枝はそう呟きながらチラッと周囲を見つめるー。
たまに、紗枝の足をチラ見しているやつがいるー
そんな視線を味わうのも
”今の紗枝”にとっては快感でしかなかったー。
正気の”紗枝”なら絶対に喜んだりはしないだろうけれど、
今の紗枝からすれば、とにかく快感でしかなかったー。
「ーーーう~~…それにしても寒いなー…
せめて何か履いてりゃ、多少はマシなんだろうけどなー」
通りすがりの女の黒いタイツを見つめながら
そう呟く紗枝ー。
タイツ越しに味わう感触も悪くはないー。
がー、哲昭にとっては
やはりタイツ越しに味わう寒さよりも、
生足で味わう寒さの方が、何よりも快感だったー。
「ーーへへーどうだ?寒いかー?」
道端のガラスに反射した”自分自身”に向かって
そんな言葉を口にする紗枝ー。
当然、紗枝本人の意識は強制的に眠らされているような
状態であるために、紗枝本人から返事が返って来ることはないー。
しかし、それでも”紗枝本人”に語り掛けるような
この状況に、哲昭はニヤニヤしながら興奮を覚えると、
「ーーわたし、とっても寒いけど、興奮しちゃうー」と、
紗枝本人のような口ぶりでそう言葉を口にしたー。
がー、
その時だったー
「ーあれ?紗枝じゃんー」
背後から”女の声”が聞こえて、
驚いて振り返る紗枝ー。
するとそこにはー、
中が見えてしまいそうなほどに短いスカートを履いた
ギャルっぽい女の姿があったー。
「ーーえっ」
紗枝に憑依している哲昭は
”紗枝の知り合い”らしき女に声を掛けられたことに驚くと同時に、
その寒そうな生足を見て、
思わず不気味な笑みを浮かべてしまったー…。
②へ続く
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コメント
真冬の生足は本当に寒いので、
憑依した身体で試す時には
覚悟(?)して下さいネ~笑
続きはまた明日デス~!!
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